2020年4月施行「パートタイム・有期雇用労働法」でどう変わる?同一労働同一賃金の事例とメリット・デメリットをわかりやすく解説


 パートタイム・有期雇用労働者が雇用者全体の3割以上を占めている現在、正社員と同じ仕事をしているにもかかわらず賃金などの待遇が違う、正社員になるのが難しいといった問題が存在しています。
 それらの問題を解決するため、働き方改革関連法が成立しすべての企業に対応が求められています。厚生労働省により同一労働同一賃金ガイドラインが策定され、働き方改革関連法のひとつとしてパートタイム・有期雇用労働法が施行されますが、具体的な内容や対策が分からないと思う方も多いのではないでしょうか。
 そこで、法改正によって何が変わり、どのような対応が必要になってくるのか、ポイント別にわかりやすく解説いたします。

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同一労働・同一賃金への対応に向けたパートタイム・有期雇用労働法

パートタイム・有期雇用労働法とは?

 パートタイム・有期雇用労働法とは、労働者がどのような雇用形態を選択しても待遇に納得して働き続けることができるように制定された、同一企業内における正社員と非正規社員の間の不合理な待遇の差を禁止する法律です。
簡単に言うと、「パートだからといって理由だけで待遇差があると違法!」ということ。
 ここでいう正社員とは、無期雇用フルタイム労働者のことを指します。
 

パートタイム・有期雇用労働法はいつ施行される?

 パートタイム・有期雇用労働法は2020年4月1日に施行されます。
 ただし、中小企業においては1年間の猶予期間があり、中小企業の法適用は2021年の4月1日になります。

同一労働同一賃金とは?

 同一労働同一賃金とは、その名の通り同じ労働を行っているのであれば同じ賃金を払う必要があるというルールのこと。
同一労働同一賃金ガイドラインがあり、正社員と非正規社員との間で待遇差が存在する場合「どのような待遇差が不合理か・不合理でないか」の原則となる考えを示し、典型的な例といくつかの具体例が示されています。

パートタイム労働法との違いとは?

 パートタイム労働法は、パートタイム労働者のみが法の対象となっていました。それに対してパートタイム・有期雇用労働法は、パートタイム労働者だけでなく有期雇用労働者も法の対象に含む事が大きな違いです。
正社員と非正規社員の不合理な待遇差をなくし、より多様で柔軟な働き方が選択できるように見直されたものになります。

改正によって変わる3つのポイントとは?

不合理な待遇差が禁止される

 同一企業内において、正社員と非正規社員との間で、基本給や賞与などのあらゆる待遇について、不合理な待遇差を設けることが禁止されます。これに関しては、同一労働同一賃金ガイドラインと照らし合わせて、待遇差が不合理でないか確認することがポイントになります。

待遇に関する説明義務が強化される

 非正規社員は「正社員との待遇差の内容や理由」などについて、事業主に説明を求めることができるようになります。一方で事業主は、パートタイム労働者・有期雇用労働者から求めがあった場合は、説明をする義務が生じます。
 この際、説明を求めた社員に対して不利益が生じるような取り扱いをすることもこの法律により禁止されています。

行政による対応が変わる

 都道府県労働局において、無料・非公開の紛争手続きが行われます。また、「均衡待遇」や「待遇差の内容・理由に関する説明」については行政ADRという、事業主と労働者との間の紛争を裁判をせずに解決する手続きの対象になります。

同一労働同一賃金に代表される不合理な待遇差の事例


 では、一体どのようなものが不合理な待遇差と判断されるのか、具体的な事例を参照しながら確認していきましょう。

賃金に差がある場合

 同じ企業で同じ仕事をしているにもかかわらず、雇用形態が違うという理由だけで基本給が違うのは不合理な待遇差となります。

【事例】業績または成果のみに応じて基本給が支給されている企業において、正社員と同じだけ成果をあげているにもかかわらず基本給が正社員よりも少ない。
【判断】正社員ではない、将来の役割期待が異なる、という理由では説明にならず不合理な待遇差であると判断されます。

手当、福利厚生に差がある場合

 雇用形態が違うという理由だけで手当、福利厚生に差がある場合も不合理な待遇差となります。

【事例】正社員は交通費が支給されるが、パートだと支給されない。
【判断】支給目的が「通勤に要する交通費の補填」の場合、雇用形態によって通勤に必要な費用が異なるわけではないため、不合理な待遇差となります。

教育訓練に差がある場合

 正社員に実施している教育訓練については、既にに必要な能力を身に付けている場合を除き非正規社員に対しても実施することが義務づけられています。そのため、非正規社員が正社員に実施されている教育訓練を受けられない場合は不合理な待遇差であるといえます。

【事例】正社員には入社時研修をしているが、パートは直接配属する。
【判断】雇用形態が違うという理由のみで教育訓練の有無や内容が変わると、不合理な待遇差であると判断されます。

 しかしながら、非正規社員を雇用する時期は正社員のように定まっていなかったり、受け入れ回数も多いため外部に依頼するとハイコストになってしまいます。社内で同一の教育訓練を実施するための仕組みづくりが必要です。
 そこで有用となるのが、研修マニュアルを簡単に作成できるツールです。動画や画像で研修ステップを挿入できるため、時期や教える人にかかわらずいつでも同じ教育訓練を実施することが可能となり、教育訓練のための時間を節約することができます。

メリット・デメリットとは?

雇用環境を改善するために改正されたパートタイム・有期雇用労働法ですが、改正によるメリットやデメリットとは何があるのでしょうか。

パートタイム・有期雇用労働者は知らないと損?

 この法律により、正社員との不合理な待遇差が解消されるため、待遇が改善することや、正社員になるハードルが下がることが期待されます。
 一方で、総人件費の削減のために非正規社員の雇用を控える企業が増え、失業率が上がる可能性も懸念されています。

正社員は減給の可能性?

 正社員と非正規社員の不合理な待遇差をなくすために、総人件費が上がり、結果的に賃金全体が引き下がる可能性があります。
 更に、非正規社員との違いを設けるために、会社から求められる能力が高くなる可能性もあります。

企業におけるメリット・デメリットとは?

 非正規社員の不合理な待遇差をなくすことで、非正規社員の仕事に対するモチベーションが上がり、労働生産性があがることが期待されます。
 一方で、賃金や手当、福利厚生などの待遇を見直すことで、総人件費が上がるという懸念や、待遇差について説明を求められた時の対応などの義務が増加します。
 

法改正に向けて実施するべき企業の対応

不合理な待遇差をなくしましょう

 非正規社員を雇用している企業において、正社員と非正規社員の不合理な待遇差がある場合は、その待遇差を解消しなければなりません。
 
厚生労働省の取組手順書手順を用いて対応し、待遇に関して説明できるようにしましょう
 非正規社員に待遇差について説明を求められた場合、説明をする義務が生じます。そのため、すべての待遇において同一労働同一賃金ガイドラインを参照しながら、不合理でないことを説明できるように整備しておきましょう。

早めの準備が大切

 待遇差を解消するためには賃金規定や就業規則を見直す必要があり、非正規社員を含めた労使の話し合いや原資など考慮・検討するべきことが多くあります。ぎりぎりになって対応した結果間に合わまい…ということの無いよう、対応を早めに計画的に進めましょう。

まとめ

ここまで解説してきたように、パートタイム・有期雇用労働法により、正社員と非正規社員の不合理な待遇差が禁止されます。メリット・デメリット両側面がありますが、内容を把握しておくことは非常に重要です。

あわせて、人件費が増加していく中で重要になってくるのは「業務の効率化」です。

 業務を効率化することで、残業や長時間労働を増やすことなく、法の施行までに迅速な対策をすることが可能となります。その結果、社員のワークライフバランスが保たれて生産性も向上するという好循環が生まれます。また、残業代が減少することで、企業として利益を確保しやすいのもメリットです。

業務の効率化を実現するために今すぐ取り組めるのが「マニュアル作成」です。マニュアルを作ることで、全社員の作業方法を最も効率の良い方法に統一することができ、結果的に業務の効率化へとつながります。