見やすいマニュアルの作り方|8つのワザで視覚的にわかりやすく
有用なマニュアルは読み手にとって理解しやすい内容であることが前提ですが、そのためにはさまざまな条件が必要です。本記事では、見やすいマニュアルに共通する特徴や、見やすいマニュアルを作成する手順、見やすくするためのポイントと注意点についてわかりやすく解説します。
目次
見やすいマニュアルの特徴
見やすいマニュアルは、読者が迷わずに必要な情報にたどりつけるような工夫が凝らされています。効率的に理解できるマニュアルの特徴は以下のとおりです。
デザインが統一されている
デザインが統一されていると、読者が情報をスムーズに探し出すことができ、全体の読みやすさが向上します。読者はページをめくるたびに新しいスタイルに慣れる必要がなく、マニュアル全体を通じて直感的に情報を把握できます。
まず、フォントの種類やサイズ、色使い、見出しの配置などを統一することが基本です。例えば、見出しはフォントとサイズを統一し、本文のフォントにも一貫性をもたせます。色使いも統一することで、重要な情報や注意点も視覚的に強調できます。
一方、統一性が欠如したデザインは、読者の混乱を招きます。ページごとに異なるデザインが使用されていれば、必要な情報を見つけるのが難しく、読みにくさを感じるでしょう。マニュアルの目的である情報伝達が効果的に行われず、読者に強いストレスを与えてしまう可能性さえあります。
要点がまとまっている
要点がまとまっているマニュアルは、読者が必要な情報を素早く見つけられ、理解しやすくなります。特に業務を進めながら使用するマニュアルでは、時系列に沿って情報が整理されていることが求められます。現状のフェーズに合致する情報を迅速に探し出すことができ、業務効率の向上が期待できるからです。
段階やフェーズごとに情報をまとめれば、読者は自身が現在直面している状況に必要な情報にすぐアクセスできます。例えば、プロジェクトの開始から完了までの手順を段階ごとに分け、それぞれのフェーズで行うべき具体的な作業を明確に記載すれば、迷うことなく作業を進められます。
視覚的に理解できる
画像や図表を適宜用いることで、読者は内容を視覚的に捉えやすく、理解度が向上します。対して、文字だけで構成されたマニュアルは、読者が内容を理解する際にすべて想像やイメージに頼らざるを得ないため、理解度が下がってしまう可能性があります。
例えば、手順の説明で各ステップに対応する画像やイラストを挿入すれば、読者は具体的な操作方法を直感的に把握できます。また、複雑な概念やプロセスの説明ではフローチャートやグラフを使用することで、読者は情報の流れや関連性を視覚的に理解できます。
ただし、過度に画像を多用すると、逆に混乱を招くことがあります。バランスを保つことが重要です。
見やすいマニュアルにするために必要な手順
読者がスムーズに目的を達成できるマニュアルを作成するには、いくつかの手順を踏むことが必要です。ここでは、見やすいマニュアルを作るための基本的な流れを、3つの工程に分けて解説します。
マニュアル化する業務の洗い出し・細分化
この工程は、マニュアルの全体像を把握し、必要な情報を具体的に整理するために不可欠です。
まず、マニュアル化する業務をリストアップし、次に各業務を細分化していきます。細分化の際には、具体的な操作手順や必要なツール、システムの使用方法などを詳細に記載します。
例えば、「出荷指示のマニュアル」を作成する場合、「いつ、どのようなタイミングで、何のシステムを立ち上げるのか」「システム上のどこに何を入力するのか」などの手順を細かく記載します。具体的には「毎日午前9時に出荷指示システムを立ち上げる」「システムのトップ画面から『出荷指示』メニューを選択する」「顧客コードと出荷先を入力する」といった具合です。
このように業務を細分化することで、読者がどのステップで何をすべきかが明確になります。自分の作業進行状況に応じて必要な情報を素早く見つけられます。
構成・見出しの作成
この工程では、業務を時系列や重要度に沿って整理し、利用者が理解しやすい構成を作成します。
まず、「概要」→「手順」→「注意事項」→「トラブル時の対処法」といった順序で、利用者が読み進めやすい全体構成を決定します。「概要」ではマニュアルの目的や対象を簡潔に説明し、「手順」は細分化した内容を時系列で示すことで、各ステップの進行が把握しやすくなります。
「注意事項」では、よくあるミスや注意すべき点を示し、誤操作を防ぎます。最後に「トラブル時の対処法」を記載し、問題が発生した際も迅速に対応できるようサポートします。
検証と利用者からのフィードバック
この工程では、完成した仮のマニュアルを実際に業務で使用してもらい、現場の視点から使い勝手や見やすさを確認します。不備による業務への影響がないよう、構成や手順の適切さ、操作との整合性を重点的にチェックします。
フィードバックはアンケートやインタビューで収集し、マニュアルの改善に役立てます。修正後は再度検証を行い、継続的に見直しと更新を行うことで、常に最新の情報と高い完成度を保ちましょう。
見やすいマニュアルにするための8つのワザ
マニュアルを作成する際には少し工夫を加えるだけで、より見やすいものに仕上がります。ここでは簡単に実践できるポイントを8つ紹介します。
目次で全体の構成をわかりやすくする
目次は、読者がどこに何の情報があるのかを素早く理解し、アクセスできるようにするための重要なツールです。目次を設けることで、マニュアル全体の構成がひと目で把握できます。
目次の役割は、マニュアル全体の概要を示し、各セクションへのナビゲーションを提供することです。例えば、大項目や章ごとにページ番号を付ければ、読者は目的の情報を探す際にページをいちいちめくる手間が省けます。目次にサブセクションも含めれば、より詳細な情報までのアクセスが容易になります。
見出し設定と階層分けで情報を整理する
見出しの設定と階層分けを行うことにより、情報を体系的に整理でき、読者が必要な情報を迅速に探し出せます。
マニュアルを作成する際には、大見出し、中見出し、小見出しなど、階層ごとに見出しを設定します。階層化により、情報の優先順位が明確になり、全体の流れが整理されます。
階層ごとにフォントサイズを統一することも重要です。大見出しは20pt、中見出しは16pt、小見出しは14ptといった具合に統一すれば、視覚的な一貫性を保てます。
余白を有効活用して視認性を高める
余白はマニュアルの視認性を高めるために重要です。ページの上下左右いっぱいに情報を詰め込みすぎると視認性が低下します。
逆に余白を設けることで、情報が整理された印象を与え、読者の視覚的な負担を軽減します。読者はどの情報が重要なのかを直感的に理解でき、内容がスムーズに頭に入ります。例えば、段落間に一定の余白を設けると、各段落が独立して認識され、読者は情報を理解しやすくなります。
また、ページ全体やレイアウトの外側に余白を設定すれば、テキスト全体が詰まりすぎず、読みやすさが向上します。
テーマ・フェーズごとに配色を決める
適切な配色にすると、読者が情報を直感的に理解でき、全体の構成が整理されて見やすくなります。例えば、「1、はじめに」は黄色、「STEP1:起動させる」は青色、「Error:対処一覧」は赤色といった具合に、セクションごとに異なる色を使用します。
このとき、あまり多くの色を使用することは避けるようにしましょう。基本的には4色以内に抑えて、視覚的な過負荷を避けます。例えば、基本の配色を青とした場合、使用するのは濃紺、水色、緑色など、同系色を活用して統一感を出せば効果的です。各テーマやフェーズが視覚的に区別されつつ、全体のまとまりが保たれます。
Zの法則でレイアウトを組む
視線の動きを意識した情報の配置も、見やすいマニュアルには重要です。「Zの法則」を取り入れれば、読者は自然に視線を動かして情報を効果的に捉えられます。人の視線は通常、左上から右上、そして左下から右下へと、Zの形に移動する傾向があります。この視線の動きを利用すれば、重要な情報を効率的に配置できます。
まず、左上にはマニュアルのタイトルやセクションの見出しを配置します。ここは読者が最初に目を向ける場所であり、マニュアルの内容をひと目で把握できるようにします。次に、右上に重要な情報や主要なポイントを配置します。これにより、読者が最も重要な情報に迅速にアクセスできます。
次に、視線が左下に移動するため、詳細な手順や追加の情報を配置します。最後に、右下にはトラブルシューティングや参考資料のリンクなどを配置すると効果的です。
チェックリスト・箇条書きで要点をまとめる
文章だけで説明するのではなく、適宜チェックリストや箇条書きを使用することも有効です。
チェックリストは各手順や確認事項をリストアップし、項目ごとにチェックボックスを設けます。例えば、業務の進行に応じて「必要な書類を準備する」「システムにログインする」「データを入力する」といった具体的な項目をリスト化し、完了した項目にチェックを入れる形にします。進捗状況が一目瞭然になるだけでなく、タスクの漏れを防止でき、効率的に作業を進められます。
また、重要なポイントや注意事項を箇条書きにすれば、読者は必要な情報を迅速に把握しやすくなります。
図表や動画で視覚的理解を促す
文章だけでは説明しづらい内容や、読者が理解しにくい内容は、図表や動画を活用することで情報を直感的に伝えられます。
例えば、複雑な手順やプロセスを説明する場合、フローチャートを用いれば、読者は各ステップの流れや関連性を容易に理解できます。また、統計データや数値情報を視覚的に伝えるために、グラフや表を使用することも効果的です。
静止画では伝えづらい場合には、動画を用意します。例えば、操作方法を説明する際には、実際に操作する様子を撮影した動画を提供することで、読者は具体的な動作を視覚的に確認できます。文章では伝えきれない細かなニュアンスや動作を正確に伝えることができ、理解を深めるのに役立ちます。
フォントの工夫で可読性を高める
使用するフォントの種類や太さ、色を工夫すれば、マニュアルの可読性を高められます。フォントの使い方に関して詳しくは次段で解説します。
フォントの種類・サイズ・色の選び方
フォントの種類は、ゴシック体と明朝体を効果的に使い分けます。ゴシック体は視認性が高いフォントなのでタイトルや見出し、重要な情報を強調するのに適しています。明朝体は可読性が高いため、本文や詳細な説明部分に使用します。
フォントサイズは、8~12pt以上を推奨します。小さすぎるフォントは視認性が低くなり、読者が読みづらく感じるためです。
行間はフォントサイズに合わせて調整します。例えば、フォントサイズが10ptであれば、行間は6~10ptに設定すれば、読みやすさが向上します。
フォントの色は基本的に黒を使用しますが、強調したい部分にはほかの色を使います。色を多用すると視覚的に混乱しやすくなるため、2~3色にとどめましょう。
- 赤:注意書きや警告に使用します。視覚的に強調されやすいため、重要な情報に適しています。
- 青:見出しやセクションのタイトルに使います。落ち着いた色で視認性が高く、情報を整理するのに効果的です。
- 黄色:フォント自体ではなく、マーカーとして使用します。強調したい部分にハイライトを入れることで、情報が際立ちます。
わかりづらいマニュアルを避けるための注意点
マニュアルは、業務の効率化やミスの防止に役立つ一方で、その内容がわかりづらいと本来の役割を果たせません。読者が迷わないようにするために、以下の注意点を押さえておくことが大切です。
情報の粒度をそろえる
情報の粒度とは、マニュアル内の情報の詳細度や具体性のことを指します。情報が多すぎることはよくありませんが、重要な情報だけを残すと、粒度がばらつく場合があります。このばらつきを避けるためには、見出しの階層で見たときに情報のレベルがそろっている必要があります。
例えば、大見出しで「起動の手順」を設定し、その下に中見出しとして「STEP1」と「STEP2」とを配置すれば、同じ粒度の情報であると認識できます。一方で、見出しの階層が異なる情報を同じレベルに配置してしまうと、読者は混乱しやすくなります。
【よい例】
●大見出し:起動の手順
・中見出し:STEP1
・中見出し:STEP2
●大見出し:シャットダウンの手順
【悪い例】
●大見出し:起動の手順
・中見出し:STEP1
・中見出し:STEP2
●大見出し:STEP1 シャットダウン
●大見出し:STEP2 電源ケーブルを抜く
細部にこだわりすぎない
マニュアルを作成する際に、レイアウトやフォントなどに配慮することは重要ですが、マニュアルの目的を見失わないように注意が必要です。マニュアルは業務内容や手順をわかりやすく伝えるためのものであり、見栄えをよくすることが目的ではありません。
見栄えを追求しすぎると、時間やリソースを無駄にする可能性があります。迷うようであれば、社内でフォーマットを統一し、シンプルなデザインにすることをおすすめします。シンプルなデザインは、読者にとっても視覚的にわかりやすく、情報が整理されます。
定期的に刷新する
マニュアルを作成したあとは、定期的に刷新することが重要です。利用者からのフィードバックを反映させることで、マニュアルの見やすさを向上させられます。フィードバックを収集し、実際の使用状況にもとづいて必要な修正を行うことで、マニュアルの品質を高く維持できます。
定期的な刷新にはマニュアルの情報を正確で最新のものに保つ効果もあります。業務プロセスの変更や新しい技術の導入など、マニュアルに記載されている情報が古くなることは避けられません。定期的に内容を見直し、最新の情報を反映させることで、利用者は正確な情報を得られます。
マニュアル作りに役立つツール
見やすいマニュアル作りに役立つ代表的なツールには、Microsoftの「PowerPoint」「Word」「Excel」のほかに、「マニュアル作成専用ツール」があります。
直感的にデザインしやすい「PowerPoint」
PowerPointは、テキストや画像、図形の自由な配置が可能で、デザイン性が高く、プレゼン感覚でマニュアルの説明を進められます。また、アニメーション機能で動きを含む視覚的な表現もできるため、特に新入社員のオリエンテーションや操作トレーニング用資料に適しています。
PowerPointでの作成が向いているマニュアルには、以下のようなものがあります。
- 新入社員のオリエンテーション用マニュアル
- 操作のトレーニング資料
- 業務手順の簡易説明マニュアル
文章構成がしやすい「Word」
Wordは見出しや段落の整理が簡単で、文章構成に適しています。スタイルやテーマ機能でデザインを統一できるほか、リンク機能により関連情報へのアクセスも容易です。文章がメインのマニュアルや、技術的な詳細を含むマニュアルにおすすめです。
Wordでの作成が向いているマニュアルには、以下のようなものがあります。
- 詳細な手順書
- テクニカルドキュメント
- 組織内のポリシーや業務ガイドライン
数値情報を整理しやすい「Excel」
Excelは、数値情報の整理や自動計算がしやすく、複数のシートやグラフ作成機能も備えています。データ管理や分析が必要なマニュアルに向いており、例えば財務管理やプロジェクトの進捗管理で活躍します。
Excelでの作成が向いているマニュアルには、以下のようなものがあります。
- データ分析や報告書
- プロジェクト管理マニュアル
- 財務・会計マニュアル
簡単に手間なく作成できる「マニュアル作成専用ツール」
マニュアル作成専用ツールは、豊富なテンプレートと直感的な操作で、専門知識がなくても簡単に作成できるのが特徴です。また、デザインが標準化されているため、一貫性のある見た目を保ちながら効率よく作成が可能です。さらに、クラウドベースで管理するため内容の更新もスムーズで、変更があるたびに即座に反映・共有できます。作成から管理までのプロセスが一つのプラットフォームで完結する点も、大きなメリットです。
マニュアル作成専用ツールは効率的に内容を整理し、視覚的にわかりやすいデザインを作成できるため、以下のようなさまざまなマニュアルを作成可能です。
- 操作手順書
- メンテナンスマニュアル
- 製品ガイド
- 社内の業務フローや手続きのガイドライン
- 新入社員向けトレーニングマニュアル
まとめ
見やすいマニュアルの条件は、デザインが統一されていること、要点がまとまっていること、視覚的に理解しやすいことです。このようなマニュアルは迅速に情報を探すことができ、読者の理解度を高めます。さらに読者からのフィードバックを反映させ、継続的に改善することが、有用なマニュアルの作成につながります。
現在では、クラウド上でマニュアルを編集・管理できるプラットフォームサービスも複数登場しています。なかでも「Teachme Biz(ティーチミー・ビズ)」は、クラウド上でマニュアルを気軽に作成・編集し、共有もできるプラットフォームサービスです。
Teachme Bizのマニュアル書式やフォントは見やすいもので統一されているため、フォーマットを意識して作らずとも、自然に読みやすいマニュアルを作成できます。また、画像や動画がメインのマニュアル作成ツールであり、文字だらけのマニュアルに比べて読みやすく理解されやすいマニュアルを作成することが可能です。
Teachme Bizで手順書を作成する方法
「Teachme Biz」は写真やイラスト、動画、テキストを駆使することで、よりわかりやすく、より業務効率化を図ることを可能にしたビジュアルSOPプラットフォームです。
SOP(Standard Operating Procedures)とは、具体的な作業や手順を作業ごとに順序立てて説明したものです。ビジュアルSOPプラットフォームを用いることで、テキストだけでなく画像や動画を効果的に使った「誰でも簡単に内容を理解できる手順書」を作成できます。
Teachme Bizを使った手順書作成の流れは以下の4ステップです。
-
1. スマートフォンやタブレットで写真や動画を撮影する
2. 説明文を入力する
3. 伝わりやすくするために写真や動画にマーキングをする
4. 手順書を公開・共有する
クラウドでデータが同期されているため、改訂時もすぐに内容を更新でき、即座に現場へ伝えることができます。
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