操作マニュアルの作り方は?基本手順、わかりやすく仕上げるコツを解説
システムや機器を操作する際に欠かせないのが操作マニュアルです。しかし、いざ作成するとなると、何から始めればよいか迷ってしまう担当者も多いのではないでしょうか。この記事では、操作マニュアルの概要や作成手順、さらにわかりやすい操作マニュアルを作るためのポイントを詳しく解説します。
機器やシステムの操作方法をまとめた「操作マニュアル」とは
操作マニュアルは、システムや機械の操作方法を説明するための文書で、主に初めて使用する人を対象に作成されます。その目的は、特定の結果を得るための正確な操作手順を示すことです。また、トラブル発生時や不明点がある場合に、適切な対処を行う上での参考資料としても活用されます。そのため、わかりやすい表現と高い検索性を備えていなければなりません。
混同しやすいものに取扱説明書がありますが、操作マニュアルは主にシステムや機械の操作方法に特化した文書で、取扱説明書は製品全般の取り扱い方や操作方法を幅広く説明する文書です。また、取扱説明書には必要表示項目や特定用語といった表示基準があります。これらは消費者庁や公正取引委員会が定めたルールです。一方、操作マニュアルにそのような法的要件はありません。
業務マニュアルとの違い
操作マニュアルの目的は、特定の機器やソフトウェアの操作方法を利用者に伝えることです。そのため、特定の結果を得るための明確な手順を記載する必要があります。しかし、業務マニュアルの目的は、特定の業務についてのプロセスを示し、業務品質を一定水準に保つことなので、特定の操作やそれによる結果には焦点を当てません。業務マニュアルは業務全体の流れを説明するものだからです。
規範マニュアルとの違い
規範マニュアルは、企業内で共有すべき価値や組織運営の主要な考え方を示す目的で作成する文書です。そのため、企業の理念やビジョン、指針、各種方針(コンプライアンス憲章、環境方針など)といった、抽象的な概念を記述します。他方、操作マニュアルでは具体的な手順や操作方法を示さなければ役に立ちません。
また、操作マニュアルの対象者がシステムや機器の使用者であるのに対し、規範マニュアルの対象者は組織の構成員全員です。このほか、操作マニュアルは日常的な業務遂行やトラブル対応時に参照され、規範マニュアルは組織の方向性の確認や意思決定の際の判断基準として使用されるという違いもあります。
操作マニュアルを作成する手順
操作マニュアルを作成する際は、以下のポイントについて留意しましょう。
1. 目的とターゲットを明確にする
作成の際は、最初に誰が読むのかを明確にしておくことが大切です。そうすることで文章のトーンや記載内容といった表現のレベルを統一できるからです。
例えば、社内向けと消費者向けでは、使用できる表現が異なります。消費者向けに作成する場合には、専門用語などをできるだけ控えなければなりません。また、社内向けに作成する場合でも、現場で作業する従業員向けと、運用・開発向けとでは、用語説明の必要性や記載すべき内容について大きな違いがあります。
2. 全体の構成を考える
全体構成と流れを決めることで記載すべき内容を洗い出し、重要度や頻度に基づいて優先順位を付けられます。また、最初に全体構成を考えておけば、マニュアルの一貫性と読みやすさが向上します。内容の重複を避けたり、各操作を独立させて章立てを行ったりすることも可能です。
一般的に、操作マニュアルは概要、目次、本文(操作方法)の順で記載されます。目次の順番を決める際は、読者が知りたいと思うものを先に持ってくるようにしましょう。そのほか、操作の時系列や実行頻度、難易度も意識する必要があります。作成者がわかりやすいかどうかではなく、読者がわかりやすいかどうかを意識することが大切です。
3. 操作方法を記載する
全体構成が決まったら、個々の内容について機能や操作方法を具体的に説明しましょう。その際、注意するべきポイントは、わかりやすく簡潔に書くことです。文章が情報過多だとわかりづらくなるため、あれもこれも盛り込み過ぎないように心がけましょう。
また、短文で簡潔に記載することもポイントです。解釈が人によって分かれるような表現や曖昧な表現を避け、一文を短くシンプルにまとめてください。実際の操作手順を、行動の流れに沿って説明することで、読者にイメージを伝えやすくなります。
4. 「よくある質問」や「Q&A」を設置する
操作方法を記載したら、過去に受け取った質問やトラブル事例などからQ&Aを想定し、質問と回答を設置しましょう。
Q&Aをあらかじめ設置しておけば、読者が何か疑問を感じた場合でも、すぐに解決できます。自己解決能力が向上することでサポートチームへの問い合わせを減らすことができます。消費者向けのマニュアルであれば、迅速な疑問解消につながるため満足度も向上します。
5. 緊急連絡先を記載する
実際の業務においては、予想外のトラブルがつきものです。そうした想定外の事態が発生した場合、マニュアルだけで対処するのが困難なことも多くあります。そのため、操作マニュアルには緊急連絡先を記載しましょう。担当者にすぐ問い合わせることができれば、それだけトラブルの早期解決につながります。記載すべき内容は、担当部署や電話番号、メールアドレス、対応可能な時間帯などです。こうした情報の提供は、読者の安心感や信頼感につながります。
6. テスト運用を行う
テスト運用によって、実際に操作マニュアルを見て正しく操作できるか、記載内容に不足や不備はないか、わかりやすい設計になっているかを確認します。その際、異なる立場やバックグラウンドの人にマニュアルからの操作を試してもらうのがおすすめです。そうすることで幅広いフィードバックを得られます。テスト運用で改善点が発見された場合には、記載内容の変更などのバージョンアップを施しましょう。
操作マニュアル作成の主な手段
ここからは、操作マニュアル作成に役立つツールをいくつか紹介します。
Microsoft Office
最も一般的な方法は、Microsoft Officeのソフトを使って作成する方法です。一般的に導入されているソフトなので、新たなコストをかけることなくマニュアル作成に取り組めます。
例えば、Microsoft Wordは文書作成に特化しており、長文のドキュメントを快適に執筆できます。そのため、操作手順や詳細な説明の記載におすすめです。スタイル設定や目次の自動生成機能も搭載されていて、一貫した書式で作成できます。
Microsoft Excelは簡潔な手順や数値データを扱う場合に便利です。シートごとに情報を分類できるため、チェックリストや手順を視覚的に整理するのに適しています。
画像や図を多用したビジュアル重視の操作マニュアルにしたい場合には、Microsoft PowerPointを活用しましょう。ただし、画像は使い過ぎるとファイルが重くなってしまうので注意が必要です。
テンプレート
MicrosoftやGoogleからは、無料のマニュアルテンプレートが提供されています。テンプレートにはレイアウトや書式があらかじめ組み込まれており、本文を埋めていくだけで作成できます。
例えば、Microsoftでは2,000点以上のテンプレートから活用したいテンプレートを公開しており、検索やカテゴリに沿ってゆくことで使いたいテンプレートを探し出して選べます。視認性が高いものからデザイン性があるものまでさまざまです。
参照元:ソーシャル メディア、ドキュメント、デザイン用の無料テンプレート | Microsoft Create
GoogleはGoogleドキュメント、Googleスプレッドシート、Googleスライド、Googleフォームのそれぞれのサービスでテンプレートギャラリーを提供しています。作成したいマニュアルの特性に合わせ、適したソフトとテンプレートを選びましょう。例えば、視認性の高いマニュアルを作成したい場合には、Googleスライドのテンプレートがおすすめです。
参照元:テンプレートからファイルを作成する - パソコン - Google ドキュメント エディタ ヘルプ|Google
マニュアル作成ツール
マニュアル作成に特化したツールも便利です。多くの場合、マニュアル作成だけでなく、その後の管理・運用まで可能な機能を搭載しています。画像や動画も挿入しやすく、誰でもわかりやすい操作マニュアルを作成できます。クラウド型のサービスであれば、データがPCの容量を圧迫しない点も魅力です。
マニュアル作成ツールにはさまざまなサービスがあり、搭載機能や対応内容も多様です。そのため、自社の業務内容や作成の用途に応じて選ぶことが大切です。
わかりやすい操作マニュアルを作成するコツ
先述したように、操作マニュアルは直感的に「わかりやすい」と感じるものでなければ十分な効果が発揮できません。以下のポイントを踏まえて作成しましょう。
図やイラストを挿入する
テキストだけで説明しても伝わりづらい部分は、視覚的手段を用いて説明しましょう。例えば、図やイラストを活用すると視認性が高まります。文字の強調やページの色分けも有効です。アニメーションや、実際に操作する様子を撮影した動画も、説明をわかりやすくするのに役立ちます。
「当然」と思うことも記載する
操作マニュアルは、初めてその機器やシステムに触れるケースを想定して作成することが重要です。そのため、熟練者には当たり前に感じるような基本的な操作や注意点も、省略せず丁寧に記載しましょう。初心者にとっては、小さなことでも理解の助けになるケースが多いため、細かな説明が操作マニュアルの使いやすさを向上させます。
操作によってどうなるかも記載する
操作マニュアルでは、手順だけでなく「その操作で得られる結果」を記載することが重要です。これにより、操作が正しく行えたかどうかを確認できるだけでなく、作業の全体像を理解しやすくなります。
記載する際は、以下の点に注意しましょう。
- 具体的に記述する:抽象的な表現は避け、具体的な変化や出力を明記しましょう。
- 操作後の状態を提示する:可能であれば、操作後の画面のスクリーンショットや機器の状態を示す図を使用するとわかりやすくなります。
- 操作前・中・後の3ステップそれぞれに結果を記載する:ステップごとに結果を記載することで、操作ミスがあった場合に修正しやすくなります。
操作に関する情報を網羅する
不十分な情報しか記載されていない操作マニュアルは混乱を招くだけでなく、最終的には利用されなくなる可能性があります。そのため、操作マニュアルにはできる限り詳細で正確な情報を記載することが重要です。
特に、誰が、いつ、どのような場面でマニュアルを使用するかを完全に予測するのは難しいため、多くの状況をカバーできる内容を心がけましょう。例えば、企業の基幹システムでは複数の部署の従業員が使用する場合があります。それぞれの部署の読者が理解できるように、情報に漏れや曖昧さがないよう配慮しましょう。
操作マニュアルに含めるべき操作の主な情報は、以下の通りです。
- 操作の目的
- 操作手順
- 操作の各フェーズと結果
- 作業の順番やタイミング
- 操作者
- 操作のための条件
要点を簡潔にまとめてシンプルなマニュアルにする
説明が長くなり過ぎると、どうしてもわかりづらくなってしまいます。そのため、操作マニュアルでは要点を簡潔にまとめるようにしましょう。特に、複雑な操作手順を説明する際には、冗長な表現を避けることが重要です。また、簡潔な表現は必要な情報を迅速に見つける助けになります。
簡潔にまとめる際のポイントは、5W1H(いつ、誰が、どこで、何を、なぜ、どのように)を意識することです。5W1Hを意識すれば、操作に関する情報を過不足なく整理し、明確に伝えることができます。
危険な操作などは強調して注意喚起する
操作マニュアルでは、安全性を確保するため、危険な操作や重要な注意事項を目立つ形で強調することが必要です。これにより、ユーザーはリスクを事前に認識し、事故やトラブルを未然に防ぐことができます。特に、安全に関わる情報は視覚的にわかりやすく、迅速に伝わるよう配慮しましょう。
注意喚起は以下のような方法が効果的です。
- シンボルとシグナル用語の使用:「危険」「警告」「注意」などのシグナル用語を用いて重要度を示しましょう。
- 視覚的な強調:警告マークや色分けを活用し、注意事項を目立たせるのも有効です。
- 明確な表現:「〜しないでください」という否定命令や「必ず〜してください」という強調命令を使用しましょう。
- 理由と対処方法の説明:その操作が危険な理由やどのような問題が生じる可能性があるかを説明することで、操作に対する理解が深まります。その際、正しい対処方法や安全な操作手順を併せて記載しましょう。
目次や見出しを設けて情報を探しやすくする
操作マニュアルを最初から最後まで読む、ということはあまりありません。一般的に、操作マニュアルは必要な箇所だけを読むものです。そのため、すぐに目当ての情報を探し出せるようにしましょう。ボリュームがそれほどなかったとしても、目次や小見出しなどを作成しておくのがおすすめです。目次を読めばマニュアル全体の流れや構成が理解できるからです。全体の流れや構成への理解は、特定のトピックの理解が深まることにもつながります。
●ページ番号と索引の設定
マニュアルのページ数が多い場合には、ページ番号を振り分けておきましょう。そうすることで検索性が高まります。ただし、ページ番号が多過ぎると振り分けも大変になります。そのため、ページ番号が多過ぎる場合は章ごとに振り分けましょう。
さらに、マニュアルにリンクや検索機能を設定すると、必要な情報を探しやすくなります。紙媒体のマニュアルの場合には、冊子の最後に索引を設定しておきましょう。
●小見出しの設定
マニュアルの流れや内容が一目でわかるよう、細かく小見出しを設定しましょう。そうすることで知りたい情報にすぐたどり着けるようになります。特に、情報が埋もれがちになるページ数の多い操作マニュアルでは、小見出しを付けるのが効果的です。複雑な操作や手順が必要な場合にもおすすめです。
小見出しを設定する際は、具体的なタイトルにしましょう。例えば、「作業1」や「作業2」といった一般的な表現では、内容がわかりません。それよりも、「データ入力手順」や「トラブルシューティング方法」といった具体的な表現を選ぶべきです。
●参照先の提示
必要に応じて詳細情報を参照できるようにしておくことは、情報の網羅性と使いやすさの両立につながります。また、詳細な説明や補足情報を参照先として示すことで、マニュアル本体をコンパクトに保てます。同じ内容が複数箇所で必要な場合には一箇所に詳細を記載し、他の箇所ではその参照先を示すとよいでしょう。
まとめ
操作マニュアルを作成する際に何よりも重要なポイントは、わかりやすさです。情報の網羅はもちろんのこと、短い文章やイラストの使用、目次の設定などにも気を配らなければなりません。そうした負担を軽減したい方は、手軽にマニュアルを作成できて、管理運用も簡単になるマニュアル作成・共有システムの活用を検討しましょう。