株式会社ジェイアンドシーは、日本の菓子や食品、日用雑貨を世界へ届ける輸出入の貿易商社。2万アイテム×90顧客×20か国を超える取引を扱うなか、複雑な貿易実務や顧客別の特殊条件が担当者の頭の中に蓄積され、担当者が不在になると業務が止まる属人化が課題でした。
年商が50億円から100億円へと急成長する中で属人化がさらに深刻化する状況において、その煩雑な輸出入手順を、Teachme Bizで画像と動画で可視化。その結果、社内の問い合わせは約7割減。繁忙期のギフト発注書作成は1件1時間半から40分に短縮。長年の課題だった属人化を解消し、誰もが迷わず作業できる「業務の標準化」を実現した取り組みを、全体統括する越智 博様、輸出の受発注業務と現場教育を担う河合 有理奈様、大脇 京子様に伺いました。
同社ではTeachme Bizを当初から全社導入し、各部門で活用を進めてきました(現在では関連グループ会社へも活用が拡大)。今回は、その中でも特に利用が活発で大きな成果を上げている「受発注業務」の取り組みにフォーカスしてお届けします。
※Teachme Biz Award 2025「ダイバーシティ賞」受賞企業
お話を伺った方々
越智 博 様 取締役 社長室長(右)
河合 有理奈 様 海外事業部 営業推進課 係長(中)
大脇 京子 様 海外事業部 営業推進課 主任(左)
「聞けばいい」が当たり前だった貿易実務現場で、属人化を解き、顧客対応の速度を上げる
―――御社の事業の強みや、海外事業部 営業推進課の役割についてお聞かせください。
越智様(以下、敬称略) 弊社の主力は、スーパーで見かけるような身近な日本の商品を世界20カ国以上へ届ける輸出事業で、売上の約95%を占めています。一方で近年は、自社ブランドの菓子を中国から輸入して国内の量販店へ広げる取り組みにも力を入れています。
当社は、社員の3分の1が外国籍、7割が女性という多様な組織で、国内の貿易商社としては珍しい構成です。本部長は香港出身で、社長は中国語にも精通しており、日本語と中国語の両輪で商談できることが強みのひとつです。コロナ前に約50億円だった売上は、現在は約100億円規模へと伸び、さらに成長を続けています。

河合様(以下、敬称略) 営業推進課では、海外のお客様からの注文を受注し、国内の仕入れ先へ発注する業務を担っています。私はそれに加えて新人社員や中途社員の教育や、他部署との連携にも関わっています。
専門用語と特殊条件、ベテランの頭の中に蓄積された貿易実務
―――Teachme Biz導入前、貿易実務の現場や教育にどのような難しさがありましたか。
河合 貿易実務は日常では使わない専門用語が多く、業界特有の知識も必要です。私も入社時にとても大変だと感じました。FOB※1やCFR※2、コレクト(運賃着払い)やプリペイド(運賃元払い)といった言葉は契約や金額に直結するため、新人のうちからしっかり理解しなければなりません。噛み砕いて伝える必要があり、教育に時間がかかっていました。
※2 CFR(Cost and Freight):FOBの条件(船積みまでの費用・リスク負担)に加え、輸入側の港までの海上運賃を売り手が負担する

大脇様(以下、敬称略) 基本的な知識の習得に2、3カ月、実務に慣れるにはさらに時間が必要でした。また、久しぶりに行う業務ではベテランであっても正確な手順を忘れることもあったり、担当者が不在だと誰も代行できず「明日になります」と回答せざるを得ない場面もあったりしました。
越智 扱う商品は菓子から日用雑貨まで幅広く、値上げのたびに情報更新も発生します。商品マスターの管理など受発注以外の業務も多く、すべてを網羅したマニュアルを整えること自体が大きな負荷で、属人化が起きていました。
―――現場で「ヒヤリ」とした経験はありましたか。
大脇 1回の注文で100以上のアイテムが動くこともあり、国ごとの特殊な条件をすべて目視で確認しきれないことがありました。
たとえば、輸出先の国によっては「輸出向けの賞味期間で発注できる商品」があります。過去に、その条件を見落として、通常の賞味期間のまま発注書が作成されてしまったことがありました。
幸い手配が進む前に気づいて回避できたのですが、もしそのまま進んでいれば、現地に販売可能期間の短い商品が届いてしまいます。お客様の販売機会を奪い、大きな損失につながりかねないヒヤリとした出来事でした。

河合 海外へ輸出するギフト商品は、発注書の作成が複雑で注意事項も多く、難易度が高い業務のひとつです。以前は担当者が個人で作ったメモを頼りに作業していたため、その人が不在時には他のメンバーが代わりに対応できませんでした。年に数回しか発生しない業務ゆえ、1文字の入力漏れがトラブルにつながりかねず、「慣れた担当者に任せたい」という空気が私も含めて現場にはありました。
「誰でもできそう」という直感が、全社展開の入り口になった
―――マニュアル整備に取り組もうと思ったきっかけを教えてください。
越智 一番のきっかけは属人化への危機感です。売上が伸び、人も増え、産休や育休に入る社員も多いなかで、知識を持つ人が長期離脱してしまうと業務が止まってしまうという懸念がありました。また、各部署にマニュアルの作成を任せても、フォーマットが揃わず、管理もできず、教育まで属人化して教える側も特定の人に偏ってしまう。会社全体で管理できる共通の仕組みが必要だと考えました。
―――数あるツールのなかで、Teachme Bizを選んだ決め手は何でしたか。
越智 DX関連の展示会によく足を運んでおり、ネットで調べても名前がよく挙がっていたのがTeachme Bizでした。資料請求して、Teachme Bizのデモ画面を見たとき、これなら誰でもできると直感し、ほかは試さずに決めました。画像や文章を入れる箇所などフォーマットが決まっており、誰が作っても同じアウトプットが生まれる仕組みに可能性を感じたこと、そして外国籍の社員が多くても画像や動画で視覚的に伝わると感じたことが大きかったです。
―――社内への展開はどのように進めましたか。
大脇 当時のIT担当と話し合い、各部署にどんなマニュアルを作るかを書き出すところから始めました。誰がいつまでに作るかを一覧で管理し、重複しないよう分担しました。
最初にこうして目標と期限をしっかり設定したことで、「自分がやらなければ」という責任感が生まれ、みんな必死に取り組めたのだと思います。
ただ、作り始めの頃は説明を盛り込みすぎてしまい、見出しや手順を端的に書く感覚をつかむのに苦労しました。詳しく書きすぎると見る気が失せる、長くなるなら手順書を分けたほうがよい、と助言を受けながら整えていきました。
―――作ったマニュアルは、現場でどのように受け入れられましたか。
大脇 新人スタッフの基礎教育後、個別案件の実務に入ったら「まずTeachme Bizを見て、分からなければ聞いて」と促していました。すると、つきっきりで指導をしなくても、マニュアルを見ながら自分で顧客別の発注書を作れるようになったんです。教えなくても特殊な発注書まで完成させる姿には、指導する側としても感動しました!私たちの部署ではそうした効果をみんなで実感したため活用が活発になり、自然と浸透していきました。
河合 私が産休から復帰するとTeachme Bizが導入されており、業務や運用ルールが大きく変わっていました。以前なら周りに何度も聞き直しづらかった細かい手順も、Teachme Bizを探せばその通りに進められます。動画中心のマニュアルでシステム画面上のPC作業手順が分かりやすく、迷ったときに自己解決しながら業務を進められるのが大きな助けになりました。


受発注入力の手順を示したマニュアル。基幹システムへの入力方法を、ステップごとに画像や動画に操作の説明を添えて整理。エラー時の対処や関連手順へのリンクもまとめられ、誰でも同じ手順をたどれる構成に。
―――部署を超えた活用はありましたか。
河合 社内で部門間の業務理解を深める講座を開いた際、トレーニング機能を活用して他部署のメンバーに受発注のマニュアルを試してもらいました。トレーニング後の理解度テストで盛り上がり、Teachme Bizの使いやすさが社内全体に改めて広まったと感じています。

1件1時間半の作業が40分に短縮。動画マニュアルが生んだ現場の変化
―――具体的にどのような業務をマニュアル化し、どのような効果が出ていますか。
大脇 もっとも注力したのは「基幹システムの受発注操作手順」です。手順を覚えるのが難しく属人化の温床になっていた業務を、画面録画の動画でステップごとに可視化しました。複雑な対応が必要なお客様向けには、普段使用する顧客管理システムに、該当するTeachme Bizの手順書へのリンクを設置し、すぐに参照できる動線も作っています。
作業時に必ず正しい手順が目に入る仕組みにしたことで、複雑なルールだとしても誰もが迷わず正確な発注書を作れるようになりました。
効果は目に見えて出ました。繁忙期に海外へ輸出するギフト商品の発注書作成は、作成から内容チェックまで含めて以前は1件あたり1時間半かかっていましたが、40分ほどに短縮されました。繁忙期はこの作業がまとまった件数で発生するため、積み重なると全体で相当な時間の創出につながっています。
河合 以前はギフトの繁忙期に、夜8時まで残業することは連日ありました。属人化していて担当者しか発注書を作れなかったためです。Teachme Bizを導入してからは、担当者以外のメンバーもマニュアルを見て作れるようになり、その発注書作成のために特定メンバーが残業することはなくなりました。
大脇 金銭的な損失につながるミスは、思い出せないほどなくなりました。長く勤めたベテラン社員が退職した時期もありましたが、辞める前に作ってもらったマニュアルのおかげで、退職後も問題なく業務対応ができました。
また以前は、書類作成や注文情報の共有に関する質問が1日に20件以上発生していましたが、いまは5~6件に減り、7割程度少なくなっています。

―――多様な国籍の社員の方が多いなか、マニュアルの見せ方で工夫している点はありますか。
河合 自動翻訳機能は使わず、動画と画像で視覚的に分かるようにしています。日本語を理解できる外国籍社員が多いとはいえ、説明文が長いとどうしても理解に時間がかかります。そのため、言葉は短くシンプルにし、「見れば直感的にわかる」ことを優先しています。
大脇 多国籍対応に加えて、拠点間での情報共有にも役立っています。国内にある他の拠点や倉庫などでも、クラウド上にあるので同じマニュアルを見られます。現場側で作ったマニュアルを管理側も確認でき、互いの業務を見合えるようになりました。部署横断の理解講座とあわせ、会社全体で業務理解が進んでいます。

―――今後、Teachme Bizをどのように活用していきたいとお考えですか。
河合 たとえば輸出先の国の表示義務や検疫の基準、日本側の輸出手続きなど、貿易は相手国・自国双方のルールが頻繁に変わります。一度作ったら終わりではなく、基準が変われば該当する手順書も直す、というように、変更のたびに都度更新し続ける運用を大事にしたいです。また、毎年新卒社員が入るので、トレーニング機能もしっかり活用していきたいと考えています。
大脇 テーマごとにマニュアルをまとめられるポータルページ機能を使いたいです。関連する業務を体系的にまとめられると、業務理解が深まりやすいと感じています。そうした活用も広げていきたいです。
越智 現在進めているDXプロジェクトの中で、当社の事業全体像を可視化するための「業務フロー図」を作成し、そこにTeachme Bizを連携させていく計画です。
業務フロー上の各プロセスをクリックすると、Teachme Bizの詳細なマニュアルが直接立ち上がる仕組みを作っていきます。若手社員でも、会社全体の動きと自分の担当業務の手順を、より理解できる環境を整えていきたいですね。
まず「試す」こと。危機感のあるメンバーを集め、小さく始める
―――これからマニュアル整備に取り組む企業へ、メッセージをお願いします。
越智 マニュアル整備に悩む企業へ伝えるとすれば、「まずはトライアルで試してみる」をお勧めしたいです。
また、大がかりに始めようとするより、課題を感じているメンバーを選抜してスモールスタートで進めるほうがハードルは下がります。導入推進者に誰をアサインするか、それが何より重要だと、今も感じています。わたし一人ではTeachme Biz導入をここまでやり切れなかったと思います。牽引してくれた当社メンバーには本当に感謝しています。
※掲載している内容、所属や役職は取材を実施した2026年5月当時のものです。

