マニュアルにはどんな種類がある?作成するメリットもあわせて解説
マニュアルとは、業務全体の流れや作業手順、注意点を整理した文書であり、組織運営に欠かせない役割を果たします。業務マニュアル、規範マニュアル、作業標準書など複数の種類が存在し、目的に応じて盛り込む内容や活用の仕方は大きく異なります。本記事では、マニュアルの種類とそれぞれの特徴、作成するメリットや注意点をわかりやすく解説します。
目次
マニュアルの種類
マニュアルには、業務マニュアルをはじめ、企業理念・方針を示した規範マニュアルなどがあります。目的により記載すべき内容が異なることを理解しておきましょう。
業務マニュアル
業務マニュアルは、業務全体のおおまかな進め方や流れ、基準などを記載したものです。業務の全体像を把握させるために作成することが多く、オペレーションマニュアルとも呼ばれます。
業務の全体像をつかめないと、従業員は自身が取り組んでいる仕事にどのような意味があるのかわかりません。業務マニュアルで全体像を把握できれば、自身の作業がほかの仕事とどう関わっているのか、どう貢献しているのかを理解できます。
規範マニュアル
規範マニュアルは、組織の内部統制を目的に作成されます。組織としての方針や理念、行動に関するルールなどを周知し、企業活動を円滑に進めるために活用できます。
組織に属する従業員としての心得や、守るべき社会のルール、またルールに反したとき組織にどのような影響を及ぼすのか、といった内容が盛り込まれます。
取扱説明マニュアル
取扱説明マニュアルは、製品やシステムを正しく安全に使用するための方法をユーザーに示す文書であり、購入者が最初に参照する基本資料となります。また、操作手順だけでなく、使用時の注意点やメンテナンス方法、異常が発生した際の対処方法なども盛り込まれ、利用者が安心して製品を扱えるよう工夫されています。
印刷物として同梱されるだけでなく、近年では電子データやWebからのダウンロード形式でも提供され、多言語化によって幅広い利用者に対応しています。
システム・機器操作マニュアル
システム・機器操作マニュアルは、社内で利用するソフトウェアや業務機器の操作手順を整理し、従業員が迷うことなく作業を進められるようにするための文書です。また、日常的な操作方法に加えて、トラブル発生時の対応策やエラー処理の流れなども明記することで、問題が生じた際も落ち着いて対処しやすくなります。
専門知識が十分でなくても一定の作業を再現できるよう設計されているため、結果として業務の効率化や教育負担の軽減につながりやすい点も特徴です。
作業標準書
作業標準書は作業手順書とも呼ばれ、前述の通り作業の手順を詳しく解説したマニュアルです。ひとつの作業を細かく解説し、ステップごとに明確な説明を記載します。
誰が行っても同じ品質で作業を完遂するのに必要なプロセスを整理しており、作成することで作業の標準化に役立ちます。
教材・訓練用マニュアル
教材・訓練用マニュアルは従業員の育成に用いられます。従業員のスキル、モチベーションアップを目的として作成され、実務で役立つテクニックやコツ、ノウハウなどのほか、業務理解に役立つ内容を盛り込みます。
新人育成を目的としたコンテンツであれば、単なるテクニックやスキルの向上を目的とした内容は重視されません。社会人としての精神やビジネスマナーから、業務に関する基礎知識など、組織の一員として必要な情報を説明することが求められます。
マニュアルと手順書・ハンドブックの違い
マニュアル・手順書・ハンドブックは一見似た役割を持ちますが、記載内容や対象範囲に明確な違いがあります。ここでは、それぞれの特徴と役割について解説します。
手順書
手順書は、業務を構成する具体的な作業の手順について詳しく説明したドキュメントであり、作業に要するツールをはじめ、コツや注意点などが記載されます。読んで手順に従えば誰でも同じ成果を再現できるように作成されるため、イラストや写真などの図表を用いて、行うべき手順を明確に提示します。
マニュアルと手順書は、業務の進め方について記載する点で共通します。しかし、マニュアルは細かな手順を記載せず、包括的な業務の進め方や規則をまとめたものであり、作成する目的が異なります。そのため、作成時に意識すべきポイントもそれぞれで変わってきます。
マニュアルと手順書の違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。
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ハンドブック
ハンドブックは、機器やシステムの操作方法を簡潔にまとめた資料で、特定の設定や操作に必要な最低限の情報に絞って記載されます。そのため、詳細な手順を網羅するマニュアルと比べると分量が少なく、重要なポイントを効率的に伝えられることが特徴です。
また、企業の規則や方針を整理した文書をハンドブックと位置づける場合もあり、組織の理念や行動基準を社員に浸透させる目的で活用されることもあります。
このように、ハンドブックは利用する場面や目的に応じて柔軟に形を変える、実用的な資料です。
マニュアル作成のメリット
マニュアルを整備することは、組織運営や日常業務の効率化に大きな効果をもたらします。ここからは、マニュアル作成によって得られる具体的なメリットについて解説します。
作業効率の向上
作業マニュアルを整備することで、従業員は手順や注意点を把握しやすくなり、作業の進め方に迷いにくくなります。また、業務の流れが明確になることで、次に取るべき行動を予測しやすくなり、先を見据えた作業が可能となります。トラブル発生時にも、解決方法が示されていれば迅速な対応が可能で、不要な手戻りの発生を予防できます。その結果、業務全体の生産性が高まり、組織の効率的な運営に大きく貢献します。
品質の安定化
新入社員や異動者は業務経験が浅く、最初から一定水準の成果を出すことは難しい場合があります。しかし、マニュアルに沿って作業を進めれば、誰が担当しても同じ基準で業務を実行でき、結果のばらつきを抑えられます。
記載内容が共通の指針となることで、個人の判断や感覚に左右されない、安定した品質を維持できます。加えて、製品やサービスの品質保証にも直結するため、顧客からの信頼向上やクレーム削減につながる点もメリットです。
属人化の回避
特定の社員に業務が集中すると、その人が不在になった際に作業が滞り、組織全体の生産性が低下するおそれがあります。この点、業務の流れや必要な手順をマニュアルとして明文化しておくことで、ほかの従業員でも同じ作業を再現できる仕組みが整います。
また、知識やノウハウを個人ではなく組織の資産として共有でき、異動や退職による影響を最小限に抑えることが可能となります。属人化を防ぐことで、教育コストの削減や人材の流動性確保にもつながり、安定した業務運営を実現できます。
教育コストの削減
新人教育にマニュアルを活用することで、指導者が一から細かく説明する負担を軽減でき、教育に要する時間や人件費の削減につながります。その結果、効率的で無駄のない人材育成が実現します。さらに、共通の資料をもとに学習できるため、教育の質にばらつきが生じにくく、短期間で即戦力となる人材を育成できます。
教育コストの削減は、早期の戦力化や収益向上に結びつく大きな利点となり得ます。
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マニュアルを作成する前に注意しておくこと
マニュアル作成には前述のようにさまざまなメリットがありますが、いくつか注意すべきこともあります。主な注意点は、業務への創意工夫が減少する可能性がある、作成に時間と労力がかかる、の2点です。
業務への創意工夫が減少する可能性がある点
マニュアルを過度に厳格化すると、従業員は定められた手順に従うだけになり、工夫や改善を取り入れる余地が狭まります。その結果、ミスが減って品質は安定する一方で、成果が一定水準にとどまる可能性があります。
また、事業転換や人員の入れ替わり、技術革新といった環境の変化にあわせて、内容を継続的に見直すことも必要です。過度な制限を残したままでは、他社が新たな仕組みを導入する中で、競争力を失う危険性もあります。
マニュアルの範囲内でしか行動できないと、想定外の事態に直面した際に柔軟な判断ができず、対応の遅れや現場の混乱につながるおそれがあります。そのため、一定の規律を維持しながらも、変化に適応できる柔軟な仕組みを整えることが重要です。
マニュアルを作成するための時間や労力が必要な点
マニュアルの作成や更新には、業務内容の整理や構成の設計、必要な情報の収集など多くの工程があり、相応の時間と労力がかかります。
テーマや目次を定め、目的に応じて盛り込む内容を精査し、現場の従業員へヒアリングを行いながら仕上げていくため、通常業務と並行すると大きな負担となる可能性があります。設定すべき事項が多いほど作業量は増大し、業務やマニュアル作成の双方が中途半端になるリスクも考えられます。
また、マニュアルは完成して終わりではありません。周知や活用状況の確認、効果検証を行い、必要に応じて修正や追記を行う更新作業も不可欠です。
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まとめ
一口にマニュアルといってもさまざまな種類があり、それぞれ用途や特徴が異なります。マニュアルを作成することで、作業効率の向上や品質の安定化、属人化の回避、教育コストの削減など多くのメリットがもたらされます。一方で、作成には時間もコストもかかる上、マニュアル依存による柔軟性・創造性の減少といった弊害も懸念されるため、注意が必要です。
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