製造業で多能工化に取り組むなら?鍵は「業務標準化」と「マニュアル化」

最終更新日: 2022.06.14 公開日: 2021.11.24

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現在、製造業を中心に多能工化(マルチスキル化)が注目を浴びています。自社でも社員を多能工化したい、あるいは多能工化のメリットについて詳しく知りたいという方は多いのではないでしょうか。

多能工化は製造業において必然性の高いものですが、実現するにはいくつかの壁が存在します。本記事ではそもそもなぜ製造業で多能工化が求められるのか、そして多能工化のために必要な手順とマニュアルの重要性についてお伝えします。


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多能工化(マルチスキル化)とは?

一人の従業員が複数のスキルを身に付けること

まず多能工化とは、一人の社員が複数の業務を遂行するスキルを身に付け、仕事の状況やニーズに合わせて柔軟に働けるようにすることです。「マルチスキル化」とも呼ばれます。製造業においては、一人で複数のラインを担うようなケースが多能工化にあたるでしょう。

多能工化の反対語は「単能工化」で、これも文字通り、一人の従業員が特定の業務を担うスペシャリストになることを指します。

製造業は現在人手不足が叫ばれており、単能工だけでは業務が立ち行かなくなる可能性があります。このため、多能工化による業務を効率化が求められているのです。
また製造業が抱えやすい熟練工の技術継承問題や多品種小ロット化など社会情勢の変化に対しても、多能工化が有効とされます。

無目的な多能工化はデメリットを招く

あらゆる問題を解決に導いてくれる多能工化ですが、デメリットもあります。一人で複数の業務をこなすということはそれだけ従業員の業務負荷が高くなる懸念がありますし、そもそも多能工化のためには育成に人的・時間的コストがかかります。ただ漠然と「多能工化したほうがいいのでは」と思って実践しようとすると、逆効果になってしまうでしょう。

多能工化は単に「人がいないから一人の人にいろいろな仕事をやらせよう」という施策ではありません。製造業においては特に、企業の競争力に直結する問題であることをしっかり意識する必要があるので、以下で詳しく解説します。

QCDから考える、製造業における多能工化の必然性

今、QCDの中で最も重視すべきはデリバリー

多能工化の必然性について知る前に、製造業における重要な3本柱である「QCD」――すなわちQuality(品質)Cost(コスト)Delivery(納期)について考えてみましょう。

多くの製造業において、品質が良いのはもはや当然のこととされています。また、昨今の原材料の価格高騰に伴い、単純なコストダウンは限界を迎えています。企業としては、適正価格で販売して、利益をしっかり確保しなければなりません。

そうなると、他社と差別化できるポイントは最後に残ったデリバリー、「納期」です。
顧客の要望に応える形で納期を改善すれば競争優位性が生まれるだけでなく、適正価格での販売ができるため結果的に利益の確保とコストダウンを図れますし、長期的に見たときに事業の投資・発展に好影響をもたらします。

製造業のデリバリーは機械稼働率に左右される

デリバリー改善という視点ではさまざまな要素が考えられますが、製造業にとって影響力の大きい要素は機械稼働率です。
例えば機械を動かせる人が少なくストップ時間が長い機械トラブルが発生しても復旧できる人が限られていてすぐに復旧ができないといった状況では稼働率が下がり、デリバリーが悪くなります。
デリバリーを改善するには、機械が停止している状態を最小限にし、機械稼働率を上げなければなりません。

デリバリー改善に必要なのが「多能工化」

前述のような「機械の稼働率低下」を回避し、デリバリーを改善するために必要なのが多能工化です。
多能工化によって誰でも機械をセッティングできるようになれば常に稼働させられますし、機械トラブルが発生したときも、即時復旧が可能となります。

多能工化は製品をより速く、多く製造できるようになるには欠かせないものであり、実現できれば必然的に注文数が増え、利益増につながるというわけです。

多能工化のためには業務標準化が必要

多能工化を実現する「業務標準化」「浸透定着」「改善」ステップ

多能工化のために必要なのは、「業務標準化」と「浸透定着」、そしてその後の「改善」という3つのサイクルを回していくことです。

業務標準化とは、属人化を排して誰もが同じように作業できるように、業務手順を最適な内容にするということです。このような状態なら、一人の従業員がさまざまなスキルを身に付けるというプロセスも想像しやすくなるのではないでしょうか。もちろん、人材育成の仕組みも容易に構築できます。

業務標準化には、マニュアル化が欠かせません。最適化した業務をマニュアルとして目に見える形に落とし込み、適切に運用することで社内に浸透定着させ、定期的に見直してマニュアルの内容を改善していく。これが、業務標準化の基本です。


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業務標準化を行う上での3つの壁

多能工化の土台として業務標準化を行おうとすると、それぞれのステップでいくつかの壁が発生します。ここでは多くの企業が陥りがちなポイントについて解説します。

1.マニュアル作成の壁

最初に現れるのが、「いかにわかりやすく、再現性の高いマニュアルを整備するか」という壁です。マニュアルならすでに作成しているという企業も多いかもしれませんが、時間をかけて作成したマニュアルなのに、なぜか上手く使われていないケースも多いのではないでしょうか。

使われないマニュアルになってしまう原因は単純で、「見てもわからないから」です。文字だけで作成されていたり内容も専門用語などが用いられるなどの難解なマニュアルだと、結局見ても内容を理解できず、業務の再現性は低下します。

また、マニュアルの管理方法が悪いことも使われない原因になります。最新版の管理ができずに古い状態のままになってしまう、あるいはマニュアルの保管場所がわからず、いざ業務を学ぼうと思っても探す手間がかかってしまうといった状況では、マニュアルを使いたくても使えません。

2.社内浸透の壁

マニュアルの内容や管理方法は、社内浸透にも壁を生み出します。従業員がマニュアルを利用するシーンを3つに大別すると、業務を行うのが「初めてのとき」、「久しぶりのとき」、そして業務が「変更されたとき」です。このとき、マニュアルの内容がわかりづらい、きちんと管理ができていない状態だと、社内浸透ができません。

  • 初めてのとき:知識がない人が短時間で理解できない
  • 久しぶりのとき:業務手順を忘れて困っていても迅速に参照できない
  • 変更されたとき:社内周知ができず、やり方がバラバラになる

これらのシーンでしっかりマニュアルを活用できるような仕組みが必要となります。

3.改善の壁

標準化された業務内容に変更があれば素早くマニュアルを改訂し、社内に周知、活用状況の把握、効果検証といった流れ必要になるのですが、ここでも壁が発生します。

例えば紙のマニュアルを運用していると、変更があっても反映が遅くなり、効率の悪いやり方を続けてしまうことになります。また、変更を周知してもリアクションを測る仕組みを作っておかないと、実際にマニュアルがどれくらい閲覧されているのか、正しい手順で実行されているのかを評価できず、PDCAを回せません。

壁を解消するためのマニュアル作成ツールの選び方

ここまでご紹介したような業務標準化の壁を解消してスムーズに多能工化を進めるには、マニュアル作成のツール選びが重要になります。ポイントを3つに絞ってご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

ステップ構造で作成できる

まず、マニュアルはステップ構造で作成することが重要です。これによって業務の流れを定義・可視化できるため、現状の業務の課題点を洗い出すときにも役立ちます。

また、業務内容がステップになっていないと、改訂も困難になります。手順の一部を削除したり新たな工程を差し込んだりして変更を加えるなら、ステップ構造が最適です。

ビジュアルベースで作成できる

文字だけのマニュアルは読むのが大変です。さらに専門用語が多いマニュアルの場合、初心者にとってわかりづらく、動作のニュアンスを伝えるのも難しくなります。そのため、画像や動画を利用したビジュアルベースのマニュアル作成ツールを選びましょう。
何を参照して、どのボタンを押して、何を表示して……といった細かな内容は、動画や画像などを用いれば確実に伝わり、業務の再現性が高まります。

管理と周知、評価が容易

運用面では、マニュアルに対して「いつ」、「誰が」、「何を変更して」、「どこに保存した」のか、把握しやすいツールを選ぶことが重要です。
検索のしやすさはどうか、変更したらメール配信で通知が可能であるかなど、確実に社内浸透できる機能を備えているかを確認しましょう。さらに活用状況のログも閲覧できると、マニュアルの評価がしやすくなります。

クラウドで管理・変更が容易なビジュアルベースのTeachme Biz

Teachme Bizなら業務標準化に適したマニュアルが作成可能

ここまでご紹介したようなマニュアル作成の条件を満たしているのが、Teachme Bizです。ステップ構造で作成できるビジュアルベースのマニュアルを、クラウドで簡単に管理・運用可能です。
このほかにも、Teachme Bizなら変更された内容の確認・実行を期日や担当者を指定してタスク配信が可能です。受け取った側は通知とともにマニュアルを確認し、確実に変更された業務を実行可能。タスクが実行されなければステータス管理で確認できるので、抜け漏れもなく社内浸透できます。

以下では、実際にマニュアル作成を通して業務標準化を達成した事例を2件ご紹介します。

事例1 mipox様:「探す手間」をなくして作業や育成を効率化

mipox様にはこれまでもオフィス系で作成した文字ベースの紙のマニュアルが存在していましたが、作る、探すといった作業者の負荷が大きく、あまり活用されていない状況でした。
そこでTeachme Bizを導入し、現場の社員がタブレットですぐにマニュアルを検索できる状態に。マニュアルがしっかり運用されることで現場でのミスが削減でき、これまでは1時間かかっていた社員教育が30分程度に短縮されるなどの効果も出ています。

事例2 カインズ様:2万人の従業員に「伝わる」マニュアルになった

製造業ではありませんが、標準化された業務内容を全社的に浸透できたのが、カインズ様の事例です。
当初は現場社員が忙しく、アルバイトやパートの人たちに業務を教えるのはOJTが中心で、学習ツールも整備されていないような状態でした。
そこでTeachme Bizを導入し、手順ごとに切り分けられた動画ベースでマニュアルを作成。従業員ごとに異なるわからない部分を一人ひとりが自分でクローズアップして学べるようになり、これまでは難しくてできなかった業務にも積極的に取り組めるようになりました。
また、コロナ禍でなかなか対面での指導ができない中でも、Teachme Bizのトレーニング機能※によって、誰が何をどこまで学習できたのか把握がしやすくなり、ニューノーマル時代に合った教育ができるようになっています。
※トレーニング機能…Teachme Bizで作成したマニュアルを選択し、従業員の能力や状況に合った教育コースを組み立てられる機能

まとめ

製造業において競争優位性を保つために大切なのは、「デリバリーの改善」です。そのためには多能工化が有効であり、下地として業務標準化が求められます。

業務標準化を実現するステップの中では、わかりやすく更新・管理がしやすいビジュアルベースのマニュアルづくりが必須です。従来のように紙ベースのマニュアルでは、多能工化までを実現するマニュアル作成は難易度が非常に高くなってしまいます。
クラウド上で管理できるマニュアル作成ツールを上手く活用しながら、業務標準化、そして多能工化までを実現してみてください。


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