AIを活用したマニュアル作成に使えるプロンプト例|回答精度を上げる4つのコツも解説
生成AIを活用することで、効率よく業務マニュアルを作ることができます。しかし、希望通りのマニュアルを作成するためには、適切なプロンプトを設計し、意図をAIに正確に伝えることが重要です。本記事では、目的ごとのプロンプト例、プロンプト作成のコツ、実際のマニュアル作成の手順を紹介します。
生成AIでマニュアル作成を行う際のプロンプト例
マニュアル作成時に使用する、生成AIへの指示(プロンプト)例を紹介します。どのようなマニュアルを作成するかでプロンプトは変わってくるので、業務マニュアル、社内ツールの使用方法マニュアル、ユーザー向け製品マニュアルに分けて解説します。
※ここでは、ChatGPTを使ってマニュアルの素案を作成します。
社内用の業務マニュアルを作成する場合
社内向けの業務マニュアルは、「担当者ごとの業務のばらつきをなくしたい」「新入社員のオンボーディングを円滑に進めたい」など、さまざまな目的のために作成されます。
以下は、生成AIにマニュアル作成を指示する際のプロンプト例です。「どんなマニュアルをどんな人に向けて作成したいのか」を記したうえで、箇条書き部分については、ケースに応じて詳しい情報を記載しましょう。
▼プロンプト例
あなたは〇〇(例:総務)担当者です。
[マニュアルのテーマ(○○ 例:出張申請)]について、社内向けマニュアルの基本構成案を提案してください。
対象は社内の全社員であり、特に新入社員や異動者にも理解しやすい内容を想定しています。
以下の構成要素を必ず含めてください。
- 目的と背景
- 準備や前提知識
- 具体的なルール・手順
さらに、注意点や禁止事項、補足・FAQ(例えば、よくあるミスや質問とその対処方法など)をプロンプトに加えると、より詳細なアドバイスが得られます。
社内ツールの使用方法をマニュアル化したい場合
独自の社内システムやビジネスツールの使用方法を共有するためには、マニュアルの整備が必須です。対象者のリテラシーも考慮し、次のような構成でAIに指示を出しましょう。ツールごとに分けてマニュアルを作成し、整理しておくと効果的です。
▼プロンプト例
[ツール名(○○ 例:Google Workspace)]について、社内向けの操作マニュアルを作成してください。
初心者でも迷わず使えるよう、以下の形式でわかりやすく説明してください。
- 概要(どのようなことができるツールか)
- ログイン方法
- 基本的な使い方(3〜5ステップ程度で簡潔に)
ほかに、「業務での活用例」や「注意点」、「トラブル発生時の対応方法」を追加すると、より利用時のイメージが湧きやすいマニュアルが作成できます。
ユーザー向けの製品マニュアルを作成する場合
製品の特徴や使用方法をわかりやすく伝えるためには、丁寧でシンプルな説明が重要です。初心者にも理解しやすいマニュアル作成に効果的なプロンプト例は、以下の通りです。
▼プロンプト例
[製品名(○○)]のユーザー向けマニュアルを作成したいと考えています。
対象は初めてこの製品を使用する一般ユーザーで、専門的な知識はもっていないことを前提とします。
以下の構成に沿って、初心者にもわかりやすく説明してください。
- 製品の概要と特徴
- 使用前の準備
- 基本の使い方
さらに、「安全上の注意点」や「問い合わせ窓口」を追加するとユーザー満足度の向上や企業への信頼強化にもつながります。
【番外編】マニュアルで使用する図解やフローチャートを作成する場合
マニュアルに図解やフローチャートを取り入れると、複雑な手順や業務の流れも直感的に理解しやすくなります。生成AIは、業務全体の流れを整理したり、条件分岐を含む業務フローの構成案を作成したりできます。図表作成ツールと連携すれば、視覚的にわかりやすい図解を作成することが可能です。
以下、国内出張申請フローを例にしたプロンプトと回答です。ここでは簡単に、ステップ3までを提示しています。
▼プロンプト例
以下の業務フローを、文章ではなくフローチャート形式で整理してください。図解でお願いします。
ステップごとに分岐や条件分けがある場合は、図に示してください。
-
【○○(例:国内出張申請フロー)】
1. タイトル:国内出張申請フロー
2. 対象業務プロセス:
国内出張の「申請開始」から「出張手配完了」までのプロセス。
3. フローの開始と終了:
開始: 出張計画の立案
終了: 出張手配の完了
4. 主要なステップと分岐、条件
ステップ1: 出張計画の立案
ステップ2: 期間の確認(分岐)
条件: 出張期間が「2日以上」の場合
→ 進む先: 「出張申請システムへ入力」
条件: 出張期間が「1日(日帰り)」の場合
→ 進む先: 「上長へ口頭で報告」
ステップ3: 出張申請システムへ入力(2日以上の場合)
生成AIでマニュアルを作成する際の手順
生成AIでマニュアルを作成する際には、プロンプトを入力するだけではなく、以下のステップを踏まなければなりません。マニュアル作成の手順を紹介します。
1. AIにマニュアル作成のためのデータを与える
マニュアル作成時には、自社の業務内容や製品仕様など、関連する情報をAIが理解しやすい形で提供する必要があります。情報の形式はPDF、Excel、Word、WebサイトのURLなどが利用可能です。内容が正確で、必要な情報がもれなく含まれていることが求められます。
このような情報をもとに、AIはマニュアル作成に必要な知識を習得します。データを与えることでAIは文脈を理解し、実際の業務の流れや背景を反映した、実用的なマニュアルを作成できるようになります。
2. プロンプトを入力しマニュアルを生成する
マニュアル生成の際には、AIに具体的で明確なプロンプトを入力します。マニュアルの目的や対象者、構成などを詳細に指示することが重要です。
さらに精度を上げるためには、以下のような方法もあります。
- 大まかなマニュアルを作成する指示をしてから、セクションごとに指示をして仕上げていく
- 複数回のやり取りを前提として指示を行う
骨子を明確にしてから詳細を作り上げたり、「もっとこうしてほしい」とフィードバックを重ねたりすることで、AIが生成するマニュアルの質を高められます。
3. 生成されたマニュアルを人の手で確認・検証する
AIが作成したマニュアルは、一見すると完成度が高いように見えるかもしれません。しかし、そのまま使用するのは避けるべきです。AIは過去の学習データをもとに文章を生成するため、最新の情報や細かなニュアンスまでは反映されていないことが多いです。そのため、誤った情報や不適切な表現が含まれてしまうリスクがあります。
内容が正確かどうか、表現が適切か、実際の業務に合ったわかりやすい説明になっているかを、人の目でしっかりと確認する作業が必要です。この検証を業務担当者や実務者、専門知識をもつ担当者などが行うことで、初めて信頼できるマニュアルが完成します。こうした検証作業が、マニュアルの品質と安全性を担保します。
4. 修正や微調整を加えてから社内で共有する
人の手による確認・検証で課題が明らかになったら、生成されたマニュアルに必要な修正や微調整を行います。誤字脱字の修正、表現の調整、内容の追加・削除などを行い、ブラッシュアップしていきましょう。
修正作業が終わった後は、最終確認です。問題なければ、社内ポータルや共有ドライブなどを通じて関係者全体にマニュアルを共有します。
マニュアルを共有した後も、従業員からの意見や要望を積極的に集め、改善に役立てましょう。また、業務内容の変化や法規制の改定にあわせて、定期的にマニュアルを見直すことも大切です。こうした取り組みを続けることで、質の高いマニュアル運用が実現できます。
マニュアル作成に役立つプロンプト設計の4つのコツ
生成AIの回答精度を上げるためには、効果的なプロンプトの設計が重要です。マニュアル作成に特化した、プロンプト設計のコツを4つ紹介します。
マニュアルの「書き手役」をAIに設定する
AIに作業を任せるときは、マニュアルを作成する「書き手役(AI)」がどんな人か設定し、役割を与えることが重要です。例えば、「あなたは〇〇担当者です」「○○の専門家として、マニュアルを作成してください」といった具体的な役割です。AIは役割に沿って、その立場や専門性に合った回答を作ることができるようになります。
役割を設定することは、AIが質問の背景や目的を理解する助けともなります。視点やトーン、専門性がコントロールされ、目的にあったマニュアルの生成に役立つでしょう。
マニュアル作成の目的と出力形式を明示する
マニュアル作成の目的・テーマを明確に伝えると、回答の方向性を間違えることなくAIは稼働します。プロンプト例で紹介したように、「○○について、社内向けマニュアルの基本構成案を提案して」など具体的に伝えることが重要です。「技術的な説明は含めず、操作手順のみのマニュアルを作成して」などの詳細な補足をつけると、回答精度がさらに上がります。
また、「文章ではなく図表で整理してほしい」「フロー形式で」など、出力形式を明確に指示することも大切です。「ですます調で」「フォーマルに」「カジュアルに」など、文体やトーンの指定も有効です。完成形のイメージを具体的に伝えるプロンプトは、AIの助けとなりえるため、実践してみましょう。
使用目的や対象に応じて制約条件を伝える
マニュアルの質を高めるためのプロンプト作成では、単にタスクを指示するだけでなく、使用目的や対象にあわせて具体的な制約条件を加えることが大切です。例えば、対象者をしぼり、「ITリテラシーが高くない人向けに、専門用語は避けて説明して」「現場の作業員向けに、指示は簡潔にして」などの指示を伝えると、AIは対象者にあわせた調整を行います。
また、プロンプト例で紹介したような「ログイン方法」「注意点とトラブル発生時の対応」などの特記事項とともに、記載すべきではない情報についても注意書きを加えておきましょう。「個人情報や機密情報は記載しないで」「製品価格は反映しないで」など、状況に応じて制約条件を伝えることが大切です。
参考資料や既存マニュアルをお手本として提示する
参考になる既存の資料やフォーマットをお手本として提示することも、プロンプト作成のコツのひとつです。AIは出力の具体例を示されることで、模倣を行い、適した形のマニュアルを作成します。「添付の資料の形式を参考にして」「このマニュアルの形式を踏襲して」などと指示し、データを共有するとよいでしょう。
特に、以下のような場合は参考資料の提示が有効です。
- 業界特有の用語やスタイルを反映してマニュアルを作成したい場合
- 複数のマニュアルを一元化したい場合
- 既存マニュアルに新情報を加えブラッシュアップしたい場合
AIのデータに存在しなさそうな固有データや「お手本」となるマニュアルがある場合は、AIに提示することをおすすめします。
まとめ
生成AIでマニュアルを作成する際のプロンプト例をお伝えしました。AIの回答精度を高めるためには、明確な目的や対象者、構成、出力形式などの情報に加え、必要なデータを提示し、指示する必要があります。書き手役をAIに設定する、制約条件を設けるなどのコツも押さえて適切なプロンプトを作成しましょう。
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