“For the Customers(すべてはお客様のために)”の理念のもと、商圏ニーズに応じたさまざまな形態の店舗を展開する株式会社ベイシア様。衣食住を総合的に扱う『スーパーセンター』や食品に特化した中でも大型の『スーパーマーケット』、小型の『ベイシアマート』など、「より良いものをより安く」提供するべく現在は関東中心に1都14県下に出店しています。
店舗オペレーション再構築のため、Teachme Bizを導入したのが2018年。小型店舗の『ベイシアマート』から『ベイシア』全ての店舗形態へ展開し、DXに向けてますます幅広い活用を計画されています。導入から数年を経過し実感されている前後の変化や今後の活用など、同社 ベイシアオペレーションパートナーズ 役員待遇 鈴木 伸男様、作業改善部 作業改善グループ マネジャー 池田 健二様にお話を伺いました。
標準化の仕組みがなければ、良い施策でも現場で再現されない
―――導入の背景を教えてください。
鈴木様 標準化の仕組みを整え、現場での再現性を高めるために、マニュアルの刷新を優先すべき課題だと位置づけました。
当時から予想されていた人口減少や競合増加といった厳しい市況においては、いくら本部で良い施策を考えても各店舗で実行されなければ、お客様に選ばれ続けることが難しくなります。
しかし当時、標準化の基礎となるはずのマニュアルは紙が多く、作業の動きが伝わりづらい、どこになにがあるか分からない、更新時の差替え作業に苦労するといった、さまざまな課題を抱えていました。マニュアルがきちんと整備されていないから作業できない、結果が出せない。そんな負の連鎖が繰り返されていたように思います。そこで、マニュアル刷新に大きく舵を切ることになりました。
マニュアルに求めていることは再現性の高さです。そのためには、画像や動画で作業が伝わりやすくなることに加え、いろんな部署で作ったマニュアルのばらつきを小さくできることにこだわりました。その結果、分かりやすいマニュアルが誰でも簡単に作れるTeachme Bizを選定し、小型店舗の『ベイシアマート』から利用を開始しました。
―――『ベイシアマート』での活用からベイシア全店舗へと活用範囲を広げた決め手はどんなところでしたか。
鈴木様 想定通り、作成側も作りやすい、見る側からも「見やすいよね」という声が上がってきたので、低リスク高リターンでベイシア全体へ拡大できると考えました。『ベイシア』では生鮮食品の店内加工など『ベイシアマート』以上に幅広い作業が必要だからこそ、店舗間で商品の品質のバラつきをなくすことで、さらなるお客様の満足度向上につながればと期待して活用範囲を拡大していきました。
Teachme Bizで現場目線のマニュアルを量産し、教育時間も大幅に削減
―――より広く社内浸透するために、どんな工夫をされましたか。
鈴木様 マニュアルの対象となる作業の範囲が広がるにつれ、本部2名のみで作成する体制では、全ての部門の作業マニュアルを揃えるのが難しくなってきました。そこで、マニュアルの作成側と運営側でわけることで、より現場目線のマニュアルを量産できました。作成側はわかりやすい・再現性の高いマニュアルづくりに注力し、運用に関しては選任メンバーで管理をする。その結果、現場で使いやすいものが増えていきました。約90名がマニュアル作成に携わっていますが、必要なマニュアルがなければTeachme Bizで作成するという共通認識が生まれています。また、マニュアルを閲覧する店舗でも、分からないことがあればTeachme Bizで検索するという風土が醸成されました。
池田様 各部門でマニュアル作成を担ってもらうために、作成のコツをまとめたマニュアルの用意や、勉強会を実施しました。Teachme Bizはマニュアルを作るのが簡単で、フォーマットが決まっており、作成者によらずマニュアルの粒度が揃いやすいので、スムーズに権限委譲が進みました。また、マニュアルの内容を確認してから公開する承認ワークフロー機能を活用しているため、管理者としては作成者が異なっていても効率よく横串を通してマニュアルの質を担保できています。
―――導入の効果はどのようにお感じでしょうか。
鈴木様 導入前は本部スタッフが巡回して研修を行っていましたが、Teachme Bizを活用し非対面で学習ができるようにしたことで、年間47,000時間の作業習得時間を削減できました。印刷代を含めた教育コストの低減で大きく労働生産性を改善できましたが、あくまで一番の目的は標準化です。確保できた時間で、より高密度な研修や情緒的な接遇に専念できるようになるなど、組織全体でお客様への提供価値を向上する施策を積み重ねられるようになったことが大きいメリットだと感じます。
個人的な経験ですが、私が店長として収益改善に取り組んでいた頃、あるべき作業方法をWordやExcelでマニュアル化し、印刷して他店舗の店長に配ることもありました。店舗の数値責任を果たすために特定の個人が多大な苦労をして進めていたことを、Teachme Bizに出会ってからは、組織全体で取り組めるようになり、本当に導入して良かったと感じています。
池田様 「作って終わり」ではなく、現場の声を吸い上げることができる『コメント機能』や、どこでも誰でも見られる『外部公開機能』のほか、閲覧回数や検索履歴などの分析も参考になって便利です。また、店舗に設置したデジタル端末を活用するきっかけにもなっています。役立つマニュアルをデジタル端末で見られるようになることで、マニュアル以外の業務でもデジタル端末を当たり前に活用する風土が徐々に広がっていきました。
鈴木様 マニュアル作りによって、一定の「型」ができたと思います。チェーン全体でお客様の感じる価値を高めるには、数字面の結果だけではなく、品質面、労働面、安全面など担保すべきことが多いです。Teachme Bizの導入によって、各面のひと通りの「型」が作れたのではと思います。
現場目線の4,000マニュアルが、評価・業務フローを進化させる
―――マニュアルが揃うことで、新たにできるようになったことはありますか?
鈴木様 作業割当や人事評価との連動を進めています。作業割当システムで時間ごとの作業を指示し、紐づけられたマニュアルどおりに作業できればちゃんと評価される一連の業務フローを確立させようという取り組みを始めました。明確な評価基準が無ければ、優秀な方でも上司によって評価が大きく変わることも珍しくありません。しかしこれからは、正当に従業員の取り組みを評価できる仕組みを作っていきたいと考えています。
池田様 これまでは型を作ることに集中してきましたが、今は型を破るステージへ移行し、現場の声の吸い上げに注力しています。閲覧レポートや検索履歴で、店舗がどういうときに迷うのか、どのような言葉を使っているのかが理解できるので、そのデータに合わせてマニュアルを改善したり、追加したりして、店舗のニーズに合うマニュアルを増やしています。
―――今後はどのような活用の計画をお考えですか。
鈴木様 Teachme Bizの活用範囲を広げた結果、マニュアルが4,000弱に達しました。マニュアルが充実しているのは良いことですが、適正な形に調整していく動きを強めています。作業手順や閲覧状況が可視化されたので、改善できる作業は効率化し、不要な作業は無くすことで、会社全体で必要な作業数をもっと減らしていけると思っています。今は池田ふくめ2名と各部門が連携しながら、年率15%の改訂を目標にマニュアルを更新する体制を整えました。
池田様 4,000マニュアルは印刷すると広辞苑7冊分の厚さに相当します。そのボリュームの質を担保し、改善まですることを想定すると、紙ではまずやりきれません。数年前では不可能だったことも、Teachme Bizという部門横断のプラットフォームで実現できるようになりました。
昨今の採用難や高齢化によって、店舗段階で捻出できる教育時間は、年々減っていくことは必然です。5年後、その先にも「お客様のために」を実現し続けるためには、Teachme Bizで各店舗のあらゆるメンバーがもっと活躍しやすくなる仕組みを作っていければと思っています。
鈴木様 どのベイシア店舗でも再現性を持ち、同じように施策を実現できることが、「お客様のため」に繋がる。小さな積み重ねではありますが、大きな意味での労働生産性の改善は、そこから生まれるのだと考えています。