電子マニュアルとは?紙のマニュアルとの違いや作り方のポイントを解説
ペーパーレス化の推進やテレワークの浸透などがあいまって、マニュアルの電子化を検討している企業も多いのではないでしょうか。とはいえ紙のマニュアルの分量が膨大で、なかなか電子化に踏み切れないケースもあるかもしれません。
紙も電子も、最も重視すべきはマニュアル本来の目的を果たせているかどうかです。その上で本記事では、「紙にもメリットはあるが、今後は電子マニュアルにすべき」と結論。まずは両者のメリット・デメリットについて考察し、電子マニュアルを選ぶべき理由と作成のポイントについてご紹介します。
目次
電子マニュアルとは
電子マニュアルとは、従来は紙で作成することが多かったマニュアルをデータ化し、ネットワーク上で運用できるようにしたものです。PC、スマホ、タブレットなどの端末で作成・閲覧・編集まで全て行えます。
電子マニュアルのデータ形式はさまざまで、PDFやHTMLなどをはじめ、電子書籍で閲覧する形式や、動画そのものをマニュアルとして運用する方法もあります。
現在もマニュアルをワードやPDFで作成しており、それを紙に印刷しているというケースがあるかもしれませんが、例えば既存のPDFデータをそのままネットワーク上で使用するなら、それも電子マニュアルだと言えます。
電子マニュアルのメリット
1.作成や更新、変更、追加など編集が容易
電子マニュアルは、データ上のみで作成や改訂にまつわる作業が全て完結します。画像の追加や文言の差し替えなど、細かい部分も手を入れやすいでしょう。完成したマニュアルはデータで配信すればOKなので、配布の手間はほぼありません。
2.膨大な情報も検索しやすい
企業によっては業務内容が膨大で、紙に印刷すると数百ページにも及ぶマニュアルもあるでしょう。こんなとき、データならほとんどの場合ファイル名やテキストをキーワード検索できるため便利です。マニュアルの目次から手作業で探し出す手間はかかりません。
3.端末さえあればどこでも閲覧可能
データは簡単にコピーして、端末で持ち運び・閲覧できるのも利点です。サーバーにアップロードされた電子マニュアルであればそのままサーバー上で閲覧できますし、自分の端末にダウンロードも可能です。
仕事場ではもちろん、自宅など場所を選ばずマニュアルを閲覧できるので、テレワーク下でも利用が簡単です。紛失したり、汚してしまったりするような恐れもありません。仮にデータを削除してしまっても、コピーであればすぐに復旧できます。
電子マニュアルのデメリット
1.デバイスがなければ閲覧できない
上記の通り電子マニュアルはどこでも持ち運べるというメリットがありますが、このためには閲覧や持ち運びに適した端末が必要です。そもそもPCやタブレットなどを持っていない人であれば、閲覧環境を整えるために一定のコストがかかります。
2.人によっては見づらさを感じる
現代は多くの人がスマホを所持しており、液晶画面を眺めることも日常的になりました。とはいえ、業務内容を確認するために液晶画面を長時間じっくり見つめるのは、人によっては目が疲れてしまうなど苦痛が生じます。紙の本を読むのとは勝手も違うため、「液晶画面の文字は頭に入りづらい」という人も一定数存在します。
3.複数ページを同時に閲覧するのが難しい
例えば「AとBの作業工程を見比べたい」といった場合、データでは切り離しなどが自分でできないため、閲覧性の点でデメリットが生じることがあります。特にマニュアル自体に「詳しくは関連ページを参照してください」といった記載があると、行き来が面倒です。
PCであれば画面が大きいので、データを複数のウィンドウで開きそれぞれ異なるページを表示することも可能ですが、やはり若干手間です。
紙のマニュアルのメリット
1.印刷さえすればどこでも閲覧可能
電子マニュアルと同様、紙のマニュアルも持ち運びには便利です。必要なのは印刷されたマニュアルそのものだけなので、電子マニュアルのようにネットワーク環境や閲覧のためのデバイスは不要です。
ただし、数百ページにも及ぶような大量のマニュアルでは、この利点は損なわれてしまいます。
2.自由に書き込み、付箋も貼り付けられる
紙のマニュアルは読んでいて何か気付いたことや覚えておきたいことがあれば、直接メモを書き込めます。重要な部分はマーカー線を引いておくなど、自分のやり方に合った使い方も可能です。
現在は電子マニュアルでも、iPadをはじめとした一部のタブレット端末を使えば書き込みができるケースもありますが、環境が限られるかつ端末自体も高額なため、まだまだ汎用的とは言えません。
3.複数ページの同時閲覧やページの行き来がしやすい
紙は実際に手に取って閲覧できるマニュアルなので、冊子が複数あれば関連ページを参照しやすくなります。マニュアルが一冊でも、メインで見ているページを開いておいて、別のページをちらっと見る、といった動きができるのも紙ならでは。電子ではこうした確認が直感的にやりづらく、不便に感じることがあるでしょう。
紙のマニュアルのデメリット
1.社員数やマニュアルの量によって印刷コストがかさむ
紙のマニュアルは、分厚いマニュアルであればあるほど一冊あたりの印刷コストがかさみます。社員に配布するなら、社員数分だけ印刷費もかさむことになります。一度の配布で終わりではなく、改訂があれば刷り直しが発生するのも難点です。
かといってコスト削減のために一つのマニュアルを複数人で兼用しては、書き込みや持ち運びがしづらく、紙のマニュアルのメリットを発揮しきれません。また「少しの訂正だともったいないから……」と業務の修正をまとめて行うと、マニュアルの改訂が遅くなってしまいます。
2.変更やアップデートが手間
上記でも触れた通り、紙のマニュアルは改訂に非常に手間がかかります。改訂をしたら再度印刷をして社員全員に再配布が必要ですし、配布後は古いマニュアルをシュレッダーにかけてもらう、変更点や新しい運用方法を伝えるなど、丁寧なアナウンスも必要です。仮に修正内容に誤りがあったら、即座に印刷のし直しになり訂正アナウンスの手間もかかるので、改訂には常に緊張感を強いられます。
苦労して改訂をしても、紙だと最新バージョンのマニュアルを社員が使ってくれるとは限らない、また使ってくれていてもその状況を把握しづらいのが懸念点です。
3.情報を検索しづらい
マニュアルは一度読んで終わりではなく、何度も確認をして手順を頭に入れる必要があります。特に新人の頃は、何か不明点が出てきたらまずはマニュアルを参照したいものです。
しかし膨大な紙のマニュアルだと、該当の箇所を探すのは非常に面倒です。結局手短に済ませるために人に聞いてしまうなど、どちらにしても社員に負担がかかります。
紙はNG?改めて確認したい「マニュアルの目的」
さて、簡単に紙と電子両方のメリット・デメリットを簡単におさらいしてみましょう。
電子マニュアル | 紙のマニュアル | |
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作成・更新のしやすさ |
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検索のしやすさ |
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持ち運びのしやすさ |
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複数ページの同時参照 |
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書き込みのしやすさ |
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配布コスト |
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上記を踏まえ、「電子にもデメリットがあるなら、紙のままでいい」と思う方もいるかもしれません。
しかし、紙のマニュアルを運用し続ける上では注意が必要です。本来マニュアルで解決したい会社の課題を解決できているかどうか。ここに注目しましょう。
マニュアルが本来解決したい4つの課題例
マニュアルは業務内容の手順を体系的に文書として書き記したものです。こうしたマニュアルが必要とされるのは、以下の課題を解決するためだと考えられます。
- サービス品質のバラつき
- 社員教育や研修に時間がかかる
- 店舗や各部署から管理部門への問い合わせ対応コストが膨大
- 新規業務がなかなか浸透しない
人に言われたり一度研修を受けたりしただけではすぐに忘れてしまう業務内容を、高い精度で再現する。紙のマニュアルでは、これらを実現できない可能性があります。
紙のマニュアルがネックになるのは「運用のしづらさ」
上記4つの課題に共通するのは、「標準化された業務手順を正しく伝えて、業務をスムーズに進行する必要がある」ということです。そのためにはマニュアルを常に最新の状態に保ち、なおかつ誰にでもわかるような内容にしておかなければいけません。
この視点で、紙のマニュアルには2つの弱点があります。一つは改訂に手間がかかり、常に最新情報を伝えるのが難しい点。もう一つは、紙で伝えられる情報に限界がある点です。
特に後者は、ここまでにご紹介した紙のデメリットでは触れませんでしたが、実は重要な問題です。
例えばA4用紙1枚の中に書き出せる情報量は、ある程度決まっています。無理に詰め込もうとすれば文字や画像が小さくなって見づらくなりますし、読みやすさを重視して丁寧に説明しようとすれば、マニュアル自体が分厚くなり運用しづらくなります。
そもそも現在運用しているマニュアルでは最新の業務内容を正確に社員に伝えることが難しいからこそ、電子マニュアルを検討している企業が増えているのかもしれません。昔はそもそも選択肢がなく紙のマニュアルを運用するしかありませんでしたが、今はより便利な電子化を検討すべきでしょう。
効果が出る電子マニュアルを作成するポイント
電子化を図るにしても、紙のマニュアルをただデータに移すだけでは意味がありません。例えば「PDFデータを印刷するのをやめ、社内の共有フォルダからマニュアルを参照してもらうようにする」というだけでは、電子マニュアルのデメリットだけが際立つ結果に終わってしまうでしょう。
データという利点を最大限発揮するためには、以下のようなポイントを押さえましょう。
ポイント1.手順を細かく区切り明確にする
紙から電子マニュアルに移行するのは、業務手順を棚卸しする最適なタイミングです。作業の流れを改めて洗い出し手順を細かく区切ることで、業務内容をより明確にしていきましょう。
そのためには、ステップ形式でマニュアルを作成できるツールを選ぶのが最適です。
ポイント2.画像や動画を使ったマニュアルにする
せっかく電子化をしたのに、肝心の内容が専門用語たっぷりのテキストだけでは、電子の強みをほとんど活かせません。
画像はもちろん動画なども用いれば、これまで紙では伝わらなかった業務内容の細かな手順やニュアンスまで、解像度高く伝えられます。
ポイント3.検索しやすくする
マニュアルの検索性にも気を配りましょう。例えばPDFでは、書き出しの仕方によってテキスト検索できない場合があります。ファイル名や保存場所もバラバラでは、結局目視で見つけなければならなくなるでしょう。HTMLで作成する場合も、きちんとシステムを作り込まないと上手く検索できず不便です。
全てのマニュアルから該当ワードを検索し、目当ての内容を見つけられるようにすることが重要です。
ポイント4.クラウドで運用する
マニュアルをしっかり社内浸透するなら、クラウドを用いるのがベターです。例えば個人のPCの中にマニュアルの元データがある状態だと、それをアップロードしたりコピーしたりする際に、最新のデータかどうかがわからなくなる可能性があります。誤送信してしまうなど、セキュリティ上でも不安が生まれるでしょう。またサーバーにアップされたものをダウンロードする形だと、紙のマニュアルと同様、社員が最新のものを使っているかを把握できません。
クラウド上でマニュアルを作成・編集・閲覧までできるようにすれば、常に社員全員が最新のマニュアルを確実に参照できます。
マニュアルを更新した際に通知してくれるツールを用いれば、社員が更新状況の把握もしやすくなりますし、アナウンスの手間もありません。
ポイント5.編集が簡単なツールを選ぶ
何か変更やアップデートがあった際に、すぐにマニュアルを編集できる環境を作ることも重要です。例えばPDFやPPT、HTMLなどで編集を行うには、専門の知識が一定量必要です。一部の人にしか扱えないツール・システムでは、マニュアルの更新が滞る可能性があります。
ポイントは、誰でも簡単な操作で更新できること。極力シンプルに運用できるツールを採用しましょう。
まとめ
紙と電子のマニュアルには、それぞれメリット・デメリットがあります。ただし、紙では本来マニュアルで解決したい課題をクリアできないという懸念が出てくるため、本記事では電子化をおすすめしました。大切なのは、ただ単に紙を電子化するのではなく、データならではの強みを生かした電子マニュアルを改めて作成することです。
Teachme Bizなら今回ご紹介したような電子マニュアル作成のポイントを全て押さえた上で、簡単に作成が可能です。電子マニュアルへの移行を考えている方は、ぜひTeachme Bizをご検討ください。