「”助け合う文化が必要”だとみんなが動いてくれたことが成功の要因」 - toBeマーケティングに聞く、リモートワーク移行で加速したこと、つまづいたこと
「リモートワークでのコミュニケーションには、良し悪しの両方がありますね」
Salesforce製品であるPardotの国内導入・活用支援実績No.1を誇るtoBeマーケティング株式会社では、今年の4月にSalesforceを業務の中心としたリモートワークに移行しました。
東京五輪での混雑を見据えて少しずつリモートワークに移行する準備はしてきたものの、いざ移行すると、業務フローや就業規則、マネジメントのあり方までもが大きく変化したそうです。
そんなtoBeマーケティングさんの体験談を伺っていると、今後リモートワークへの移行を検討している企業の方が気をつけるべきポイント・準備しておくとスムーズに進むポイントが明らかになってきました。
リモートワーク体制になって、以下サービスの導入/活用が進んだそうです。
- Slack(チャット)
- Zoom(オンライン会議)
- Salesforce(営業管理~業務管理まで幅広い)
- TeamSpirit(勤怠管理)
- HeyTaco!(社内ボーナス制度)
- Teachme Biz(業務マニュアルの整備)
- Teachme Biz for Salesforce(Salesforceの画面に同期するマニュアルの整備)
これらのツールの活用がどのように進んだのか、リモートワークへの移行にどんな苦労があったのかを、経営企画室マネージャーの高井 啓介さんにお聞きしました(インタビュー日:2020年5月19日)。
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目次
リモートワークへの移行で「脱・はんこ」が一気に進んだ
───まずは準備段階について伺いたいのですが、リモートワークへ移行するために導入したツールなどはありますか?
弊社はもともと東京五輪を見据えて、Salesforceを中心にツールをクラウド化して業務を進めていました。ですので、新しいツールをたくさん導入したわけではありませんが、社内で定着が進んでいなかったツールが一気に定着したように感じます。具体的には、VPNとクラウドサインは特に浸透しましたね。
───クラウドサインは今回のリモートワークへの移行を機に定着したのですね。
はい。私自身も普段の業務の中でハンコを押す機会が多かったのですが、クラウドサインがなければハンコを押すためだけに出社しなければなりません。ですので、この機会に営業側とも改めて話し合い、全社に周知をして浸透させました。
───他の企業からも、この機会にクラウドサインを導入されたというお話をよく伺います。
何かしらの背景があるときがチャンスといいますか、強制力が働く状況下で「クラウドに切り替えます」と号令をかけた方が早いなと実感しました。
実は弊社では1年半ほど前にクラウドサインを導入していたのですが、情報感度が高いメンバーなど少数のメンバーが利用するに留まっていました。電子契約はお客様に理解していただく必要もありますし、業務負荷がかかることで多くの社員には後回しにされていたんです。
ただ、こういうご時世だからこそスムーズにクラウドサインの理解が進み、ハンコを押すためだけの出社・お客様への訪問はかなり減らせました。
───確かに、お客様にもメリットを提供できますもんね。
そのほか、Webサービスではありませんが、VPNも社内での理解が一気に深まりました。
もともと、VPN接続でなければ許可できない業務があったり、VPN接続を打ち合わせの条件にされるお客様もいらっしゃったので、30回線分ほどは用意していたんです。そのVPNの対象範囲を、リモートワークへの移行を機に全社員に拡大しました。
───全社員がVPN環境になることで、セキュリティ面での安心を提供できますよね。
とはいえ、急遽契約を増やしたので、情シスの社員だけでは整備が追い付かずに苦労しました。
幸い、社内でネットワークに詳しい人間がいたので彼らに手伝ってもらって、苦労しながらも一気に増設の手続きを整えることができました。
───業務の流れが一気に変わると、管理部の方々には負荷がかかりますよね。他にリモートワークに移行する準備で苦労されたことはありますか?
VPNネットワークの整備の他に、人事労務まわりを担当するメンバーは試行錯誤しているようです。
たとえば、今までお客様を訪問する営業の社員に対しては “カフェ代” という形で手当を支給していたのですが、リモートワークに移行したことで在宅手当として全社員を対象にしたほうがいいのではという案が出てきました。
もちろん経費をどこまで許可するのかという話にもなりますし、結果として就業規則を一部改定するなど様々な調整が発生していますね。
リモートワークで大きく変わったのはマネジメントのあり方
───実際にリモートワークに移行した後、苦労されたことはどんなところですか?
まず、クライアントの理解を得るために非常に配慮しました。繊細な話ですので、お客様にどう伝えるかを営業メンバーとかなり慎重に議論して進めました。
全社員をVPN環境に置いたこともあり、フルリモートを許可してくださるお客様は多かったのですが、お客様のポリシーによっては細かい調整が必要になりました。たとえば、「リモートの際は安全な情報部分からの開発にしましょう」というような合意をしたところもあります。
そのほかは、社内コミュニケーションの大きな変化が最も印象的だったかもしれません。
───具体的には社内でどんな変化があったのですか?
オフィスに人が集まれるときはマネジメントをする部長クラスが比較的多くのメンバーの変化に気づきやすかったのですが、対面から遠隔になったことで今まで以上に一人ひとりのメンバーをケアする必要が出てきました。
セルフマネジメントがまだうまくできない若手社員にとっても、今まで相談しやすかった部長との接点が薄くなることで混乱があったと思います。そういう意味では、部長クラスやミドルマネージャーの人へのコミュニケーションの負担や求められるスキルは大きく変わりましたね。
───オンライン上でのやりとりに慣れていないと、相談しづらい人もいますよね。
コミュニケーションがSlack上に移行することにはメリットもあるのですが、特に新入社員は戸惑ったと思います。
4月に入社した時点でリモートワークで、会ったことがない上司にいきなりSlackで「これを教えてください」とは聞きづらいですよね。
数年目の若手社員でも少しやりづらそうでしたし、オフラインのように「ねぇねぇ」と気軽に聞けるようになるまでには時間がかかりました。
───Slack上のコミュニケーションを活性化させるために、何か施策を行いましたか?
ありがたいことに、社内のメンバーが自発的に動いてくれました。最初はSlackの中で、業務に関係ない雑談だけをするチャンネルや新卒だけのチャンネルなどが生まれたんです。
そして最近では新卒のメンバーたちが人事と協力して、モーニングピッチやイブニングピッチ・LTのようなことをやっています。そのような形で自分の意気込みや状況をみんなでシェアするような場がどんどん増えていきました。
一人暮らしでリモートワークをしていると、人と話す機会が大幅に減ってしまいますよね。これらの取り組みは、新入社員以外にとってもすごくありがたい提案だったのではないのかと思っています。
───面白いですね。コミュニケーションが増えるような仕組みが現場から生まれているのですね。
話す機会を増やすと同時に、「褒め合う文化を作りましょう」と、Slackの中でポイントを贈る社内のボーナス制度も始まりました。
Hey!Tacoというツールを使っており、誰かにいいことをしてもらえたらお礼(タコス)を言って、相手はお礼を言われた回数によって商品券などが還元されるような制度です。
リモートワークだからこそ助け合える組織文化が必要だとみんなが感じて、現場のメンバーが自発的に動いてくれたというのは、管理部としてはとてもありがたかったですね。
リモートワークが定着した現場のリアルな声は?
───リモートワークに移行した結果、「出社していた頃からここが変わった」という声はどのようなものが多いですか?
通勤や訪問での移動がなくなることで「満員電車に乗らなくて済む」「8時間をフルに使える」というメリットは全社員が共通して実感していると思います。
特にマネジメント層はミーティングの量が多いので、移動を考慮せずに15分刻みで予定を入れられるから楽になったという話を聞きます。
───確かに、役職者ほど喜んでいる印象があります。
そうなんですよ。喜んでいる人って分かりますよね。
役職者に限らず、業務効率が上がるという面では、コミュニケーションがオンラインになることにもメリットも感じています。リモートワークでは報告・連絡・相談を文字としてストックできるので、集中したい時に話しかけられることがなく、手が空いた時に返事をすればよくなりますし。
───チャットツールへの移行は、悪いことばかりではないですよね。逆に、ネガティブな部分というか、気になっている点はありますか?
リモートワークに慣れないうちはパフォーマンスは落ちるものと考えていたのですが、やはり気になる部分ではありますよね。
Slack上ですと、たとえば進みが遅いとき上長本人はカジュアルな気持ちで「まだできてないの?」というコメントをしてしまうと、思った以上に重く受け取られてしまうことがあります。
一方で、実際にそのパフォーマンスの低下によって作業スケジュールに遅延が発生して、納品や検収に影響が出てしまう心配もありましたが、創業期から続けている週次レビューがうまく機能して、プロジェクトの進み具合には影響が無いように動けています。
───勤怠が乱れるといった問題もありますよね。
そうですね。以前と同じ方法で勤怠を管理するのは大変だと思います。
弊社ではたまたま4月から勤怠の報告をより厳密にしようという準備を進めていて、「1日に何時間働いて、この作業に数時間…」という風に上長に報告や承認をする形にシフトしたので、それもタイミングが良かったですね。
勤怠はもともとは東京五輪に向けた対策のつもりで準備していたもので、リモート移行のためにシフトしたわけではないのですが、上長も多少は勤怠管理がしやすくなったのではないかと思います。
───パフォーマンスやメンタルの面で、若手の方はどんな雰囲気ですか?
若手に限った話ではないですが、自宅に作業環境がない社員が予想以上に多いことが悩みですね。
───弊社でも「自宅には机と椅子がないから腰が痛い」という声があがっています(苦笑)。
インターネット環境がポケットWi-Fiしかないのでパンクしてしまうといった声も多かったですね。モバイル端末に関しては社用端末を急いで準備して、管理部で初期設定を済ませた上で各社員の家に配送しました。
あとは、「オフィスに置いてあるモニターや椅子などの備品は家に持ち帰っていい」というルールを作りました。
───それは面白い制度ですね。
自宅に十分なスペースがあれば大きいサイズのモニターなどを使えるようになるので、少しでも効率が上がるといいなと思っています。
「進捗の前に雑談から」など、オンライン会議にはまだ改善の余地がある
───いま課題に思われている点といいますか、リモートワークに移行している他の企業のケースを聞いてみたい点はありますか?
やはりセキュリティが一番の課題ですね。リモートワークが進むのと比例してリスクが高まるという話もありますが、逆に厳しくしすぎても効率が落ちますから、そのバランスが難しいですね。
たとえば会社の端末に関係のないアプリを入れないような端末制御などを実施するにしても、どの程度まで強くすべきかなどが難しいですね。他社さんはどんな風に制限しているのか、あるいは逆にどこまでを許容しているのかという線引きはいろいろ聞いてみたいです。
───目が届かなくなるからこそ、どこまで管理・マネジメントするかが課題になりますよね。
組織のマネジメントという点では、社内の情報共有がオンライン主体になるので、Webミーティングをする上でのTipsのようなものは他社の事例も聞いてみたいです。
───いま私はZoomで背景を入れて通話していますけれども、背景を設定しないように決めている企業もありますよね。
おっしゃる通りで、コミュニケーションの取り方はもっと工夫の余地があると思います。
たとえばミーティングの際は今まで以上に雑談を意識して入れています。いきなり「この件どうなっている?」と切り出すのではなく、まず「体調どう?」「天気がいいし、散歩とか行ってる?」など、関係のないことを話すような雰囲気です。
───弊社スタディストも、人事が各自に「大丈夫ですか?」といったコンディションチェックのアンケートを定期的に送るようになりましたね。逆に、これからリモートワークに移行する企業に「これはやったほうがいいよ」とアドバイスできることはありますか?
弊社では、クラウドツールの便利さを改めて感じました。たとえば営業メンバーは案件によってはギリギリまで外に出ることもあるので、勤怠管理のTeamSpiritでモバイルアプリから打刻ができる便利さは実感しました。
あとは、入退社や異動が多い4月からのリモートワーク移行だったこともあり、クラウド上に動画で業務マニュアルを整備したことは非常に好評でした。
従来のPowerPointのマニュアルのままですと、Slack上で共有してチャットで問い合わせ・教育をすることになっていたはずです。しかし、「このページで書かれている〇〇って、〇〇じゃダメなんですか?」などとチャット上で聞かれても、どこでつまずいているのかを特定するだけで苦労しますよね。
───動画のマニュアルだと、専門用語などを理解していなくてもビジュアルで見たまま作業すればいいですもんね。
はい。動画マニュアルを整備したことで、問い合わせ対応のコストはかなり減らせたと思います。従来より導入していた貴社のTeachme Bizの活用が加速して、業務の引き継ぎや顧客とのコミュニケーション部分でかなり役に立ちましたね。
───ありがとうございます。Teachme Bizのお話は別途改めて詳しく伺わせてください(笑)。
(toBeマーケティングさんでのTeachmeBiz活用事例を詳しく伺った記事はこちら)
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