OJTとは? 目的や具体例、課題解決策、Off-JTの違いなど解説

最終更新日: 2023.11.17 公開日: 2022.02.17

OJTとは

OJTは、多くの企業が実施している新人教育の手法です。業種・業界を問わず広く採用されている一方で、多くは「現場任せになってしまっている」という大きな課題を抱えています。

この記事ではそんなOJTについて、基礎情報からおさらいします。Off-JTとの比較やメリット・デメリット、OJTの課題を解決するための効果的な進め方など、幅広く紹介します。
「なんとなく慣習でOJTを行っているけど、もっと効率を上げたい」「OJTによる新人教育が会社の負担になっている」と感じている方はぜひ参考にしてください。


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目次

OJTとはどのような教育の形式?

OJTの意味

OJTは「On The Job Training」の略称で、日本語では「現任訓練」と表されます。アメリカ発祥の人材育成手法です。

OJTは座学ではなく、現場での実践形式で業務のトレーニングを積む育成手法のことを指し、先輩や上司、そのほか教育専門のトレーナー(指導者)が教育を受ける側である新人に対してマンツーマンで逐一指導を行うのが一般的です。

例えば飲食店のOJTであれば、新人社員がトレーナーの指示を受けながら実際にお店に出て、お客様に対して接客を行います。お客様からしてみればトレーナーも新人も同じ店員であり、緊張感を持って取り組まなければなりません。

このように練習ではなく本番の状況の中でその場に応じて必要な知識を習得しながら経験を積むため、スピーディな育成が可能とされています。

Off-JTとの違い

OJTと比較される手法としては、Off-JT(Off The Job Training)があります。Off-JTはOJTとは異なり、現場以外で行われる育成手法や訓練全般を指します。
例えば、講師を招いての研修、セミナー、通信教育、e-ラーニングなども全てOff-JTです。OJTとOff-JTの大きな違いとして、「育成内容」「学べること」「コスト」が挙げられます。

育成内容

OJTの場合は現場に出て、トレーナーが都度新人に対して必要な知識やスキルを教えます。このため、OJTでは社員一人ひとりの個性や性格、学習スピードに合わせた柔軟な教育が可能です。

一方Off-JTは、基本的に1対多数を想定されたカリキュラムで教育を受けることがほとんどです。個別指導は難しい代わりに、会社として標準化された業務にまつわる知識・手順を一律的に教えられるのが特徴です。

学べること

OJTはリアルタイム性の高い教育手法なので、新人は仕事に必要な勘や経験に基づいたノウハウなど、非常に実践的なスキルを得られます。
Off-JTは文章化できるような体系化された知識や概念など、汎用的なスキルを身に付ける際に有効です。ただしOff-JTであっても、よりリアルな現場に近いシチュエーションでの研修を行うことで、実践スキルの獲得も可能です。

コスト

OJTは業務の中で教育を行うため、教育のための時間や場所を確保する必要がありません。トレーナーの人的リソースは必要になりますが、Off-JTに比べると基本的に低コストで済むケースが多いです。
一方、Off-JTは業務とは別の場所をセッティングする、講師を招く、教材を用意するといった準備に手間がかかります。時間的・人的・金銭的コストはOJTに比べて高くなりやすいです。

OJDとの違い

OJDは「On the Job Development」の略称であり、仕事に関係する能力開発を指します。経営戦略に基づいて担当の上司やトレーナーが新入社員を日常業務の中で教育する体制を整え、企業が将来的に求める能力の育成を行います。特にマネジメント能力の開発・育成を指すことが多いです。

OJDはOJTと似ており、両方とも実際の業務に携わりながらトレーナーが新入社員に指導し、必要な技術や知識を習得させるという点で共通しています。

異なる点としては、OJTが日常業務で必要となる技術や知識の習得を主とするのに対し、OJDは経営戦略上において長期的に必要となる能力の開発に焦点が当てられる点が挙げられます。また人材育成の期間を見ると、OJTは短期間になる傾向がある一方、OJDは中・長期間にわたることが多いという点でも異なります。

OJTの目的

企業がOJTを実施する主な目的は、業務に必要な作業を新入社員に実践の中で習得させ、組織の戦力になってもらうことです。研修や講義といったOff-JTのみでは戦力として育てることは困難です。そのため、OJTを通してトレーナーと新入社員が密にコミュニケーションを取りながら共に成長していくことが求められます。

新入社員は多くの場合、業務の進行以外に職場環境での人間関係、組織になじめるかどうかなどのさまざまな不安を抱えています。これらは仕事に対するモチベーションが上がらなかったり、業務のパフォーマンスを妨げたりする原因となります。
そのため、トレーナーは業務に直接関係すること以外にも、積極的に新人社員とコミュニケーションを取ることが重要です。不安や疑問が解消されることで、新入社員が仕事に集中しやすくなり、習得が早くなる効果が期待できます。また、手厚いサポートがあることで職場に対するエンゲージメントが高まり、職場の定着率が高まる効果も見込めます。

OJTはトレーナーにとっても学びの機会になります。トレーナーは新人への指導と通常業務の両方をこなすため、負担が大きいです。しかし、時間の使い方や仕事のやり方を見直すことで業務効率化や生産性向上につながるアイデアが得られたり、教える経験によって成長できたりするメリットもあります。

次の節では、OJTの実施で企業が得られるメリットについて詳しく解説します。

OJTを実施する企業のメリット

育成効率が良い

「Off-JTとの違い」にもあった通り、OJTは現場の中で学んでいくため、必要な知識やスキルを素早く身に付けられます。不明点があればすぐにトレーナーに聞けるため、高いモチベーションと責任感を持ちながら実務に取り組めます。現場で活躍する即戦力の社員を育成するには非常に効率の良い方法です。また、社内完結の育成体制であるため、コストを抑えやすいというメリットもあります。

社員同士でコミュニケーションを深められる

OJTでは上司と部下、先輩と後輩といった関係のペアが密に連携して業務を行うことで、両者の間で活発なコミュニケーションが発生しやすくなります。

両者がお互いに信頼関係を築きながら業務を行うことで、新入社員にとっては職場における心理的安全性が保たれ、何か困ったことがあった時も相談しやすくなります。新入社員は多くの場合、新しい職場環境に入って不安な気持ちを抱えているため、頼れる先輩がいることはエンゲージメントの向上につながります。

指導者の成長につながる

OJTが成功するかどうかは、指導者(トレーナー)がうまく指導できるかどうかが大きな要素を占めます。
どのような順番で学べば人が成長できるのか、どう伝えれば説明をしっかり理解してもらえるのかなど、試行錯誤を繰り返すことで指導者はトレーナーとしてスキルアップできます。企業全体としても、OJTによる育成経験の積み重ねを通して新人育成プロセスの効率化が期待できます。

OJTを実施する企業のデメリット

業務に必要な知識全てを教えられるわけではない

OJTはあくまで目の前の業務に対して必要な知識・スキルを教えることになるため、業務知識を体系的に得られるわけではありません。

例えば、そもそも業務を何のために行っているのか、現在のような業務手順になっている理由、そのほか基本的なビジネスマナーや仕事に対する姿勢・マインド、事業の仕組み、今後仕事の幅を広げていくための知識・技能の習得などは、OJTだけではまかないきれません。

指導者に負担がかかりすぎる

OJTは基本的にマンツーマンで行われますが、これは指導者からすると大きな負担です。何も分からない新人に常に目を配りながら、普段の業務もいつも通りこなさなければならないからです。新人指導にリソースを割くことで自身の業務が滞ると、現場としては生産性の低下につながります。

人によって教育スキルが異なる

「OJTを実施する企業のメリット」でも紹介したように、OJTの成功にはトレーナーが大きな要素を占めます。しかし、指導に向いている人・いない人がいるため、トレーナーの指導方法によっては、新人が得られる知識やスキルが大きく偏ってしまいます。

例えば、同じOJT期間中であってもトレーナーの経験や指導力に差があると、Aさんはばっちり業務をマスターしたのにBさんはまだ分からない業務があって手順もおぼつかない、といったことも起こり得ます。また、「OJTの目的」でも説明したように、トレーナーも新人社員とコミュニケーションを取りながら共に成長することが求められます。そのため、トレーナーの社交性や自己成長に対する意欲がどれくらいあるかも重要です。

OJTに向いていない業務

OJTは人材の早期育成に効果的な方法ですが、中にはOJTによる教育が適さない職種や業務があります。以下にその特徴を詳しく紹介します。

専門的な知識が求められる業務

専門的な知識を必要とする職種や業務は、OJTには向いていません。代表的な例としては、経理、会計、法律、医療、デザイン、IT、学術などが挙げられます。
これらの業務は、もし何の知識もない人間が現場に出たとしても基礎知識から教えることになるため、トレーナーの負担が非常に大きくなります。そのため、Off-JTや場合によっては学校や通信教育を利用して、基礎知識の学習や資格取得といった事前準備をする必要があります。

イレギュラーが多い業務

通常業務が日によって異なっていたり、勤務時間が不規則であったりする業務もOJTには向いていません。例えば、勤務時間が不規則なクリエイティブ系や、気象・時勢などに左右される業務、救命・救助といった一刻を争うような職業などが挙げられます。

こうした業務は仕事の流れを体系化しにくく、かつイレギュラーな対応が多いため、教える内容も多岐にわたります。OJTを適用した場合、教える側・教えられる側ともに負担が大きくなってしまうため、教育には別の方法を採用しなければなりません。

OJTのよくある課題

指導方法が現場任せ

厚生労働省の「能力開発基本調査」によると、計画的なOJTを正社員に実施した企業の割合は60.2%、それ以外の労働者に対して実施した企業は23.9%という結果でした。日本の企業においてOJTは主に正社員教育で広く活用されている指導方法であることが分かります。

>>参考:令和4年度「能力開発基本調査」の結果を公表します

しかし、OJTは指導方法もその内容も現場任せになりがちです。現場で忙しく働いていた社員がいきなりOJTを任されても、新人をどう育成すればいいのか分かりません。その結果、育成に時間がかかったり、時間をかけてもうまく新人が育たなかったりする状況が発生します。

そうなると新人は初歩的なミスを頻発し、トレーナーは対応に追われ、現場の負担ばかりが大きくなる悪循環に陥ってしまいます。適切な指導を受けられなかった新人は離職してしまうかもしれません。

事前準備が不十分のまま現場任せでOJTを行うことは非常にリスクが大きいです。OJTのデメリットばかりが浮き彫りになってしまい、現場の社員は「新人教育は大変」「できれば担当したくない」といった忌避感を抱いてしまいます。

トレーナーの時間不足

OJTではトレーナーが自身の通常業務をこなしつつ、部下や後輩を指導しなければなりません。そのため新人教育に専念できるトレーナーに比べると、どうしても教育や指導に割く時間が少なくなります。

トレーナーが自身の業務に追われている時は、教わる側が放置されてしまう懸念もあります。「せっかく現場に出ているのに何も学べていない」といった事態を防ぐには、トレーナーが余裕を持って自身の業務や後輩の指導に取り組める配慮が必要です。マネジメント側はトレーナーの日常業務を減らすなどして、適切な仕事の配分を行いましょう。

トレーナーのモチベーション維持

OJT期間中、通常業務と新人の指導を並行して行うトレーナーの負担は増えてしまう傾向にあります。自身の業務へ思うように時間を割けなかったり、一定期間重要なプロジェクトから外されたりすることによる心理的ストレスも考慮しなければなりません。OJTも重要な業務のひとつですが、その意義を理解していないと、忙しさのあまり指導が場当たり的になってしまう懸念も生じます。

トレーナーのモチベーションを維持するためには、OJTがいかに重要な業務であるか、その意義を理解してもらうことが大切です。また、評価がついてこなければモチベーションも上がらないため、トレーナーの仕事に適切な評価が与えられることも事前に説明しておく必要があります。

OJTトレーナーに必要なスキル

OJTトレーナーに必要なスキルとして、「ティーチングスキル」と「コーチングスキル」の2種類が挙げられます。それぞれの特徴や違いを解説します。

ティーチングスキル

ティーチングとは、知識やノウハウなどを教えることを指します。業務の具体的な進め方や顧客情報といった具体的な情報を、教える側から教わる側へと一方向に伝える技法が「ティーチングスキル」です。これは、仕事の流れが体系化されていて答えが明確にある場合に有効な方法です。

OJTは現場での実践を通じて新人を育成する手法ですが、ただ先輩や上司の仕事を見せるだけではスキルが身に付きません。仕事の目的や内容、手順を理解させ、現場で役立つ人材に育つようにやり方を工夫しましょう。そのためには、トレーナーは「なぜ(WHY)」「何を(WHAT)」「どのように(HOW)」行うのかを前もって的確に説明する必要があります。

また、OJT実施後には相手に適切なフィードバックを行うことも重要です。「どの程度できているか」「どの部分が足りないのか」「どの部分を改善するべきか」などを具体的に伝えましょう。このプロセスは教えられる側のスキルにも好影響を与えます。フィードバックを行う際は一方的なコミュニケーションにならないよう、その都度分からないことがないかを質問する機会を設けましょう。

コーチングスキル

ティーチングスキルがはっきりした答えや方法を教えることであるのに対し、コーチングスキルは教わる側が自身で答えに気付けるよう導いたり、支援したりする技法のことを指します。

コーチングでは、相手が自身で考えて行動できるよう、適切な質問を投げかけたり、ヒントを与えたりしながら相互にコミュニケーションを取ります。相手の性格や個性によって適した導き方は異なるため、トレーナーはティーチングスキルよりさらに高いコミュニケーション能力が必要です。また、相手の可能性や能力を信じ、成長するまで寄り添える粘り強さも身に付けなければなりません。

コーチングは、自発性を発揮する人材が育つことを目的として実施します。ティーチングだけを行った場合は指示待ち人間になりやすいのに対し、コーチングでは双方向のコミュニケーションを取ることで対人スキルが磨かれ、信頼関係も築きやすくなります。

OJTの効果的な準備の仕方

OJTの目標を定める

まずは企業や部署が求める人物像を明確にした上で、OJTを通して新人に到達してもらいたい目標を決めましょう。目標から逆算して、どれくらいの期間で何を実施するのか、具体的なOJT計画を定めることが大切です。
このステップでは、大目標だけではなく小目標も設定し、計画のマイルストーンの中に組み込んでいきましょう。例えばスキルの習得時期などが小目標に該当します。

指導者に対してOJT研修を行う

指導者(トレーナー)は基本的に現場で働く社員であり、決して育成のプロではありません。指導内容を大まかに伝えてもうまく運用できない可能性が高いため、OJTで指導者自身がどのような動き方をするべきなのか、事前に研修を行うことも重要です。

OJTがどのような目的を持っており、指導者がどのような動きを求められているのかが明確に理解できれば、安心してモチベーション高くOJTに取り組めるようになります。

そのほかにも、OJT研修では以下のような指導が必要です。

  • 最近の若手社員の傾向など前知識の習得
  • ワークショップやケーススタディによる実践的な指導

OJTがスタートしたら、指導者自身の指導方法についてもマネージャーと一緒に振り返っていきましょう。部署全体でフォローアップをしながらOJTに取り組むことが重要です。

OJTを効果的に進める4つのステップ

山本五十六の名言として知られている、「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かじ」という言葉があります。多くの部下を統率し、人を動かすことについて説いた言葉であり、教育に携わる者はぜひ参考にしたい名言です。

OJTは「4段階職業指導法」としてアメリカで開発された教育方法が基となっています。これはShow・Tell・Do・Checkの4要素で構成されており、山本五十六の名言とも重なる普遍的な指導法です。4要素の各ステップを以下に詳しく解説します。

やってみせ(Show)

OJTの初めに、トレーナーが実際に仕事を「やってみせる」ことが必要です。トレーナーが丁寧に仕事をこなす姿を見せることで、新人社員は業務の詳細なやり方や全体の流れを把握できます。実際の仕事風景を目にすることで、口頭での説明よりも具体的なイメージと共に仕事の内容を覚えられます。
ただし、トレーナーが何度もやってみせることは大変です。できれば動画に仕事の作業工程をまとめておき、必要なタイミングで復習できるようにしておくと効率的な学習につながります。

言って聞かせて(Tell)

次のステップでは、やってみせるだけでは伝わらない部分を「言って聞かせる」方法で伝えます。何をどうやって行うのか、なぜ・どういう背景でそれをするのか、組織における業務の役割や意味、前工程と後工程を考えて仕事を進めるのはなぜか、といったような見るだけでは分からない要素を中心に伝えます。

トレーナーが一方的に解説しつづけると新人社員の理解が追いつかなくなるため、定期的に質問を受け付けて理解度を確かめながら説明することが重要です。「やってみせる」ステップと同様に、説明は動画にまとめておくと復習しやすくなります。

させてみせ(Do)

次に、新人社員が見て聞いて学んだことを実際に「させてみせ」ましょう。トレーナーは手出しすることなく見守りながら、新人一人で実際の業務を実践させ、出来栄えをフィードバックします。最終的にはトレーナーなしでも実践できるように改善していきます。

業務を失敗した際のリスクも考慮しつつ、新人社員が現段階で有する能力よりも少し高いレベルの仕事をさせてみることがポイントです。この場合、能力よりも高すぎる仕事を任せると自信喪失の原因になります。一方でレベルの低すぎる仕事は失敗しにくいものの、成長は見込めません。そのため、適度にハードルを乗り越えやすいようレベルを調節する必要があります。

この段階での注意点としては、新人にとって安心してチャレンジできる環境(心理的安全性)を確保することが挙げられます。

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ほめてやらねば人は動かじ(Check)

最後に、新人社員が取り組んだ仕事をトレーナーが評価し、フィードバックします。このステップでは、できないことを責める伝え方になってしまうと新人社員が萎縮し、うまく業務に取り組めなくなる恐れがあります。そのため、できる限り失敗にはフォーカスせず、チャレンジしたことを認めるなどして安心感を与える方法が効果的です。

また、良い点・悪い点を問わず具体的に伝えることが重要です。うまくできた部分に言及する際は、ほめることを忘れないようにしましょう。ほめ方は「よくできた」というニュアンスではなく、「そのやり方で問題ない」といった安心できる言葉で伝えると、新人社員が仕事に積極的に取り組むモチベーションにつながります。失敗した部分を指摘する場合は、改善点を具体的に伝えるやり方でできる限り前向きにフィードバックするようにしましょう。

ここまでの各ステップを循環させることで、OJTを効果的に進められます。

OJTのよくある課題を解決するポイント

PDCAサイクルを回す

目標に基づいた計画を実施する際は、PDCAサイクルを意識しましょう。OJTは、PDCAサイクルの「Plan」「Do」「Check」「Action」の4段階あるうちの「Do」に該当しますが、ただ実施して終えるだけでは意味がありません。

事前に実施計画を策定した上で、計画が順調に進んでいるか、もし遅れがあればどのように改善するべきなのかを定期的に確認することが重要です。そして、改善計画を改めて立てて計画に反映し、また実践する……というプロセスを繰り返しましょう。
このようにPDCAサイクルを回すことで、指導の質を落とさず計画的にOJTを進められます。

若手の傾向を把握する

トレーナー役を務める社員にとって、年齢の離れた若手社員との接し方は悩ましいものです。近年の若年世代は真面目な性格の人が多く、言われたことは確実にこなし、仕事へのモチベーションも高い傾向にあります。その一方で、失敗を極端に恐れて受け身になる人も少なくありません。

時には上司からの注意を避けたいあまり、ミスがあっても相談しない事態が考えられます。最悪の場合、業務に重大な支障をきたしかねません。トレーナーはそのような新入社員の傾向を理解し、常日頃からコミュニケーションを取りながら、彼らが相談しやすい関係を築いておく必要があります。

また、若手が自発的に動けるように研修の方法を工夫しましょう。ワークショップやケーススタディなどを組み込む方法も効果的です。自主的に参加しやすくすることで、自身で考え行動する能力が培われ、学習定着率の向上も期待できます。

具体的な計画を立てる

OJTは行き当たりばったりで実施しても効果的には進められません。育成の効率を上げるためには、期間やペースを具体的に計画する必要があります。

最初に目指すべきゴールを設定した上で、入社後1か月、3か月、半年といった節目に達成するべきレベルを設定するなど、具体的な計画書を作りましょう。目標を明確にすることで、教えられる側もモチベーションを維持しやすくなり、社内での現状把握や目標の共有も容易になります。

達成基準を設定する

目標が達成できたかどうかを誰が見ても把握できるよう、基準を設定しておくことも重要です。「1か月で10件契約を取る」、「1週間で企画書を3枚作成する」など、数値化できる達成基準があればそれを設定するのが理想的です。

しかし、職種によっては基準を数値化しにくいこともあります。その場合は、「電話応対ができるようになる」、「営業先に一人で訪れ、説明できる」など、客観的に判断しやすい具体的な基準を設定しましょう。

OJTとOff-JTを適宜併用して効率を高める

OJTとOff-JTを併用することで、より効果的な教育が可能になります。その際、「業務マニュアル」の存在が特に重要となります。業務に関する基礎知識を事前にマニュアルで予習してもらうことで、OJTにおいてゼロから指導する必要がなくなります。これにより、予備知識が全くない場合と比べてOJTが計画通りに進む可能性が高くなります。
マニュアルは、前述したトレーナーの負担を大幅に軽減し、トレーナーのスキルを補う働きをします。新入社員にとっても、マニュアルの活用で予習・復習がしやすくなるため、OJTで設けられた達成基準をクリアしやすくなるメリットがあります。

また、PDCAサイクルの「Action(改善)」をする際も、マニュアルを参照してどこが悪かったのか・良かったのかを容易に検証・把握できます。マニュアルを指導の基準として扱うことでOJTの品質を均一化でき、「トレーナーによって教える内容が違う」といった指導力のバラつきを抑えることが可能です。

OJTとの併用に役立つ業務マニュアルの作成・共有には「Teachme Biz」の活用がおすすめです。「Teachme Biz」では、ステップ構造のテンプレートに沿って画像と文字を入れるだけでマニュアルを作成できます。また、動画を用いたマニュアルも簡単に作成可能です。さらに、閲覧・検索ログの分析や受講状況の可視化も可能であるため、「作って終わり」にすることなくマニュアルを運用できます。

特徴・機能 – マニュアル作成・共有システム 「Teachme Biz」

OJTとOff-JTを併用した具体例

OJTでもOff-JTでも使えるマニュアルで効率の良い新人育成

JR東日本グループの日本ホテル株式会社は、首都圏を中心に30以上の宿泊施設を運営するホテルチェーンです。OJTとOff-JTの双方で利用できる効率的な新人育成手法を実施するために「Teachme Biz」を導入しており、動画マニュアルを作成・活用しています。
導入の背景として、複数のホテルを開業する計画が進行しており、急速な成長に対応できる人材育成の仕組みが必要でした。現在は企業理念やサービスガイドライン、ビジネスマナー、フロント業務の手順など、260ものマニュアルを作成し、活用しています。

「Teachme Biz」を導入した結果、従来の紙と静止画ベースのマニュアルから、動画を活用した視覚的なマニュアルへの転換を果たしました。これにより、OJTのトレーナーが不在の場合でも社員が自主的に学習できる体制を確立しています。また、マニュアルのタイムリーな配信やサービス品質の均一化、チェーンオペレーション構築にも「Teachme Biz」の機能が役立てられています。これにより、マニュアルの更新や閲覧状況をトラッキングが行えるほか、情報の効果的なブラッシュアップも可能です。

【日本ホテル株式会社 JR東日本ホテルメッツ様】
拡大するインバウンド需要に向けたサービス品質や付加価値を向上、研修でも活躍
日本ホテル株式会社JR東日本ホテルメッツ様

動画のマニュアルで、OJTの時間を大幅短縮

航空業界大手のJALグループは、航空券販売から予約・発券、貨物運送、整備など、幅広い事業を展開しています。同社は新しい会計システムを導入する際、「Teachme Biz」を採用しました。会計業務には正確性と複雑な処理が求められるため、新システムを導入するにあたっては、業務フローを明確にマニュアル化する必要がありました。また、システムの販売元が海外企業で情報提供が英語であるため、こまめな情報共有と言語の壁を乗り越えられる効果的なツールも必要でした。

「Teachme Biz」を導入する前は、個人が独自に作業手順書を作成していたため、属人化が発生していました。格納場所もされていたため、部署内での情報共有が難しい状況もありました。「Teachme Biz」導入後は、画像・動画による情報共有がしやすくなり、遠隔環境でも言語の壁を越えた作業の指示が円滑にできるようになっています。伝達時間の短縮にもつながっており、OJTにかかる時間が半日がかりだったものが1.5時間にまで短縮したケースもあります。ほかにも、視覚的なマニュアルを採用したことで聴覚に障がいのある社員とコミュニケーションが取りやすくなる効果が得られました。

【日本航空株式会社様】
遠隔で新システムの構築をスムーズに
障がいのある社員の活躍にも貢献
日本航空株式会社様

まとめ

OJTは実践形式で行われる社員教育方法です。座学が中心のOff-JTと異なり、業務の進行で必要な知識や技術を実地訓練で身に付けます。

OJTにはメリットとデメリットがあり、向いていない業務や課題も考慮しなければなりません。また、OJTを実施するには事前準備やトレーナー向けの研修を行うことが重要です。しっかりとしたフォローアップ体制を構築することで効果的な社員教育が行えるほか、新人育成の知見が蓄積されることや、人材採用や業務効率化に貢献することなどの利点があります。

さらにOJTはマニュアルを活用するなどOff-JTとの組み合わせが有効です。OJTの効果的な運用方法を模索しながら、社員教育体制を確立させましょう。


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