作業手順書の作り方|わかりやすい内容にするためのコツも紹介
作業手順書とは、特定の作業を正確かつ安全に実施できるようにまとめた書類のことです。この記事では、手順書の作成を検討中の経営者や現場責任者に向けて、手順書の作り方、わかりやすい内容にするためのコツ、手順書を活用するメリット、留意点などを解説します。
目次
安全・正確な作業のための作業手順書とは?
そもそも作業手順書とは、作業者が安全かつ正確に作業を進められるように手順をまとめた書類のことで、企業によっては「SOP(Standard Operating Procedures・標準作業手順書)」と呼ばれています。手順書には、主に以下のような内容が書かれています。
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【主な記載内容】
- 作業の名前、目的
- 必要な人員数、機械、材料
- 作業手順
- 所要時間の目安、合格ライン
- 動作時のポイント、注意事項(過去の不具合履歴)
- 予想されるトラブルの内容、対処法
このように手順書には、作業者が行うべきことが簡潔に整理されているので、認識のズレによる作業ミスや遅延のリスクを防げます。また、手順書を作成することで、作業者全員が同じ手順で円滑に作業できる体制を整えられるため、現場全体を統括しやすくなります。
ちなみに、業務や作業に関する情報をまとめたものに「マニュアル」がありますが、手順書とマニュアルは、作成する目的や役割が異なるため、区別されることが一般的です。手順書とマニュアルの違いについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
マニュアルと手順書の違いは?作成手順や記載項目など5つの違いを解説
作業手順書の作り方
作業手順書は、以下の手順に沿って進めることで、スムーズに作成できます。
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1. 作成の目的を明確にする
2. 作成体制を整える
3. 手順書に示す範囲を選定する
4. 作業内容をタスクレベルで細分化する
5. タスクを手順書へと落とし込む
6. 再現性のある内容かを確認する
それぞれの工程について詳しく解説します。
1. 作成の目的を明確にする
目的が不明瞭な手順書は、活用されず形骸化してしまうことがあります。そこでまずは手順書を作成する目的を明確にしましょう。例えば、特定の作業で歩留まり率が低い場合、「品質管理の体制」や「従業員の知識・技術不足」などの課題が考えられます。このような課題を解決することが手順書を作成する目的として明確になれば、書くべき内容の方向性も自然と定まってきます。
2. 作成体制を整える
手順書を作成するにあたり、体制を整えることも重要です。具体的には、誰が作成者、確認者、承認者になるかを、ワークフロー形式で決めましょう。
このとき、現場のコンセンサスを得るためにも、手順書の作成者と確認者は現場の担当者や監督者が担い、承認者は品質管理の観点から組織の上層部が行うのが理想です。これにより、作成がスムーズに進むだけでなく、組織の統制も図れます。
3. 手順書に示す範囲を選定する
手順書は特定の作業に焦点を当てて作成するものです。そのため、作業内容を洗い出し、どの範囲を手順書にするのかを決める必要があります。例えば、問題が発生しやすい作業のみを手順書にするのか、すべての作業を網羅するのかを検討しましょう。
4. 作業内容をタスクレベルで細分化する
手順書に記載する範囲が決まったら、作業内容をタスクレベルで細分化します。例えば、前述した工程3で「組み立て工程の手順書を作成する」と決定した場合には、「部品をそろえる」「部品の過不足を確認する」「工具を準備する」「部品を機械にセットする」など、作業の順番に沿ってタスクを書き出します。
タスクの書き出しは、実際の作業をシミュレーションしつつ行うことで漏れが少なくなります。また、タスクを書き出す際には、その作業で使う部品名や工具名、作業時の注意事項、作業中に懸念されるトラブルなども併せて記載すると、より実用的でわかりやすい手順書になります。
5. タスクを手順書へと落とし込む
タスクを書き出したら実際に手順書を作成します。手順書を作成する方法としては、WordやExcel、PowerPointなどのソフトウェアを使用するのが一般的です。また、専用の作成ツールを活用すれば、より効率的に手順書をまとめることも可能です。
タスクを手順書に落とし込む際は、作業の流れに沿って手順や確認事項を整理し、分かりやすく記載することが重要です。この過程で、作業手順の中に無駄な動作や不要な工程が含まれていないかを見直すことで、実際の作業そのものの効率化にもつながります。
6. 再現性のある内容かを確認する
再現性のない手順書は、現場で活用できません。再現性のある内容にするためには、現場の従業員に完成した手順書をトライアル運用してもらい、作業手順に漏れはないか、わかりにくい部分はないかなどをフィードバックしてもらいましょう。またこのとき、熟練者と初心者の両方にトライアル運用してもらうと、経験スキルに左右されず、誰でも同品質に作業できる内容かを確認できます。
必要な修正を行って手順書が完成しても、そこで終わりではありません。作成後も定期的に現場から手順書に関するフィードバックを集め、手順書をアップデートしていくことで、さらに使いやすい手順書になります。
わかりやすい作業手順書にするためのコツ
手順書のわかりやすさ次第で、作業のスムーズさや生産性は大きく変わります。手順書を作成する際は、以下の3つのコツを意識しましょう。
誰もが正確に作業ができるよう平易な内容にする
手順書は、誰もが迷わず作業を実行できる内容にすることが重要です。熟練者が作成を担当する場合には、読む人と知識量が異なることを念頭に置き、初心者の視点に合わせた表現を心がけましょう。
具体的には、専門用語の使用をなるべく避けることが重要です。専門用語が多用されていると、業務経験がある従業員でも理解するのに時間がかかる場合があります。専門用語の使用を避けられない場合には注釈を使う、もしくは略称は控えて正式名を記載するなど、誰でも手順書を正確に理解できるよう工夫しましょう。
また、見た目の読みやすさにも配慮し、直感的に理解しやすい手順書を目指しましょう。長文が多く情報量が多い手順書では、作業のイメージがしにくく、内容も煩雑になりやすいです。箇条書きを用いるなど、コンパクトにまとめる工夫が必要です。
さらに、曖昧な表現を避けることもポイントです。例えば、熟練者が素材の状態変化を手の感覚で表現しても、人によって感じ方が異なるため、品質にばらつきが出るおそれがあります。したがって、できる限り数値化できるものは数値化し、初めて作業する人にも誤解を招かない表現を意識することが重要です。
5W1Hを意識した内容にする
手順書を作成する際には、以下の「5W1H」を意識することで、作業の目的やプロセスを明確に伝えられます。
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When:いつ作業するか
Where:どの工場のどこで作業するか
Who:誰が作業を担当し、誰が責任者を務めるか
What:作業にはどのような材料や機械が必要か
Why:なぜその作業が必要なのか
How:どのような手順で作業するか
「What」で必要な材料を列挙する際は、箇条書きや番号付きリストを活用して、情報を整理すると読み手にすばやく内容が伝わります。また、「Why」で作業の必要性を明記することで、作業方針がスムーズに理解でき、組織での認識統一にも役立ちます。「How」の内容が多い場合には、手順書の冒頭に「概要」として大まかな流れを説明しましょう。冒頭に概要があることで、読み手にやさしい手順書になります。
手順書の作成後、5W1Hのいずれかに変更があった場合には、すぐに内容を更新し、常に最新の状態を維持しましょう。古い情報のまま放置すると、手順書が効果的に機能しなくなるだけでなく、安全を脅かす可能性があるため、定期的なアップデートと社内共有が重要です。
写真や動画を活用する
複雑な作業は文章だけでは表現しにくいため、写真(画像)や動画、イラスト、図などを活用しましょう。画像や動画などを使うことで、視覚的に作業をイメージできるので、内容の理解度が深まります。特に動作を伴う作業や変化に着目させたい場合には、視覚的な情報があることで、効率的に作業が進められるのもメリットです。
画像や動画を用いる際は、読み手に伝わりやすいよう作業者の目線で撮影し、吹き出しやキャプションを用いて、視認性を高めましょう。また、重要な内容や注意事項には、文字のサイズを大きくしたり、色を付けたり、装飾を加えるのもおすすめです。
ただし、文字の色や装飾を多用すると、重要な情報や注意事項が埋もれて見つけにくくなることがあります。強調は必要最小限にとどめ、視認性を損なわないようにしましょう。
わかりやすい作業手順書がもたらす効果
実際に「わかりやすい手順書」を作成すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?手順書は単なるマニュアルではなく、現場の効率化や品質向上に大きく貢献するものです。従業員一人ひとりの作業がスムーズになるだけでなく、組織全体にも以下のような効果をもたらします。
- 業務効率化につながる
- 作業の品質を均一化できる
- 作業を標準化し、属人化を防げる
わかりやすい手順書があれば、すべての従業員が手順書に従って安全に作業ができます。作業中に迷ったりわからなくて考えたりすることもないため、短時間かつ効率的に作業を進められるのも利点です。
また、読むだけで作業が行える手順書があれば、新人教育の手間やコストを削減でき、先輩従業員が付きっきりで業務指導する必要もありません。そのため、既存の従業員は自分の仕事に集中でき、大幅な業務効率化につながります。
さらに、誰が見ても内容が十分理解できる手順書であれば、作業のばらつきが少なく、品質の均一化が期待できることもメリットです。良質な製品を安定的に供給できれば、顧客の信頼性の向上にも寄与します。
業務の属人化を防げるのもポイントです。属人化とは、特定の従業員のみが作業手順を把握しており、ほかの従業員に作業が共有されていない状況のことです。属人化が放置されていると、業務が滞り、品質の低下につながるおそれがあります。しかし、手順書を作成すれば、担当者の急な退職や人事異動に対して柔軟に対応でき、生産性向上も見込めます。
作業手順書を活用する際の留意点
初めて手順書を活用する際には、いくつか気を付けるべきポイントがあります。特に意識したいのは、以下の3つです。
- 手順書への落とし込みが難しい作業がある
- 手順書に頼りすぎると、自ら考えて判断する力が低下することがある
- 作成作業には手間と時間がかかる
業務の中には、手順書への落とし込みが難しい作業も存在します。例えば、調理で火加減を調整する作業や、工場の異常を音や振動で察知する作業、デザインやプログラミングのように試行錯誤が求められる業務などは、文章や図だけでは伝えきれないことがあります。こうした作業に対しては、実演を記録した動画を活用したり、ベテランの知見を反映した補助資料を用意したりするなど、状況に応じた方法を検討することが大切です。
また、手順書に依存しすぎると、「手順書に記載されたことだけをやればよい」と考え、従業員が自ら判断する機会を失ってしまうリスクがあります。その結果、トラブルが発生した際に臨機応変な対応ができず、組織にとっても大きな損失につながる可能性があります。このような状況を避けるためには、従業員が作業の目的を理解し、手順にとらわれすぎずに適切な判断ができる環境を整えることが重要です。
また、手順書の作成には多くの工程があり、手間と時間がかかります。例えば、作業内容の洗い出し、わかりやすい表現への工夫、画像や動画の編集など、細かい作業が必要です。作成者の負担を軽減するために、手順書作成に特化したツールの導入を検討するのも一つの方法です。
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また、作成した手順書はクラウド環境で共有ができ、手順書をアップデートした際もすべての従業員に周知可能で、分析機能により活用状況の把握もできます。スマホやタブレットなどの端末でも手順書を確認できるので、従業員の利便性が高いのもメリットです。
まとめ
作業手順書は、業務の標準化や品質の均一化に役立つ重要なツールです。しかし、ただ作成するだけでは意味がなく、使いやすく、実際の現場で活用されるものでなければなりません。そのためには、以下のポイントを意識しましょう。
- 目的を明確にし、作成の体制を整える
- 範囲を適切に選定し、タスクを整理する
- 完成後もブラッシュアップを続け、実用性を高める
- 写真や動画を活用し、誰でも理解しやすい内容にする
手順書の作成には手間と時間がかかりますが、適切なツールを活用すれば、より効率的に作成・運用できます。例えば、「Teachme Biz」のような専用ツールを導入すれば、手順書を簡単に作成できるだけでなく、社内での共有や活用状況もスムーズに把握できます。
手順書を活用し、業務の質を向上させるためにも、実際の現場で使えるものを作ることを意識してみましょう。
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