BCP対策とは?効果的な策定方法や対策事例をわかりやすくご紹介!

最終更新日: 2023.10.13 公開日: 2022.09.13

BCP対策とは?

企業が事業を継続する中で、イレギュラーな事態に遭遇するケースはいくつも考えられます。いざそのようなシーンに直面したとき、適切な対応をしないと組織を窮地に立たせかねません。BCP対策は、このようなリスクを軽減するための取り組みです。本記事では、BCP対策の概要や効果的な策定方法、事例などをわかりやすくご紹介します。


BCP対策ホワイトペーパー

BCP対策(事業継続計画)とは?

BCP対策とは、自然災害や戦争、テロ、パンデミック、システム障害などの非常事態が発生したとき、組織へのダメージを最小限にとどめ、少しでも早く事業を再開するための計画です。
BCPとは「Business Continuity Plan」の略であり、日本語では「事業継続計画」と訳されます。

BCP対策では、人的資源や施設・設備、資金、データなどのカテゴリごとに、介在するリスクや必要なもの、行動の指針などを策定します。カテゴリごとに想定されるリスクや、具体的に取るべき行動などをあらかじめ決めておくことで、非常時に組織を守れます。

BCM(事業継続マネジメント)との違い

BCMは「Business Continuity Management」の略であり、日本語では「事業継続マネジメント」と訳されます。BCPが事業継続の計画そのものを指すのに対し、BCMはその計画を組織へ浸透させ、正しく機能するようマネジメントすることが目的です。

適切にBCPを策定していても、組織に浸透していなければ、いざというときに機能しません。このような事態を避けるべく、BCPが正しく機能するよう組織全体へ浸透させる取り組みが求められます。

防災との違い

防災は災害による被害を防ぐ、もしくは最小限にとどめるための取り組みです。自然災害の発生は防げませんが、被害の拡大を食い止めることはできます。BCPと防災の違いは目的です。BCPが事業継続を目的としているのに対し、防災は災害による人や資産への被害拡大を防ぐことに重きを置いています。

BCPでは災害以外にも資金難やセキュリティリスクなど、事業継続を脅かすさまざまな脅威に対策を講じるので、防災よりも広範な領域をカバーする必要があります。

BCP対策が必要とされる背景

従来、日本企業では災害や感染症の拡大といった非常事態に対し、個別で対応するケースがほとんどでした。このような対策でも自社の復旧は可能ですが、事業を継続できるかどうかは別問題です。

たとえば、早期に業務を再開できる体制を整えたとしても、取引先が壊滅的なダメージを受けたとなるとどうでしょうか。ビジネスに深く関わる取引先であれば、自社の事業継続に大きな影響が出ることは避けられません。

実際に近年では、企業を取り巻く環境自体が大きく変化しつつあります。新型コロナウイルスの世界的な流行をはじめ、国家間の緊張や戦争、異常気象や自然災害などの事案が続いており、いつ企業が窮地に立たされるかわかりません。このような社会環境そのものの激変に晒されたとき、その場での個別対応には自ずと限界があります。

そのため、危急の事態に事業継続が危うくなるほどのダメージを受けないようにするには、緊急事態にどのような行動を取るべきか、場合によっては他社との関係や連携も含めて事前に決めておくことが重要です。このような理由から、現代の企業には適切なBCP対策が求められます。

BCP対策は義務化される?

BCP対策の重要性が広く認識される中で、一部の業界ではBCP対策が法的に義務づけられることが決まりました。

介護事業所は義務化される

BCP対策が義務化されるのは介護業界です。「令和3年度介護報酬改定」にしたがって、2024年4月からはあらゆる介護事業所においてBCP対策を実施することが義務化されました。

要介護者やその家族の生命や生活を守るため、介護事業所は災害や感染症などの非常事態に際しても事業を継続することが求められます。BCP対策の義務化はそのためのものです。厚生労働省では、BCP対策を策定する介護事業者を支援するために、「感染症編」と「自然災害編」の2つに分けてBCP策定のガイドラインを公開しています。

また、東京都では「東京都帰宅困難者対策条例」によって、首都直下型地震などの大規模災害に対する備えをあらゆる事業者の責務としています。その主な内容は、非常時に従業員が3日間滞在できるだけの備蓄や、非常時の連絡手段の確保です。違反した場合の罰則がない努力義務ではありますが、これも一種の義務化されたBCP対策と捉えられます。

企業は推奨にとどまる

介護事業所を除く一般的な企業に対して、政府はBCP対策を推奨しているものの、現時点では義務化されていないのが現状です。しかし、災害時を含めて、従業員への安全配慮義務は存在します。そのため、従業員の健康や安全を守るための施策はどの企業も最低限実施しなければいけません。

BCP対策の目的

BCP対策の目的は、自社の事業を守ることです。事業を守ることが、ひいては組織と従業員の安全を確保することにもつながります。また、適切なBCP対策により企業のイメージアップにつながるほか、経営戦略にも役立てられます。

事業を守る

BCP最大の目的は事業継続であり、事業を守ることにあります。事業を守るとは、組織を守ることと同義です。企業の目的は、事業により利益を得ることにあります。すなわち、事業を守れないのは企業としての価値を失うこと、といっても過言ではありません。

しっかりとBCPを策定しておけば、緊急事態にも慌てることなく対処でき、組織を守ることにつながります。反対に、計画が曖昧であったり、機能していなかったりすると、スムーズに事業を再開できず、むしろ被害が拡大してしまう可能性もあります。

非常事態に陥った際にも安全のための適切な行動を起こせる体制を整え、組織の瓦解や事業縮小を回避することがBCP対策を行う第一の目的です。

経営戦略に役立てる

BCP策定においては、優先的に復旧すべき事業を検討します。イレギュラーな事態が発生したとき、すべての事業を存続できるとは限りません。場合によっては、一部の事業を切り離さなくてはならない可能性もあります。

あらかじめ優先的に存続させる事業を決めておけば、いざというときに慌てずに済みます。また、優先する事業を検討するプロセスにおいて、今まではあまり目に見えていなかった重要な事業・業務が見えてきます。

これがきちんとできていないと、重要度の低い業務を優先的に復旧してしまい、真に重要な業務の再開が遅れてしまうおそれがあります。検討の過程で優先順位をつけて選定しておけば、このようなリスクを回避できます。

企業価値を高める

BCP対策に力を入れることで、企業価値が高まりイメージアップにつながります。適切な対策を行っている企業であれば、緊急事態に陥ってもスムーズに事業を再開し、消費者や取引先に与える影響も最小限にとどめられるためです。

誰もが簡単に情報を入手できる現代では、消費者の目が以前にも増して厳しくなっています。イレギュラーな事態が発生したとき、すぐに商品やサービスの供給がストップしてしまう企業と、速やかに事業を再開できる企業とでは、消費者はどちらを信頼するでしょうか。

非常時でも速やかに事業を再開し、安定した経営を行う企業は、取引先からも大きな信頼を得られます。末永く良好な協力体制を築け、経営の安定化にもつながります。

BCP対策の普及状況

続いては、BCP対策が日本企業のあいだでどの程度普及しているのかを解説します。

大手企業を中心に広がる

内閣府が2022年に発表した「企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」によれば、大手企業の約7割、中堅企業の約4割がすでにBCPを策定しています。策定中の回答も含めると、中堅企業でもBCP対策に取り組んでいる企業は半数を超えている結果です。

このデータからも、大企業を中心にBCP対策はかなり一般的になっていることがわかります。なお、企業が重視しているリスクとしては地震を筆頭に、感染症や火災が上位を占めています。

参照元: 内閣府 防災担当「令和3年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」P4、P9、P12

業種によるばらつきがある

上記と同じ内閣府の資料によると、業種によってもBCP対策の普及状況は大きく異なります。たとえば、BCPの策定率が最も高いのは金融・保険業で81.6%です。また、情報通信業と建設業、製造業は策定率がいずれも5割を超えています。

他方で、宿泊業および飲食サービス業の策定率は僅か15.6%です。また、小売業もBCPを策定しているのは約3割にとどまります。

このように、BCP対策の実施率は業種によって大きく異なります。ただし、自社の業種の策定率が低いとしても、自社のBCP対策をしない理由にはなりません。むしろ、同業種の企業が緊急時に事業を停滞させているとき、自社だけがいち早く事業を再開できれば大きな強みになりうると考えることを推奨します。

参照元:内閣府 防災担当「令和3年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」P10

BCP対策の種類とマニュアル項目

事業継続を阻害する要因はさまざまに存在するので、BCPで策定すべきことは多種多様です。どのような緊急事態が想定されるか、その事態が発生したとき何が必要なのか、従業員も含めてどのように自社の資産を守るのかなど、多角的に考えなくてはなりません。

また、緊急時に適切かつ速やかな対応を行うには、マニュアル化が必須です。きちんとマニュアル化したうえで内容を全社的に共有すれば、いざというときスムーズに対応できます。

そこで以下では、企業が講じるべき主なBCP対策の種類と、各種類に対応したマニュアル項目を解説します。

自然災害

台風や地震などが頻発する日本では、自然災害に備えたBCP対策は欠かせません。自然災害への対策は、いざというとき人命にも関わりかねない重大事です。また、店舗や設備など、自社の物理的資産を守るうえでも重要になります。

マニュアルに記載する内容としては、従業員の避難方法や安否確認の方法などが挙げられます。避難場所や情報の発信方法に加え、安否確認システムを導入しているのなら使い方なども記載しましょう。さらに、業務がストップした後の復旧方法について、そのタイミング、指示系統、連絡先リストなども記載しておくと、迅速に対応しやすくなります。

    マニュアルに記載する項目

  • 従業員の避難方法
  • 安否確認の方法
  • 業務がストップした後の復旧方法
  • 従業員の連絡先リストと優先順位
  • 人命救急の方法
  • 被害状況の確認方法

内的要因

内的要因とは、組織内部からもたらされる危機です。具体的には、バイトテロや従業員による情報漏えい、役員の不祥事などが該当します。これらはいずれも自社の社会的信用の失墜を招き、安定した事業継続を困難にする要因です。

マニュアルには、謝罪文に記載すべき内容やテンプレートなどを記載します。不祥事を起こしたときは早期の信用回復を図るため、迅速かつ適切に対処する必要があるので、これらの内容は必ず記載しましょう。また、記者会見を開くときの手順も決めておくと、いざというときスムーズです。

不祥事をきっかけに、従業員の大量離職が起きる可能性もあります。急な人手不足が発生した際に優先すべき業務や、一時的な対処としての人材確保方法を記載しておくことも大切です。

    マニュアルに記載する項目

  • 謝罪文の内容やテンプレート
  • 記者会見を開くときの手順
  • 取引先の連絡リストと優先順位
  • 優先的に取り組むべき業務
  • 一時的な人材確保方法

外的要因

外的要因は、自社外から到来する危機です。たとえば、サイバー攻撃やテロのように悪意ある第三者からの攻撃のほか、仕入れ先の倒産なども具体例として挙げられます。サイバー攻撃は、システムの停止や機密情報の漏えいなどにつながる重大な脅威です。また、仕入れ先が倒産すると、商品の生産や販売が困難になり、顧客や取引先に迷惑をかけるおそれがあります。

サイバー攻撃の場合、マニュアルにはシステムやデータの復旧方法、既存システムが使えない場合の代用ツールおよび使用方法、顧客情報が漏えいしてしまった場合の対応方法などの記載が必要です。サイバー攻撃の手法や被害の種類は多様にあるので、BCP対策も多角的に考えなければなりません。

仕入れ先の倒産への備えとしては、顧客に迷惑がかかった場合の対応方法、代替できそうな仕入れ先のリストなどをマニュアルに記載しましょう。リスクを分散させるために、普段から複数の業者を使って仕入れするのもひとつの方法です。

    マニュアルに記載する項目

  • システムやデータの復旧方法
  • データ漏えいの際の顧客への通知方法
  • 既存システムの代用方法
  • 仕入先が倒産した際の顧客対応方法
  • 仕入先の変更先リスト
  • 取引先への連絡リストと優先順位

BCP対策の効果的な策定方法

BCP対策の策定を行き当たりばったりで進めるのは非効率です。また、いざというときにBCPが機能せず、被害が拡大してしまうおそれもあるため、正しく策定を進めていきましょう。

1.基本的な方針を決める

始めにBCP対策における自社の基本方針を明確にしておくことが重要です。まずは自社のBCP対策の根底に置く目的や価値観をしっかりと確認しておくことで、BCP策定時や緊急時の判断において何を優先すべきかを明らかにできます。

具体的には、自社の企業理念などと照らし合わせながら「従業員の安全確保」「取引先や顧客からの信頼維持」など、何を守るべき優先課題とするのかを明示する形です。目的を明確化したら、BCP対策で想定すべきリスクをリストアップし、それらが自社にどのような影響をもたらすか検討します。

また、BCP対策を計画的に進めるためには、あらかじめ策定スケジュールの設定をしておくことも欠かせません。いつから具体的に計画の策定を始め、いつまでに各フェイズを終えるようにするのか期限を決めておきましょう。また、BCP対策は継続的に更新していくことが重要なので、改訂の定期スケジュールをあわせて検討することもおすすめします。

2. プロジェクトチームの編成

BCP対策の策定は、プロジェクトチームを立ち上げたうえで進めます。基本的には、組織を構成する各部門から選定したメンバーをチームに加えて編成します。

BCPの目的は組織としての事業継続であるため、メンバーが特定部門に偏ってしまうのはリスキーです。企業における事業は、複数部門を横断しているケースが多いためです。組織全体で非常時の対策を決めなくてはならないため、複数部門からメンバーを招集しましょう。

スムーズにBCP策定を進めるには、マネジメントを担う事務局も必要です。進捗状況のチェックをしつつ進めなくてはならないため、組織全体の事務や業務に深く関わる総務部を事務局として、取り組みを進めるケースが多く見受けられます。

3. 自社の中核事業を特定

中核事業とは、企業活動における中核をなす事業のことです。事業の遅延や停止により、組織が窮地に立たされる可能性がある事業を指します。

そのためBCP策定においては、自社の中核事業を特定しなくてはなりません。中核事業は組織が優先的に守るべき事業であり、可能な限り早期に復旧すべき事業でもあります。

いくつもの事業を同時に進めている大企業であれば、中核事業の特定は難しいかもしれません。売上や顧客関係はもちろん、企業価値の維持に必要な事業はどれなのかなど、多角的な検討が求められます。

4. 中核事業が受けるリスクや被害の想定

中核事業が受けるリスクや被害を想定しておかないと、適切な対処ができません。自然災害やサイバー攻撃、システムの不具合、内部からの情報漏えいなど、考えられるリスクを丁寧にリストアップしましょう。

また、非常時にどの程度の被害を受けるのかも想定しておく必要があります。被害状況によって、取るべき対処が異なるためです。

このプロセスで、耐えられる状況とそうでない状況がはっきりします。そのうえで、耐えられないケースにおける具体的な対処を考えなくてはなりません。

5. 復旧時間の予測

事業復旧の遅れは、組織としての存続に関わります。復旧に費やす時間が多すぎると、顧客や取引先からの信頼を失い、事業継続が困難になるかもしれません。そのため、復旧時間の予測は、BCPにおいて重要なウエイトを占めます。

復旧時間の目標を立てるときは、取引先との協議も必要です。自社が掲げた復旧時間目標と、取引先が求める復旧時間に大きな差異があるかもしれません。どれくらいの時間なら問題ないのかを確認しておくことで、信頼の失墜を防げます。

中核事業がストップした場合、取引先に多大な迷惑をかけるおそれがあります。それだけでなく、違約金の支払いが発生し、経営を圧迫してしまうかもしれません。状況が長引くほど補填すべき損失も大きくなり、どんどん状況が悪くなる可能性もあるため、スピーディーな復旧が求められます。

6. BCPの発動基準や体制を決定

復旧時間の目標が立ったら、BCPを発動する基準や発動時の体制を決定します。せっかくBCPを策定していても、BCPを発動する基準が明確化されていなければBCPはその効果を発揮しません。たとえば、台風が発生した際には「会社の所在地に大雨洪水警報が発令された場合」という風に、誰でも判断できる明確な基準を設けるようにしましょう。

また、BCP発動時に指示をする人や行動する人などの体制を決めておくことも重要です。緊急時でも正しく対処できるように、あらかじめ発動基準と体制は明確にしておきましょう。

7. BCPの文書化

策定したBCPは、きちんと文書化しましょう。口頭で決めただけでは、いざというときBCPが機能せず、いたずらに被害を拡大させるおそれがあります。また、文書化されていないと引き継ぎも難しくなるため注意が必要です。

文書には、行動レベルまできちんと落とし込むことが大切です。非常時において、具体的にどのような行動を取ればよいのかわからないと、正しく機能しません。また、指揮命令系統や目的が明確であることも重要です。

そのほか、非常時にBCPをしっかりと機能させるためには、いつでもBCPやマニュアルを利用できる体制が求められます。非常時には急いでその場を離れなくてはならないこともあるため、分厚いBCPのファイルを持ち出せない可能性があります。そのような状況でも速やかに内容を閲覧できるよう、携帯型BCPを作成しましょう。常に身につけられるタイプのBCPやマニュアルであれば、いざというときも速やかに閲覧できます。

BCP対策を進めるうえでの課題

効果的なBCP対策を策定・実施するにはいくつかのハードルがあります。以下では、BCP対策を進めるうえでの主な課題について解説します。

手間とコストがかかる

BCP対策を実施するには、多くの手間とコストがかかります。各部署からの意見収集、リスクの洗い出しと分析、取引先との調整、具体的な計画への落とし込みなど、BCP策定までには労力と時間を大量に消費するため、社内の協力が欠かせません。ネガティブな印象を持たれないよう、有事に備える必要性を社内で共有することが大切です。

BCP策定に際して外部のコンサルティング会社を利用する場合などは、その費用も想定しなければいけません。このような前提作業に加え、BCPを実際に機能させるには、避難訓練などの従業員教育を定期的に行うことも求められます。

中長期的なビジョンやリスクマネジメントの観点から見れば、BCP対策が重要であるのは明らかです。しかし、実際にいつ起こるかわからない緊急事態への対策としてこうしたリソースを投じることに、二の足を踏んでしまう企業も少なくありません。

BCP対策が機能しにくい事態を想定する

BCPは、現在知り得るリスクに基づいて策定されますが、想像を超えるような災害や危機が発生する可能性は常にあります。東日本大震災や新型コロナウイルスに代表されるように、BCPで想定されていた規模を遥かに超える事象が生じた場合、BCPの効果が限定的になる可能性は否めません。サイバー攻撃などの人為的なリスクにしても、次々と新たな脅威が出現している状況です。

そのため、BCPは定期的に見直し、最新のリスクを評価してアップデートしていく必要があります。また、それでも想定を超えるリスクが発生する可能性に備えて、計画自体を柔軟かつスケーラブルに設計することも大切です。

さらに、緊急事態に際して何が最優先にされるべきか基本理念がしっかり共有されていれば、想定外の事態が生じた際も大まかな方向性としてはブレない対応を取りやすくなります。

BCP対策を運用するポイント

緊急時でもシミュレーション通りに行動できるように、日頃からBCP対策を行うことが重要です。BCP対策を運用するうえで必要な2つのポイントをご紹介します。

BCP対策を社内に周知する

あらかじめ社員一人ひとりがBCP対策の内容を理解して、自分ごととして捉えることで、緊急時でもスムーズにBCP対策を実施できます。

そのため、日頃からBCP対策の内容を社内に周知し、浸透させるように心掛けましょう。社内周知の方法としては、以下の方法があります。自社に合った方法を取り入れてみてください。

  • 研修会の開催
  • 社員教育に取り入れる
  • 社内ディスカッションの開催
  • ポスターの設置

定期的なテストと改善を実施する

BCP対策を一度策定した後は、定期的にテストを行って課題を洗い出しましょう。浮かび上がった課題をクリアできるようひとつひとつ内容を検討することで、BCP対策の精度を高めていくことができます。

BCP対策の内容を改訂したら、都度マニュアルの更新もあわせて行うことが必要です。

BCP対策の事例3選

日本企業を取り巻く環境もどんどん変化しているため、近年では積極的にBCP対策へ取り組む企業が増えています。これから取り組みを始めるのなら、他社の事例を参考にするとスムーズに進められるかもしれません。

【運輸業】BCPの継続アップデート

全国に数多くの拠点を展開しているヤマト運輸は、これまでいくつもの大災害に直面してきた経緯があります。そのため、積極的に災害対策へ取り組んでおり、継続的にBCPのアップデートを行っています。

同社におけるBCPの基本方針は、「人命を最優先」「グループ各社の事業の早期復旧を目指す」「社会的インフラとして、地域社会の期待に応える」の3つを軸にしています。これら3つの基本方針を軸に、「人命を守る行動マニュアル」「対策本部マニュアル」「業務復旧マニュアル」「被災地支援マニュアル」「自然災害の手引き」という5つのマニュアルを整備しているのも特徴です。

参考: ヤマトホールディングスの事業継続計画(BCP)

【製造業】地震災害からの復旧

製造現場におけるBCP対策事例として、地震災害のケースをご紹介します。震度6強の地震が発生したとき、BCP対策をしていなかった企業では多くのプレス機が転倒し、従業員の安否確認もできませんでした。一方、BCP導入企業はプレス機の転倒を免れ、従業員の安否確認もできています。

また、BCPを導入していない企業の従業員は、半数が1カ月半ものあいだ出社できませんでした。対してBCP導入企業は、従業員に耐震診断済みの住宅で暮らすよう指導を徹底してきたため、大半の従業員が出勤できました。

復旧スピードにも違いがあります。BCP導入企業は約1カ月で全面復旧しましたが、非導入企業は復旧に約3カ月もかかり、受注は戻りませんでした。

参考: 工場(製造業)のBCP対策事例

【情報通信業】データのバックアップ

株式会社エイビスは、東日本大震災の発生を機に事前対策の必要性に気づき、2013年から本格的に取り組みを始めました。同社が力を入れたのは経営資源の保護で、データ消失を回避するため定期的に本社と支店のデータをバックアップしています。

本社と支店の双方でデータをバックアップすることで、データの完全な消失に備えています。また、BCPをアップデートするため、月に1回の委員会を開催し、内容のチェックや更新を行っています。なお、同社はBCP策定後、顧客からの信頼獲得に成功し、売上増大にもつながっています。

参考: 株式会社エイビスの事業継続計画(BCP)

BCP対策のマニュアル作成なら「Teachme Biz」

BCP対策のマニュアルは、「Teachme Biz」で簡単に作成できます。動画や画像を用いて、誰にでもわかりやすいマニュアルを作成できることが特徴です。しかも、用意されているテンプレートを利用できるため、誰でも短時間でマニュアル作成が可能です。PCやスマートフォンなどさまざまな端末で利用できるため、携帯型BCPマニュアルの作成にも適しています。

キーワード検索を用いればすぐに求めるコンテンツを見つけ出せるうえ、従業員がマニュアルを閲覧したかどうか、管理者側から確認できるのも特徴です。そのため、マニュアルを作成したものの従業員が見てくれない、浸透しないといった課題を解決できます。

BCP対策だけでなく、「Teachme Biz」を用いたマニュアル作成により、業務の効率化や標準化、コスト削減、品質向上などの効果が見込めるのも魅力です。

まとめ

さまざまなリスクが存在する現代において、事業を安定的に継続していくためにはBCP対策の実施が非常に重要です。BCPを策定し、それを社内でしっかり共有することで、いざというときにも適切に対応しやすくなります。

ただし、BCPを策定しても、マニュアル化しないと十分な効果を発揮させるのは困難です。正しく機能せず、意味のないBCPになってしまうおそれがあるため、マニュアル化まで含めて取り組みを進めていきましょう。「Teachme Biz」のようなツールを用いれば、誰でも簡単に理解しやすいマニュアルを作成できるためおすすめです。

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