製造業がマニュアル・作業手順書を作成すべき理由と活用までの流れとは?

最終更新日: 2023.08.24 公開日: 2023.03.07

製造業 マニュアル

製造業の現場では特定の作業員が不在になれば、業務停滞のリスクが生じてしまいます。これを回避するためにも、誰が行っても一定の品質が維持できるようなマニュアルを作成しておくことが重要です。
本記事では、製造業がマニュアルを作成することで得られるメリットをご紹介し、マニュアル作成の概要と作成時のポイントまでわかりやすく解説します。

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製造業がマニュアルを作成すべき理由

製造業が積極的にマニュアル・作業手順書を作成すべき理由を、4点ご紹介します。

品質の維持

マニュアル作成の大きなメリットのひとつは、作業者が変わっても製品の品質を維持しやすくなることです。マニュアルに記載された手順をしっかりとなぞれば、どんな従業員でも適切な手順・方法で作業可能です。これにより、誰が作業しても製品の品質が一定します。

そのため、マニュアルには「作業完了後の成果物に求められる品質基準」をはっきりと載せることが推奨されます。これにより、経験の浅い従業員でも「自分の作業のゴール」を把握しやすくなり、作業時のポイントなどにもより注意しつつ業務を遂行できます。

業務効率化

マニュアルを使うことで作業工程の全体像を可視化することもできます。
一般に、ひとつの製品を製造するためにはいくつもの工程が必要です。各工程が互いの工程の成果物を資材として引き継ぐことや、同じ機械や作業者が状況に応じてさまざまな部品を製造することもあります。このように、各工程が複雑に関係することは少なくありません。

こうした工程の全体像をマニュアルにより可視化することで、各作業員たちは互いの担当箇所の必要性を理解しあいながら、自分の業務により注力できるようになることが期待されます。また可視化された全行程の分析・検証する機会を設け、ボトルネックとなっている課題の発見やその改善案の立案を促すことも可能になります。

加えてマニュアルは、教育業務の効率化にも寄与します。昨今は、OJTと呼ばれる人材教育方法も広まっています。これは「ベテラン従業員が新人と一緒に実務を行うことで、教育を施す」という方法です。このOJTの効率化にも、マニュアル作成は有効です。

たとえば、ベテラン従業員が単に作業を実演してみせるだけでは、新人に業務を覚えてもらうことは難しいでしょう。手順を一つひとつ丁寧に教えたあと、新人に作業をさせてみて、間違いを指摘したり、質問に答えたりしなくてはなりません。また、品質が安定するまでは新人の成果物をこまめにチェックし、品質基準を満たしていなければ適宜指導する必要があります。

したがって指導役はOJTに多くの時間を取られやすくなり、自分の作業効率を低下させてしまう恐れがあります。指導役はその業務に精通した主戦力であることも多いので、指導役の業務の遅れは、現場全体の効率低下につながりやすくなります。

そのため、新人に向けたマニュアルを使った事前研修の実施は教育業務の効率化に役立ちます。マニュアルを使うことで、作業の流れや具体的な方法、成果物の品質の基準、間違えやすいポイントなどをあらかじめ自分で予習することが可能です。こうした事前知識を持った新人ならOJT時の理解が早くなり、指導役の負担低減につながります。

ノウハウの蓄積

自社のノウハウはマニュアルに形として蓄積することができます。
工程全体を包括的に効率化するための知見から、各作業を緻密に行うための小さなコツまで、それらノウハウは自社に蓄積されている貴重な知的財産です。そのような形のない財産を保管するためにも、ノウハウをマニュアルとして明記しておくことが大切です。
たとえ自社の製品工程が大きく変わることがあっても、それまで培ったノウハウはマニュアルとして残ります。こうした過去のマニュアルを保管しておけば、自社で対応できる業務の幅を広げやすくなります。

また、特定業務のノウハウを詰め込んだ分かりやすいマニュアルを作成しておけば、担当者の不在時でも業務停滞を抑えることにつながります。近年では、流行性疾病による自宅待機や、改正育児・介護休業法の施行などにより、従業員が休業する機会も増しています。しかしノウハウをマニュアル化して共有する習慣が根付いている現場なら、新人や他部署の従業員などにも人員不足を補ってもらいやすくなります。また季節的・突発的な繁忙期にも人材をフレキシブルに融通することが可能になるなど、業務量の平準化が期待できます。

ミスやトラブルの削減

従業員たちは、マニュアルで逐一手順を確認しながら業務を進めることで、作業ミスを減らすことができます。さらに、マニュアルに間違えやすいポイントや「起きやすいミスの事例」を記載しておくことで、それらの作業ミスを未然に防ぎやすくなります。原材料・時間・前段作業の労力などについては、マニュアルにより浪費を防止できます。

また、ミスをした場合の対応についてもマニュアルに記載することで、トラブルに迅速に対応できるようになります。
たとえば、製造現場ではさまざまな機器が使われており、中には頻繁にエラーが出る機器もあります。そのようなトラブルが発生するたびに責任者に確認していたのでは、業務が頻繁に止まってしまいます。
これを防ぐために、「起きやすいエラーの内容と対処方法」をマニュアルに記載しておきます。これにより現場担当者だけで対処可能になり、トラブル解消にかかる時間・手間の削減につながります。

製造業におけるマニュアル作成の流れ

実際にマニュアルを作る際は、以下のような手順をふむことでスムーズに作成できます。

  1. 目的を明確にする
  2. スケジュールを立てる
  3. 作業内容を確認する
  4. 画像や動画などの素材を集める
  5. マニュアルの構成を作成する
  6. マニュアルを完成させる
  7. 印刷・電子化する

目的を明確にする

まずは、マニュアル作成の目的を明確にします。自社や現場が抱える課題を洗い出した上で、その解決のためにどんな内容のマニュアルを作成する必要があるのか、あらためて把握します。

たとえば、「品質にばらつきがある」「ミスが多く、ムダが発生している」「作業時間の長い工程がある」「作業の難易度が高くベテラン従業員しか作業できない工程がある」などの課題が代表的です。これら課題を明確化することで、作成すべきマニュアルの姿も見えてきます。こうした明確化作業を現場の声も取り入れながら慎重に行うことで、「とりあえず作業方法を記録しておくだけのメモ」ではなく、自社課題解決を志す戦略的視野を持ったマニュアルの作成が可能になります。作成目的について現場と念入りに共有すれば、それだけ積極的に活用してもらいやすいマニュアルになります。

スケジュールを立てる

目的が明確に定まったら、マニュアル作成のスケジュールを立てます。一般にマニュアルが完成するまでには多くの手間・時間がかかります。したがって構成から運用開始まで、しっかりとスケジュールを立てて取り組みます。自社課題の解決に有効で、かつ現場でも使いやすいマニュアルにするため、余裕のあるスケジュールを立てましょう。

作業内容を確認する

マニュアルに盛り込むべき、すべての作業工程をリストアップします。作業工程とは、資材を次のチームに渡す成果物にまで加工する一連の作業です。
リストアップが完了したら、今度は各工程に含まれる作業ステップをすべて洗い出します。工程ごとにメインとなる加工作業に加えて、資材や機器の準備方法や成果物の渡し方、後始末の手順などについてすべて書き出します。

マニュアル作成者だけで上記のようなリストアップや洗い出しを行うと、手順を見落としてしまうことがあります。その作業の従事者にヒアリングしたり、実際に作業工程を経験したりしながら、記載漏れを防止します。

画像や動画などの素材を集める

マニュアルに使用する画像や動画を集めます。「誰が見ても分かりやすい」という要件を満たすには、画像・動画の使用は非常に重要です。言葉だけでは説明しにくい要素や作業も、これらにより明確に伝達可能になります。
また説明の簡略化・効率化としてもビジュアル表現は役立ちます。たとえば、作業画像を掲載し、その一部の箇所を赤く加工します。これにより、「赤く示した箇所」という一語を書くだけで、読者にその個所を指定することが可能です。説明文を記述する手間を省きながら、読者側に伝わりやすいマニュアルを作成していけます。

また撮影時は、説明対象が見やすい画像・動画を撮影できるよう、露出やフォーカスにも気をつけます。特に成果物の画像は、「満たすべき品質基準」が明確に映っていなくてはなりません。したがって品質チェック時にポイントとなる部分が、必ず鮮明に写るようカメラを調整します。いくつかの角度から複数枚撮影しておくことも大切です。
素材となる画像や動画が膨大な量になってしまうと、選定作業に手間取る恐れも生じます。撮影した写真は、なるべくその場でフォルダにまとめ、フォルダ名やファイル名の後ろにメモを加えるなど簡単な下処理をしておきます。これにより、マニュアル作成の際も、各画像の使用目的や挿入箇所を明確に判断可能です。なお、できれば撮影しながら簡単に加工処理なども施しておくと、後の作業が効率化されます。

マニュアルの構成を作成する

マニュアルの良し悪しは構成によって左右されます。一般には、マニュアルの構成が理解しやすいと、それが示している業務の全体像も理解しやすくなります。

構成を作るときは、洗い出した作業ステップを並べ、業務の全体像を可視化しましょう。この全体像や業務の流れを意識しながら、フレームワークを固めていきます。早急に行うのではなく、複数人で協議しながらしっかりと検討していくことが推奨されます。
構成が決まったら、それに沿って目次も作成します。各工程や作業ステップについての項目が、現場の実態に沿った形で目次化されていれば、利用者は知りたい情報に素早くアクセス可能です。

マニュアルを完成させる

作成した構成と目次を基に、マニュアルを作成していきます。撮影した画像や動画を並べながら、当該の作業について説明文を記述します。

オフィスソフトを使用してマニュアルを完成させる場合、一般に多くの時間・手間がかかります。また完成後も、実際の現場で業務手順が変更になった際など、マニュアルの修正業務は適宜発生します。

こうしたマニュアル作成業務を効率化するためには、専用ツールを使用することがおすすめです。テンプレートに沿って画像や説明を入れるだけで、見やすく分かりやすいマニュアルを完成させられるため、マニュアル作成・修正にかかる時間と労力を大幅に削減可能です。
また、動画や画像にマークやテキストを加えるなど、編集機能を搭載したツールもあります。マークや字幕を使ってポイントとなる場所に注目させたり、解説を入れたりする機能を使用すれば、動画マニュアルも比較的簡単に作成していけます。

印刷・電子化する

マニュアルが完成したら、使用現場や使用シーンにフィットするよう紙に印刷したり、作業員の端末から閲覧できるように設定したりします。

製造業の現場では、パソコンを置く場所が確保できないこともあるので、スマートフォンやタブレット端末から閲覧できると便利です。これらの電子端末を使えば動画マニュアルも閲覧でき、知りたい情報をキーワード検索できます。したがって一般に、紙よりも電子端末の方が、便性が高いマニュアル体験を享受可能とされています。

精密機器を持ち込めない現場用や、短期間のパート・アルバイト用に、紙のマニュアルを配布することもあります。この場合は、動画マニュアルを閲覧できないため、別途集合研修などで上映しましょう。

製造業におけるマニュアル作成のポイント

製造業の現場作業のマニュアルを作成する際、特に気をつけたいポイントをご紹介します。

5W1Hを明確にする

5W1Hを意識し、必要な情報を漏らさないように作成します。

  • Who:作業者に必要な資格や技能、作業人数など
  • What:必要な資材、使用する機器や工具など
  • When:タイミングや季節など
  • Where:作業場所、資材の受取場所、道具の保管場所、成果物の納品場所など
  • Why:「なぜこの手順が必要なのか」一見不要に見える手順が、品質を確保するためには欠かすことのできないコツであったりします。理由を明記することで、大切な手順をないがしろにしてしまうことを防げます。
  • How:作業手順

理解しやすい簡潔な内容にする

マニュアルはベテランから新人まで作業員となることを想定して作成しましょう。各従業員で業務への理解度にばらつきがあるので、「業務全体を詳しく知りたい人」「細かなことだけ確認したい人」どちらにも分かりやすいようなマニュアルがベストです。
たとえば、説明文は簡潔にしつつ、図表などを用いて視覚的に把握しやすいマニュアルを作成します。また、新人が閲覧する場合を想定し、用語や器具の解説も適宜挟んでおきましょう。

動画を使う場合は、長い説明動画を1本置くのではなく、説明要素ごとに特化した短い動画をいくつも置くようにします。これにより利用者は「知りたいことだけがピンポイントで解説されている動画」を検索・閲覧できるようになります。単純な作業は画像で端的に説明してしまい、複雑な作業のみ動画を用意するなど、動画と画像を適宜織り交ぜることも有効です。

シンプルなデザインにする

作業中でも参照しやすいよう、マニュアルのデザインはシンプルにしましょう。
必要な要素が分かりやすいよう、画像や赤字・太字などを使って目に留まりやすくします。ただ、目立つ部分を増やしすぎても逆に煩雑なデザインになってしまうため、注意が必要です。重要度の低い要素や、作業内容以外の情報については補足ページなどを設けて記載してもよいでしょう。
またマニュアル作成ツールを用いる場合も、なるべくシンプルなデザインテンプレートを用いた方が有用度の高いマニュアルを作りやすいです。専用ツールでは簡単に要素を付け足せますが、デザイン上のシンプルさを損なわないよう、追加要素などは慎重に選定しましょう。

注意点や危険度合いを目立つように記載する

ぱっと見てすぐに理解できるように、注意点や危険度合いは目立つように記載しましょう。
従業員の安全と健康の確保は事業者の責務です。労働災害を未然に防ぐため、法令を遵守することはもちろん、労働環境の改善などに積極的に努める姿勢が求められます。
「作業を行う際の注意事項」「過去に発生した事故事例」などがあれば、マニュアルに記載しましょう。たとえば、マニュアル内に禁止行為の事例画像を掲載し、その上にバツ印を重ねるなどしておくと、従業員たちに注意を喚起できます。

運用と改善を繰り返す

マニュアル作成後は、実際にマニュアルを使用しつつ作業してもらい、定期的に問題点・改善点がないか検証します。各工程について最適な方法・手順を掲載できるよう何度も修正を繰り返すことで、マニュアルの精度を高めていけます。

製造業のマニュアル作成を効率化するためのアイデア

マニュアル作成は非常に作業量の多い業務です。さらにマニュアル作成者は、現場の業務を適切に理解し直す必要にも迫られます。そこで作成者の負担を少しでも減らすために、下記のようなマニュアル作成ツールやテンプレートを有効活用しましょう。

マニュアル作成ツールを活用する

マニュアル作成の専用ツールには、作成に必要な項目・機能がそろっています。単に案内に従って画像や説明文を入力するだけでも、見やすく分かりやすいマニュアルを作成できる場合もあります。このように、手間・時間を大幅に削減可能です。

ツールによってはクラウド上でマニュアルを管理可能なものもあります。これらを用いれば多くの場合、タブレット・スマートフォンからもマニュアルを閲覧できるようになります。現場の作業スペースを圧迫することなく、従業員たちに最新マニュアルを提供できます。

テンプレートを活用する

マニュアル作成に特化したテンプレートも、数多く存在します。これらを用いれば効率的に作成できます。必要項目や情報について、あらかじめ枠が設定されているケースも多いので、記載漏れの防止策としても有用です。また無料のテンプレートもネット上などで公開されているので、それらを採用すればコストカットにもつながります。

なお、上述のマニュアル作成ツールは一般に、テンプレートを何種類か備えています。「自社が作りたいマニュアルにフィットするテンプレートがあるかどうか」を選定軸として、作成ツールを検討するのもおすすめです。

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まとめ

製造業者はマニュアルを作成することで、製品の品質を一定に保ちやすくなる以外にも、業務効率化・ノウハウの蓄積といったメリットを得られます。さらに、休業のリスクに備え、事故やミスを未然に防ぐことにもつながります。
しかし、マニュアルの作成は業務に対する深い理解が必要なだけではなく、作業量も作業項目も多い大変な仕事です。
そこで、マニュアル作成ツールやテンプレートを使用して手間や時間を削減することがおすすめです。空いた時間を使い、マニュアルで解決すべき課題や、マニュアルの構成などについて十二分に検討してはいかがでしょうか。

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