お客様の商品をお預かりし、入出庫作業、在庫管理だけでなく、付加価値となる流通加工作業を含めた運営を一貫して提供する鈴与株式会社 第三DC事業部。繁忙期には月100名規模の現場スタッフが入ることもあり、かつての口頭指示を中心とした作業指導や引継ぎでは限界を感じていました。そこで同社はTeachme Bizを導入。写真や動画を用いたマニュアルで未経験者でも迷わず作業ができる環境を整えました。さらに複数拠点で同一の作業を受託する体制が必要となり、マニュアルを活用しながら高品質のサービスを提供することでお客様からのさらなる信頼醸成へとつなげています。今回、同事業部でセンターの運営管理を統括する野田様と、グループ会社として現場スタッフや実作業の管理を担う阿部様に、高品質な物流サービスを支える仕組みについて詳しくお話を伺いました。
お話を伺った方々
野田 明子 様 鈴与株式会社 第三DC事業部 次長
阿部 慶之 様 株式会社鈴与カーゴサービス北関東 主任
変化する物流ニーズ、多品種・多荷主のオペレーションがもたらす課題
―――まず、第三DC事業部が手掛けるDC・倉庫事業の特長についてお聞かせください。
野田様(以下、敬称略) 当社は、港湾運送事業、DC・倉庫事業、国内輸送事業、国際輸送・輸出入事業など、地域や社会、お取引先様のビジネスを支える多様な事業を展開しています。そのなかでDC・倉庫事業は、お客様の商品をお預かりして、調達からエンドユーザー様にお届けするまでを一貫してサポートしています。私の所属する第三DC事業部の拠点は埼玉県の川島と日高、坂戸にあり、主に食品や日用品、輸入品などお客様(荷主)の商品を管理し、調達から納品までの物流をサポートすることが日々の業務です。
一般的な倉庫業は「保管する」ことが中心ですが、当事業部の強みは、倉庫内で付加価値をつけてお客様に提供するサービス体制にあります。お菓子のギフトセットの箱詰めやラッピング、輸入品への品質表示ラベル貼りなど、細かな流通加工までをトータルで担えることが特長です。

鈴与株式会社 第三DC事業部 次長 野田 明子様
―――最近、物流業界で感じる変化はありますか。
野田 やはり労働力不足が深刻で、いかに効率的にサービスをご提供できるかがポイントになっています。業務面ではRPAを導入して自動化を図ったり、作業面では複数件の出荷をまとめて取りに行くマルチピッキングなど、効率化のための工夫を重ねたり、仕分け機などの省人化機械を導入したりして対応を進めてきました。将来的にはさらに人手が少なくなりますから、誰でもスピーディーに業務を進行できる仕組みが欠かせません。
阿部様(以下、敬称略) 現場の立場としては、かつてはフォークリフトでパレットごと動かす作業が中心でしたが、最近は細かい仕分けや流通加工が増えてきたと感じています。法人向けの大ロットだけでなく、個人のお客様向けに細々とした単位で届ける案件も増えており、現場に求められる作業の「細かさ」や「複雑さ」が増している印象です。
野田 当社がTeachme Bizを導入したのは10年前ですが、「誰が作業しても同じ品質を再現できる仕組み」への必要性は、導入当時から一段と高まっていると感じます。

株式会社鈴与カーゴサービス北関東 主任 阿部 慶之様
月100名規模の現場スタッフ雇用・納品先ごとに異なる複雑な出荷ルール
―――Teachme Biz導入前の課題感について教えてください。
野田 2017年のTeachme Biz導入前、現場で最も大きな課題となっていたのは、口頭教育に頼らざるを得ない運用の限界でした。私たちの現場では、繁忙期になると月100名規模で新しい派遣スタッフの雇用が必要となります。以前は現場の指導役が都度口頭で教え、巡回しながら手順通りに作業を行えているかチェックしていました。しかし、この体制では管理者の負担があまりにも大きく、「担当者が休んだら現場が止まってしまう」という属人化のリスクを抱えていました。
さらに、細かい作業手順を言葉だけで正確に伝えきれないことも悩みでした。 BtoBのお客様の場合、納品先ごとに同梱する書類や梱包方法など納品ルールが細かく異なります。商品の向きや配置が厳密に決まっている商品のセッティングや、シワのないラベル貼りなど、 わずかな対応漏れがお客様対応の品質を損なうリスクがありました。
作業を伝える手段として、自作のハンドブックや、オフィスソフトで作成したマニュアルも存在していました。しかし、ファイルの保管場所が散在して、どこに何があるか分からなくなったり、ルールの更新が追いつかなかったりなど、 問題が山積していました。
また、当社の物流センターでは、サービスや作業フロー全体の組み立てを行うのは「鈴与株式会社」、現場のスタッフや商品を管理して実作業を担うのはグループ会社の「鈴与カーゴサービス」と役割を分担しています。かつては、マニュアル作成も鈴与側で行っていましたが、実際に現場で手を動かす作業者にとって、必ずしも分かりやすいものになっていなかったのです。
経験値に依存しない現場へ。「現場視点のマニュアル」で作業品質を統一化
―――現場ではどのように運用されていますか。
野田 Teachme Bizの導入を機に、本来の役割分担に沿って鈴与が「作業の組み立て(企画)」を、鈴与カーゴサービスが現場目線での「マニュアル化と展開」を担う形へとシフトしました。現在は、現場主導で作業者目線のマニュアルを作成しています。
阿部 作り手としては、Teachme Bizは操作がシンプルで非常に作りやすいと感じています。あらかじめ決められたフォーマットがあるため、誰が作っても情報が偏らず、シンプルで分かりやすいものに仕上がります。
―――作成にあたって工夫されているポイントはありますか。
阿部 新規作成したマニュアルは、あえてその作業の経験がない人に一度試してもらい、「実際にそのマニュアルだけで作業ができるか」を確認しています。
また、お客様別のマニュアル更新は各担当責任者が行うルールにしています。たとえば、同梱する紙のサイズが変わって「今日からこの位置で折って入れてほしい」といった細かな変更指示がお客様からあった場合は、マニュアル内の該当するステップを差し替えて最新の状態に維持しています
お客様ごとに異なる複雑な手順も、Teachme Bizで写真や動画を用いてステップごとにわかりやすく整理。
拠点間のナレッジを横断的に集約。全拠点で安定した作業品質を再現
―――どのようなマニュアルを作成していますか。
阿部 第三DC事業部では、入荷・流通加工・ピッキング・梱包・出荷といった倉庫業務のほぼ全工程をTeachme Bizでマニュアル化しています。
なかでもピッキングや梱包の手順のように、言葉だけでは伝えにくい部分は写真や動画で伝わりやすくなったと実感しています。たとえば、梱包時の緩衝材の入れ方ひとつをとっても、「ただ丸めて入れる」のと「商品の周りをしっかり囲むように入れる」のとでは異なります。
こうした言葉だけではニュアンスが伝わりにくい細かなルールも、写真や動画で示すことで、現場に入ったばかりの方でも迷わずに作業できるようになっています。
―――拠点間のナレッジの共有という面ではいかがでしょうか。
野田 1社のお客様で、全国の複数の拠点にまたがって同じオペレーションを行うケースがありますが、その際の「他拠点への横展開」において利便性を感じています。
たとえば、ある1つの拠点がTeachme Bizでマニュアルを構築してくれれば、他の拠点も参照できるため、同じマニュアルを活用することができます。
以前は拠点ごと個別のフォルダでバラバラに管理していたため、他拠点での取り組みやノウハウが外からは見えにくい状態でした。Teachme Biz上で一元管理することで、各拠点が持つナレッジを横断的に集約、共有し合えるようになりました。
阿部 他の拠点への応援に行きやすくなったことも大きな効果です。ピッキング作業などで、お客様によって使うメニューやシステムが異なる場合がありますが、マニュアルに「このお客様のときはこのメニューを開いて、ここを押す」という手順が整理されているため、応援先でも迷わず作業に入れます。

お客様との信頼関係構築に。納品先ごとの細かなルールも事前共有
―――マニュアル整備によって、お客様への対応はどう変わりましたか。
野田 納品先ごとに細かなルールが異なるBtoBの物流では、以前はお客様へその都度指示を仰ぐ必要がありました。
しかし現在は、お客様よりご指示いただいた内容をTeachme Biz上で整備した手順書を当社から提示しながら、「私たちはこの手順・認識で運営をいたします」と事前にお客様とのすり合わせの上、作業を行っています。あらかじめ認識を共有できるようになり、都度指示をいただく必要もなく、また、こちらから都度指示を仰ぐ必要もなくなりました。お客様側の発注業務の負荷軽減につながっていますし、写真付きの手順書で作業イメージも伝わるため、「この手順で進めているなら安心」と高い評価をいただけています。
業務標準化のその先。現場スタッフが長く安心して、長く働ける現場へ
―――今後Teachme Bizをどのように活用していきたいですか。
阿部 外部の方でも閲覧できる「外部公開機能」の活用を検討しています。たとえば、センターに納品で来訪されるトラックのドライバー様向けに、車輛の駐車位置や受付方法などを案内するマニュアルのQRコードを設置します。そうすれば、現場でスタッフがイチから口頭説明をしなくてもスムーズに動いていただけるようになるため、双方の業務負担が軽減されると期待しています。
また、水害や地震などの災害対策として、入口に避難経路のマニュアルを読み出すQRコードを掲示しておくといった運用も検討しています。万が一の事態におけるBCP対策として、こうした仕組みを整えることで、現場で働く方の安心感につながると期待しています。
野田 Teachme Bizを導入して今年で10年が経ちます。現場業務の標準化を進め、教育の効率化や確かな業務品質の維持という土台を作ることができました。
次のステップとして取り組みたいのが、現場スタッフの「モチベーションアップ」になる活用です。 たとえば、多様なお客様の現場ごとに用意されている複数の作業マニュアルを、一種の「スキル検定」のように活用すれば、「自分の成長やできるようになった仕事」が目に見えるようになると思います。
働く方のモチベーションや楽しさにつながりますし、管理者側にとっても教育の進捗がひと目で把握しやすくなります。長く働いていただくためにも、こうした仕組みは大切だと感じています。

※掲載している内容、所属や役職は取材を実施した2026年4月当時のものです

