製造業のヒューマンエラー・ポカミス対策とは? 原因やエラーの種類も解説

最終更新日: 2022.10.14 公開日: 2022.07.11

ヒューマンエラー

ヒューマンエラーとは、「人の手によって起こされる間違い・失敗」のことです。それぞれは小さなミスであったとしても、製造業では人的・金銭的に大きな被害をもたらす事故につながるリスクがあるため注意が必要です。人が作業する限り発生を100%防ぐことは不可能ですが、原因を把握し、適切な対策を行うことで最小限に抑えられます。

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製造業におけるヒューマンエラーとは

ヒューマンエラーとは、「意図しない結果を生じる人間の行為」とJIS Z 8115:2000に定義されています。
(参照:https://kikakurui.com/z8/Z8115-2000-01.html

例えば、データ入力時における入力間違いや、BccとCcを間違えた状態でのメールの一斉送信、車のブレーキとアクセルの踏み間違いなど、不注意や思い込み・勘違いなどの人的要因から生じてしまうミスがヒューマンエラーに該当します。

製造業においては、ヒューマンエラーによって製品不良を出すことや、損失を出すことをポカミスと呼びます。部品が入った箱のラベルが判別しにくくピッキング間違いを起こしてしまう、設備のオペレーションミスで怪我をしてしまう、といったことがポカミスとして挙げられるでしょう。

ヒューマンエラーやポカミス自体は小さなものでも、結果的に大規模な事故につながったり、それにより膨大な損害が発生したりする可能性もあります。そのため、たかがミスと侮らずに対策を行うことが重要です。

ヒューマンエラーの種類

ヒューマンエラーは大きく分けて、意図的なものと意図的でないものがあります。それぞれ詳しく解説します。

意図的なヒューマンエラー

意図的なヒューマンエラーとは、決められたルールをあえて守らなかったことで起こる間違い・ミスのことです。「あえて型」と呼ばれることもあります。

作業の手抜きや手順の省略などが該当します。

意図的でないヒューマンエラー

意図的でないヒューマンエラーとは、本人は意識しないまま、ついうっかりと起こしてしまう間違い・ミスのことです。「ついつい・うっかり型」と呼ばれることもあります。

不注意による見落とし、指示の聞き間違いなどが代表的な例です。

このタイプはさらに、決まり事を忘れてしまう記憶エラー、聞き間違えや見間違えなどの認知エラー、判断を誤る判断エラー、手順を間違える行動エラーに分類できます。

製造業でヒューマンエラー・ポカミスが発生する主な原因

ヒューマンエラーは記憶、認知、判断、行動の誤りによって引き起こされます。製造現場においてヒューマンエラー・ポカミスが発生する主な原因には、以下の6つが挙げられます。

見落としや思い込み

データ入力や機械的な作業など、単調な定型業務は見落としや思い込みなどの認知エラーを起こしやすい業務のひとつです。同じ作業を続けていると集中力が切れること、次第に作業に慣れてきて手順を確認しなくなったり、指示書に記載された内容を見落としてしまったりすることが要因です。

経験が長い担当者に起こりがちなのが、「今までこのやり方で大丈夫だったから」という思い込みによるエラーです。ルール違反であるにもかかわらず、過去に同じ手順で問題がなかったため違反を続けてしまうことで、大怪我や重大な事故を引き起こします。

自分はベテランで慣れているから、いつもと同じ作業だからという思い込みや気のゆるみがミスを誘発します。

情報伝達ミス

製造現場では、納期や作業指示を正確に現場に伝えることが重要です。伝え忘れや聞き漏らしなどの情報の伝達ミスがあると製品不良につながるばかりか、納期に間に合わない、個数不足などによる信頼失墜のリスクもあります。

情報伝達がうまくいかない背景には、伝達方法が統一されていないことが挙げられます。ミスを減らすために、マニュアルを作成して正しい情報が確実に伝わる仕組みを整えましょう。

組織風土

そもそも組織全体が日頃から適切な品質管理を行っていない、ルールを守らないといった風土だと、作業ミスが発生しやすくなります。

このような組織風土が醸成されてしまう背景には、経営層や管理職がヒューマンエラーについて深く理解しておらず、問題を重視していないことがあります。また人手不足による労働時間・業務量超過で現場担当者が自分の作業だけで手いっぱいになってしまい、長期的な視点でミスを防ぐ対策を行えないことも背景として考えられるでしょう。組織全体でルールの遵守に対する意識を向上し、ヒューマンエラー防止の重要性を認識することが必要です。

教育・指導不足

新入社員や経験年数が足りない担当者が作業を行うと、不慣れなことから判断エラーや行動エラーが起こりやすくなります。これは作業に必要なスキルを身につけていないことが主な原因のため、適切な研修や指導を行うことで防止できます。

また経験年数が短い担当者は安全に対する意識が低いことも、人為的なミスを発生させる一因です。「集中力が続きにくい性格なので適度に休憩をはさむようにする」など、個別の性格傾向に合わせて安全項目の設定を行うのも効果的です。

単独での安全確認

一人で安全確認作業を行うと、どうしても見落としや作業間違いが起こりやすくなります。単独ではなく、ほかの人にも同じ内容を確認してもらうダブルチェック体制にすることで、本人が見落としてしまっていた確認漏れやミスを発見しやすくなります。

ただし注意したいのは、「単にダブルチェックをすればよい」わけではない点です。気のゆるみがあると、「ほかの人がきちんとチェックしてくれるだろう」と甘く考えてしまい、結果的にチェックがおろそかになる可能性があります。そうならないために、あらかじめチェック手順を決めておく、確認すべきポイントをまとめたチェックリストを用意するなどの対策が有効です。

作業環境や設備

現場が整理整頓されていない、設備のメンテナンスが適切に行われていないといった作業環境の問題もエラーを誘発する要因です。

製造現場では「5S」と呼ばれる職場環境維持の活動があります。これは整理、整頓、清掃、清潔、しつけを表す用語で、の削減や効率化、事故防止を目的としています。5Sに取り組むことはヒューマンエラー防止にも効果的です。

ヒューマンエラー・ポカミスの例

現場で起きたヒューマンエラー・ポカミスの例を2つ紹介します。どちらもちょっとした不注意が甚大な被害をもたらした事例です。

誤発注・誤出荷

予定とは異なる商品・個数を発注してしまう誤発注や、注文とは異なる商品・個数を出荷してしまう誤出荷は、主に認知エラーによって発生します。

もっとも有名な例のひとつが、ある証券会社の担当者が起こした誤発注です。これは担当者が「1株で61万円の売り」として注文すべき箇所を、うっかり「1円で61万株の売り」と間違えて注文してしまったことで、およそ400億円という膨大な損失が発生した事例です。

誤発注は上記のような損失のほか不良在庫に、誤出荷は顧客からの信頼喪失や損害賠償につながります。

誤発注・誤出荷を防止するには、発注・出荷前に複数の担当者がチェックする対策が有効です。

作業中の怪我

いつも同じ作業をしていると集中力が途切れて思わぬ怪我をすることがあります。

ある化学工場では、メタノールを加熱している途中で担当者が誤って蒸留釜のバルブを全閉してしまい、圧力上昇で装置破裂、メタノールへの引火による爆発火災が発生しました。これは本来開放しておくべきバルブを担当者が「開放してあるはず」と思いこんだことで発生した事故で、2名が負傷したほか機器破損など経済的な被害も大きなものでした。

ヒューマンエラーは場合によっては大怪我につながることがあるため、注意が必要です。

ヒューマンエラー・ポカミスをなくすための手順

製造現場でヒューマンエラー・ポカミスをなくすための4つの手順を紹介します。

1. 情報収集

まず自社でどのような間違い・ミスが発生したのかを明らかにすることが重要です。現場の業務工程をいくつかに分割し、各工程でどのような間違い・ミスが発生したのかをリストアップします。

ポイントは、実際には事故などが起きていなくても、危うく事故になりそうだったというヒヤリハットもきちんと把握することです。

2. 原因の分析

リストアップされた間違い・ミスのうち、すでにルールやマニュアルなどの対策が準備されているものについては、その内容が適切だったかどうかを見直しましょう。現状のルールに問題があったり、マニュアルが理解しづらいものならば修正の必要があります。

前例のない間違い・ミスだった場合は、「何が原因で発生したか」を探ります。その原因を元に、新しいルールを制定していきます。

3. 対策の実施

問題の発生原因を分析したのち、再発防止のための対策を実施します。

対策案としては、主に「自動化などにより人が関わる余地を減らす」「問題の要因を排除・低減する」「ミスが起きないような仕組みをつくる」「被害が最小限になるようにする」といったものがあります。

たとえば「お客様からの注文を聞き漏らして間違えてしまう」という問題が発生するのであれば、「スマホからお客様自身が注文できる仕組みをつくる」といった対策が考えられるでしょう。

挙げられた対策案について、実現可能性や費用対効果を考慮して、実施する対策を決定します。

4. 周知・徹底

実施する対策は、担当者がきちんと行うよう、マニュアルを整備したうえでルールを周知します。さらなる改善などでルールや作業手順が変更された場合は、作業者全員に変更点の周知を徹底するようにしましょう。

決められた手順で作業が行われているかを、管理者が定期的にチェックすることも重要です。

製造業におけるヒューマンエラー・ポカミスの対策方法

どんなに気を付けていても、ヒューマンエラーをゼロにすることはできません。しかし適切な対策を実施することで、問題の発生や被害を最小限に抑えられます。

ポイントは「担当者を訓練して間違えないようにすること」、また、「そもそも間違えないような仕組みをつくること」です。

製造業ではポカヨケと呼ばれる、ポカミスを起こさないようにする仕組み・装置があります。製造ラインに規格外の製品や異品が流れてきたら検知してアラートで知らせるシステムは一例ですが、これは「そもそも間違えないような仕組みをつくる」対策に該当します。

ヒューマンエラー・ポカミスの対策方法を5つ紹介するので、実践できそうなものから取り組みましょう。

KY活動の実施

製造現場で起こる可能性があるリスクを事前に把握し、発生しないように安全確認を行う活動のことを危険予知活動(KY活動)と呼びます。

具体的には、現場で作業を行う前に考えられる危険を洗い出し、危険ポイントを全員で共有します。そのうえで対策が必要な箇所を考え、確認作業の方法や行動目標を決めて安全に作業できる職場環境を整えます。現場担当者の危険に対する意識を高め、安全な作業環境を整備することが目的です。

災害の原因は9割以上がヒューマンエラーだといわれており、KY活動は現場の安全維持・災害予防対策として有効です。
(参照:https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/shakai_e.pdf 41P)

作業者スキルの向上

作業担当者の理解・能力向上は、ヒューマンエラーの予防につながります。経験や知識が不足している担当者に対して、安全対策研修や訓練を行う対策が有効です。

コミュニケーションの活発化

日常的に会話が少なく人間関係が円滑でない職場では、情報伝達でトラブルが起きがちです。担当者同士、また管理者と担当者間でコミュニケーションを取ることで、指示伝達ミスなどのヒューマンエラーを防げます。

同じチームの一員だという意識を持ち、担当者間で経験や知識、失敗を防ぐポイントなどを共有することでミスの軽減が期待できます。

確認作業の習慣化

作業中、または終了前には確認作業を行うようにするのもよいでしょう。

前述のKY活動としても知られるのが指差し呼称です。これは作業のところどころで、「○○よし!」と対象物に対して指さしながら声を出して確認する方法です。国鉄が発祥とされ、駅のホームで駅員が指差し呼称を行っているのを目にしたことのある方も多いでしょう。この確認方法は緊張感を高め、心理的に誤判断、誤作業を防止する効果があります。

マニュアルの整備

作業手順書や作業チェックリスト、引継ぎ資料などのマニュアルが用意されていなければ新規に作成し、すでにマニュアルがあるにもかかわらず間違いが多発する場合には、見直しと再構築を行います。

マニュアル作成になかなか時間を割けない、高品質なマニュアルを作成したいという場合は、マニュアルが簡単に作成できるツール・サービスを利用するのも効果的です。スタディストが提供するマニュアル作成・共有システム「Teachme Biz」はテンプレートに画像とテキストを入れるだけで簡単にマニュアルを作成できるのが特徴で、タスク配信や検索機能など社内で共有しやすいのが強みです。マニュアル作成を効率化する手段のひとつとして検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

製造業にとってヒューマンエラーは大きな事故や損失を発生させる原因となるものであり、未然に防止する必要があります。間違い・ミスの再発防止のためには、発生原因を明らかにし、自動化やマニュアル整備、教育訓練など適切な対応を講じることが求められます。経営層だけでなく、現場で働く担当者自身が安全意識を高めることが重要です。

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