【カンファレンスレポート】「ルーティン×経営」を再考する~世界標準の経営学でもルーティンが重要視されている理由とは?~(後編)

最終更新日: 2022.06.03 公開日: 2022.03.10

本記事の前編では、最先端の経営学の研究・知見の普及に取り組まれている早稲田大学大学院 入山教授をお招きし、ルーティンの経営における価値や可能性について伺いました。後編にあたる本記事では、「知の探索」を具体的に加速させる方法やルーティンを浸透させるコツなど、前編のお話をもとに様々な質問に回答いただきました。

なお、前編を未読の方は、ぜひ「【前編】「ルーティン×経営」を再考する~世界標準の経営学でもルーティンが重要視されている理由とは?~」からご覧くださいませ。

コロナ禍で移動が難しい今、「意図的な雑談」が知の探索を助ける

スタディスト 木本(以下、木本):「発想力は移動距離に比例する」というお話がありましたが、コロナ禍の今、移動以外にも「知の探索」におすすめの方法はありますか。

早稲田大学大学院 入山さん(以下、入山):たくさんあります。コロナ禍は残念なことですが、その一方でZoomやTeamsといったオンラインコミュニケーションツールが普及しましたよね。極端な話、今は意図的に能動的に行動すれば、世界中の誰とでも会える時代です。ですので、いろんな人と会って交流するルーティンを作っていくのは、とても大事だと思います。

木本:身近な「知の探索」の例として、喫煙所での交流が挙げられると思うのですが、いかがでしょうか。

入山:おっしゃる通りです。私も「日本では喫煙所の文化が実は重要だった」ということをよく申し上げてまして。喫煙所って、普段会わないさまざまな部署の人が集まってきて、リラックスしながらしゃべりますよね。そこでは、「お前の部署、今そんなことやってるの」とか「うちの営業、いまそんな顧客と付き合ってるの」とか、そういう話が出ていて、組織全体のナレッジシェアになっていたわけです。
例えばコロナ前ですが、Googleさんは社内に豪華なカフェテリアを作って、意図的に喫煙所の役割を生み出すようにしています。今はコロナ禍でそういう交流がなくなってしまったので、オンラインでそういう時間を作るべきですね。

木本:あえて交流の時間を作るんですか。

入山:はい。例えば、私がアドバイザーをしているフィラメント社では、「フィーカ」という雑談タイムを意図的に作っています。週に2回ほど、決まった時間に必ず集まって、なんでもいいからだらーっとしゃべるんです。スマホを見ながらでもいいですし、「最近あのお客さんがさあ」とか「うちの奥さんが昨日さあ」とか、そういう話で構わないので、接点を作り続ける。そしてそのナレッジシェアが組み合わせを生めば、イノベーションに近づきます。IT化やリモート化が進むことで、ルーティンの本質は変わりませんが、その形は変わっていくでしょう。

「変化は慣れ」 戦略に合うルーティンを守り抜くことが大事

木本:ルーティンの形が変わっていくとなると、今後ルーティンに関わる人材も多様化していくのでしょうか。

入山:多様化していくのではないでしょうか。例えば、知の深化型の方が探索的なことをなぜできないのかというと、理由は2つあります。1つは単純に忙しいからです。ただここは、デジタル化によって解決されつつあるんですよね。もう1つは、失敗すると怖いからです。そして、それを解決するのが習慣化、ルーティンなんです。「変化は慣れ」ですから。

例えば、会社から帰る時、毎日降りる駅を1つ変えてみるんです。そうすると、「ここにこんな店があったのか」「こんなルートでも帰れるのか」と楽しくなってくる。変化を習慣化していくと、慣れて「もっとやってみよう」と思えるようになるんですね。素晴らしい経営者やイノベーターさんは、変化を圧倒的に繰り返しているので、だからこそ日本や世界を変えていけるのかなと思いますね。

木本:ルーティンと一言で言っても、「余裕を持つためのルーティン」「変化に慣れるためのルーティン」と、いろんな役割を意識するのが大事なんですね。

入山:おっしゃる通りです。だからこそ、組織の文化となるルーティンは、戦略的に作る必要があります。大事なのは、「自社の戦略に合った習慣・行動は何か」ということをビジョンや戦略から考えて、それに合った習慣・行動を意図的に作っていくことです。そして、しっかりと行動に落とし込んで浸透させていくことです。ですから、行動指針は少ない方がいいですね。30もあると守れないので。最適なバリューの数は7~8個くらいがよい、という経営学の研究結果もあります。大事な行動指針を徹底的に考え、決めたら絶対に守り抜くことで、強い企業文化が作られていきます。

木本:ありがとうございます。マニュアルに関連したところで言うと、ルーティンをどう浸透させていくのかという手段にも、ルーティンがありそうな気がするのですが。

入山:あると思います。僕は2種類あると思っていて、1つはとにかく行動することです。特に、行動指針を決めたら、社長がまず一番最初に、絶対に指針を守ることが大事です。社長が守れば部長も守るし、部長が守れば課長も守りますよね。そうして、現場も指針を守れるようになります。

もう1つは、デジタルツールを使うことです。これはスタディストさんのセッションだから言っているわけではなく、デジタルツールの方がさまざまな手段でアクセスしやすく、伝わりやすいからです。行動指針が決まったら、それを習慣化させるツールとして、ぜひデジタルツールをうまく使ってほしいですね。

木本さん:確かに、デジタルツールを使えば、数十年前と比べて情報量や頻度、伝わり方、アクセスのしやすさなど、圧倒的に浸透しやすい環境を整えられますね。

ルーティンは戦略! 泥臭く守ることがイノベーションへの近道

木本:最後に、皆様に一言メッセージをお願いいたします。

入山:ルーティンは戦略です。ですが、日本企業はルーティンをなんとなくこなしているところが多く、なんとなくのルーティンには意味がありません。ルーティンを戦略的に決めて、決めたら徹底する。そうして浸透させていくことが大事です。ただし、習慣化には時間がかかります。それをとにかく徹底して地味にやり抜くことが重要です。

意外かもしれませんが、泥臭いことを泥臭くやるのがグローバル企業で、海外のトップ企業や一流ベンチャーにとっては普通の話なんです。ぜひ、行動指針を習慣化するところまで、徹底していただければ嬉しいです。

最後に改めて強調したいのですが、ルーティンは社員をがんじがらめにするためのものではなく、自由に活動できるようにするためのものです。自由に活動するためにもぜひ、「これだけは守りましょう」というルーティンを決め、活用していただければと思います。

木本:ありがとうございます。今日お話にも出てきた『世界標準の経営理論』に関連して、入山さんはダイヤモンド・オンラインで動画連載もされておりますので、よろしければそちらもご覧ください。改めまして入山さん、本日は貴重なお話、ありがとうございました。

入山:ありがとうございました。

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