働き方改革とは?基本知識や取り組み方を徹底解説

最終更新日: 2022.07.19 公開日: 2019.11.11

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長時間労働や頻繁な休日出勤など、生活が仕事一辺倒になる弊害が叫ばれるようになりました。そこで始まったのが「働き方改革」です。仕事とプライベートをバランスよく両立し「人間らしく生きる」ことで、会社も個人も利益を得られる環境の構築が期待されています。

しかし、働き方改革とは具体的に何を指すか分からない方もいるのではないでしょうか。

そこでこの記事では、働き方改革とは具体的にどういう取り組みで、実施により何がどう変わるかを解説します。働き方改革を行う意義やメリットを理解し、会社の利益へつなげていきましょう。


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目次

働き方改革とはなにか?まずは概要を把握しよう

「1億総活躍社会の実現」を目指した政府主導の改革

働き方改革とは、労働者の多様な働き方を可能とするため法改正などを含めて政府が取り組み、国によって主導される労働環境の改革を指します。

働き方改革の計画は2016年にスタートし、2018年6月には「働き方改革法案」が成立しました。2019年4月からは、働き方改革関連法案が順次施行されています。

なお「働き方改革関連法案」とは、従来存在した「労働基準法」など労働者の働き方に関連する各法律を改正したものを指しています。

働き方改革の取り組み内容

働き方改革は大きく以下の7つの項目に分かれており、それぞれの達成に向けた取り組みが示されています。

1.長時間労働の是正

ワーク・ライフ・バランスの実現で働く人の人生をより豊かにし、生産性の向上を図るものです。過剰な長時間労働によって発生する過労死を防止する目的で、長時間労働が常態化している事業所に対しては監督指導を行います。

2.雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保

正規雇用と非正規雇用の間にある不条理な待遇の差を是正し、いかなる雇用形態においても労働者が納得できる待遇を受けられる状態の実現に向けた働きかけを行っています。

3.柔軟な働き方ができる環境の整備

従来、仕事は会社のオフィスでするものでしたが、今後はIT技術の活用により出勤せずに離れた場所で業務にあたる「テレワーク」を促進しています。また副業や兼業など、一つの仕事にとらわれない多様で柔軟な働き方の整備を行います。

4.賃金の引き上げ

働く人の賃金を引き上げていくことで、より一層豊かな生活を送れる環境を整えていきます。

5.ダイバーシティの推進

外国人労働者、介護や育児と仕事を両立している方、女性の方がより活躍できる社会の構築を目指します。

6.再就職支援や人材の育成

退職後も再就職を希望する方に対し就職支援を手厚くすることや、人材育成のための環境を整えることで、労働人口の増加を図ります。

7.ハラスメントの防止対策

職場で起こり得るさまざまなハラスメント(不快感を与える行動・言動、嫌がらせ)の防止を推進し、誰もが働きやすい環境を整えていきます。

働き方改革における関連法案変更の例

働き方改革関連法案として、施行されている関連法案はさまざまです。しかしそれらの多くは、「労働時間法制の見直し」「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」に焦点を当てたものです。

・労働時間法制の見直しについて

「労働時間法制の見直し」の主な目的は、過労死などの原因となっている長時間労働の是正です。具体的な見直しの内容は、以下にご紹介する7つとなっています。

  1. 残業時間の上限の規制
  2. 「勤務間インターバル」制度の導入促進
  3. 企業への1人・1年あたり5日間の年次有給休暇の取得の義務付け
  4. 月60時間超の残業の割増賃金率引き上げ
  5. 残働く人の健康管理の徹底と労働時間状況の客観的把握の義務付け
  6. フレックスタイム制の拡充による働きやすさの実現
  7. 「高度プロフェッショナル制度」の新設

上記の中でも特に重要視されているのが、「1.残業時間の上限規制」です。実際に大企業においては2019年4月より施行され、中小企業は2020年4月より施行が始まっています。

具体的には、月あたりの残業時間について45時間以内を上限とし、年間でも360時間以内に上限を定めるものです。繁忙期など例外的な状況であっても、月あたり100時間未満、年間720時間以内に収める必要があります。違反すると刑事罰となる可能性もあるなど、法整備以前より厳しい規制となっています。

・雇用形態に関わらない公正な待遇の確保

働く人の雇用形態はさまざまですが、それによって生じていた格差を是正する目的で実施された法整備です。正社員と派遣社員の待遇差をなくし、多様な働き方を実現するとともに、より高いモチベーションで働いてもらえるようにします。

具体的には、同一企業内において正社員と非正規社員との間で、基本給や賞与などのあらゆる待遇に不合理な待遇差を設けることが禁止されました。裁判の際に判断基準となる「均衡待遇規定」「均等待遇規定」が整備されています。

均衡待遇規定 均等待遇規定
職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情の3点について不合理な待遇差を禁じるもの 職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情の3点について不合理な待遇差を禁じるもの

働き方改革が注目されている背景

労働人口の減少

働き方改革が叫ばれる大きな理由は「労働人口の減少」です。日本は2005年以降、死亡数が出生数を上回る状況が続いており、総人口の減少が問題視されています。

現状のまま推移した場合、試算によると2010年の100年後は、人口が3分の1まで減少する事が予測されています。総人口が減少するということはそれに比例して労働人口も減ります。

そのため、働き手の減少を踏まえて、今のうちに働きやすい環境を整えて生産性向上を図る「働き方改革」の重要性が高まっています。

これは、各企業の働き手が少なくなると困るという単純な問題に留まりません。働ける人の数が減れば、国全体の生産能力そのものの低下につながります。このような背景から、働き方改革は国策として大々的に取り組まれているのです。

多様な働き方へのニーズの高まり

現代においては、従来のスタンダードだった「男性が結婚して家族を養い、生涯一つの職場で働く」という状況だけを想定した労働環境の整備は現実的ではなくなっています。以下のような社会的背景により、個人の働き方も多様なものとなっているためです。

  • 未婚率の増加による単身世帯の増加
  • 女性の社会進出による共働き世帯の増加
  • 人材の流動性の高まり
  • テレワークなどITの進化による働き方の変化

個人によって異なる事情を抱える現代こそ、家事や育児、介護など家庭内の務めと仕事との両立が欠かせません。そのためワーク・ライフ・バランスの実現に向けた、豊富な働き方の選択肢が必要とされています。

働き方改革に取り組む意義と働き方改革によってもたらされるメリット

働き方改革によって企業は「働き手の確保」「社会変化への対応」「生産性の向上」の3点を実現可能です。ここでは、これらのメリットについて詳しく見ていきましょう。

人材を採用しやすくなる

人材不足が慢性的な状況となっている現在、企業にとってはいかに人材を確保するかが非常に重要です。

昨今の働き方改革に則り、ワーク・ライフ・バランスの取れた働きやすい環境を実現できれば、企業は自社のメリットとしてそれを対外的なPRに活かせます。

さらにテレワークの導入や副業の許可などを進め、正規社員と非正規従業員の待遇差も是正できれば、優秀な人材が魅力を感じ自社への関心を示してくれるようになります。結果的に年齢や居住地を問わず、さまざまなバックグラウンドを持つ優れた人材を数多く採用しやすくなるでしょう。

大きな変化に対応しやすくなる

2020年からの新型コロナウイルス感染症の世界的な流行でも分かる通り、今は将来の予測が極めて困難な時代に突入しています。世の中の大きな変化に柔軟に対応するためにも、働き方改革による労働環境の整備は非常に有用です。

実際に、いち早くテレワークを導入していた一部のIT企業などは、コロナの収束が見通せない現在においても影響を受けず、これまでと変わらない働き方を実現できています。

生産性が向上する

働き方改革によって適正なワーク・ライフ・バランスが保たれた状態は、社員の企業に対するエンゲージメント向上も期待できるでしょう。一人ひとりがより付加価値性の高い業務を行うことで生産性が向上し、企業として継続的な成長を見込めます。

企業が働き方改革を推進するための6つの施策

企業と労働者、双方が利益を享受できる働き方改革を実現するための施策例としては、以下でご紹介する6つが挙げられます。どれか一つだけを達成するのではなく、満遍なく全てを達成して初めて働き方改革が成功したといえるでしょう。

どの施策も柔軟さが求められるとともに、従来の概念を打ち破って実行する勇気が必要です。

1. 非正規雇用者の待遇を正規雇用と同水準まで上げる

まず現状の職務内容を把握し、各従業員の待遇について改善すべき点の有無を検証します。働き方改革関連法案においても重要視されている、「同一労働同一賃金」の考え方で職務内容の実態を捉え、正規・非正規を問わず待遇を同水準にしましょう。

この施策を実行するには、「職務分析」「職務評価」の導入も重要です。雇用形態は異なっても、実際に行っている業務は変わらないことがあるためです。職務分析や職務評価を行い、雇用形態を問わない正当な評価が必要となります。

2. 長時間労働をなくし残業時間を削減する

法令上で義務付けられた労働時間の上限を守れなければ、罰則の対象になってしまいます。

従来の業務量を確保しつつ労働時間を短縮したい場合は、以下のような方法を試してみてはいかがでしょうか。

  • ツールなどを用いて従業員の勤務時間やタスクを可視化する
  • 定型業務の中に不要な作業が含まれていないか洗い出し、見直しを図る
  • フレックスタイム制などの導入
  • 長時間働いている人を実績不問で高評価する習慣をやめるなど、評価制度を見直す

3. ライフスタイルに合わせた働き方ができる環境を整備する

ライフスタイルに合った働き方の実現には、自宅にいながら仕事ができる「テレワーク」や、業務遂行方法を労働者の裁量で決められる「裁量労働制」の適用が有効です。また副業を可能とすることで、より多様な働き方が可能になります。

4. 多様性を確保できる職場を整備する

今後は外国人労働者を受け入れ、日本人も外国人労働者も働きやすい職場環境を整備する必要があります。

この背景には、「出入国管理法」が改正され、2019年4月1日より「特定技能」を有する外国人にも在留資格が与えられるようになったことなどがあります。初年度は最大4万7,550人、今後5年間でおよそ34万5,000人の外国人労働者の受け入れが見込まれます。

外国人労働者を積極的に受け入れるためには、以下のような具体的な施策が有用です。

  • 日本語習得のフォロー
  • 企業の社風や価値観・マインドの共有
  • 労働条件の適正な整備
  • 従業員同士のコミュニケーション機会の創出

5. 社員のスキル向上に投資する

従業員個々のスキルアップを、企業単位でサポートすることも有用です。例えば定期的な社内勉強会や講演を開くなど組織が一丸となってスキルアップに努めれば、全社的な業務能力の底上げを期待できるでしょう。

6. マニュアルを作成して作業を手順化する

共通のマニュアル整備により、社員の業務スピードが向上するとともに均一化を図れ、結果として生産性の向上につながります。

マニュアル作成にはコストや手間がかかる印象がありますが、「Teachme Biz」なら誰もが理解しやすいマニュアルを簡単に作れます。テキスト、動画、画像を用いた「ビジュアルSOP」で作業手順を明快に確認でき、全社員でのデータ共有や閲覧数・検索キーワードなどの把握も可能です。

育児・介護にフォーカスを当てた働き方改革の成功事例をご紹介!

働き方改革の概要を把握できたものの、実際に企業がどのような取り組みにあたっているか知りたい方もいるでしょう。ここでは、「三井不動産」、「高島屋」2社の事例をご紹介します。

【不動産の事例】三井不動産

三井不動産は、社員に寄り添った働き方改革を実施しています。

  • 仕事と家庭の両立について年1回、人事部面談を行う
  • 家族の介護を行っている社員に対して介護セミナーを開催
  • 法律で定められた以上の育児休暇の付与
  • 事務所内に保育所を設置

上記のように、全社的に従業員の生活をサポートしている点が特徴です。

このほかフレックス型の育児時短勤務、育児費用の一部補助なども制度化され、子どもを持つ社員にとって非常にメリットのある社内環境が整っています。

その結果、育児休暇からの復帰率は100パーセントを誇り、人材確保の面で成功を収めているといえます。

参照:三井不動産株式会社|「働き方改革」の取り組み

【百貨店事業の事例】高島屋

高島屋では、社員の7割が女性である特徴を踏まえ、育児に関する手厚いサポートを実施しています。

特に注目すべきポイントは、育児短時間勤務に8つのパターンを設けている点です。さまざまな就業時間のパターンを選択でき、社員のニーズに合わせた多様な働き方が可能です。

そのほか、以下のような施策も実施しています。

  • 育児休暇は子どもが3歳になるまで取得可能
  • 育児休暇中は「eラーニング」を受講し職場復帰に向けた自己啓発が可能
  • 育児短時間勤務者を積極的にマネジャーに登用

特にマネジャーの登用については、育児勤務のマネジャーの退勤後に残った社員全員でフォローし合うことで、職場のコミュニケーションの活性化につながっているそうです。責任ある立場に立てるためほかの育児勤務者のモチベーションアップにもなり、良い雰囲気作りに成功しています。

参照:高島屋グループ|社会課題への取り組み

マニュアルを用いた「業務効率化」で働き方改革を進めよう

ここまで解説してきたように、働き方改革に対して企業ができる施策は数多くあります。

その中でも効果が現れやすい施策が「業務の効率化」です。業務効率化によって長時間労働を減らし、社員のワーク・ライフ・バランスが保たれ生産性も向上するという好循環が生まれます。

業務効率化の実現に向け、今すぐ取り組めるのが「マニュアル作成」です。マニュアルがあることで、全社員の作業方法を最も効率的な方法に統一でき、結果的に業務効率化につながります。

マニュアル作成には、「Teachme Biz」の使用がおすすめです。文字だけでなく、画像、動画、テキストを用いてわかりやすいビジュアルベースのマニュアルが作成できます。

社員が疑問に感じていることや困っていることを分析の上、内容をアップデートすれば、より精度の高いマニュアルを目指せます。

マニュアル作成による業務の効率化は、今からでもすぐに取り組める施策です。ぜひ「Teachme Biz」を活用して、マニュアルを作成してみましょう。

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