仕組み化が仕事のムダをなくす?具体例、やり方を解説
もしあなたが「今やっている仕事は、全部ムダです。」と言われたら、もちろんいい気はしませんよね。誰しもムダなことをやろうとしているわけではないですし、どの仕事も必要性があって行われているからです。
しかし、実際はムダな仕事というのも多々存在してしまっているのが現実です。では、そのムダを生まないために何ができるのでしょうか。
本記事では実践的で有効な解決方法として「仕組み化」の概要やメリット、具体例、円滑に進めるためのステップをご紹介します。
目次
仕組み化とは
仕組み化が大事と言われても、そもそも仕組み化とは一体何を意味し、何のために行うのかを理解していなければ取り組みようがありません。
仕組み化とは「ムダ」を解消すること
「仕組み化」とは属人性を排除し、いつでも、どこでも、誰が行っても同じ成果を出せる方法を構築することです。例えば、一人の優秀な社員がやっていることをほかの社員にもできるように環境を整えたり、全手動の作業を全自動に切り替えたりすることなどが、「仕組み化」に当てはまります。
また、仕組み化の過程で特に重要な役割を果たすのは「標準化」です。標準化とは、業務手順や作業方法を統一し、誰が担当しても同じ品質・成果を出せるようにすることです。これにより、個人のやり方によるバラつきがなくなり、業務の品質が安定します。
さらに、仕組み化と標準化を進めることで「ムダの解消」も実現できます。業務の流れを見直し、不要な手順や重複作業を排除することで、効率的なプロセスが生まれるからです。ムダの解消は時間やコストの削減になるため、組織全体の生産性向上につながります。
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仕組み化前(全手動):あらゆる業務を手動で行う。業務手順が定められておらず、限られた人の感覚知に依る部分が大きい。属人性が高い。標準化がされていないため、ムダな作業や非効率な手順が発生しやすい。
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仕組み化後(全自動):業務手順が明確にマニュアル化、ルール化されており、運用方法や作業内容が標準化されている。あいまいな意思決定がなく、高速で何度も業務を繰り返すことが可能。属人性が低い。業務が機械・コンピューターで行われることも多く、ムダな作業が排除されている。
もちろん、いきなり仕組み化前(全手動)から仕組み化後(全自動)に切り替えることは不可能です。手動で行っている業務を自動化していくには、まず、何をどのように自動化するのかを明確にし、標準化を進めながらムダを見つけて解消していく必要があります。そしてこの手動から自動に向かう過程こそが、「業務を仕組み化する」ステップです。
ムダの正体
ムダとは何かを考える際、単に「余計な作業」や「不要な時間」と捉えるだけでは不十分です。ムダの本質を理解するには、業務の目的(Why)、施策の設定(What)、具体的な手段(How)という3つの観点から現場を観察しなければなりません。
なぜなら、業務の目的(Why)は正しくても施策の設定(What)がズレていたり、手段(How)が最適化されていなかったりすると、ムダが発生するからです。例えば、データ整理という目的に対してエクセルの便利機能を使わずに手入力を続けたり、作業者ごとに異なるフォーマットや手順で業務を進めたりすると、品質のバラつきや二度手間が生じます。
また、現場で発生するムダにはさまざまな種類があります。代表的なものとして、製造業でよく言われる「7つのムダ」があります。
- 加工のムダ
- 在庫のムダ
- 不良・手直しのムダ
- 手待ちのムダ
- つくりすぎのムダ
- 動作のムダ
- 運搬のムダ
これらは全て、「顧客にとって価値を生み出さない作業」であり、組織にとっても本来不要なコストや時間を生み出す原因です。
「ムダとは何か」を考えると、ムダには「自分たちにとって必要のない作業」だけでなく、「顧客にとって価値のない作業」も含まれることがわかります。そのため、自分たちの目線だけでなく、顧客視点で考えることが重要です。現場で「これは必要だ」と思っている作業も、顧客から見れば不要な場合があるからです。
こうしたムダが生まれる背景には、業務の標準化や仕組み化が不十分であることが挙げられます。標準化されていない手順や属人化した業務は、品質のバラつきや非効率を生むからです。また、業務量と人員配置のバランスが崩れている場合や、正確な需要予測や生産計画ができていない場合にもムダが発生します。
こうしたムダを排除するためには、まず現場の作業を細かく観察し、どこにムダが潜んでいるかを可視化することが大切です。例えば、作業時間や人員に制約を設けることで、やめられる作業=ムダをあぶり出す方法も有効です。そのうえで、標準化や自動化、仕組み化を進めることで、ムダを根本から削減できます。
仕組み化のメリット
仕組み化を行うメリットは端的に言うと4つあります。
それは「能力」や「記憶力」に依存せずに仕事が進むこと、そして「ミスがなくなる」、「個人とチームの成長につながる」ことです。
「能力」に依存しない
優秀な社員が業務を全てこなしてしまうようでは、一部の人だけに特定の業務が偏ってしまい、長期的な視点で見たときに部下の成長が見込めません。
また、属人化している状態ではリスク分散ができず、その人が休んだり退職したりしたときに、業務が止まってしまう恐れもあります。
仕組み化によってマニュアルを整備すれば、特別優秀ではない、初めて業務に触れるような人であっても、一定の水準の結果が出せる流れをつくれます。
「記憶」に依存しない
業務を仕組み化するということは、業務手順をなんらかの形で可視化するということです。仕組み化によって生み出されたマニュアルやルール、制度は会社の資産として残り続けます。これによって、仕事をする中で「誰かが覚えている作業を、記憶を頼りに口頭で伝える」という状況が発生しなくなります。確実に業務を引き継ぎできることもまた、仕組み化がもたらす大きなメリットです。
もし仕組み自体を変えることになったら、履歴をしっかり残し、社内に共有することがポイントになります。
ミスを減らせる
仕事にミスは付きものですが、業務を仕組み化しておけば「どの工程で」「なぜ」「どのように」ミスが発生したのかを特定しやすくなります。原因さえわかれば、改善も容易です。仕組み化によって徐々にミスを減らし、最終的にはゼロにすることも夢ではありません。
個人とチームの成長につながる
組織が全体として成長していくには、「仕事のバージョンアップ」を定期的に図る必要があります。業務の仕組み化によって若手社員でも一定のクオリティで仕事をこなすことができれば、ベテラン社員はより難易度の高い仕事に切り替えることが可能です。このサイクルを繰り返していけば、個々人の成長によって、組織そのものが成長できるでしょう。
仕組み化を行わないことで生じるデメリット
仕組み化に積極的に取り組まなかった場合、現場ではさまざまな障害が発生する恐れがあります。
業務量に偏りが生じる
仕組み化に取り組まないリスクのひとつは、業務量に大きな偏りが生じることです。業務が属人化すると、「その人にしかできない仕事」が発生し、特定の社員に業務が集中してしまいます。この状態が続くとその社員の負担が過剰になり、ストレスや疲労が蓄積しやすくなります。
その結果、業務過多による離職や休職が発生しかねません。また、定着率の悪化や新たな採用コストの増加、さらには業務自体が一時的に停滞するリスクも高まります。さらに、特定の人が不在になるだけで業務が止まるなど、組織全体の生産性や安定性にも悪影響を及ぼしかねません。
このように、仕組み化を怠ると業務配分の偏りが深刻化し、組織の持続的な成長やチームワークにも大きなリスクをもたらします。
不正の起きやすい環境になる
仕組み化に取り組まないと、業務が属人化し「その人にしかわからない」という状況が生まれます。業務の属人化は業務内容や手順が他の人から見えにくくなるため、不正やミスの隠蔽が発生しやすい環境をつくり出します。特定の個人に権限や情報が集中し、チェックや監督の機能を働かせにくくなるからです。その分、不正やミスの「機会」も多くなります。
こうしたリスクを防ぐには、業務手順や権限を明確にし、誰でも内容を確認できるようにすることが重要です。仕組み化による業務の標準化・見える化は内部統制を機能させ、不正の発生しにくい健全な職場環境をつくることにつながります。
仕組み化の具体例
それでは、実際どのようにして業務の仕組み化を実行すればよいのでしょうか。
ここからはその具体例として、マニュアルを簡単に作成・閲覧・管理できる、クラウド型のマニュアル作成システムTeachme Bizの導入による仕組み化について解説します。
口頭伝達の解消と「コツ」が共有される仕組みをつくる
株式会社ルミカ様では、製造プロセスの品質担保をベテラン社員の口頭伝達に頼っていました。そのような現場では人事異動が難しいほど属人化が進み、業務の「コツ」やノウハウも個人の中に埋もれがちになっていました。
しかし、Teachme Bizの活用で、画像や動画を使って誰でもわかりやすいマニュアルを簡単に、従来の10倍以上の速度で作成できるようになりました。
このマニュアルには手順だけでなく、これまで口頭でしか伝えられなかった「コツ」や注意点も盛り込める点が特徴です。そのため、知識やノウハウの共有が仕組みとして実現しました。
結果として属人化の解消と、業務のデジタル化も加速しました。今では、製造現場の半分以上が自分の持つ知見をマニュアル化するようになり、その知見を共有する文化まで根付き始めています。
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技術伝承を進めて海外拠点でも業務を標準化する
海外拠点を持つIHI Asia Pacific(Thailand) Co., Ltd.様では、ルール集やマニュアルの整備が追いつかず、担当者ごとに独自で資料を作成・保管するため共有がされていない、といった課題がありました。このような状況下では、ノウハウの伝承や現地スタッフの教育も非効率でした。
Teachme Bizを活用し、日本人と現地スタッフが共通理解できるマニュアルを整備したところ、ベテラン社員の技術や「コツ」を誰でもアクセスできる形で蓄積し、属人化を排除しながら技術伝承を進められるようになりました。
また、ビデオマニュアル機能を活用し、新入社員向けの安全講習のトレーニング動画をプラットフォームにアップしたところ、研修にかける膨大な時間と工数も削減できました。
結果として、言語や文化の違いを超えて誰でも同じ手順で作業できる環境を整えられ、現場の業務標準化とトレーニング負荷の軽減を実現できました。工数・時間削減で生まれた余剰時間は、他の重要なタスクに向けることもできるようになりました。
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手順書で業務の新陳代謝をアップする
株式会社タカサ様では、手順書が整備されていない現場で業務が属人化し、担当者以外が作業する際に大きな苦労が伴っていました。また、紙やPDFのマニュアルは分量が多くアクセス性も悪いため、現場でほとんど活用されず形骸化されていることが課題でした。
Teachme Bizを導入したところ、複雑な作業も短いステップで直感的に表現できるため、スマートフォンやPCで簡単に動画や画像を使った手順書を作成できるようになりました。
さらに、Teachme Bizなら手順の更新や改善も簡単に行えるため、現場の変化や新しいやり方にも柔軟に対応できます。
結果として、誰でもすぐに必要な情報にアクセスできるようになり、担当者が変わっても、スムーズに作業を引き継げるようになりました。最終的には社内の問い合わせが半減し、問い合わせがあった場合でも対応時間を短縮できています。
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【3ステップ】仕組み化のやり方
ここまで仕組み化のメリットをご説明してきましたが、むやみやたらに全ての業務を仕組み化すべき、ということではありません。
業務の中でも何を、どのように仕組み化すべきなのかについて、3つのステップで解説します。
ステップ1.業務の見える化
仕組み化を進めるには、まず業務の見える化を行いましょう。ここで言う「見える化」とは、その領域の専門家ではない初心者が見ても、業務内容のプロセスがはっきりとわかるような形にする、ということです。「業務の棚卸し」と言ってもよいでしょう。
見える化をする際は、まず業務を大きく3つのタイプに分類します。
- A.感覚型:経験・知識から高度に判断する業務
- B.選択型:一定のパターンから選択してこなす業務
- C.単純型:誰がやっても同じ業務
分類の仕方は、企業ごとの考え方や方針によって変わります。同じ「見積書の作成」であっても、ケースバイケースで柔軟な判断が必要ならAの「感覚型」になりますし、項目と金額が決まっていてそこから選ぶのであれば、Bの「選択型」になるでしょう。こうした基準を基に、業務内容を整理していきます。
ステップ2.現状の課題を把握
次に、ステップ1で見える化したA、B、Cの業務のどこにムダがあるのか、何を仕組み化すべきなのか、課題を抽出します。
仕組み化しやすいのは主にBやCの領域の業務で、例えば月末の経費精算や報告書の提出など、「たまにやる業務」が当てはまるケースが多いです。
こういった業務はやり方をすぐに忘れてしまい、思い出すのに時間がかかります。そうして結局人に聞いて解決することになると、自分だけではなく聞かれた人の時間まで奪うことになり、非効率です。このような場合は、迅速に仕組み化するとよいでしょう。
当社の長年のコンサル実績に照らし合わせると、Bの「選択型」とCの「単純型」が全体の業務で占める割合は、なんと80%以上です。つまり、業務の大半は仕組み化が可能であり、いかに自動化まで持っていくかが、仕組み化の命運を分けます。
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ステップ3.仕組み化
最後が、いよいよ仕組み化です。特定した課題を実際にどのように仕組み化するのが最適なのか、業務プロセスを決定します。これは、業務の標準化とも呼ばれる作業です。
標準化した内容を再現性と効率性がある形にするには、まずマニュアル化を行いましょう。マニュアルが整備されれば、それを見るだけでいつでも誰でも、同じ作業を効率良く再現することが可能です。
また、頻繁に行う業務であれば、より高速・高精度に行えるよう、ITツールなどを用いた自動化が有効です。
仕組み化を推進するためのポイント
最後に、仕組み化を推進していく際に押さえておくべきポイントをご紹介します。以下の点をよく考慮し、仕組み化が頓挫しないよう気を付けましょう。
仕組み化=全ての業務の自動化ではない
前項ではより効果的な仕組み化の手段のひとつとして、自動化にも触れました。現在は国を挙げてDXが推進されているため、自動化が上手くいくとつい「あれもこれも」とITツールで自動化したくなってしまうものです。
ただし注意が必要なのは、前項でご紹介したAの「感覚型」――経験や知識から高度に判断するような業務は、今はまだ自動化が難しい領域だということです。
感覚型の業務はクリエイティブで付加価値が高い領域ですから、その場の状況によって柔軟な判断が要求されます。つまり、業務の一部を自動化できたとしても、費用対効果が合わない可能性が非常に高いです。
自動化の本質は、「人がやるべき高度な業務」に従業員がリソースを割けるよう、「機械でもできることは自動化する」という点にあります。これを忘れないようにしましょう。
「自分でやったほうが早い」という考え方をなくす
仕組み化を推進したくてもできない企業にありがちなのが、そもそもマニュアル化が面倒で、腰が重くなっているパターンです。特に業務が属人化している場合は、「やり方を説明するのも大変だし、マニュアルを作成する時間もない。だったら結局自分でやったほうが早い」という状況に陥ることが珍しくありません。仕組み化すべきだとわかっても、目の前の業務に追われてしまうわけです。
そこで重要なのが、ビジュアルベース、つまり視覚的にわかりやすいマニュアルを、ツールを用いて簡単につくるということです。
言葉だけではなく画像や動画を使えば説明も簡単ですし、ツールならさほど時間を取られずにマニュアルを作成できます。まずはスモールステップで、ツールを用いながら業務の一部をマニュアル化してみましょう。
まとめ
仕組み化は、業務の属人化やムダを排除し、誰でも同じ成果を出せる環境をつくるための重要な取り組みです。標準化やマニュアル化を進めることで、業務効率や品質が向上し、ミスや不正、業務の偏りといったリスクも軽減できます。
仕組み化を成功させる鍵のひとつが、適切なツールの活用です。たとえば、Teachme Bizを導入すれば、ノウハウの可視化・共有が容易になり、業務のデジタル化も加速します。これにより、属人化の解消やトレーニングの効率化が進み、組織全体の成長と安定した運営につながります。ぜひ導入をご検討ください。
業務の仕組み化には「Teachme Biz」がおすすめ!
Teachme Bizは、マニュアルを簡単に作成・閲覧・管理できるクラウド型のマニュアル作成ツールです。Teachme Bizで作成したマニュアルはステップ構造で手順を一つひとつ追いながら業務を進められるだけではなく、画像や動画をベースにしたビジュアルにより、視覚的に理解できます。
「画像や動画をレイアウトするのは難しそう」という心配もありません。テンプレートが用意されていますので、見やすいマニュアルが簡単に作成できます。
業務を進める中で手順を改善した場合も、マニュアルの更新は楽ちんです。PCやスマホ、タブレットなどどんな媒体からも簡単に修正が完了しますし、マニュアルはクラウドにアップされるので、すぐに社内に共有できます。
「仕組み化にトライしてみたいけれど、どんなツールを使えばいいのかわからない」とお悩みの方は、ぜひTeachme Bizをお試しください。
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