従業員エンゲージメントとは?測定方法や指標、高める施策をご紹介

最終更新日: 2023.10.03 公開日: 2020.03.18

エンゲージメントとは
従来、企業は顧客の満足度を高めることに注力してきました。しかし近年は特に「従業員の満足度」や「従業員のエンゲージメント」も高めようと尽力する企業が増加しています。

人口減少に伴う人材不足が常態化し、終身雇用・年功序列制も揺らぐ昨今の日本では、優秀な人材を採用し長く活躍してもらうことが重要です。そのために「従業員エンゲージメント」という概念に着目し、その実現を目指す企業が増えてきました。

本記事では、エンゲージメントという言葉の定義から、測定方法や測定用の指標、またエンゲージメントを高めるための具体的な施策についてご紹介します。

生産性WP

目次

エンゲージメント(engagement)とは

エンゲージメントの意味

エンゲージメント(engagement)という言葉の一般的な意味は、約束、婚約、雇用契約などです。

ビジネスシーンでは主に、「顧客エンゲージメント」と「従業員エンゲージメント」の2つの言葉を用います。前者は顧客が自社や自社ブランドについて抱く愛着などを示し、後者は従業員たちが自社に抱く愛着を示す語です。本記事では、「従業員エンゲージメント」を解説します。

「従業員エンゲージメント」とは何を指す?

端的には、「従業員が自社へ持ってくれる愛着」が従業員エンゲージメントです。具体的には、組織のビジョンや理念への共感度合いなどを測定し、数値化したものです。一般には、社内の人事においてこうした測定・数値化が行われます。

昨今は、働き方の多様化など、企業における労働環境に目まぐるしい変化が生じています。これらに適宜対応できている企業ほど、従業員エンゲージメントが高い傾向です。

従業員エンゲージメントが高い企業では、「自身が会社から期待されている」「同僚たちと質の高い仕事をしようとコミットしている」などの思いを、従業員たちが抱いています。
逆に従業員エンゲージメントの低い企業では、「上司が自分の仕事・役割をわかっていない」「自身のやっている仕事は世の中に対してあまり意味がない」など、不安や不満を感じてしまっている可能性があります。

ロイヤルティや従業員満足度との違いは会社への影響度

従業員エンゲージメントと意味合いの似ている言葉として「ロイヤルティ」や「従業員満足度」が挙げられます。従業員エンゲージメントが、これらとどう異なるのかについても紹介します。

まずロイヤルティは、「従業員が持つ自社への忠誠心や帰属意識」を示す言葉です。対して従業員エンゲージメントは「従業員がどれだけ自社のファンであるか」を表すものです。ロイヤルティは企業と従業員との主従関係を強く前提化しており、この点で、従業員エンゲージメントとは大きく異なる概念です。

また従業員満足度とは、「自社の給与や休暇日数、福利厚生など職場環境に対する満足度」を指す言葉です。自社への愛着を表す従業員エンゲージメントとはやはりニュアンスが違います。

ロイヤルティ・従業員満足度はいずれも重要で、相互に関連性を持っています。しかし単にロイヤルティや従業員満足度が高い職場を構築すれば、従業員の積極性を引き出せるとは限りません。
他方、従業員エンゲージメントを高めることで、従業員が自主的に「会社の成長のために高い能力を身に付け、発揮したい」と望むことになるため、従業員自身の成長と自社の成長とを同時に実現していけます。つまり従業員エンゲージメントを向上させることは、企業と従業員の両者が大きなメリットを直接得られる取り組みです。

従業員エンゲージメントが注目される背景

従業員エンゲージメントに注目が集まる理由として、終身雇用の維持が難しくなった日本の現状が挙げられます。
従来、国内企業の多くが終身雇用制度のもと従業員を採用してきました。従業員は、定年まで職を失う心配がなく、収入も安定するというメリットを享受できました。そのため、ひとつの組織に留まり忠誠を尽くしやすい状況でした。

近年では、この終身雇用を見直す企業が増加しています。大きな理由のひとつは、日本における経済状況の悪化です。バブル崩壊以降、日本の景気は低迷を続けています。組織自体の進退が不安定となったため、すべての従業員を定年まで雇用できる保証がなくなりました。
また、労働人口の減少も影響しています。日本の少子高齢化は社会問題化して久しく、それに伴い労働人口も減少の一途をたどっています。労働人口の減少は国の経済活動全体の縮小につながり、各企業は従業員をいつまでも雇い続けることが難しくなりました。

企業側が終身雇用制度を見直せば、労働者・従業員側も働く姿勢を変化させます。こうした状況で企業は、「従業員たちが、定年まで雇用してくれる保証がない組織に身を置きながらも、高く安定した能力を発揮してくれるにはどうしたらよいか」を考えなくてはなりません。そこで注目を集めたのが従業員エンゲージメントです。
組織への愛着を従業員に抱いてもらえば、終身雇用のような制度がなくとも長く組織に貢献してくれる可能性があります。多くの企業が従業員エンゲージメントに注目し、さまざまな取り組みを始めているのはこのような理由です。

従業員エンゲージメントの重要性

近年では、従業員たちに多様な働き方を提供する企業が増えてきました。働き方改革の推進や新型コロナウイルスの感染拡大などを受け、この動きはより加速しています。こうした中で、各従業員の働きを管理する必要性以上に、「従業員たちにそれぞれの労働スタイルで主体的に行動してもらう必要性」が高まっています。これに応えられるのが、従業員エンゲージメント向上の取り組みです。

組織に強い愛着を抱く従業員は、意欲的に仕事へ取り組もうとするため、常に最高のパフォーマンスを発揮して業務に取り組んでくれると考えられます。反対に、従業員エンゲージメントが低いと、些細なことで組織に不満を抱きかねません。「待遇が気に入らない、上司と反りが合わない」などの理由で簡単に労働意欲をなくしてしまい、そのまま離職してしまう恐れもあります。こうなると、育成コストが無駄となり、新たに採用コストが増加します。

もちろん高い給与を設定し、高待遇を用意すれば人材は集まるかもしれません。しかし給与・待遇を見直すのは簡単なことではないでしょう。特に資金や時間に余裕がない企業にとっては、現実的でないケースが多いです。しかし、「従業員が組織に愛着を抱いてくれる取り組み」を全うすれば、給与や待遇を大きく見直すことなく、従業員が組織のために貢献しやすい環境を築くことができます

従業員エンゲージメントの構成要素

従業員エンゲージメントは、3つの要素で構成されています。「ビジョンの共感・働きやすさ・行動意欲」の3つです。従業員エンゲージメント向上施策を具体的に実行するなら、この3つをしっかりと意識することが大切です。

構成要素1. ビジョンの共感

組織が掲げる理念や戦略的な方針などに共感できていないと、従業員は些細な理由で職場を去る可能性があります。従業員エンゲージメントを高めるには、組織が掲げるビジョンに共感してもらい、愛着や帰属意識、誇りなどを抱いてもらわなくてはなりません

従業員の帰属意識が高まれば、「自分は組織の一員であり全従業員の仲間である」と強く自覚できます。自分が所属している組織のためにもっと頑張ろうと考えるようになり、どうすれば組織に貢献できるのかも考えるようになるでしょう。

ビジョンに共感してもらうには、従業員にきちんと伝わる理念や戦略を掲げることが大切です。どれほど崇高な理念を打ち出したところで、抽象的だったり、難しい言葉を使いすぎていたりすると伝わりません。
このようなケースでは、一度理念を見直すのもひとつの手です。また、理念自体は変えず、伝え方や表現の仕方を再考することも効果的です。理念やその表現方法について、従業員から直接意見を集める機会を設けても良いでしょう。

構成要素2. 働きやすさ

従業員たち自身が「働きやすい」と感じる職場環境や体制の構築が求められます。働きにくい職場では従業員のモチベーションが上がらず、生産性の低下や離職を招くリスクがあります。

働きやすい職場環境の例として、コミュニケーションが活発な職場が挙げられます。従業員同士が気軽にコミュニケーションを取れる職場なら、仕事で困ったときや助けてほしいときなどに、お互いに協力しやすく、悩みや不安を一人で抱えこむことも少ないと考えられます。

また、効率的に働ける環境かどうかも重要です。業務効率化を考慮されていない環境では、従業員のモチベーション低下につながり、生産性も下がります。デジタルツールや最新技術の導入を進め、効率よく業務を遂行できる環境構築を目指す姿勢を、経営側と現場従業員たちとで共有することが重要です。
ただし経営側が一方的に新規ツールなどを導入すると逆効果になる場合があります。現場の従業員側の意見を聞きながら課題をあぶり出し、それを解決できるように環境改善を進めてください。

評価制度の見直しも重要です。頑張っても正当に評価してもらえないような企業に、従業員が愛着を抱くことはありません。特に従業員たちが日本・海外の各所でリモートワークを行っているケースなどでは、「各従業員のそれぞれの働きを、どのように正当・公平に評価するのか」という点は大きな課題です。また評価基準の透明性にも気をつけ、従業員側へ明確に提示するようにしましょう。

構成要素3. 行動意欲

「エンゲージメントが高い従業員」とは、端的に言えば「組織に貢献しようと意欲的に行動できる従業員」のことです。このような従業員は、周りから指示されるまでもなく自ら組織のために何ができるかを考え、日々積極的に行動へ移します。
すべての従業員がこのような状態であれば「組織のためにもっと頑張ろう」とお互いに高め合い、仕事に意欲的に取り組んでくれます。仕事に活かせる各種スキルも意欲的に磨いてくれるでしょう。

従業員側に上記のような理想的な状態になってもらうにはまず、従業員たちへの扱いを見直す必要があります。心から「企業に尽くそう」「従業員みんなで頑張ろう」と思うには、それだけ企業側が自分たちを大切にしてくれていると信じてもらわなくてはなりません。つまり、組織が従業員のために力を尽くしてくれるからこそ、従業員も「組織のために」と考え行動してくれる状況が整います
前述の「ビジョンの提示と共有」「働きやすい環境構築」などの具体策を実行するなどして、従業員たちのことを企業が大切にしていることを、きちんと明示しましょう

従業員エンゲージメントを高めることで得られるメリットとは?

ここからは、従業員エンゲージメント向上により企業が得られるメリットを、具体的に見ていきましょう。

メリット1. 生産性の向上

各従業員のモチベーションが上がり、自発的に行動したり行動を改善したりする状況が生まれやすくなります。そのため従業員一人ひとりの生産性の向上が見込め、結果的に企業全体の業績アップにつながります

現代では、「従業員エンゲージメントと企業の業績とは、実際に相関している」と考えられています。つまり従業員エンゲージメントは、具体的な生産性向上策としても有効です。人口減少問題や、働き方改革の進む今日の社会において、こうした生産性向上対策は必要不可欠な施策です。

メリット2. 離職率の低下

一般に、従業員エンゲージメントが高い職場ほど、早期離職率が下がります。従業員が仕事のやりがいを感じることで企業に対し愛着が生まれ、長く務めたいと思ってもらえるためです。

従業員エンゲージメントが高い企業は職場の雰囲気や人間関係も良くなり、誰もが言いたい意見を忌憚なく発言できる環境が生まれます。こうした環境構築によって優秀な人材の流出を防げれば、競合他社に対し大きな強みともなりえます。人材の流動性が指摘される現代において、この強みの維持はことさら重要です。

メリット3. 顧客満足度の向上

従業員エンゲージメントが高まることで、顧客満足度の向上も期待できます。エンゲージメントが高い熱意ある従業員は顧客と積極的にコミュニケーションを図り、「より顧客のニーズに応える」という明確な目的に基づいた業務を遂行できるからです。
その結果、顧客のLTV(ライフタイムバリュー/生涯顧客価値)の増加など、企業にとっての長期的なメリットが見込めます。

現在の従業員エンゲージメントを測るには?測定方法と指標

測定にはアンケート調査が有効

従業員エンゲージメントの計測で、現在最も広く用いられているのは「アンケート調査」です。このような、エンゲージメントの指標や推移を確かめる目的で行われるアンケート調査を、「エンゲージメントサーベイ」とも呼びます。

月1回から半年ごとなど、定期的にアンケート調査を実施することにより、従業員エンゲージメントの高低や推移を確認できます

こうしたエンゲージメントサーベイは、専門企業へ外注し、客観的立場から行ってもらう方が適切な場合が多いです。例えば、サーベイ実施会社として知られているのはGreat Place to Work®です。同社は毎年、「働きがいのある会社ランキング」を企画・公表しています。このランキングへ自社も参加すれば、同社によるエンゲージメントサーベイを受けられます。参加のみであれば無料で申請できるため、お試しやランキング把握のために実施することもできます。

見るべき従業員エンゲージメントの指標

エンゲージメントサーベイを実施する際、指標として把握しておきたい点はサーベイによっても異なります。代表的な指標は、以下の3点です。

  • 総合指標
  • 自社に対する総合的な満足度や、将来的な期待度を把握できます。

  • 仕事への熱量レベル
  • 実際に行っている業務のやりがいや、仕事への没頭度合などを推し量れます。また、仕事を楽しむ活力を従業員自身が持っているかどうかの把握も可能です。

  • エンゲージメントの向上要因
  • 組織との関係性や職務自体の行いやすさ、従業員本人が持つ業務における資質などを把握できます。

エンゲージメントサーベイで従業員に対し出題される設問には、これらに関する質問が必ず含まれています。

先にご紹介したGreat Place to Work®が実施しているアンケートの出題内容の例を、以下に記載します。

  • 経営・管理者層は、誠実で倫理的に仕事を行っている
  • 経営・管理者層は、仕事を進める上で失敗はつきものであることを理解している
  • この会社では、誰でも特別に認められる機会がある
  • 私は、自社で従業員として働いていることを、胸を張って他人に言える
  • この会社は、入社した人を歓迎する雰囲気がある

あくまで一例ですが、これらの質問によって「従業員の自社への信頼の有無・自身が社内で尊重されているか否か・従業員同士の連帯感の有無」などを図ることができます

【注意点】無目的な従業員エンゲージメントサーベイは厳禁

アンケート調査は、実施頻度や設問数次第では従業員にとって負担になる可能性があります。また実施目的が明確ではないまま実施しても、指標や方法を適切に設定できず、回答から正確なデータは得られないため注意してください。

このように、単に「調査を実施すればよい」というものではありません。実施目的を明確にすることを基礎として、しっかりとしたプランを立ててください。これを踏まえ、エンゲージメントサーベイを実施する際は、以下の点に特に注意を払うと良いでしょう。

  • 企業が抱える課題を明確にし、その改善のための調査であることを各従業員へ共有する
  • 実施頻度やアンケートごとの設問数を最適化する
  • 集計・分析は素早く実施し、必要に応じて従業員へのフォローを行う

従業員エンゲージメントを下げる3つの落とし穴

ここからは、従業員エンゲージメントを低下させてしまう要因について、代表的な事例を3つ紹介します。企業が良かれと思って実施したことが、逆にエンゲージメント低下につながってしまうケースも少なくありません。下記の3点を押さえ、施策実行や状況改善に役立ててください。

落とし穴1. オーバー・コンプライアンス(過剰法令遵守)

言うまでもなく、コンプライアンス(法令遵守)は現代企業にとって重要です。しかし法令遵守のために制約やルールを増やし過ぎると「オーバー・コンプライアンス」が生じます

例えば、愛社精神豊かな従業員が「お客様のために臨機応変に対応したい」と考えており、また社会通念上も、迅速なサービス提供が推奨される状況があったとしましょう。しかし会社で「○○万円以上の変更はシステム入力および翌日のバッチ処理で反映が必要」「△△に関する決定には営業部と法務部の押印が必要」などの制約を定めていたために、従業員が即時的な対応を起こせなかったとします。するとその従業員のエンゲージメントは大きく低下するでしょう。

基本的な法令遵守は必要ですが、社員側にコントロールの幅を持たせることもエンゲージメントを高めるためには重要です。過去のインシデント対応などが重なり、知らないうちにオーバー・コンプライアンスになっているケースは往々にしてあります。自社でそうした状況が明らかな場合は、抜本的に見直してみてください。

落とし穴2. 職能型(メンバーシップ型)の人事制度

日本企業の多くが、職能型人事制度を採用しています。形式上は職務型(ジョブ型)要素をいくつか取り込んでいても、全体的な運用は職能型の特徴を備えている企業も多くあります。職能型人事制度は、それ自体がわるいわけではありませんが、一般に従業員エンゲージを下げやすい制度であるとも考えられています。

職能型では「従業員の職務遂行能力」を基準に賃金が支払われますが、能力は業務経験を通じて向上していくと考えられ、基本的に勤続年数に応じて賃金も上がります。

つまり職能型は、日本の高度経済成長を支えた年功序列・終身雇用前提のシステムです。しかし現代においては、勤続年数の長い従業員の賃金に圧迫され、若手従業員の賃金が職務に見合わない低さになるケースが少なくありません

会社への愛着が深い従業員であっても、自分より勤続年数が長いという「だけ」で高給を得る従業員が多い場合、エンゲージメントは下がるでしょう。会社として給与の決定基準を改めて明確にし、全従業員が納得できる人事制度に変更する必要があります。

落とし穴3. 業務手順の不統一

上記2つは会社的・人事的な要素ですが、一人ひとりのエンゲージメントを高めるには基本的な「日々の業務」が重要です。その中で最もエンゲージメントを下げてしまう要因が、「業務手順」に関わる以下のようなフラストレーションです。

  • 業務手順が統一されていない
  • 手順の変更が周知されていない
  • 属人的業務中心かつ特定人材への依存度が高い など

マニュアルや手順書が無かったり、あったとしても要点の検索が困難だったりすると、従業員たちの間で業務効率が低下しやすくなります。それにより職場全体の生産性低下や、属人化の強化へもつながります。ときには、「AさんとBさんの主張が食い違っている」など、従業員間でのミスやクレームに発展することすらあるでしょう。当然こうした状況では、従業員エンゲージメントは低下します。

このように、会社としての業務手順・ルール・統一体制を用意していないと、従業員たちは本来集中したい生産的な業務や顧客対応、発展的提案などに取り組めない状況が生じてしまいます。結果、従業員エンゲージメントは低下してしまうでしょう。

>>生産性向上についての記事はこちら
生産性向上とはどういう意味? 企業が実施できる7 個の対策方法

対策としては、どの手順が会社の「標準」に該当するかを明示し、基本業務は誰でも同様に行える状態にしておくことです。
また、新しい手順の追加や変更があった際には全対象者へ通知し、確認について把握・管理しましょう。こうした標準仕様の設置は、オーバー・コンプライアンスの抑制にもつながります。

上記の仕組みを独自開発するには多大な時間とコストがかかるため、KintoneやTeachme Bizなどのサブスクリプション型クラウドツールを導入し、業務手順をまとめていくとスムーズです。

従業員エンゲージメントを向上させる施策

前項でご紹介した落とし穴を回避しつつ、従業員エンゲージメントを向上させていくために有効な施策を、3つご紹介します。

施策1.経営層によるビジョンの発信

企業規模が大きくなればなるほど、経営理念や会社のビジョンが各従業員へ浸透しにくくなります。エンゲージメント向上のためには、会社や経営陣の考えをオープンな形で従業員へ周知することが重要です。

特に昨今増えているテレワーク環境下において、ビジョン共有はより注力すべきポイントです。遠隔では経営者のメッセージが伝わりにくく、帰属意識が薄れる可能性があるためです。
経営者自身が、コミュニケーションチャットや定期総会、あるいはイベントや勉強会などで、定期的に考えを発信してください。従業員たちの心をつかむことが目的ですが、わざとらしくならないよう、明確な理念をわかりやすく伝えることをまずは心掛けましょう。

施策2. 従業員の価値観、ニーズの把握

エンゲージメント向上のためには、「個人の期待」と「企業の期待」の合致が非常に重要です。これを図るには、まず従業員一人ひとりの価値観を知り、それらと会社の方向性とを極力一致させていかなければなりません。

具体的な手段としては本記事でも推奨している「アンケート調査」のほか、「1on1ミーティングの実施」なども有効です。個人のやりがいやニーズが明確になったら、それらにフィットする人事異動や権限委譲などを、具体的に考案していきましょう。

施策3.労働環境の整備

上記の2つを推進しながら、さらなる従業員エンゲージメント向上を図るには、落とし穴2で触れた評価制度の改善以外にも、「社内制度の新設」などの環境構築も必要です。

例えば、以下のような取り組みが有効になるでしょう。

  • 社内のキャリアステップを明確にする
  • スキルアップのための制度を設ける
  • 社内公募制度、社内FA制度を設ける
  • インセンティブ制度を設ける など

根本的には、「すべての従業員が自分自身のやりがいを持てる上に、新たなチャレンジを積極的に行いやすい風土」へと、社内の制度面から変えていくことが重要です。そのためにどんな制度が必要かは、会社によって異なります。上記を参考にしながら、自社にフィットする制度や方法を検討してください。

従業員のエンゲージメントを高めるために意識したいエッセンス

最後に、従業員エンゲージメントの向上策を実施するにあたって、ぜひ意識しておきたいポイントを簡単にお伝えします。

自社にとっての「エンゲージメントが高い状態」を定義

エンゲージメントが高い状態とは、先に述べた通り従業員が自ら会社のために能力を発揮してくれる状態を指します。

ただ、「エンゲージメントが高い状態」の具体的な定義は、個々の企業によって異なる場合も少なくありません。したがってエンゲージメント施策に取り組む前に、自社における「安定してエンゲージメントの高い理想の状態」についてあらかじめ定義しておくことが重要です。

「マネジメント層のマネジメント」にも着目

マネジメントをどう行うかは、従業員エンゲージメントに強く影響します。その影響を踏まえて思慮すべき問題が、「マネジメント層についてのマネジメントはどう行うのか」というものです。

まず、「部下の話を真摯に受け止め、気を配り、期待し、適切な道標を定める」といった適切なマネジメント、およびマネジメント層による的確なリーダーシップは、従業員たちのエンゲージメントを引き上げる作用を果たします。
こうした力をマネジメント層に発揮してもらうには、社内やチーム内での立ち位置を明確化し、その立ち位置に見合った裁量を可能な限り持たせることが大切です。
それと併せて、「可視的に定量化された基準」に沿ったマネジメントを進めてもらうことも重要です。マネジメント層には、会社や部署・チームの風土にフィットする客観的な基準を設置してもらい、それに基づいた管理・評価を行ってもらうことで、公平かつ効率的なマネジメント業務を遂行してもらいましょう。

こうした従業員エンゲージメント向上につながるマネジメントの実施には、マネジメント層専用の研修を実施しておくことも有効です。マネジメントに求められる能力や、マネジメントを介して従業員エンゲージメントを向上させる必要性、マネジメントツールの扱い方などを丁寧に学んでもらい、共有してもらいましょう。

まとめ

現代では、従業員エンゲージメントの重要性が高まっているとともに、その向上に向けた課題も浮き彫りになっています。人材不足に伴い業務効率化が求められる中、従業員エンゲージメントを低いまま放置していては、効果的な生産性向上は決して見込めません。そうした状況が慢性化すれば、「単に定時まで職場にいれば良いだけ」といったマインドまで従業員間に蔓延してしまう恐れもあるでしょう。

本記事でご紹介した従業員エンゲージメント低下要因や具体的な向上施策を参考に、自社にあった方法で、状況改善を試みてください。また、マネジメント層も「従業員は何のためにこの会社で働いているのか」「部下一人ひとりの状況がわかり、部下への期待を明確に言語化して伝えられているか」などについて常に考え、部下との適切なコミュニケーションを図っていきましょう。

抜本的な改革を推し進めることはもちろんですが、日々、少しずつ状況を変えていくことも大切です。従業員エンゲージメントを向上させるメリットや、社会的な必要性を理解しつつ、取り組みやすい要素から継続的にチャレンジしていってください。

あわせて読みたい!業務効率化についての記事はこちら
業務効率化のアイデア10選 進め方と成功のポイントを解説

この記事をSNSでシェアする

「業務効率化」を考える

関連カテゴリ

「生産性向上」の最新記事

マニュアルで生産性革命をおこそう

マニュアルは、上手く扱えば「単なる手順書」以上に大きな効果を発揮します。
生産性の向上はもちろん、「企業を大きく変える」可能性を秘めています。

Teachme Bizは、マニュアルであなたの企業にある課題を解決し、
生産性を向上するパートナーでいたいと考えております。
「組織の生産性を向上したい」「変える事に挑戦したい」と思う方は、
わたしたちと生産性の向上に挑戦してみませんか。

マニュアル作成・共有システム
「Teachme Biz」はこちら