新人教育マニュアルの作り方と作成のコツを解説
新人教育マニュアルの役割は、主に「教育の効率化」「指導の負担軽減」の2つです。新人教育は企業にとって重要ですが、教育担当の負担や指導力のバラツキなど、さまざまな課題があります。特に、業務中に教育を行う必要があるため、担当者への負担が大きくなることが課題として挙げられます。
そうした課題を解決するのがマニュアルの役割です。本記事では、新人教育マニュアルの内容や作り方、作成のコツを詳しく解説します。
目次
新人教育マニュアルで扱う主な内容
新人教育マニュアルは、新人が企業の業務内容を理解し、職場にスムーズに適応するための重要なツールです。以下のような内容を記載することで、業務へのスムーズな適応を促し、社会人に必要な基礎的能力を身に付けることができます。
社会人としてのビジネスマナー
社会人としての基礎知識やビジネスマナーは、業種や部署を問わず必要とされる重要な要素です。現場ごとの指導にばらつきが生じないよう、新人教育マニュアルを活用して統一的に浸透させることが求められます。記載すべきビジネスマナーは以下の通りです。
- 挨拶
- 身だしなみ
- 電話やメールの所作
- 名刺交換の方法
- 仕事の進め方(報連相など)
企業理念・就業規則
まとまりある組織を築くためには、企業理念の共有が不可欠です。企業が重視している考えや価値観などを明確にし、行動規範としてもらいましょう。
また、企業独自の規則や手続きの方法について記載することも大切です。利用可能な福利厚生や有給休暇の日数・取得方法などは、周りから教えてもらわなければわからないケースがあります。新人教育マニュアルにまとめておきましょう。
業務内容
業務内容をマニュアルにまとめておけば、新人がスムーズに仕事を進めるのに役立ちます。業務の全体像や細かな流れ、企業内にある部署とその役割などを記載しましょう。業務をどう進めていけばよいのか、自分の担当業務が全体のどのような位置付けにあるのかを新人教育マニュアルによって理解できれば、仕事への適応が早まります。
業務内容をまとめる際は、特定の部署だけでなく、企業内の各部署の情報を載せるのがポイントです。各部署の役割と具体的な業務内容を記載することで、広い視野で物事を捉えながら業務を進める習慣が身に付きます。
社内システム・ツールなどの操作方法
操作方法の周知は、新人がスムーズに仕事を進めるのはもちろん、情報セキュリティの観点でも重要です。誤った操作によって重要な情報が社外に漏れないよう、正しい使い方や使用上のルールを新人教育マニュアルに記載しましょう。
社内システム・ツールの代表的な例には、会議ツールやタスク管理ツール、勤怠管理システム、連絡用ツールなどが挙げられます。複数のシステム・ツールを使用している場合は、それぞれの役割や使い分け方も記載しておくと理解がスムーズです。
新人教育マニュアルの導入で得られるメリット
新人教育マニュアルは、新人が業務にスムーズに適応できるだけでなく、教える側である企業にとっても大きなメリットがあります。
教育担当の負担軽減
マニュアルがない状態では、教育担当者が業務の手順書や参考資料をその都度作成し、個別対応で指導を行う必要があります。その結果、教育にかかる時間や労力が膨らみ、本来の業務に支障をきたしてしまうことも少なくありません。
マニュアルがあれば、新人は必要な情報を自分で確認できるため、担当者が一からすべてを説明する負担が軽減されます。また、教育のたびに同じ説明を繰り返す必要がなくなり、業務との両立がしやすくなる点もメリットです。
新人教育の均質化
教育担当によって指導力には差があるため、マニュアルがない状態では「仕事の進め方が異なる」「新人によっては教えられていないことがある」などの問題につながりやすい傾向にあります。そうした教育担当ごとの指導力のバラツキを防ぎ、均質化した新人教育を可能にすることもメリットです。
指導力にバラツキがあると、誰に教えられたかによって新人の理解度に差が生まれてしまう場合があります。その点、マニュアルがあれば、一人ひとりに同じように仕事の進め方を教えられるため、効果的に新人の知識・スキルを底上げできます。
自習・復習の促進
マニュアルがない場合、仕事を進める中で疑問が生まれても、教育担当が近くにいないためにすぐには質問できないケースがあります。近くにいる場合でも、「忙しそうにしているから質問しづらい」と感じてしまい、新人の自習・復習の機会を損ねやすいのが問題です。
それに対し、マニュアルがあれば、社内のルールや仕事の進め方をいつでも好きなタイミングで確認できます。仕事中はもちろん、自宅にいるときでも疑問があれば読み返して確認できるため、教育担当の負担を軽減しながら新人の知識を向上させることが可能です。
新人教育マニュアルの作り方
新人教育マニュアルの作り方を4ステップで解説します。明確な目的がないまま単にマニュアルをまとめるだけでは、思うような効果を得られない可能性があります。導入目的や記載する内容を事前に明確にするよう心がけましょう。
1. マニュアルの導入目的を明確にする
「仕事の進め方を最低限理解できている状態にしたい」「企業理念を深く理解して主体的に行動できる状態にしたい」など、新人に求める水準は企業によって異なります。そのため、マニュアルの導入によってどんな効果を得たいのかを、最初に明確にしておく必要があります。
マニュアルの基本的な役割や目的は先に紹介した通りですが、それ以外にも自社特有の課題があれば洗い出しておきましょう。例えば、新人教育にかかる工数が多いことが課題の場合、マニュアルによって教育担当の人数や負担を軽減できれば、導入成功と評価できます。
2. 新人に必要な知識・スキルの洗い出しを行う
導入目的が明確になったら、新人に必要な知識・スキルを洗い出します。マニュアルに記載する内容は先に紹介した通りですが、業務内容は業種によって異なります。業務内容が違えば仕事の進め方やビジネスマナーも異なるため、自社で必要な知識・スキルを細かく精査するのがポイントです。
洗い出す知識・スキルは、専門知識や資格のような「目に見える能力」に限定する必要はありません。コミュニケーション能力や主体性など、「目に見えない能力」も仕事を進めるうえでは不可欠です。このように数値化が難しい能力も含め、どのような知識・スキルを新人に求めるのかを検討しましょう。
3. 新人教育のカリキュラムを作成する
新人に必要な知識・スキルを洗い出したのち、カリキュラムを作成し、均質化した教育を実現しましょう。
カリキュラムを作成する際は、「いつまでに知識・スキルを身に付けてもらいたいのか」「どのような研修を実施するのか」などを検討します。新人がいきなり高度な知識・スキルを身に付けるのは難しいため、習得の優先順位を考えながらカリキュラムを作っていくのがポイントです。
新入社員向け研修の目的や、内容については以下の記事で解説しています。
▼関連記事
新入社員向けの研修内容や目的・研修担当が知っておきたいポイント
4. カリキュラムに沿ったマニュアルを作成する
カリキュラムを整理できたら、いよいよマニュアルの作成に取りかかります。WordやExcelを使って自作する方法もありますが、それでは教育担当に負担がかかってしまいます。新人教育の工数を削減しつつ、管理・確認しやすい環境を整えるためにも、マニュアル作成に特化した便利なツールを活用しましょう。
また、作成したマニュアルは必ず現場からのフィードバックを受け、改良することが大切です。現場の意見を無視したマニュアルでは、実業務と乖離が生まれる可能性があります。実業務に活きる知識・スキルを新人が身に付けるためにも、現場からのフィードバックは不可欠です。
新人教育マニュアル作成のコツ
新人教育マニュアルは、高度な知識をもたない新人でも理解しやすい内容にするのがポイントです。以下のコツを意識しながら作成しましょう。
業務の全体像を把握できる構成にする
「現在どの工程の業務を進めているのか」「何のために業務なのか」がわからないと、新人は不安を感じてしまいます。納得感をもって自分の仕事に臨んでもらうためにも、新人教育マニュアルは業務の全体像と流れを把握できる構成にしましょう。
この際、仕事の目的や業務の理由などもあわせて記載すると効果的です。目的や理由を示すことで、業務にやりがいやモチベーションを感じやすくなり、理解度も高まります。
専門的な表現はなるべく避ける
業界や社内で当たり前に使われている言葉でも、新人全員が理解しているとは限りません。入社までの予備知識は人によって差があるため専門用語は極力避け、新人でも理解できる言葉を使いましょう。
どうしても言い換えが難しい言葉や、業務上頻繁に使用する専門用語でも、読み仮名を付けたり、補足説明を加えたりする工夫が必要です。特に、定義があいまいな言葉を使う場合は、誤解が生じないように表現には十分注意しましょう。
文字だけではなくイラストや図を用いる
文字だけのマニュアルでは内容が伝わりにくく、堅苦しい印象を与えてしまいます。特に、全く専門知識をもたない新人だと業務内容をイメージしにくいため、視覚的に理解できるようにイラストや図をうまく活用しましょう。
文字やイラストだけでは説明が難しい要素を説明する際は、動画マニュアルを用いるのも効果的です。例えば、作業機器や工作機の挙動を新人向けに説明する際に動画を用いると、実際の使い方や注意点がスムーズに伝わります。
問い合わせ先を記載する
詳細なマニュアルを作成しても、すべての疑問を解決できるとは限りません。新人が疑問を抱えたときにスムーズに解決できるよう、問い合わせ先を記載しておくと安心です。マニュアルの内容に合致する部署や担当者を明記しましょう。
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記載例
- 営業向け新人教育マニュアルの場合⇒営業本部の教育係
- 設計開発向けのマニュアルの場合⇒生産センター
問い合わせ先を記載することで業務上の疑問解決はもちろん、自習・復習にも役立ちます。実践的な教育・独学を行う際に、すぐに質問できる体制を整えることが大切です。
新人教育マニュアルの導入で注意すべきこと
マニュアルの導入は、教育担当の負担軽減や新人教育の均質化につながりますが、注意点も存在します。導入の際はメリットだけでなく注意点も押さえておきましょう。
定期的な更新・見直しが必要になる
新人教育マニュアルは作成・導入して終わりではありません。実業務に則した内容でなければ形骸化し、無意味なマニュアルになりかねないため、定期的な更新と内容の見直しが必要です。運用には少なからず手間がかかる点に注意しましょう。
特に、仕事の進め方に変化があった場合や、新たに社内システム・ツールを導入した場合には大幅な見直しが必要です。情報が古いままでは、新人教育マニュアルとして機能しなくなってしまいます。
イレギュラー対応には限界がある
マニュアルは標準化された業務の共有には効果的ですが、変則的な業務やトラブルなどのイレギュラーな要素には向いていません。マニュアルだけでイレギュラー対応を浸透させるのは難しいため、上司・先輩による指導や実践を通じて新人に学んでもらう必要があります。
対策方法のひとつに、先に紹介した「問い合わせ先の記載」が挙げられます。イレギュラー発生時に相談できる問い合わせ先を明記しておけば、新人が戸惑ってしまうリスクを軽減できます。
作成自体に手間がかかる
一度作成すれば更新・見直しをしながら運用できますが、そもそも作り始めるまでのハードルが高いという問題があります。新人に必要な知識・スキルを洗い出したり、カリキュラムを作成したりするにあたって、一定の手間がかかる点に注意が必要です。特に、マニュアル作成のノウハウや人員が不足している企業の場合、負担がかかりやすい傾向にあります。
負担を軽減しつつ、マニュアルを作成したいときの有力な選択肢が、マニュアル作成ツールです。ツールにはテンプレートや画像・動画編集機能が備わっているため、ノウハウをもたない人でも簡単にマニュアルを作成できます。
新人教育マニュアルの作成なら「Teachme Biz」
新人教育マニュアルの形式には紙とデジタルがありますが、管理や確認のしやすさを考えるとデジタルでの運用がおすすめです。クラウド上で運用できるマニュアルであれば社内共有がスムーズなうえ、テレワークの際も新人が自学・復習に励むことができます。例えば「Teachme Biz」のようなクラウド上で運用可能なマニュアル作成システムです。以下のような特徴があります。
- テンプレートが用意されているため作成が簡単
- 画像や動画編集の機能を搭載
- キーワード検索や二次元バーコードによって欲しい情報に素早くアクセス可能
- 新人の閲覧状況を確認可能
- ボタンひとつで20言語に自動翻訳(オプション機能)
Teachme Bizはマニュアル作成だけでなく、データ分析の機能も豊富に搭載しています。例えば閲覧・検索ログからは、いつ・誰が・何を・何回見たのかを把握可能です。新人教育マニュアルを手軽に作成したい方や、新人への浸透状況を細かく分析したい方はぜひ導入を検討してみてください。
「Teachme Biz」の導入事例
最後に、Teachme Bizの導入により、どのような課題を解決できたのか、どんな効果を得られたのかの企業の成功事例を紹介します。
サービス知識をTeachme Bizに集約し、新人の早期戦力化へ
人材採用や働く人のメンタルをサポートする「株式会社アドバンテッジリスクマネジメント」の営業企画部では、サービスのバリエーションが多岐にわたるために、新人営業の立ち上がりに時間がかかりすぎる点が課題でした。そこで、部署ごとのフォーマットを統一し、均質的な教育を行えるTeachme Bizの導入を決定しました。その結果、教育にかかる工数が16時間から2.5時間に短縮され、新人営業の早期戦力化につながりました。営業企画部での成功を受け、その後、全社での導入に至っています。
多岐に渡るサービス知識をTeachme Bizで1本化
教育工数を70%削減し、新人営業の早期戦力化を実現
正確で迅速なレシピ共有で、再現性と商品価値の向上へ
ハンバーガーチェーンのフレッシュネスバーガーで知られる「株式会社フレッシュネス」では当初、紙媒体でレシピを共有していたため細かな意図が伝わらず、店舗によって商品の再現性にバラツキが生まれていました。そこでTeachme Bizを導入しました。クラウド上でレシピの動画マニュアルを共有し、さらに各店舗の閲覧状況を本部で確認することで、正確かつ迅速な情報の伝達を実現しました。また、Teachme Bizの導入はレシピの共有だけでなく、帳票の共有や商品開発にも役立っています。
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まとめ
新人教育マニュアルの作成により、教育担当の負担軽減や新人教育の均質化、自習・復習の促進などを期待できます。新人はもちろん、指導者である企業側にとっても大きなメリットがあるため、導入目的を明確にしたうえでマニュアルを作成しましょう。
多くのメリットがある一方で、作成の際にはいくつかの注意点もあります。ノウハウや人員不足により作成自体が負担になりやすいほか、定期的な更新・見直しが必要になる点を念頭におかなければなりません。作成や運用の負担を可能な限り軽減したい場合は、マニュアル作成ツールの利用を検討してみてください。