業務をマニュアル化するメリットとは デメリットは本当にない?
「何度も同じことを教えている気がする」「人によってやり方がバラバラで統一性がない…」リーダーやマネジメント層の方々は、日々の業務に対してこんなお悩みをお持ちではないでしょうか?
どのメンバーにも同じように業務をこなしてもらうための解決策として、なんとなくマニュアル作成をイメージされている方も多いかと思いますが、「本当にマニュアルで業務効率化ができるのか」「実際のメリットはどれぐらいあるのか」「デメリットがないかも気になる」など、なかなか着手に踏み切れないケースもあるでしょう。
そこで今回は、業務をマニュアル化するメリットに加え、デメリットについてもご紹介します。デメリットの改善方法も記載していますから、マニュアル化に迷われている方はぜひ参考にしてください。
目次
マニュアル作成の重要性
マニュアルとは、紙や冊子、データに業務フローをまとめたもので、会社のノウハウが蓄積された財産とも言える存在です。
マニュアルの有用性は業界を問わず古くから認められており、すでに導入している企業も多いでしょう。例えば無印良品やしまむらなど、マニュアルを活用することによって新人育成や業務オペレーションの最適化を図り、大きな成果を上げている企業もあります。
上記のように、マニュアルは従業員の教育やパフォーマンス・生産性向上などを目的に導入されるのが一般的です。マニュアルがあれば口頭だけで説明するよりも業務全体の流れや仕組みを理解しやすくなりますし、会社として最も効率が良い業務フローを従業員に一律で実行してもらえます。
- 従業員に何度も同じ指導をしている
- 業務のやり方が人によってバラバラ
- 社内にミスが多く、クレームやトラブル対応に時間が取られている
このような悩みがある場合は、マニュアル作成の重要性が一層高まるでしょう。
業務をマニュアル化する目的
第一に、マニュアルを作る目的は「作業にあたる従業員全員に正しい方法を伝えること」にあります。
業務遂行にあたって必要な判断基準や行動の手順を明確化し、誰がやっても同じ品質で業務をこなせるようにする。これがマニュアルの大義です。
業務をマニュアル化する4つのメリット
上記の内容からもマニュアル化するメリットはいくつか伺えますが、より具体的にマニュアル化によって得られる利点をご紹介します。
作業時間の短縮
マニュアルがあれば、従業員は作業途中に悩んで手が止まってしまう、何が正解なのか迷って不明点を上司や先輩に聞くといった手間が不要になります。「わからないことがあればマニュアルを参照する」状態になるわけです。
その結果作業時間が短くなり、従業員は余った時間で別の作業をしたり、さらなる業務改善やスキルアップにリソースを割いたりできるでしょう。またミスも低減されれば当然確認する側はチェックが楽になり、一石二鳥です。
業務品質の向上
マニュアルを参照することで、誰もが同じ手順で作業を行えるようになります。その結果「ベテランのAさんと新人のBさんで同じ業務なのにやり方が違う」という状況がなくなり、誰でも最低限クリアしてほしいアウトプットの質を担保できるようになります。つまり、業務品質が均一化されるわけです。
そうなれば、人員配置の際に従業員のスキルを気にしすぎる必要はありません。より柔軟な組織体制を構築できるでしょう。
また、業務品質を均一化した状態であれば、アウトプットに問題があった場合に原因を特定しやすくなります。どの業務を誰が行うのか役割や範囲が明確ですから、責任の所在もすぐに突き止められます。チーム全体でPDCAを回し、改善活動に努められるのです。
属人化の防止
マニュアル化は属人化の防止にもつながります。属人化とは、従業員のごく一部の人にしかこなせない業務があり、タスク配分に偏りが出てしまうような状態のことです。
マニュアルによって「あの人にしかできない業務」がなくなれば、普段から従業員に対して業務を均等に割り振ることができます。誰かが突然病気で休むなど不測の事態があったときに、代わりに誰かがマニュアルを見ながら作業にあたれるのもメリットです。担当者の急な退職時に、業務が引き継ぎされず困るようなことも減るでしょう。
属人化の原因には「業務をたくさんこなして社内で価値を発揮したい」という意識を持った人が、意図的に業務を属人化するようなケースもありますが、会社としてマニュアルを整備すればその不安もありません。
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従業員の教育コスト削減
マニュアルで簡単に業務内容を把握できるようになれば、新人教育にも役立ちます。
マニュアルが無い場合は先輩や上司が直接OJTで指導をする、あるいは研修を実施するといった形で新人教育を行いますが、これらは時間も手間もかかる手法です。そのうえ、不明点があっても新人は忙しい先輩に対して聞きづらいなど、コミュニケーションに問題が発生しやすくなります。そのほか、数回の指導では人によって理解度に差が生まれやすい、予習・復習がやりづらく業務内容の定着に時間がかかるといったデメリットもあります。
この点、マニュアルがあれば新人は自分でいつでも自由に業務内容について学ぶことができます。業務にあたる前に予習できるのはもちろん、実際に業務の中で上手くいかなかったところがあれば、マニュアルを参照して復習できるため、定着率が高まります。誰かに質問をする・されるプレッシャーも軽減されるでしょう。
もちろん対面での直接指導が必要な場面はありますが、リモートワークが増えている今、マニュアルを利用した教育は欠かせません。
【事例】テレワーク環境下で研修時間を4分の1に圧縮
マニュアル作成・共有システム「Teachme Biz」の開発・販売を行っている株式会社スタディストでは、コロナウイルスの影響により集合研修からオンライン研修へシフトした際に反転学習を活用しました。研修に先立って教育すべき内容を一人ひとりのパソコンやスマートフォンに配信しておき事前学習に取り組んでもらい、学習効率が飛躍的に高まりました。
実際に従来集合研修で2時間かけてレクチャーしていた講座は、反転学習による事前学習を徹底することで30分に短縮。テレワークという不慣れな環境下での教育おいて、大きな成果をあげています。
マニュアルによる反転学習でテレワーク環境でも新入社員研修を効率化した事例
業務をマニュアル化するデメリット
マニュアルは一見メリットばかりで、実際にあるに越したことはないのですが、いくつかデメリットも存在します。解消のポイントとともに押さえておきましょう。
マニュアルに縛られすぎる可能性がある
便利なマニュアルも、「マニュアルに従って作業をすること」自体が目的になると問題が発生します。
マニュアルに無いようなイレギュラーなトラブルに対応できない、自分から創意工夫をする、業務を改善するという気持ちが起きなくなるといった事態がその一例です。自分のミスを「マニュアルに書かれていたから」と責任転嫁してしまうケースもあるでしょう。いわゆる「マニュアル人間」になってしまっては、マニュアルの効果は激減します。
<解消のためのポイント>
マニュアルを作成する際、「臨機応変に対応すること」を想定した内容にしておきましょう。また、業務を行う意味や目的を従業員の間で共有しておくのも大切です。あくまでマニュアルは業務をスムーズにこなすものであって、「必ず従うこと」が目的ではないと、意識の醸成をするのです。
もちろんそのためには、ある程度従業員に裁量を与える、マニュアルに従わなかったからといって頭ごなしに叱責しないなど、社内の制度や風土の最適化も必須です。また、マニュアルは絶対ではなく、自分たちで改善していく発展途上のものであるという認識も浸透させておく必要があります。
マニュアルが使われなくなる可能性がある
マニュアルはきちんと作成・更新・管理をしないと、そもそも使われなくなってしまう可能性が高いです。
例えば記載されている業務内容が古く実態とかけ離れている、保管場所がわからずすぐに参照できないようなマニュアルでは、せっかく作っても何の役にも立ちません。逆に内容が最新でわかりやすい場所に保管されていても、文字がびっしり書かれて見づらいマニュアルでは、やはり見てもらえません。
<解消のためのポイント>
第一に、マニュアルは文字だけではなく図版や写真、動画などを駆使して見やすく、内容が伝わりやすいものにしましょう。テキストも難しい専門用語ばかりを使わないよう注意が必要です。
その上で、マニュアルがデータなら従業員全員がすぐに参照できる共有フォルダやクラウドにアップする、紙なら全員に配布するなど、すぐに参照できる状態を作ります。さらに業務内容に変更があったらすぐに反映し、常に最新の状態をキープしておくことも忘れないようにしましょう。
作成や更新、管理に手間がかかる
マニュアルを一から作成するのは、思いのほか手間がかかります。おおまかな手順は以下の通りです。
- 業務内容を作業担当者にヒアリング
- マニュアル化する内容を決め、構成を考える
- 構成を基にツールを使って作成
3に関しては、写真や動画を入れる場合には撮影の手間もかかります。
一朝一夕で完成するわけではありませんから、普段から業務が忙しい場合、マニュアル作成を兼任すると作成時間の確保が課題になります。また、パワーポイントなどで作成する場合は一定のデザインスキルがないと、わかりやすいマニュアルを作るのは難易度が高くなるでしょう。
マニュアルは実際に作成してからも都度更新が必要なのは、前項で説明した通りです。また、更新した後は古いデータが残ったりしないよう、版数を注意深く管理しなければなりません。
<解消のためのポイント>
ヒアリングの手間を省くなら、業務の担当者がマニュアル作成を兼務するのも一つの方法です。業務内容やコツを一番理解している立場ですから、重要なポイントを押さえたわかりやすいマニュアルになるでしょう。
また作成時はオフィス系のツールでフォーマットから手作業で作るのではなく、手軽にマニュアル作成できる専用のITツールを導入して、効率的に作業を進めましょう。ツール選定の際はクラウド型を採用するなど、管理コストに気を配るのもポイントです。
マニュアル化するべき業務とは?
実際にマニュアル化を行う際にまず迷うのが、そもそもどんな業務をマニュアル化すべきなのかという判断でしょう。社内を見渡すと課題だらけで、何から手を付ければいいのかわからないケースもあるかもしれません。
以下では、マニュアル化すべき業務に関する注意点や判断のポイントをご紹介します。
「選択型」「単純型」の業務をマニュアル化しよう
ではどのような業務がマニュアル化に向いているか、詳しく見ていきましょう。
まずは社内の全ての業務を洗い出して、下記のA/B/Cの3つのタイプに分類していきます。
- 【A:感覚型業務】(長年の経験や知見から、感覚的に対応する業務)
- 【B:選択型業務】(いくつかの選択肢から、適切な対応をする業務)
- 【C:単純的業務】(誰がやっても結果は同じ、単純な業務)
Aは「本来業務・付加価値業務」であり、事業の価値を左右する重要な領域です。前項でご説明したようなマニュアル化が難しい業務が、Aの感覚型業務にあたります。
この領域はマニュアル化に労力を割くよりも、場数を踏み経験を重ねることで従業員のスキルや能力を磨いていくほうが、効率的・効果的です。職人技を伸ばすべき領域とも言えます。
BやCはAとは異なり、パターンや手順を定めるのが容易な領域です。「あたりまえ業務」とも言うべき部分で、できて当然・できないと問題が起きてしまいます。例えば経理や人事、総務、一般事務など、企業の事業運営をサポートするバックオフィス系の業務の多くは、BやCの領域です。
ここは新しいスタッフでも業務遂行に迷ったり悩んだりしないように、マニュアル化を進めるべきです。
自社のどの業務がABCに分類するのかを判断し、マニュアル化すべき業務の見極めを行いましょう。
マニュアル作成は自社のコアを見つめ直すきっかけにもなる
さて、Aの「本来業務」はマニュアル化しないほうがいい……と言われると、そのほかの業務をマニュアル化したところで十分な効果を得られるのか、疑問に思われる方もいるかもしれません。
しかし実際のところ、業務の大半を占めるのはAではなくB、Cの業務であり、その割合は8割以上にものぼります。これは当社がさまざまな企業様をご支援してきた実績から見えてきた事実であり、業務を分類してみたら「思ったよりAが少なかった」という意見が非常に多く聞かれます。
つまり、実は事業のコアとなっている付加価値の高い業務はごく一部に過ぎないのです。コアとなる部分を見極めれば、ほかの部分はマニュアルで効率化し、Aの部分にリソースを注力させられます。
自社のコア業務を改めて見つめ直す意味でも、マニュアル化はおすすめです。詳しくは以下の記事でも解説していますので、ぜひご覧ください。
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86%の業務はマニュアル化できる! ~30社の業務を見てわかったこと~
「とにかく全てをマニュアル化」は失敗の原因になる
多くの人が業務のマニュアル化でつまづく1番のポイントが、そもそも「マニュアルの作成が大変」ということです。わかりやすくするために画像を差し込んで作ったり、他の仕事の合間で時間を見つけて作成したりとマニュアル作成は思いの外、時間がかかります。
そのため、業務のマニュアル化に取り組むからといって、いきなり全ての業務のマニュアルを作成するのはおすすめできません。まずは前項で紹介したABC分類を参考にマニュアル化に適した業務を洗い出すところから始めて、マニュアル化できる部分から着手していくようにしましょう。
負荷が大きいマニュアル作成を簡単にするには?
テンプレートで効率的にマニュアルを作成しよう
マニュアルの作成・運用は非常に重要である一方で、作り手にも読み手にも大きな負担がかかるという根本的な問題があります。文章の羅列になってしまっては見づらくなりますし、だからといってデザインに凝りすぎて時間がかかってしまっては、マニュアル作成の本来の目的から外れてしまいます。
シンプルでわかりやすいマニュアルを簡単に作成するコツとしては、あらかじめテンプレートを用意しておき、デザインや構成を考える手間を省く方法があります。図表やイラストなどを適宜組み込んで説明できるようなテンプレートを用意しておいて、効率的に作成を進めましょう。
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そのほかにもマニュアル作成のノウハウはたくさん!
テンプレート以外にも、マニュアルを作成する手順や事前準備にはさまざまなポイントがあります。
そこで最後に、マニュアル作成のノウハウや注意点をまとめたマニュアル作成の教科書をご用意しました。「そもそも作り方がわからない」「効率よく作成したい」そんなお悩みを、マニュアルのプロが解決します。
マニュアル作成の基本から、簡単に作成できるコツをご紹介した「プロが教えるマニュアル作成の教科書」を無料で差し上げます。マニュアル作成にお悩みを解決し、伝わりやすいマニュアルを作成する第一歩として本資料をご活用ください。
マニュアル化のツールにはTeachme Bizがおすすめ
本記事でご紹介したマニュアル作成のデメリットを解消するためのツールには、Teachme Bizがおすすめです。ステップ型のテンプレートに沿って作成するだけなので、特別なスキルは必要ありません。画像や動画を挿入するのも、画面にデータをドラッグ&ドロップするだけOKです。
社内へのヒアリングとマニュアルの企画・構成をしっかり行えば、業務のスキマ時間などを活用して、誰でも簡単に見やすいマニュアルが作成できます。
作成後に更新が必要になった場合も、作成時と同じように直接編集するだけなので手間はかかりません。さらにクラウドで最新バージョンが管理しやすく、更新をしたら社員にメール通知も送れます。
まとめ
リモートワークも普及しつつある今、業務内容のマニュアル化は欠かせないものになっています。特に従業員の教育や属人化などに課題がある場合は、いち早くマニュアル化に取り組みましょう。
しかし、マニュアル化にはいくつかデメリットも存在します。特に作成には手間がかかり足踏みをしてしまうケースが非常に多いため、簡単にマニュアルが作れるツールの導入をぜひ検討してみてください。