クレーム対応マニュアルを整備すべき理由と記載すべき項目

企業にとってクレーム対応は、顧客満足度や企業イメージを左右する重要な業務のひとつです。しかし、担当者ごとに対応方法が異なると、顧客への案内内容にばらつきが生じ、さらなるトラブルや信頼低下につながる可能性があります。
こうしたリスクを避けるためにも、クレーム対応マニュアルの整備がおすすめです。
本記事では、クレーム対応マニュアルが必要な理由をはじめ、作成手順や作成時のポイント、マニュアルに記載すべき項目などを解説します。
クレーム対応とは?
クレーム対応とは、商品・サービスや企業の対応に不満をもつ顧客からの指摘に対し、組織として適切に対処する業務を指します。クレーム内容は、提供したサービスが顧客が抱いていた期待を下回っていた、製品の品質不良、接客態度への不満、事務手続きの遅延など多岐にわたります。
クレーム対応を行う際には、以下のようなポイントを抑えることが大切です。
- 相手の話を最後まで聞き不満を抱かせてしまった部分に対して謝罪をする
- 現実的で具体的な代替案や解決策を即座に提示する
- 相手が感情的でも、冷静な態度を維持する
- 相手に非があるような主張は避ける など
上記のポイントを担当者全員が実践できるようにするためには、クレーム対応マニュアルを整備しておくのが効果的です。
クレーム対応マニュアルが必要な理由
クレーム対応マニュアルが必要な理由として、対応の品質を均一化できる、従業員の負担を軽減するなどが挙げられます。クレーム対応の品質向上を目指している方は、マニュアル整備の重要性を理解していきましょう。
対応の品質を均一化させる
クレーム対応マニュアルを整備することで、担当者の経験やスキル、個人の判断に依存せず、組織として統一された一定水準の対応が可能となります。
クレーム対応の品質が担当者ごとで異なると、回答や態度にバラつきが生じます。たとえば、最初に対応したAさんは「返金対応します」と回答したのにもかかわらず、次に対応したB課長は「規約上返金はできません」と返答してしまう事態が発生するでしょう。
これではクレームをしている顧客から「人によって言うことが違う」「前回の担当者は対応してくれたのに」などの不信感を与えてしまいます。
クレーム対応マニュアルを整備すれば、新入社員からベテランまで、誰が対応しても組織としての判断基準に基づいた適切な対応ができるようになります。
従業員の負担を軽減する
クレーム対応担当者の精神的、心理的ストレスを和らげ、離職率を低下させることが可能です。
クレーム対応は過度な要求や高圧的な態度にさらされるため、心理的負担が大きい業務です。適切な指針がなくひとりで問題を抱え込むと、業務そのものへ恐怖感やストレスを感じるようになり、休職や離職につながってしまいます。
クレーム対応のマニュアルが整備されていれば、「マニュアル通りに対応すればよい」「このラインを超えたら上司に代わってよい」という基準が明確になります。これにより、業務へのストレスが大幅に軽減され、定着率も向上するでしょう。
適切な解決策を瞬時に提示できるようになる
顧客からの不満や要求に対し、担当者が迷うことなく、その場で適切な判断や代替案を提示できるようになります。
クレーム対応において、確認のために対応が遅れてしまうと、顧客は「自分を軽視している」と感じ、さらなる怒りを招いてしまいます。また、「上司に確認します」と持ち帰る姿勢は、相手に不信感を与えかねません。そのため、現場の担当者が迷わずに瞬時に対処できるよう、明確な判断基準を共有しておくことが重要です。
クレーム対応マニュアルに判断基準や回答内容が記載されていれば、瞬時に適切な解決策を顧客に提示できるようになります。
悪い口コミを未然に防止する
クレーム対応マニュアルを整備することで、一次対応で顧客の不満を解決できるようになり、不適切な対応がSNSや口コミサイトで拡散されるのを防ぎます。
適切なクレーム対応ができず、顧客が「その場での対応に納得がいかなかった」「邪険に扱われた」と感じてしまうと、ネットでの悪評につながるでしょう。一度ネット上に書き込まれた悪い口コミは完全に消すことが難しく、新規顧客の獲得や採用活動に長期的な悪影響を及ぼします。
マニュアル整備を通して、迅速かつ誠実な一次対応が組織的にできるようになれば、その場で顧客の怒りや不満は解消され、ネットでの悪い口コミや炎上を防ぐことが可能です。
新人教育を効率化する
マニュアルを活用すれば、経験の浅い担当者や新入社員に対しても、短期間で一定水準の対応スキルを習得させられます。
マニュアルがなく、上司や先輩社員からの口頭伝達のみで教育を行っている場合、教育担当者には多大な時間と労力が必要となります。また、新人側も具体的な対応方法を理解するのに時間がかかり、「何を言われるかわからない」「怒鳴られたらどうしよう」と業務に対して過度な不安を抱いてしまうでしょう。
クレーム対応マニュアルを整備することで、教育担当者の負担を減らしつつ、新人が安心して業務を遂行できる体制を構築できます。
クレーム対応マニュアルを作成するステップ
クレーム対応マニュアルを作成する際には、現状の把握や対応フローの設計などをステップに沿って進めていく必要があります。これからクレーム対応マニュアルの整備を検討している担当者の方は、具体的な作成方法を確認しておきましょう。
1.クレーム対応の現状を把握する
まずは、過去の具体的なクレーム事例をベースに、現在の対応ルールや現場の課題を洗い出しましょう。現場の実情に合った役立つマニュアルを作るには、現時点での対応状況や改善ポイントを事前に特定しておく必要があるためです。
具体的には以下のような項目をリサーチしましょう。
- よくあるクレームの傾向
- 現時点のクレーム対応のルール
- スタッフが対応に苦戦しているポイント
- 過去に炎上してしまった原因 など
このとき、カスタマーサポートや店舗など現場のスタッフに直接ヒアリングを行い、明文化されていない暗黙知の部分まで把握するのが重要です。
2.「クレーム」の定義や基本方針を定める
次に、組織として「クレーム」の定義と、対応の基本方針を明確にしましょう。
担当者によって「正当なクレーム」と「悪質なクレーム」の基準がバラバラだと、組織として一貫した対応ができず、顧客の不信感や現場の混乱を招いてしまうためです。
具体的には、何をもってクレームとするかの線引きを決め、「迅速に事実確認を行う」「過剰な要求には応じない」といった共通の基本方針を明文化します。
これにより、顧客からの正当な要求と理不尽な要求を適切に切り分けて対応できるようになり、担当者全員が共通の線引きをもって一貫した対応ができるようになります。
3.クレーム対応のフローを設計する
次に、クレームの受付から事実確認、解決策の提示、事後報告に至るまでの一連の流れをフローチャートや業務プロセスとして設計します。これにより、担当者が「いつ、何をすべきか」という業務の全体像を把握し、迷わず迅速に行動できるようになります。
具体的には以下のようなフローを設計していきましょう。
- 初期対応:クレームの内容を最後まで聞き、不快にさせた部分について謝罪する
- 事実確認:クレームの原因となった当時の状況について事実確認を行う
- 解決策の提示:代替案や解決策を提示する
- クロージング:再度の謝罪と、意見をいただいたことへの感謝を伝える など
4.クレーム対応マニュアルを作成する
次に、設計した方針や対応フローをベースに、現場で活用できる具体的かつ実践的な文書にまとめていきます。マニュアルには以下のような項目について記載していきましょう。
- 基本方針・定義
- トークスクリプト
- ケース別シナリオ
- NGワード・NG行動 など
マニュアルを作成する際は、専門用語や社内用語などは避け、新人でも迷わず理解できる表現を意識しましょう。
また、緊急時でも必要な情報を迅速に探せるよう、図表やイラストを活用しつつ、箇条書きや目次を設けるようにするのも大切です。
以下の資料ではマニュアル作成の基本について解説しています。初めてマニュアルを作成するという方は、ぜひ参考にしてみてください。
5.教育体制を整える
作成したマニュアルを単に配布するだけでなく、全従業員がその内容を理解し、実践できるようになるよう現場での教育体制を構築しましょう。
どれほど完成度の高いマニュアルを作っても、ただ配布するだけでは誰にも読まれず、形骸化してしまうためです。
具体的には、クレーム対応に関する研修会の開催や、実際の業務を意識したロールプレイングなどを実施して、マニュアルの内容をしっかりと現場に浸透させましょう。
クレーム対応マニュアルを作成する際のポイント
クレーム対応マニュアルを作成する際には、定期的に内容を更新する、検索性の高さを確保するなども意識しておく必要があります。これらのポイントを押さえておくことで、より実効性の高いマニュアルを整備できるようになるでしょう。
定期的に内容を更新する
マニュアルを一度作成して終わりにせず、定期的なアップデートを行い、常に最新の状態をキープするようにしましょう。
ビジネス環境や顧客のトレンド、法改正などは常に変化しています。内容を更新しないままだと、現場の実情とマニュアルの記載内容がかけ離れてしまい、形骸化してしまう恐れがあります。そのため、年に1〜2回程度は内容を見直し、新たなクレーム事例やサービスのアップデートを反映させていきましょう。
マニュアル改訂のタイミングや具体的な手順が気になる方は、以下の記事も参考にしてください。
▼あわせて読みたい
マニュアル改訂の目的とは?ルール決めのコツや手順を徹底解説
瞬時に内容が理解できるようにする
文字だらけの長文のみを記載するのではなく、箇条書きや図解、フローチャート、イラストなどを多用して、瞬時に内容が理解できるようにするのが大切です。
クレーム対応は素早く適切な回答を提示することが求められるため、対応中に長文を読み内容を理解する余裕はありません。また、内容が複雑だったり、どこに何が書いてあるのかがわからなかったりすると、担当者の混乱やパニックを招き、適切な対応ができなくなってしまいます。
経験の浅い担当者でも、即座に行動に移せるようなマニュアルを整備しておきましょう。
以下の記事では、わかりやすいマニュアルを作成する具体的なポイントを解説しています。実効性の高いクレーム対応マニュアルを作成する方法を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
▼あわせて読みたい
マニュアルを「わかりやすく」する3つのポイント NG例と改善例を解説
検索性の高さを確保する
「商品不良」「遅延」「接客態度」などのケース別にカテゴリ分けを行い、今必要としている情報にすぐアクセスできる仕組みを整えておきましょう。
クレームは突然発生するものであり、マニュアルに記載されてある膨大な情報の中から、素早く必要な情報を見つける必要があります。即座に求められる内容にたどり着けなければ、顧客を長時間待たせることになり、クレーム対応の満足度を大きく低下させてしまうでしょう。
デジタル形式のマニュアルならキーワード検索機能、紙媒体のマニュアルなら詳細な目次や索引を整備するのが大切です。
Teachme Bizでマニュアルを作成、管理すれば、知りたい情報が記載されたマニュアルもAIが瞬時に探し出します。また、タグ検索やフォルダごとのマニュアル管理も可能です。検索性の高いマニュアル環境を整備したいなら、Teachme Bizがおすすめです。
クレーム対応マニュアルに記載すべき内容
クレーム対応マニュアルには、具体的な対応手順や事例ごとの対応例などを記載します。これからマニュアルの作成を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
クレーム対応時に意識する点
クレーム対応を行う際の心構えや基本的な姿勢を記載します。たとえば、以下のような項目を記載します。
| クレーム対応時に意識すべき点 | 概要 |
|---|---|
| 感情的な言葉は真に受けすぎない | お客様は「あなた個人」ではなく「企業・サービス」に怒っている。人格否定と捉えず、冷静さを保つ |
| 部分的な謝罪を徹底する | 全面的に非を認めるのではなく、「不快な思いをさせた」「手間をかけさせた」という部分について謝罪する |
| 言い訳を禁止する | 「ですが」「しかし」は使用してはいけない |
| 相手の言葉を遮らず傾聴する | クレーム時には、相手の話を遮らず、最後まで聞いてから話しはじめる |
具体的な対応を実践する前に、どのようなマインドでクレーム対応に向き合うべきなのか明確にしましょう。
具体的な対応手順
クレームが発生してから解決・クローズするまでの対応手順をステップ順に示します。
| ステップ | 具体的なアクション | セリフ例 |
|---|---|---|
| Step1:初期対応 | 相手の話をひたすら聞き、不快な思いをさせたことに対し、部分的な謝罪をする | この度はご不快な思いをさせてしまい、申し訳ございません |
| Step2:事実確認 | 5W2H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように、いくらで)を意識してヒアリングする | いつ頃お気づきになりましたでしょうか? |
| Step3:解決策・代替案の提示 | 事実に基づき、現実的で具体的な解決案・代替案を提示する | お客様の事例ですと、新しい商品との交換が可能となりますが、よろしいでしょうか? |
| Step4:クロージング(再度の謝罪と感謝) | 対応の最後には再びお詫びを述べるとともに、貴重なフィードバックをいただいたことへの感謝を伝える | 貴重なご指摘をいただきありがとうございました |
| Step5:記録の共有 | 対応内容をデータベース化して社内で共有する |
事例ごとの対応例
過去に発生した、あるいは発生する可能性が高い典型的なクレームをパターン化し、それぞれの具体的な解決策や応対の仕方をまとめます。
商品不良や接客態度など、クレームの種類に応じて最適な対応は異なります。あらかじめ「シナリオ」や「トークスクリプト」を用意しておくことで、担当者の経験やスキルにかかわらず、最適な対応が取れるようになるでしょう。
まずは頻出クレームトップ5程度の事例から作成し、新たなケースが発生する度に内容を更新していきましょう。
エスカレーションの基準と方法
現場の担当者だけで解決できない、または判断してはいけない事態が起きた際、「どのタイミングで」「誰に」「どのように」案件を引き継ぐべきかを記載しておきます。
| エスカレーションの基準例 | 具体的な条件例 |
|---|---|
| 時間の基準 |
|
| 内容の基準 |
|
| エスカレーションの方法 | 具体的な対応例 |
|---|---|
| 1.お客様へのご案内 | 「私では正確な判断ができかねますので、責任者にお繋ぎいたします」とワンクッションのフレーズを挟む |
| 2.社内での情報共有・引き継ぎ | 重要な情報(お客様名、経緯、お客様の現在の要求 など)を伝えて、上司へ引き継ぐ |
NGワードやNG行動
二次クレームを防ぐために、クレーム対応時に「やってはいけないこと」「言ってはいけないこと」を明確に禁止事項として記載しましょう。また、適切な言い換え例、対応例も記載しておくのが大切です。
| NGワード | 適切な言い換え例 |
|---|---|
| 「ですから」「さきほども申し上げましたが」 | 「説明が不足しており大変失礼いたしました。改めてご説明いたしますと…」 |
| 「普通は」「一般的には」 | 「私どもの認識(規定)では~となっております」 |
| 「できません」「無理です」 | 「あいにく〇〇はいたしかねますが、△△であれば対応可能でございます」 |
| NG行動& | 適切な対応例 |
|---|---|
| 「ながら」対応 | メモを取る以外のキーボード操作や作業はすべて中断し、傾聴に専念する |
| 安易な個人判断での口約束 | その場での即答を避け、「私の一存では判断いたしかねますので、上司に確認のうえ、折り返しご連絡いたします」と伝える |
記録のフォーマット
発生したクレームの内容や経緯、対応結果を、組織全体で正しく共有・蓄積するための「型(テンプレート)」を規定します。これらのデータをもとにクレームの原因分析や製品・サービスの改善に活かしていきましょう。
| 記載項目 | 具体的な入力内容 |
|---|---|
| 基本情報 |
|
| クレーム分類 |
|
| 事実関係の経緯 |
|
| 最終対応結果 |
|
まとめ
クレーム対応マニュアルは、対応品質の均一化や従業員の負担軽減、迅速な問題解決の実現に欠かせません。
マニュアルを整備することで、担当者ごとの対応のばらつきを抑えながら、顧客に対して一貫した対応を提供しやすくなります。また、新人教育の効率化にもつながるため、組織全体の顧客対応力向上にも効果的です。
Teachme Bizは、効率的にマニュアルを作成できるマニュアル作成・共有システムです。Teachme Bizには、独自のAI機能が搭載されており、気をつけるべき項目を入力するだけで、自動でマニュアルのドラフトが作成されます。
これにより、効率的にマニュアルを作成しながら、完成度の高い内容に仕上げることが可能です。
実際にTeachme Bizを活用してマニュアルを作成した企業「SHAKARIKI432 Co.,Ltd.」でも、有用性を実感しています。海外でも店舗を展開する日本式居酒屋チェーン「しゃかりき432”」では、店舗ごとに味のばらつきがあることがクレームへとつながっていました。
そこで、Teachme Bizを用いてマニュアルを作成。調理工程を映像化したり、各調理手順の必要性まで解説したりすることで、店舗間での料理の品質も安定しました。
結果、以前まで月10件あったクレームも1~2件にまで抑えることに成功しました。詳しくは以下の導入事例をご覧ください。
顧客クレームが8割減!サービス向上を目指す 調理指導の食品ロスも1/3に大幅カットーSHAKARIKI432 Co.,Ltd.
これからクレーム対応マニュアルを作成しようと考えている方は、以下のリンクよりお問い合わせください。








