従業員エンゲージメントとは?測定方法や指標、高める施策をご紹介

最終更新日: 2023.12.08 公開日: 2020.03.18

エンゲージメントとは
働き方への価値観が多様化し、労働環境が変化している中、従業員エンゲージメントに注目している企業は少なくありません。この記事では、そもそも従業員エンゲージメントとは何かといった概要から、メリット、そしてエンゲージメントを向上させるポイントなどを解説します。施策を実行するにあたって掲げるべき指標や他社事例、注意すべきことも紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。


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目次

従業員エンゲージメント指標 (Engagement)とは?

エンゲージメント(engagement)という言葉の一般的な意味は約束、婚約、雇用契約などです。

ビジネスシーンでは主に、顧客エンゲージメントと従業員エンゲージメントの2つの言葉を用います。前者は顧客が自社や自社ブランドについて抱く愛着などを示し、後者は従業員が自社に抱く愛着を示す語です。本記事では、従業員エンゲージメントについて解説します。

従業員エンゲージメントの定義

一般的に従業員エンゲージメントとは、従業員が企業へ抱く、自発的な貢献度・愛着・愛社精神などを数値化したものです。従業員の企業貢献度を測る際の指標であり、組織のビジョンや理念への共感度合いなどを測定し、把握されます。
なお、社内の人事においてこうした測定・数値化が行われるのが基本です。

昨今は、働き方の多様化など、企業における労働環境に目まぐるしい変化が生じています。これらに適宜対応できている企業ほど、従業員エンゲージメントが高い傾向です。

従業員エンゲージメントが高い企業では、「自身が会社から期待されている」「同僚と質の高い仕事をしようとコミットしている」などの意欲的な思いを、従業員は抱いています。
逆に従業員エンゲージメントの低い企業では、「上司が自分の仕事・役割をわかっていない」「自身のやっている仕事は世の中に対してあまり意味がない」など、不安や不満を感じているおそれがあります。

ロイヤリティとの違い

従業員エンゲージメントと意味合いの似ている言葉としてロイヤリティが挙げられます。
ロイヤリティは、従業員が持つ自社への忠誠心や帰属意識を示す言葉です。対して従業員エンゲージメントは従業員がどれだけ自社のファンであるかを表すものです。
ロイヤリティは企業と従業員との主従関係を大前提としている点で、従業員エンゲージメントとは大きく異なっています。

従業員満足度(ES)との違い

従業員満足度とは、自社の給与や休暇日数、福利厚生など職場環境に対する満足度を指す言葉です。顧客満足度向上とともに、自社の従業員に対しても労働環境面で満足度を高めるよう検討し、取り組みを実践する企業は少なくありません。

その点、自社への愛着を表す従業員エンゲージメントとはニュアンスが異なります。
先に述べたロイヤリティや、従業員満足度はいずれも重要で、相互に関連性を持っています。しかし単にロイヤリティや従業員満足度が高い職場を構築すれば、従業員の積極性を引き出せるとは限りません。会社側がよかれと思って充実度の高い施策に取り組んだとしても、一方通行である場合もあり、従業員に響くかどうかは別問題だからです。

しかし、従業員エンゲージメントを高めることは、従業員が自主的に「会社の成長のために高い能力を身に付け、発揮したい」と望むことになり、従業員自身の成長と自社の成長とを同時に実現できます。つまり従業員エンゲージメントを向上させることは、企業と従業員の両者が大きなメリットを直接得られることにもつながります。

従業員エンゲージメントが注目を集める理由

なぜ、従業員エンゲージメントが注目されているのか、ここでは考えられる2つの理由について解説します。

理由1:日本の現状

従業員エンゲージメントに注目が集まる理由として、日本における終身雇用の維持が難しくなったことが挙げられます。
従来、国内企業の多くが終身雇用制度のもと従業員を採用してきました。従業員は定年まで職を失う心配がなく、収入も安定するというメリットを享受できることから、ひとつの組織に留まり、忠誠を尽くしやすい状況でした。

しかし近年では、経済状況の悪化などにより、雇用制度を見直す企業が増加しています。従業員が将来にわたって生活できるよう雇用を継続させることは、もはや困難な時代といっても過言ではありません。
とはいえ、企業にとって人材はなくてはならないリソースです。組織への愛着、つまり従業員エンゲージメントを高められれば、終身雇用のような制度がなくとも長く組織に貢献してくれると考えられます。このような人的リソースの確保といった側面から、従業員エンゲージメントは注目を集めています。

また、労働人口の減少も理由として挙げられます。
内閣府が公表している「令和4年版高齢社会白書」によると、日本の少子高齢化に伴い、15歳から64歳までの労働人口(生産年齢人口)は減少の一途をたどっています。
労働人口の減少は国の経済活動全体の縮小につながります。そのため、各企業は従業員をいつまでも雇い続けることが難しくなっているのが現状です。

参照元:令和4年版高齢社会白書

理由2:働き方・価値観の多様化

近年では、従業員に多様な働き方を提供する企業が増えてきました。働き方改革の推進や新型コロナウイルスの感染拡大などを受け、この動きはより加速しています。例えばテレワークやフレックスタイム制などを浸透させれば、従業員にとって希望する働き方を実現しやすくなります。
こうした中で、各従業員の働きを管理する必要性以上に、従業員にそれぞれの労働スタイルで主体的に行動してもらう必要性が高まっています。
これに応えられるのが、従業員エンゲージメント向上の取り組みです。
従業員が組織に愛着を抱いてくれる取り組みを全うすれば、給与や待遇を大きく見直すことなく、従業員が組織のために貢献しやすい労働環境を築けます。

従業員エンゲージメントを構成する3つの要素

従業員エンゲージメントは、3つの要素によって構成されています。ビジョンの共感・働きやすさ・行動意欲の3つです。従業員エンゲージメント向上施策を具体的に実行するなら、この3つをしっかりと意識することが大切です。

1. ビジョンの共感

従業員エンゲージメントを高めるには、組織が掲げるビジョンに共感してもらい、愛着や帰属意識、誇りなどを抱いてもらうことが大切です。

従業員の帰属意識が高まれば、自分が所属している組織のためにどうすれば組織に貢献できるのかも考えるようになるでしょう。

ビジョンに共感してもらうには、従業員に伝わりやすい理念や戦略を掲げることが大切です。どれほど崇高な理念を打ち出したところで、抽象的な難しい言葉を使っていれば伝わりにくくなります。
一度理念を見直す、あるいは理念自体を変えず、伝え方や表現の仕方を再考することも効果的です。理念やその表現方法について、従業員から直接意見を集める機会を設けてみるのもおすすめです。

2. 働きやすさ

従業員自身が働きやすいと感じられる職場環境や体制の構築も重要です。
まず、従業員同士が気軽にコミュニケーションを取れる職場ならお互いに協力しやすく、悩みや不安を一人で抱えこむことも少なくなります。

また、業務効率化が考慮されていない環境では、従業員のモチベーションや生産性が下がるおそれがあります。デジタルツールや最新技術の導入を進め、経営側と現場従業員とで意識を合わせ活用することが大切です。
経営側が一方的に新規ツールなどを導入すると逆効果になる場合があります。現場の従業員側の意見を聞きながら課題をあぶり出し、それを解決できるように環境改善を進めてください。

併せて、評価制度も見直してみましょう。頑張っても正当に評価してもらえないような企業に、従業員が愛着を抱くことはありません。特にリモートワークでは、各従業員のそれぞれの働きを、どのように正当・公平に評価するのかが難しい問題になりがちです。評価基準の透明性に注意し、従業員側へ明確に提示するようにしましょう。

3. 行動意欲

エンゲージメントが高い従業員とは、端的に言えば組織に貢献しようと意欲的に行動できる従業員のことです。彼らは「自組織のためにもっと頑張ろう」とお互いに高め合い、仕事に意欲的に取り組んでくれます。仕事に活かせる各種スキルも意欲的に磨いてくれるはずです。

従業員の行動意欲を高めるには、まず組織自らが従業員への扱いを見直す必要があります。組織が従業員のために力を尽くしてくれるからこそ、従業員も組織のためにと考え行動してくれる状況が整います。
前述した、「ビジョンの共感」や「働きやすさ」などの具体策を実行し、従業員に対して大切にしている思いや姿勢を明示しましょう。

従業員エンゲージメントを高めるメリット

ここからは、従業員エンゲージメントの向上により企業が得られるメリットを、具体的に3つ解説します。

メリット1. 生産性が向上する

従業員のモチベーションが上がり、自発的に行動したり行動を改善したりする状況が生まれやすくなります。そのため、従業員一人ひとりの生産性の向上が見込め、結果的に企業全体の業績アップにつながります。
現代では、従業員エンゲージメントと企業の業績とは実際に相関していると考えられています。つまり従業員エンゲージメントは、具体的な生産性向上策としても有効です。人口減少問題や、働き方改革の進む今日の社会において、こうした生産性向上対策は必要不可欠な施策です。

メリット2. 離職率が低下する

一般に、従業員エンゲージメントが高い職場ほど、早期離職率が下がります。従業員が仕事のやりがいを感じることで企業に対し愛着が生まれ、できるだけ長く勤めたいと思ってもらえるためです。

従業員エンゲージメントが高い企業は、職場の雰囲気や人間関係が良くなり、言いたい意見を忌憚なく発言できる環境も生まれます。こうした環境構築によって優秀な人材の流出を防げれば、競合他社に対し大きな強みともなりえます。人材の流動性が指摘される現代において、この強みの維持はことさら重要です。

メリット3. 顧客満足度が向上する

従業員エンゲージメントが高まることで、顧客満足度の向上にも期待できます。エンゲージメントが高く熱意のある従業員は、顧客と積極的にコミュニケーションを図り、「より顧客のニーズに応える」といった明確な目的に向かって業務を遂行できるからです。
その結果、顧客のLTV(ライフタイムバリュー/生涯顧客価値)の増加など、企業にとっての長期的なメリットを見込めます。

従業員エンゲージメントの測定方法

従業員エンゲージメントの計測で、現在最も広く用いられているのはアンケート調査で、エンゲージメントの推移や指標を確認する目的で行われるアンケート調査を、エンゲージメントサーベイと呼びます。
月1回の実施や半年ごとの実施など、定期的にアンケート調査を行うことにより、従業員エンゲージメントの推移を確認できます。

こうしたエンゲージメントサーベイは、専門企業へ外注し、客観的立場から行ってもらう方が効率性に優れておりおすすめです。
例えば、サーベイ実施会社として知られているのはGreat Place to Work®などが挙げられます。同社は毎年、「働きがいのある会社ランキング」を企画・公表しています。このランキングへ自社も参加すれば、同社によるエンゲージメントサーベイを受けられるのが魅力です。参加のみであれば無料で申請できることから、お試しやランキング把握のために申請してみるのも一案です。

補足:アンケート測定時の注意点

アンケート調査は、実施頻度や設問数次第では従業員にとって負担になるおそれがあります。また、実施目的が明確ではないまま実施しても、指標や方法を適切に設定できず、回答から正確なデータは得られません。
単に、調査を実施すればよいというものではなく、実施目的を明確にすることを前提として、しっかりとしたプランを立ててください。
エンゲージメントサーベイの実施の際は、特に以下の点に注意を払うとよいでしょう。

  • 企業が抱える課題を明確にし、その改善のための調査であることを各従業員へ共有する
  • 実施頻度やアンケートごとの設問数を最適化する
  • 集計・分析は素早く実施し、必要に応じて従業員をフォローする

従業員エンゲージメントとして見るべき指標

エンゲージメントサーベイを実施する際、指標として把握しておきたい点は、サーベイによっても異なります。代表的な指標は、以下の3点です。

・総合指標
自社に対する総合的な満足度や、将来的な期待度を把握できます。

・仕事への熱量レベル
実際に行っている業務のやりがいや、仕事への没頭度合などを推し量れます。また、仕事を楽しむ活力を従業員自身が持っているかどうかの把握も可能です。

・エンゲージメントの向上要因
組織との関係性や職務自体の行いやすさ、従業員本人が持つ業務における資質などを把握できます。

エンゲージメントサーベイで従業員に対し出題される設問には、これらに関する質問が必ず含まれています。

前述したGreat Place to Work®が実施しているアンケートの出題内容の例を、以下に記載します。

  • 経営・管理者層は、誠実で倫理的に仕事をしている
  • 経営・管理者層は、仕事を進める上で失敗はつきものであることを理解している
  • この会社では、誰でも特別に認められる機会がある
  • 私は、自社で従業員として働いていることを、胸を張って他人に言える
  • この会社は、入社した人を歓迎する雰囲気がある

あくまで一例ですが、これらの質問によって従業員の自社への信頼の有無、自身が社内で尊重されているか否か、従業員同士の連帯感の有無などを図れるのがメリットです。

従業員エンゲージメントを高める3つの施策

従業員エンゲージメントをより向上させていくためには、どのような施策が有効なのでしょうか。ここでは、主な3つをご紹介します。

施策1:トップから経営ビジョンを発信する

まず、会社や経営陣の考えをオープンな形で従業員へ周知することが重要です。
企業規模が大きくなればなるほど、経営理念や会社のビジョンが各従業員へ浸透しにくくなります。また、昨今増えているテレワーク環境下において、ビジョン共有はより注力すべきポイントとなります。遠隔では経営者のメッセージが伝わりにくく、帰属意識が薄れるおそれがあるためです。
経営者自身が、コミュニケーションチャットや定期総会、あるいはイベントや勉強会などで、定期的に考えを発信してください。従業員の心をつかむことが目的ではあるものの、逆にわざとらしくならないよう、明確な理念をわかりやすく伝えることを心掛けましょう。

施策2: 従業員の価値観・ニーズを把握する

次に、個人の期待と企業の期待の合致が重要です。
従業員が会社に対し、どのような期待を持っているのかを把握できていなければ、エンゲージメント向上に向けた取り組みの目的がぶれてしまうからです。
従業員一人ひとりの価値観を知るには、本記事でも推奨しているアンケート調査のほか、1on1ミーティングの実施なども有効です。個人のやりがいやニーズが明確になったら、それらにフィットする人事異動や権限委譲などを、具体的に考案していきましょう。
各個人のニーズなどが明らかになれば、会社の方向性と合致させていきます。

施策3:労働環境を整備する

上記の2つを推進しながらさらなる従業員エンゲージメント向上を図るには、社内制度の新設など環境改善も必要です。
前述タイトル「従業員エンゲージメントを構成する3つの要素」の「働きやすさ」でも述べたように、評価制度やその透明性は、エンゲージメントに直結しやすくなるからです。
例えば、以下のような取り組みが有効です。

  • 社内のキャリアステップを明確にする
  • スキルアップのための制度を設ける
  • 社内公募制度、社内FA制度を設ける
  • インセンティブ制度を設ける

 
土台としてすべての従業員が自分自身のやりがいを持てる上に、新たなチャレンジを積極的に行いやすい風土へと、社内の制度面から変えていくことが重要です。そのためにどのような制度が必要かは、会社によって異なります。上記を参考にしながら、自社にフィットする制度や方法を検討してみてください。

従業員エンゲージメントを向上させるポイント

ここでは、従業員エンゲージメントの向上策を実施するにあたって、ぜひ意識しておきたいポイントを簡単にお伝えします。

ポイント1:自社にとっての「エンゲージメントが高い状態」を定義

エンゲージメントが高い状態とは、先に述べた通り従業員が自ら会社のために能力を発揮してくれる状態を指します。

ただ、エンゲージメントが高い状態の具体的な定義は、個々の企業によって異なるケースも少なくありません。したがってエンゲージメント施策に取り組む前に、自社における「エンゲージメントが安定して高い理想の状態」とは何かをあらかじめ定義しておくことが重要です。

ポイント2:「マネジメント層のマネジメント」にも着目

マネジメント層に対する教育も重要なポイントです。
部下の話を真摯に受け止め、気を配り、期待し、適切な道標を定めるといった適切なマネジメントが行われている、あるいは的確なリーダーシップを発揮していれば、従業員から企業に対する信頼感や愛着心が高まるからです。

そのためには、マネジメント層に社内やチーム内での立ち位置を把握させ、それに見合った裁量を可能な限り持たせることが大切です。
併せて、可視的に定量化された基準に沿ったマネジメントを進めてもらいましょう。会社や部署・チームの風土にフィットする客観的な基準を設置し、それに基づき管理・評価してもらうことで、公平かつ効率的なマネジメント業務が実現します。

マネジメント層専用の研修実施も有効です。マネジメントに求められる能力や、マネジメントを介して従業員エンゲージメントを向上させる必要性、専用ツールの扱い方などを丁寧に学び、マネジメント層間で共有してもらうこともおすすめです。

従業員エンゲージメントを下げる3つの落とし穴

ここからは、従業員エンゲージメントを低下させてしまう要因について、代表的な事例を3つ紹介します。企業が良かれと思って実施したことが、逆にエンゲージメント低下につながってしまうケースも少なくありません。下記の3点を押さえ、施策実行や状況改善に役立ててください。

落とし穴1. オーバー・コンプライアンス(過剰法令遵守)

言うまでもなく、コンプライアンス(法令遵守)は現代企業にとって重要です。しかし法令遵守のために制約やルールを増やし過ぎるとオーバー・コンプライアンスが生じます。

例えば、愛社精神豊かな従業員が「お客様のために臨機応変に対応したい」と考えており、また社会通念上も、迅速なサービス提供が推奨される状況があったとしましょう。しかし会社で「○○万円以上の変更はシステム入力および翌日のバッチ処理で反映が必要」「△△に関する決定には営業部と法務部の押印が必要」などの制約を定めていたために、従業員が即時的な対応を起こせなかったとします。するとその従業員のエンゲージメントは大きく低下するはずです。

基本的な法令遵守は必要ですが、従業員側にコントロールの幅を持たせることもエンゲージメント向上には重要です。過去のインシデント対応などが重なり、知らないうちにオーバー・コンプライアンスになっているケースは往々にしてあります。自社でそうした状況が明らかな場合は、抜本的に見直してみてください。

落とし穴2.職能型(メンバーシップ型)の人事制度

日本企業の多くが、職能型人事制度を採用しています。形式上は職務型(ジョブ型)要素をいくつか取り込んでいても、全体的な運用は職能型の特徴を備えている企業は多いものです。

職能型人事制度自体は、問題ありません。ただ一般的に、従業員エンゲージメントを下げやすい制度であるとも考えられています。なぜなら、従業員の職務遂行能力を基準に賃金が支払われる制度であり、かつ能力は業務経験を通じて向上していくと考えられているからです。基本的に、勤続年数に応じて賃金も上がっていくのが原則です。

つまり職能型は、日本の高度経済成長を支えた年功序列・終身雇用前提のシステムです。しかし現代においては、勤続年数の長い従業員の賃金に圧迫され、若手従業員の賃金が職務に見合わない低さになるケースが少なくありません。

会社への愛着が深い従業員であっても、自分より勤続年数が長いだけで高給を得る従業員が多い場合、エンゲージメントは下がるおそれがあります。会社として給与の決定基準を改めて明確にし、全従業員が納得できる人事制度に変更することが大切です。

落とし穴3. 業務手順の不統一

上記2つは会社的・人事的な要素ですが、一人ひとりのエンゲージメントを高めるには基本的な日々の業務が重要です。しかし、その中で最もエンゲージメントを下げてしまう要因が、業務手順に関わる以下のようなフラストレーションです。

  • 業務手順が統一されていない
  • 手順の変更が周知されていない
  • 属人的業務中心かつ特定人材への依存度が高い

など、マニュアルや手順書が無かったり、あったとしても要点の検索が困難だったりすると、従業員の間で業務効率が低下しやすくなります。それにより職場全体の生産性低下や、属人化の強化へもつながります。ときには、「AさんとBさんの主張が食い違っている」など、従業員間でのミスやクレームに発展することすらあるでしょう。当然こうした状況では、従業員エンゲージメントは低下します。

このように、会社としての業務手順・ルール・統一体制を用意していないと、従業員は本来集中したい生産的な業務や顧客対応、発展的提案などに取り組めない状況が生じてしまいます。結果、従業員エンゲージメントは低下してしまうでしょう。

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対策としては、どの手順が会社の標準に該当するかを明示し、基本業務は誰でも同様に行える状態にしておくことです。
また、新しい手順の追加や変更があった際には全対象者へ通知し、確認について把握・管理しましょう。こうした標準仕様の設置は、オーバー・コンプライアンスの抑制にもつながります。

上記の仕組みを独自開発するには多大な時間とコストがかかるため、KintoneやTeachme Bizなどのサブスクリプション型クラウドツールを導入し、業務手順をまとめていくとスムーズです。

従業員エンゲージメント向上に取り組む企業事例

では最後に、従業員エンゲージメント向上を図るように取り組み成功している事例について、2つ紹介します。

事例1:働きやすい職場づくり

世界的に有名なコーヒーチェーン店では、従業員の働きやすさを重視した環境づくりにつとめています。

例えば、チェーン店にもかかわらず、サービスにまつわるマニュアルが用意されていません。従業員のことを「パートナー」と呼び、企業理念に共感し自発的に働いてもらうことを大切にしています。従業員同士が相互評価する制度を導入しているのも、めずらしいポイントです。
また従業員自らが将来的なキャリアを考え、スキルアップできるよう、通信教育などのサポートが手厚いのも特長です。理想とする将来像を描いたうえで、実現するための成長目標を一人ひとり決め業務に取り組んでもらっています。

価値観の押し付けではなく従業員自らの意識を高め、働きやすい職場を整えることで、従業員エンゲージメントもおのずと向上するはずです。ひいては高い顧客満足度にもつながっていると考えられます。

事例2:独自の制度づくり

ある住宅総合メーカーでは、他にはないオリジナルの福利厚生制度を導入しています。
例えば、親の介護に関連する帰省に対し年4回まで距離に応じた交通費相当額を支給する親孝行支援制度などが一例です。

また、同社では従業員の働きがいや誇りを最大化できる企業風土を醸成するための表彰制度を創設しました。これは年1回、優れた成績を残した事業所や個人、グループ会社などの功績をたたえる制度です。2023年の表彰式は対面とオンラインで行われました。全従業員がいずれかで参加するため、成果にいたるまでどのようなプロセスを踏めばよいのかを共有できたのは大きなメリットです。
それを基に、今後の自己研鑽にもつながると期待されています。

まとめ

現代では、従業員エンゲージメントの重要性が高まっているとともに、その向上に向けた課題も浮き彫りになっています。特に人材不足から業務効率化が求められる中、従業員エンゲージメントを低いまま放置していては、生産性向上を決して見込めません。

本記事でご紹介した従業員エンゲージメント低下要因や具体的な向上施策を参考に、自社にあった方法で、状況改善を試みてください。また、マネジメント層も部下との適切なコミュニケーションを図りマネジメント力を磨くことが大切です。

抜本的な改革を推し進めることはもちろん、日々、少しずつ状況を変えていくことも大切です。従業員エンゲージメントを向上させるメリットや、社会的な必要性を理解しつつ、取り組みやすい要素から継続的にチャレンジしてみてください。

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