寿司居酒屋「鮨 酒 肴 杉玉」を100店舗超展開する株式会社FOOD & LIFE INNOVATIONS。店舗数の拡大に伴い、本部へ直接レシピを確認する運用や、店長が同じ内容を繰り返し教える新人教育に限界が生じていました。そこで同社はTeachme Bizを導入し、動画を活用した教育の仕組みを整備。さらにAI機能により、半年弱で動画マニュアル約600本を追加し、教育コンテンツをスピーディに拡充しました。新人オリエンテーションの対面説明は90分から10〜15分に短縮され、年間換算で約1,500時間の教育工数を削減。100店舗を超えても調理・接客品質を標準化し、300店舗を見据えた教育体制をどのように築いたのか伺いました。
お話を伺った方々
橋本 果奈 様 営業企画部 営業企画課 課長
星野 葵 様 営業企画部 営業企画課 主任
松本 克義 様 鮨 酒 肴 杉玉 麻布十番 店長
店内調理だからこそ、100店舗超で品質を保つことが課題に
―――まず、「鮨 酒 肴 杉玉」の特徴について教えてください。
橋本様(以下、敬称略)当社が展開する寿司居酒屋「鮨 酒 肴 杉玉」は、グループの調達力を生かし、見た目や味、温度にこだわった料理と、常時十数種類の地酒を提供しています。
他の居酒屋業態と大きく異なるのは「店内調理」の多さです。同じ食材を使っていても、魚の切り方や盛り付け、シャリの温度、調理の段取りによって、料理の見た目や味わい、お客様が受ける印象は変わります。人によって品質に差が出やすい業態だからこそ、全店舗で同じ品質を維持することが重要です。
―――店舗数が増えるなかで、どのような課題が見えてきたのでしょうか。
橋本 10〜20店舗だった頃は、店長と本部のレシピ担当者との距離が近く、分からないことがあれば直接電話で確認していました。しかし、直営店だけでなくフランチャイズの加盟店様も増え、100店舗を超えると、その運用は難しくなりました。本部との間にはSV(スーパーバイザー)が入る体制となり、回答までに時間がかかるようになったのです。
また、忙しい営業中は、「あとで聞こう」と確認を後回しにし、そのまま自己判断で進めてしまうこともあります。その積み重ねが、店舗ごとの品質差を生む一因になっていました。
加盟店様にとっても、「SVが忙しそうだから聞きづらい」といった負担が生じないよう、誰もが必要なときに正しい手順を確認できる仕組みを整えることが急務でした。

営業企画部 営業企画課 課長 橋本 果奈 様
研修期間は実質2週間。店長1人で20〜30名を教育していた
星野様(以下、敬称略) 店舗が増えるなか、全店でメニューの品質をどう保つか。それに加えて、アルバイトスタッフの教育も大きな課題でした。
毎月約100名、年間では約1,200名の新人スタッフが入社します。電話対応や予約受付、接客など、「当たり前」と思っていた基礎から教える必要がありました。
新店ではホールスタッフ20〜30名が入社することもあります。実質2週間の研修期間でこの人数を教育します。十分に理解しきれないままオープンし、営業しながら覚えるケースも少なくありませんでした。

松本様(以下、敬称略) 現場では店長がつきっきりで教えるしかありませんでした。キッチンでは、料理を実際に作って見せ、できるようになるまで横について教えます。その間、店長が担うほかの業務は止まってしまいます。
また、麻布十番店では、夜のスタッフの約7割が外国籍の方です。言語や経験が異なるスタッフに、どのように分かりやすく伝え、早く仕事を任せられる状態にするか。それが現場の悩みでした。

文字だけでは伝わらない。動画で「正解」を共有できる仕組みが必要だった
―――Teachme Biz導入以前は、教育やレシピ共有をどう行っていましたか。
星野 原価管理システムでレシピも管理し、店舗ではタブレットから確認していました。ただ、見られるのは文字と画像だけです。加えて、調理中にすぐ確認できるよう、キッチンには「早見表」と呼ぶ、Excelで作成した紙のレシピも掲示していました
―――紙のレシピでは、どのような点に限界を感じていましたか。
松本 早見表は、A4の紙一枚にメニューの写真が並び、グラム数と簡単な説明が書かれているものでした。ただ、「鯖を4枚乗せる」と書かれていても、どの向きで、どのように並べるのかまでは分かりません。同じグラムでも、切り方によって見た目や食感は変わります。
料理は文字だけでは伝えきれないことが本当に多いです。手元の動きや包丁の入れ方、盛り付けの細かなニュアンスまで理解することは難しく、店長の経験によって仕上がりに差が出ることもありました。私自身も「何が杉玉としての正解なのか」を先輩や本部へ何度も確認しながら覚えていました。
星野 本部からは、新しいキャンペーン情報やレシピをPDFにしてメールで送っていましたが、各店舗で実際に確認されたかを把握する手段がありませんでした。分かりやすく伝えることに加え、現場まで確実に届ける仕組みも必要でした。
全店へのマニュアル浸透を徹底し、「まず見る」を習慣化
―――導入の決め手と、最初に触れたときの印象を教えてください。
橋本 動画であれば、調理や接客の細かなニュアンスまで伝えられると考えました。導入の決め手は「使いやすさ」です。直感的に操作でき、誰でも簡単に動画マニュアルを作成できると感じました。
星野 もう一つの決め手は、店舗ごとの閲覧状況を確認できることです。どの店舗が見たのかを確認できるため、発信して終わりではなく、本部からの情報が現場まで届いたかを確認できる点も魅力でした。
―――離れた店舗へ、新しいツールをどのように定着させていったのでしょうか。
星野 正直なところ、導入当初はなかなか閲覧数が伸びませんでした。そこでアクセスログを確認し、新メニュー開始から1週間経っても対象のマニュアルを見ていない店舗を抽出して、1店舗ずつフォローしていきました。
閲覧状況を確認しながら私たち本部から店舗へ声を掛ける取り組みを続けたことで、「まずTeachme Bizを見る」という習慣が少しずつ定着していきました。また、情報漏えい対策として実施している定期的なパスワード変更も、ログインするきっかけになっています。
松本 現場でも、「ティーチミー見た?」が自然な声掛けとして定着しています。紙の早見表はキッチンまで見に行く必要がありますが、Teachme Bizなら手元の端末から確認できます。勤務前や休憩中でも「あのメニューはどう作るんだっけ」と気軽に見返せるので、今では現場に欠かせないツールになっています。

魚の切り方から接客のひと言まで。「杉玉の基準」を動画で共有
―――現在は、どのような業務をマニュアル化していますか。
星野 レシピや接客サービスだけでなく、レジ操作、予約台帳、衛生管理、新人オリエンテーションまで幅広く作成しています。
キッチンでは、動画で手元の動きや盛り付けまで確認できるため、言葉では伝えにくい細かなコツも共有できます。外国籍スタッフにも伝わりやすく、「見れば分かる」教育ができるようになりました。
ホールでも、ご案内やメニュー説明、日本酒の注ぎ方など、接客の基準を動画で共有しています。スタッフによって教え方が変わることが減り、店舗全体でサービス品質を揃えやすくなりました。
食材や分量に加え、魚の切り方や盛り付けの順番を動画で確認できるレシピマニュアル
星野 また、海外店舗向けのレシピやスポットワーカー向けの手洗いマニュアルなども作成しています。海外では自動翻訳機能も活用しており、日本語で作成したマニュアルを、それぞれの言語で確認できます。
松本 新メニューや販促情報は開始の約3週間前に公開されます。店舗では事前に作り方が確認でき、手間のかかるメニューはシフトの人員を厚くするなど、営業開始に向けた準備にも役立っています。

―――動画マニュアルの作成時に意識していることはありますか。
星野 レシピは、実際に調理するスタッフの目線で撮影しています。作業する人が見ている景色に近づけることで、動画を見ながら調理手順をそのまま再現しやすくなります。
一方、ホールの動画マニュアルはお客様目線です。私自身がお客様役になり、「どのように迎えられたらうれしいか」「料理がどう見えるか」を意識して撮影します。料理を置く位置や皿の向き、スタッフの立ち位置や表情まで、お客様の視点で見せることで、接客のイメージを具体的に共有できるようになりました。

AI機能により、教育に必要な動画マニュアルを半年弱で約600本作成
―――マニュアル作成時にはAI機能を活用していると伺いました。どのように活用していますか。
星野 マニュアル化したい業務の範囲が広がる一方、作成工数が大きな負担になっていました。そこで活用しているのがTeachme BizのAI機能です。動画をアップロードするだけで、AIが工程ごとに動画を分割し、各ステップの説明文まで自動で作成してくれます。
動画の切り出し位置を調整する画面。AIが解析して作業ごとに区切り、工程ごとに説明文(動画のテロップ)まで自動で生成する
動画を工程ごとに分割した後、AIが提案したマニュアル構成。タイトルや概要、各ステップの説明文も自動で作成される
星野 さらに、修正方針をチャット形式で指示できる「おまかせ編集アシスタント」を使えば、タイトルや説明文の表現をまとめて整えられます。文章を一つずつ修正する必要がなくなり、作成負担が大きく減りました。
「おまかせ編集アシスタント」の利用画面。チャットで修正方針を伝えるだけで、AIが指示を読み取り、表紙とステップの文面を一括で整える
星野 マニュアル作成で最も時間がかかるのが、撮影した動画のカット編集や説明文(テロップ)の入力です。しかしAIが自動で生成してくれるため、以前は1本あたり1〜2日かかっていた作成期間が、現在は早ければ半日程度まで短縮されました。
2022年に導入し、今(2026年)では公開マニュアル数が累計1,440本に達しています。そのうち約600本は、AI機能を使い始めた直近半年弱で追加したものです。
橋本 これまではマニュアル作成に慣れた担当者へ業務が集中しがちでしたが、AIが動画の分割や説明文の下書きを担うことで、他のメンバーでも一定の品質で作成しやすくなっています。結果、教育に必要なマニュアルを早く整備し、全店舗へ展開できるようになりました。
※Teachme BizのAI機能について:https://biz.teachme.jp/function/teachmeai/
新人説明は90分から10〜15分へ。年間換算で約1,500時間の教育工数を削減
―――教育の現場では、どんな効果が表れていますか。
星野 新人オリエンテーションが大きく変わりました。以前は会社の理念や店舗ルール、手洗いなどを店長が1人ひとりに約90分かけて同じ説明を繰り返していました。現在は基本的な内容を動画マニュアルで事前に学んでもらい、対面では補足や質問対応が中心です。そのため、説明時間は10〜15分程度になりました。新人スタッフ1人あたり約75分の削減です。
毎月約100名(年間約1,200名)の新人が入社するため、掛け合わせると「1.25時間 × 1,200名 = 年間約1,500時間」の教育工数削減が見込まれます。
新店でもオープン前に動画で学べるため、営業初日の理解度は以前より高まっています。
松本 アルバイトスタッフが料理を覚えるスピードも、明らかに速くなりました。以前は実際に何度も作業を見せながら教えていましたが、今は動画で基本を確認したうえで実践に入れるため、初めて担当するメニューでもスムーズに作業できるようになっています。
冷菜など一部のメニューでは、ピーク時の提供時間が約20分から10分程度まで短縮した場面もありました。
―――接客サービスの面では、どのような変化を感じていますか。
松本 接客に関するクレームも、体感として減っています。例えば、QRコードから注文できることだけを案内するのではなく、「スタッフへのご注文も可能です」とひと言添える。動画で接客の基準を共有することで、こうした細かな対応まで店舗全体で揃えられるようになりました。クレームが起きてから対応するのではなく、起きにくい接客へ変わってきたと感じています。
300店舗を支える教育基盤へ。共通の「教科書」と店舗の個性を両立する
―――今後、Teachme Bizをどう広げていきたいですか。
星野 当社では、全店舗で共通して教える内容を「教科書」と呼んでいます。今後はキッチンやホールだけでなく、その内容をさらに充実させ、全店舗で共通化すべき基本をTeachme Bizで整備していきたいと考えています。
松本 店長業務にも広げたいですね。シフト作成や月末の作業、棚卸し、レジ登録など、店長になってから初めて覚える業務はたくさんあります。そうした業務もTeachme Bizで学べるようになれば、店長育成まで標準化できます。
ただ、店舗の個性までなくしたいわけではありません。基本はTeachme Bizで揃え、その先のお客様との接し方や店舗づくりは、それぞれの店長らしさを生かしていきたいと思っています。
―――最後に、店舗数の拡大と品質維持に課題を感じている飲食企業へメッセージをお願いします。
橋本 店舗数が増えるほど、教育や品質を人に頼る運用には限界があります。だからこそ、誰もが必要なときに同じ基準を確認できる「教科書」を整えておくことが大切だと感じています。その土台があるからこそ、店舗ごとの接客やサービスの個性も生かせます。
星野 Teachme Bizを導入してからは、新メニューや販促初日の立ち上がりが早くなり、どの店舗でも品質を揃えられるようになったと実感しています。
また、同じ説明を何度も繰り返す負担が減ったことで、店長や教育担当者はスタッフ一人ひとりへのフォローや、お客様と向き合う時間を確保できるようになりました。
店舗を増やしても品質を維持したい、教育を標準化したいと考えている企業にとって、Teachme Bizは店舗運営を支える教育基盤として、大きな力になってくれると思います。

※掲載している内容、所属や役職は取材を実施した2026年6月当時のものです。

