引き継ぎ書の作り方|手順、ポイントをわかりやすく解説

最終更新日: 2024.09.18 公開日: 2019.11.08

引き継ぎ書の作成方法

企業に勤めていると、部署異動や転勤、退職時などに後任者へ業務の引き継ぎをする場合があります。その際に欠かせないのが引き継ぎ書です。後任者にとっては特に重要な書類であり、引き継ぎ後に起こり得る業務上のミスやトラブルを未然に防ぐのに役立ちます。

しかし、具体的に何を書けば良いのか、そもそもどうして必要なのか曖昧な人も少なくありません。そこで本記事では、引き継ぎ書の重要性や書くべき項目と注意点、作るときのポイント、便利なテンプレートをご紹介します。引き継ぎ書の作り方を把握して、スムーズに引き継ぎを済ませましょう。


引き継ぎWP

目次

引き継ぎ書とは「業務継承のための情報伝達文書」

引き継ぎ書とは、自身の担当する業務や案件、プロジェクトなどを後任の担当者に引き継ぐために前任者が用意する文書です。
正確かつ、後からでも見返せる情報共有手段があることで、後任者の不安軽減と前任者の専門知識の継承が可能です。また、併せて前任者が後任者に口頭説明を行う機会を設けると後任者が内容をイメージしやすく、確実な業務の引き継ぎにつなげられます。組織の生産性向上にも役立つ引き継ぎ書は、手間や時間をかけてでも作成するべき重要な書類です。

必要になる場面

引き継ぎが行われる代表的な場面には、主に次の四つが挙げられます。

  • 配置転換
  • 部下や後輩への業務引き継ぎ
  • 異動
  • 退職

いずれも、これまで担当していた業務を手放すことになる場面です。急な異動や退職によって引き継ぎの時間をあまり取れないケースもありますが、引き継ぎ書を作っておけば短時間で円滑な情報共有ができます。

記載する情報

文書に記載する情報に決まりはなく、業務に応じて異なります。後任者が前任者と同じクオリティで円滑に業務ができるよう、必要と思われる情報をできるだけ詳しく記載しましょう。

引き継ぎ書に記載することが望ましい情報の例は、次のとおりです。

    【営業の場合】

  • 取引先情報
  • 担当案件に関する情報
  • 過去に対応した案件の情報
  • しかかり案件がある場合は背景、納品数、仕切り価格、関係者や進捗など
  • 【内勤業務の場合】

  • 業務の具体的な手順
  • 業務で利用するツールの使い方や、ツールへのログイン情報など

現在手がけている業務に関することだけでなく、過去に手がけた業務、案件などの情報も3年分程度あると、前例をもとに対応を決められて後任者の役に立ちます。また、過去の案件に対する追加対応やクレーム発生の際にも判断材料となるでしょう。

もし、業務で使用している専門的なツールがある場合は、使用手順などをマニュアルとしてまとめておくと、滞りなく作業ができるためおすすめです。なお、引き継ぎ書とマニュアルの違いは、次段で解説します。

マニュアルとの違い

引き継ぎ書を作成する際、マニュアルと混同してしまうケースもありますが、マニュアルとは性質が異なります。

引き継ぎ書とは、案件やプロジェクトなどを引き継ぐにあたり、後任者が知っておくべきポイントを解説するものです。時として、前任者の経験に基づく個人的な注意点が含まれる場合もあります。また、しかかり案件のような現在進行形で対応する必要がある業務や未解決の問題、あるいは今後の予定などについても記載されます。

一方マニュアルは、業務遂行の手順や、業務に必要なツールの使用方法などを具体的に示す文書です。引き継ぎ書は後任者のためだけの書類ですが、マニュアルは新入社員や、同じ業務・プロジェクトに携わるメンバーなどにとっても役立ちます。なお、マニュアルは手順書とも呼ばれることがあり、基本的には同じ意味です。

マニュアルと引き継ぎ書は性質が異なるため、どちらか片方だけがあれば良いわけではありません。両方を用意して併用することで、後任者や他の従業員が円滑に業務を進められます。

引き継ぎ書の重要性

引き継ぎ書を作成しておくと、担当者が退社、休職する場合などにおいて非常に役立ちます。ここでは、引き継ぎ書を作成する重要性について解説します。

伝達ミスの防止

口頭での引き継ぎだけでなく文書として作成することで、前任者が伝えておきたい業務の情報を漏れなく伝えられ、伝え忘れや伝達ミスを防止できます。

業務を引き継いだ後任者は、残された資料や前任者から得た情報などを頼りに仕事を覚えていかなければなりません。後任者にとって、引き継ぎ書は業務の不明点が生じた場合に見返せる貴重な資料です。また、業務品質低下の防止にもつなげられるため、安心材料にもなります。

特に勤務地の大幅な変更を伴う異動や退職時の引き継ぎ完了後に生じたトラブル事案の場合、前任者が対応することは困難です。前任者と代わった後、後任者がしっかり業務をこなせるようになるためには、引き継ぎの際に担当業務の目的や作業の要点・注意点、資料の保管場所などを細かく伝えることが非常に重要です。

属人化の防止

文書化することでノウハウや業務に関する重要な情報の属人化を防ぎ、後任者への引き継ぎ作業を円滑にできます。属人化とは、業務を担当する特定の社員に業務の状況や必要なノウハウ、作業手順などの情報が偏っている状態になり、他の社員から見てブラックボックス化していることです。属人化を放置していると、担当者が不在になった場合、業務の進め方が誰にもわからなくなるおそれがあります。

引き継ぎ書は属人化の防止に有効です。業務の手順や要点を文書化することで、情報の伝達漏れや誤解、ブラックボックス化を防ぎます。また、文書化されていることで後任者が容易に参照でき、業務知識の定着が促進されます。口頭だけの伝達では忘れやすいですが、引き継ぎ書があれば前任者の独自ノウハウも共有でき、業務品質の維持に役立ちます。さらに、退職時だけでなく、人事異動や配置替えの際にも、引き継ぎ書があることでスムーズな引き継ぎが可能です。

業務停滞の防止

引き継ぎ書は、業務の停滞やトラブルのリスクを軽減します。口頭での引き継ぎがない、または引き継ぎ書がないまま前任者が退職した場合、後任者は業務のやり方や対処法がわからず、業務が滞る可能性があります。前任者に問い合わせできない状況では、他の社員に質問するしかなく、その結果、他の社員の業務にも影響を与えてしまうでしょう。

さらに、後任者の業務習得が遅れることで、トラブル発生時に適切な対応ができず、案件の失注や納期遅れによるクレームに繋がるリスクもあります。
このような業務の停滞や連鎖的なトラブルを回避するために、引き継ぎ書の作成は欠かせません。部署全体の業務を円滑に進め、生産性と作業効率を維持するためにも、引き継ぎ書は企業にとって必要不可欠です。

【6ステップ】引き継ぎ書の作り方

では、具体的に引き継ぎ書はどのような手順で作れば良いのでしょうか。業務の引き継ぎを進めるポイントも踏まえて、引き継ぎ書の作り方を6ステップに分けて解説します。

ステップ1. 担当業務をすべてリストアップする

最初に、自分が担当している業務をすべてリストアップするところから始めます。業務の重要性に関係なく、どのような小さなものでも自分が担当している業務をすべて書き出しましょう。このときに、大分類で業務を書き出し、次に付随する細かな業務を書き出すと、抜け漏れがなくなります。

例えば、請求書の処理という業務であれば、次のような形で書き出していきます。

    大分類:請求書の処理
    ┗金額の確認
    ┗管理部門に連絡
    ┗請求書をデータにして提出

また、忘れがちなのが年1回、月1回など低頻度で実施する業務がある場合です。毎日こなす業務だけでなく、定期的にこなす業務がないか確認しましょう。

さらに、リストアップする際に業務の優先順位も書き出しておくと、引き継ぎ書に記載する段階で内容を整理しやすく、後任者もそれぞれの業務の重要度を把握できて役立ちます。

ステップ2. 引き継ぎのスケジュールを決める

各業務について「いつまでに」「どのタイミングで」引き継いでいくのか、スケジュールを決定します。業務によっては簡単に説明するだけで良いものと、実際に立ち会ってもらいながら引き継ぎしたほうが良い業務とに分かれる場合があります。

リストアップしたそれぞれの業務の引き継ぎに必要な時間を算出し、余裕を持ったスケジュールを組むようにしましょう。引き継ぎの間も通常どおり業務は進んでいくため、引き継ぎ以外でトラブルが発生した場合のことも考慮するのがポイントです。

また、引き継ぎの際はスケジュールを確認しながら進めていくことで進捗状況を簡単に把握できます。万一遅れが出た場合に備え、スケジュールには予備日を設けておくと調整がしやすくなります。あるいは、引き継ぎがある程度済んだ段階で、後任者の質問への対応やフォローアップの日を設けるのも良い方法です。

ステップ3. 引き継ぎ書の内容を決める

次に、引き継ぎ書にどのような内容を含めるのかについて考えます。引き継ぎ書に必要な内容としては、主に次のようなものがあります。

  • 各業務の重要度・優先度
  • 各業務のフロー、作業手順
  • 現在の進捗状況や今後予定されているスケジュール
  • その業務に関係する社内外の担当者名や連絡先
  • その業務に必要な情報(ツールのアカウント情報やデータの保管場所など)
  • 実際に役立ったトラブルシューティング
  • その他の注意点や作業のポイント

伝え忘れやすいことのひとつに、データの保管場所があります。伝達漏れの防止策として引き継ぎ書に共有フォルダーのパス(格納先)を明記しておけば、引き継ぎ書を見た後任者がデータへアクセスできるようになります。

もし、必要な情報が網羅されているか不安な場合は、引き継ぎ書を作成する前の段階で同僚や上司にチェックしてもらうのもおすすめです。

ステップ4. 引き継ぎ書を作成する

内容が決まったら、それを整理し、実際に引き継ぎ書を作成します。このとき、紙ベースではなく、クラウドをはじめとしたWeb上で作成しておくことを強くおすすめします。理由は次のとおりです。

  • 修正しやすい
  • 検索して探せる
  • 共有しやすい

引き継ぎ書を作成する場合は、どういった業務の説明をしているのかひと目でわかるようにしておきましょう。

また、初めてその業務を担当する人でも、記載内容に沿って作業すれば、一通りこなせるようなわかりやすい資料を作るように心がけます。後任者が理解できないと思われる専門用語や略称などは、注釈をつけておくと親切です。

複数の業務がある場合は、優先順位や実施のタイミングなどを後任者が判断できるように記載します。

ステップ5. 上席に確認してもらい承認を得る

引き継ぎ書が完成したら、後任者に渡す前に上席に確認してもらいましょう。企業にもよりますが、「引き継ぎ書」は社内文書に該当するため、承認を得たほうが良い場合もあります。

ただし、社外文書ではないので、作りかけの段階で相手に見せても問題ありません。ある程度記載する内容がまとまった段階や、フォーマットを作って記入するだけになった段階、ほぼ完成している段階など、要所で確認してもらうと、作成後に問題が発覚して大幅修正する事態を防げます。わかりやすさや見やすさに問題がないか、内容に漏れがないか見てもらいましょう。

引き継ぎ書の内容を確認してもらい、上席の承認を得られれば、引き継ぎ書は完成です。

ステップ6. 後任者に引き継ぎを行う

引き継ぎ書が完成したら、後任者へ渡して実際の引き継ぎを行います。単に引き継ぎ書を渡すだけではなく、資料の読み合わせによってポイントを伝達する、一緒に業務を行う、実際に作業するところを見せるなど、理解度を高められる方法を用いましょう。そうすることで、抜け漏れや伝え忘れなどを防ぎやすくできるだけでなく、後任者も不明点がクリアになります。

また、後任者が質問をしやすいような雰囲気作りも大切です。質疑応答の時間を設けたり、協力的な姿勢を示したりしてコミュニケーションしやすいように心がけましょう。必要に応じて、関係者との顔合わせや紹介も行い、橋渡し役として業務が円滑に回るようにサポートします。

引き継ぎ書作成時の3つのポイント

ただ引き継ぎ書を作っても、後任者が理解できなければ意味がありません。引き継ぎ書の作成方法にはいくつかのポイントがあります。

この項目では、引き継ぎ書の作成時に気をつけるべき3つのポイントについてご紹介します。ポイントを押さえて、スムーズな引き継ぎを目指しましょう。

読み手が理解しやすい内容にする

引き継ぎ書を作成する際、すべてをテキストにすることはおすすめできません。具体的なイメージがつかみにくく、業務内容を理解できない可能性があるためです。

資料において、言葉では説明が難しい部分は、文章だけではなく、写真や音声、動画やスライドなど、テキスト以外の要素も取り入れましょう。例えば、手順をフローチャートでビジュアル化すると全体像の把握に役立ちます。フォントの大きさやカラーなどにも工夫の余地があります。

引き継ぎ項目を明確にする

文章を書くときには結論を先に記載するように努めます。引き継ぎ書では「引き継ぐ必要がある項目が何なのか」「後任者は何をするべきなのか」を最初に明確にしておくことが大切です。後任者が引き継ぎ書を見ただけで「自分が何をするべきなのか」を把握できれば、迷いのない業務の遂行が可能になります。

項目を作成する際には業務をしっかりと洗い出し、整理してから書き記します。いくら項目を最初に記載したとしても、情報が整理されていなければ後任者は混乱してしまいかねません。

おおよその項目の洗い出しができたら、それぞれに抜け漏れがないかをチェックしましょう。軸となる項目にブレがなければ、横道にそれることなく必要な情報を伝えられます。
具体的に、どの項目をどのように書くべきかの詳細は後述します。

実作業の手順に沿って記載する

スムーズに引き継ぎを行うためには、引き継ぎ書の構成にもこだわることが重要です。特に作業手順は、実際の流れに沿って記載すると、後任者もその業務がどのように進むのか、業務内容をイメージしやすくなります。また、作業を進めていて不明な点があったとき、手順どおりに記載されていれば目的の項目を容易に探し出せます。

具体的には、業務全体の流れを各ステップに明確に分けて、それぞれ説明を加えます。さらに、各ステップには細かい作業内容とゴールが記載されていると親切です。冒頭には目次を設置し、ページ番号を振って、目的のページにすぐ到達できるようにしておきましょう。

引き継ぎ書に "最低限" 書くべき7つの項目

作成を始める前に押さえておきたいのが、引き継ぎのためのマニュアル書に最低限記載しておく必要がある項目です。

  • 業務全体の概要・目的や背景
  • 業務全体のスケジュールや優先順位
  • 具体的な業務の流れ・手順
  • トラブル・クレームの対応方法
  • トラブル・クレームの対応履歴
  • その他、業務に関する資料の保管先
  • しかかり業務に関する注意書き

以上の7項目は、必ず入れることを常に意識しながら作成を進めていきましょう。

項目1. 業務全体の概要・目的や背景

スムーズな引き継ぎのため、まずは業務の全体像を後任者に把握してもらうことが大切です。業務全体の概要や、業務の目的、背景情報などを最初に提示しましょう。

細部の業務よりも前に全体像を把握しておくことで、業務の流れや、関連する業務との関係性などを理解しやすくなります。

また、目的や背景を理解することで、業務の重要性や、担当者としてどのような役割や成果を期待されているかがわかります。今後の業務で何らかの判断をするとき、目的に沿ったブレのない判断ができるようになるはずです。

具体的な記載の例としては、仮に営業職であれば、案件やプロジェクトの概要、案件の受注に至った経緯などを書き添えると良いでしょう。

項目2. 業務全体のスケジュールや優先順位

続いて、業務が全体的にどのようなスケジュール感で進行するのか、過去の例や現在~今後のスケジュールを記載します。毎日、月間、年間など頻度が異なる業務については、頻度ごとにまとめておくとわかりやすいです。

また、複雑な手順がある場合や、複数のタスクを抱える場合に備えて優先順位を示しておくと後任者がスムーズに対応できます。

例えば、営業職の場合は受注対応中の案件についてスケジュールを記載したり、受注確度の低い案件については優先順位を低く設定して示しておいたりすると良いでしょう。

項目3. 具体的な業務の流れ・手順

全体像やスケジュール感を示した後は、実際に業務にあたれるように具体的な業務の流れや手順を示します。

例えば、営業職であれば最初に顧客へアプローチし、顧客に商品やサービスを提案した上で、要望に応じて見積書を作成し送付します。その後、発注書を受領して商品やサービスを納品する流れになるでしょう。これらの各ステップに沿って、具体的な手順を細かく記載します。

ただし、業務に関する一連の手順については、引き継ぎ書だけでなくマニュアルでも解説します。そのため、引き継ぎ書では前任者ならではのノウハウや注意点、成功のポイントなどに重きを置いて記載すると良いでしょう。

また、各ステップで後任者をサポートできる人物や重要な関係者がいる場合は、それぞれ連絡先を記載しておくと、困ったときにすぐ連絡できるので便利です。

項目4. トラブル・クレームの対応方法

引き継ぎ書のなかでも重要なのが、トラブルやクレームの対応方針の記載です。業務を引き継いだ直後は、業務に慣れずトラブルやクレームが発生しても対応が遅れることが懸念されます。引き継ぎ書で手段や方針を定めておけば、後任者は慌てず冷静に対応できるようになります。必要に応じて、関連部署など連絡しておくべき相手とその連絡先も記載しておきましょう。

また、これは顧客満足度の維持という観点からも重要です。例えば営業職で担当者が変更された場合でも、顧客はこれまでどおりの一貫した対応を望むと考えられます。しかし、後任者が前任者とは異なる対応をした場合や、引き継ぎがされておらず後任者へ同じ説明をしなくてはいけなくなった場合、顧客からすれば不満の原因になります。このようなとき、前任者が引き継ぎ書によって対応方法を伝達していれば、担当者が変更になっても顧客は常に同じ待遇を受けられ、信頼関係の維持・構築に役立ちます。

このように、トラブル・クレームの対応方法をいかに記載するかは、後々の取引や社内・社外を問わず人間関係にも大きく影響する可能性があります。具体例も用いながら、できるだけ詳細に対応方法やポイントを記載しましょう。

項目5. トラブル・クレームの対応履歴

トラブル・クレームについては、対応方法だけでなく過去の対応履歴や、イレギュラー対応の詳細もあると役立ちます。

特に営業職の場合は、引き継ぎに絡んで過去にクレームのあった顧客と再びトラブルになる可能性も少なくありません。必ず記録しておき、クレームになりそうな事案がある場合は後任者へ伝えておきましょう。また、引き継ぎが上手くできていないことが顧客の不満につながり、炎上するリスクをなくすという意味でも重要です。

もし、特定の顧客に対する特別な対応や、個人的なコミュニケーションの秘訣などノウハウがあれば、併せて書き添えます。

項目6. その他、業務に関する資料の保管先

業務に使用する資料や製作物などがある場合は、その保管先を明らかにしておきましょう。引き継いだばかりだと資料の保管先がわからなかったり、検索に不慣れだったりすることで時間がかかります。資料をすぐ検索・閲覧できるようにしておけば、後任者はスムーズに業務を進められます。

保管場所や名称と概要、データの場合はアクセス方法なども詳しく記載します。ただし、注意点として資料のパスワードなど重要な情報は記載しないようにしましょう。これは、後任者が引き継ぎ書を印刷した後に万一紛失してしまった場合を考慮してのことです。

また、もし機密に関わる重要な書類や資料など、閲覧に社内での手続きが必要な場合は、手続きの必要性や手順、取り扱いに関するポリシーなども併せて記載しておきましょう。

項目7. しかかり業務に関する注意書き

進行中の案件、いわゆるしかかり業務についても注意書きを用意しておきましょう。途中で引き継ぐことになるため、進捗状況や前提条件、目的や背景などがわかっていないと、後任者がスムーズに作業を再開できません。

現状残っている業務内容や問題点、その業務独自の注意点などもあれば併せて記載します。後任者が前任者のクオリティを担保できるようにサポートしましょう。

引き継ぎ業務を効率化させる2つの秘訣

引き継ぎは必ずしも時間をかけて行えるとは限らず、なかには短時間で膨大な量の業務を後任者に託さなければならないケースもあります。いつそのような事態になっても対応できるよう、引き継ぎが発生する可能性がある場合は事前に効率化のための対策をしておくことが大切です。効率化の秘訣を2つに分けてご紹介します。

普段からマニュアルを用意しておく

引き継ぎ書は引き継ぎが決定した段階でないと作成が難しい場合がありますが、業務のマニュアルであればあらかじめ用意しておけます。引き継ぎ業務を行う際にマニュアルを用意しておくと良い理由は以下です。

引き継ぎ書作成にかかる時間を短縮できるため

業務マニュアルには標準化された手順や作業の要点など、引き継ぎ書を作成する際に必要な情報がすでに整理されています。引き継ぎ書に記載するプロジェクトの概要や進行中の情報をまとめる際に、業務マニュアルを参照することで記載すべき項目が明確になります。さらに、重要事項の漏れも防げるほか、作成時間も大幅に短縮できます。
また、業務マニュアルに加えて、ノウハウのメモやワークフローチャートも一緒に渡すと、さらに効率的です。

急に引き継ぎが必要になった際にも対応できるため

担当者の急な退職などで引き継ぎ書の作成が難しい状況でも、業務マニュアルがあれば後任者へ簡単にノウハウを伝達でき、重要なノウハウの消失も防げます。
また、日頃からノウハウを蓄積しておけば、業務手順の共有ができるため、別の担当者でも作業自体は進めることが可能です。これらに加えて、業務マニュアルがあれば、業務工程をはじめから教える時間を短縮できるメリットもあります。


マニュアル作成の教科書1

引き継ぎ書作成にはテンプレートを活用する

引き継ぎ書の記載内容は人によって大きく異なるため、一から作成すると大きな負担がかかります。そのようなときに役立つのがテンプレートの活用です。

テンプレートを配布するサイトや、書類の制作ツールでは、引き継ぎ書に関しても用意されていることがあり、自分の業務に合ったフォーマットを選べば簡単に引き継ぎ書を作成できます。

また、テンプレートには一般的な引き継ぎ書に必要な項目や機能が網羅されているので、記入漏れの防止につながります。見た目も整っているため、見やすさやわかりやすさの確保に悩んでいる場合にもおすすめです。

特に役立つ、おすすめのテンプレートについては後述するので、ぜひ参考にしてください。

引き継ぎ書のテンプレート

では、実際におすすめの便利なテンプレートを7種類紹介します。無料のものや会員登録不要で使えるもの、本格的なものなどそれぞれ特徴があるので、自分に合ったものを選んでみてください。

楽しもうOffice

「楽しもうOffice」はMicrosoftが提供するテンプレートサイトです。無料で約2,000点に及ぶOffice用のテンプレートが公開されており、Wordで使える引き継ぎ書テンプレートも用意されています。業務のフローや、手順ごとのポイントなどを入れる欄があり、図や写真の追加、行や列などの変更も可能なので、カスタマイズの自由度が高いテンプレートです。会員登録も不要で、ダウンロードボタンをクリックするだけで簡単に使えます。印刷にも対応しており、A4用紙にまとめて後任者に渡す際にも便利です。

引き継ぎ書のほかにも、ビジネス向けのテンプレートや季節や月にちなんだテンプレートが豊富に揃っているため、日々の業務や時候の挨拶などにも活用できます。

  • Officeソフトでの利用:可
  • 無料
  • 会員登録不要

楽しもうOffice|引き継ぎ書

テンプレートNAVI

「テンプレートNAVI」はビジネスシーンや日常生活のあらゆる場面で使えるテンプレートを集めたサイトです。WordやExcel向けにすべて無料で提供されています。イラストの入った華やかなテンプレートから、シンプルな白黒の書式までバリエーションも豊富です。

引き継ぎ書に関しては、白黒のシンプルなテンプレートが用意されています。引き継ぎ項目や日時、詳細を書く欄が用意されており、引き継ぎは必要なものの伝える内容がそれほど多くない場合に便利です。シンプルに作られているためコピーやカスタマイズが容易なので、業務内容に応じて自分で書き換えたり、項目を追加したりすることもできます。会員登録も不要なので、ダウンロードして使ってみましょう。

  • ソフトでの利用:可
  • 無料
  • 会員登録不要

テンプレートNAVI

SILAND.JP

「SILAND.JP」では、Word、Excelで引き継ぎ書を作れるテンプレートが用意されています。操作マニュアルや運用マニュアルのドキュメント作成用のフォーマットで、表紙、目次、本文ページという構成になっており、引き継ぎ書に必要な要素が一通り揃っているのが特徴です。特に、システムの操作方法や運用のオペレーションなどをメインに伝えるときに活用できるでしょう。

特別なインストール処理は不要で、使いたいテンプレートの圧縮ファイルを解凍するだけで使えます。スケジュール管理表や工程表、見積書、議事録など、業務でよく利用するテンプレートが幅広く備わっています。

用意されているテンプレートをもとに、用途や目的に応じて自由にカスタマイズできるのもポイントです。

  • Officeソフトでの利用:可
  • 無料(一部有料)
  • 会員登録不要

SILAND.JP

bizocean

「bizocean」では、日本最大級の無料ビジネステンプレート集をビジネスパーソン向けに提供しています。

数は多くないながら、引き継ぎ書向けのテンプレートもあり、WordとExcel、Googleスプレッドシート、Googleドキュメントのいずれかのフォーマットで利用可能です。いずれもシンプルで使いやすいデザインになっています。また、Excel版に関しては取引先別のテンプレートも用意されており、使い分けが可能です。

  • Officeソフトでの利用:可
  • 無料(一部有料)
  • 会員登録が必要

bizocean

経費削減実行委員会

「経費削減実行委員会」ではPowerPointで引き継ぎ書向けのテンプレートが利用可能です。業務引き継ぎ書のテンプレートに加え、企画書・提案書を作成するときに利用できる手順マニュアルが多数用意されています。

これらはすべて無料で使うことができ、ほかにも非常に多くの業務用テンプレートが取り扱われていて便利です。「あれが急に必要になった!」というときには、まずこちらをチェックしてみるのをおすすめします。

  • Officeソフトでの利用:可
  • 無料
  • 会員登録不要

経費削減実行委員会

ひな形の知りたい!

「ひな形の知りたい!」では、全国のひな形制作者が登録したテンプレートを無料で利用できます。テンプレートを使用する際に疑問があれば制作者へ質問できるシステムも用意されており、Officeソフトにあまり慣れていない人にも優しい体制が整っています。

OfficeソフトをプラットフォームとしたWord・Excel・PowerPointで使用可能なテンプレートの取り扱い数が非常に多く、Wordの事務引き継ぎ書だけでもかなりの数に及びます。

年月日や引き継ぎ者・後任者、引き継ぎ事項や処理未了事項をはじめとした重要項目は、テンプレート内ですべて網羅されているため、必要な項目を書き漏らす心配を減らせます。また、フォーマットの自由度が高く、業務内容に合わせた形で対応できる利便性の高さも有しています。Word機能を活かした箇条書き、図や表の挿入も可能です。

  • Officeソフトでの利用:可
  • 無料
  • 会員登録が必要

ひな形の知りたい!

無料ダウンロード!テンプレルン

「無料ダウンロード!テンプレルン」では、ビジネス書類をはじめ、年賀状やイラストなどさまざまなテンプレートを揃えています。また、それぞれのテンプレートは決まった形式だけでなく、ExcelやWord、PDFなどさまざまなフォーマットが用意されているのも魅力です。Excelで作りたいのにWord用のファイルしかないといった悩みを解決でき、好みにカスタマイズしながら使えます。

引き継ぎ書に関してもExcel・Word・PDFの3種類が用意されており、印刷にも対応しています。白黒の様式で、重要度や引き継ぎ内容、詳細と納期、引き継ぎ完了日と備考を書く欄がそれぞれ設けられています。行の増減も簡単にでき、シンプルかつ使いやすいテンプレートです。

  • Officeソフトでの利用:可
  • 無料
  • 会員登録不要

無料ダウンロード!テンプレルン

無料のビジネス書式テンプレート

「無料のビジネス書式テンプレート」は、ビジネスや日常生活はもちろん、自治体など公務員や町内会などでも使えるテンプレートを紹介するサイトです。テンプレートは2,000点以上あり、すべ会員登録不要かつ無料で利用できます。

引き継ぎ書に関してもWord向けに5種類のテンプレートが用意されており、いずれも項目や引き継ぎ内容、引き継ぎ日時などを記載できます。シンプルなデザインになっているので、他のテンプレートと組み合わせる際の相性が良いのもポイントです。同サイトでは計画書やクレーム報告書など多数のビジネス向けテンプレートがあるので、業務内容に応じて併用してみましょう。

  • Officeソフトでの利用:可
  • 無料
  • 会員登録不要

無料のビジネス書式テンプレート

引き継ぎをスムーズに。業務のマニュアル化なら「Teachme Biz」

引き継ぎ書の作成をスムーズに行うには、あらかじめ業務をマニュアル化しておくことがひとつの手段です。

しかし引き継ぎ書の前段階として業務マニュアルを作成するにも、作成自体に手間がかかり、時間の捻出が難しいという方もいらっしゃるのではないでしょうか。そのような方におすすめしたいのがマニュアル作成・共有システム「Teachme Biz」です。

誰でも簡単にわかりやすいマニュアルが作れる

Teachme Biz には誰でもサクサクとマニュアルを作るためのさまざまな工夫が凝らされています。例えば「撮影した写真にテキスト等で説明を簡単に入れられる」機能があります。これは、通常のテキストだけではわかりにくい内容も、画像によって視覚的に理解しやすくする効果が期待できます。またレイアウトが統一されていることも、マニュアルを見る人の理解を助ける大きなポイントです。
作成者のスキルに左右されることなく、誰でも同じクオリティのマニュアルを作成できます。

静止画だけでなく動画マニュアルも作れる

Teachme Biz では、動画を使ったマニュアルも作成できます。業務によっては、テキストだけでは説明しきれないほど細分化されているものや、映像で見せたほうがわかりやすいものもあります。そのようなとき、動画でのマニュアルは実に効果的です。
Teachme Bizを使えば、タブレットやスマートフォンで撮影した動画はもちろんのこと、パソコンのなかにある動画を利用したマニュアル作成が可能です。直感的に操作できるので、動画編集をしたことがないという方にもおすすめです。

クラウド保存でいつでもどこからでもアクセスできる

Teachme Bizはクラウド型のマニュアル作成・共有システムです。そのため、場所や時間を選ぶことなくマニュアルを確認できるというメリットがあります。またマニュアルを更新した場合も、常に最新のマニュアルを全員が見ることができます。

Teachme Bizで作成できるマニュアルのサンプル
【サンプル】資料や備品、置き場所
【サンプル】名刺の注文

まとめ

引き継ぎ書の重要性や、具体的な作成のポイントについて解説しました。しかし、実際に引き継ぐ段階になると、自身も業務に追われるなか引き継ぎ書を手早く作成するのが難しいことも少なくありません。

日頃から業務マニュアルを整備しておくことで、引き継ぎ書の作成が効率化できます。
手間ひまがかかるマニュアル作成には、直感的にマニュアルを作成・共有できるTeachme Bizがおすすめです。写真や動画を活用したわかりやすい資料作成が可能で、無料トライアルもあります。引き継ぎ書やマニュアル作成にお悩みの方は、ぜひTeachme Bizをご検討ください。


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