イノベーション推進本部から広がる業務標準化。教育工数30%削減と「助け合いの文化」の醸成

  • サービス業
  • #1,000名以上
  • #マニュアル作成・更新の効率化
  • #業務の標準化
  • #人材育成・研修
  • #属人化解消
  • #情報共有
ポイント
導入目的 人の入れ替わりに伴う指導負荷を軽減し、効率的な教育体制を仕組み化
課題 ①商品本部制による業務の分散化から、共通業務のバラつきが常態化
②頻発する人員交代により新任へのつきっきり指導がコア業務を圧迫
③煩雑な事務が、現場の心理的余裕や創造的な思考時間を削っていた
効果 ①イノベーション推進本部での教育工数30%を削減
②利用者の支持が全社へ波及。「情報の分断」を打破し、ナレッジ共有が加速
③捻出したリソースで、次なるイノベーション創出に注力できる環境を実現

日本を代表する総合不動産デベロッパーである三井不動産株式会社は、長期経営方針において新事業領域の探索と事業機会の獲得を掲げ、社内外のイノベーション推進を加速させています。これを力強く進めるためには、足元の組織体制を強固にすることが不可欠でした。そこでイノベーション推進本部は変革の基盤として、経費精算や稟議申請等の間接業務の標準化と部門を超えたナレッジ共有に着手しました。

商品本部制という組織構造や頻繁な人の入れ替わりで生じる膨大な「教える工数」をいかに減らし、教育にかかる全体工数を30%削減したのでしょうか。Teachme Bizによるマニュアル整備を牽引する、イノベーション推進本部の清野 早穂子様と牛島 恵美様にお話を伺いました。

お話を伺った方々
清野 早穂子 様 イノベーション推進本部 新産業創造推進室 事務管理グループ 業務主事
牛島 恵美 様 イノベーション推進本部 ベンチャー共創事業部 共創事業グループ 業務主任

イノベーション推進の基盤となる「間接業務の標準化」

―――イノベーション推進本部のミッションについてお聞かせください。 

清野様(以下、敬称略) 当社は長期経営方針で新事業領域の探索と事業機会の獲得を謳っており、その実現に向けて設立されたのが当本部です。ベンチャー投資をはじめ、ライフサイエンス領域や宇宙領域の探索、アカデミアとの連携など、多岐にわたる先進的な活動を行っています。会社の持続的な成長を牽引するため、常に新しい技術やビジネスモデルを推進していくことが私たちの重要な役割です。

―――なぜ間接業務のマニュアル整備に着手されたのでしょうか。 

清野 当社は「商品本部制」を採用しており、オフィスビルや商業施設、ホテルなど、扱う商品ごとに本部が独立して事業を推進しています。各本部で経費精算や稟議申請といった同じような間接業務が日々発生しているものの、その手順は部門や担当者ごとに属人化しており、社内で「情報の分断」が生じていました。

また、当社は社員の定期的なジョブローテーションに加え、有期雇用スタッフも多いため、頻繁に人の入れ替わりが発生します。部門が変われば「別の会社」に来たかと感じるほどやり方が異なるため、新任者が来るたびに既存社員がつきっきりでレクチャーしなければなりませんでした。

「誰に聞けばいいかわからない」「たらい回しにされて時間を取られる」といった状況は、単なる工数のロスにとどまりません。社員が本来集中すべき創造的な業務や戦略的な思考に充てる時間を奪い、組織のイノベーション推進力そのものを削ぐ要因になっていたと今では感じています。間接業務を標準化してナレッジを組織で共有し、改善を積み重ねる文化を醸成することこそが、イノベーションに向かえる組織の土台になると考えたのです。

三井不動産

イノベーション推進本部 新産業創造推進室 事務管理グループ 業務主事 清野 早穂子様

―――情報の分断によって具体的にどのような苦労が発生していたのでしょうか。 

牛島様(以下、敬称略) 配属時、すでに前任者が退職しており、引き継ぎがない状態からのスタートを経験しました。当時の部門マニュアルは形式がバラバラで、会社の規則や各種申請ルールなどは社内ポータルに散在していたため欲しい情報がどこにあるか分からず、たらい回しにされ無駄な時間がたびたび発生していました。必要な情報が一部しか書かれていないケースもあり、残りは推測しながら作業を進める状態で苦労しました。

このような状況は、教える側にとっても大きな負担となります。実際、自分が教える立場になった際、打ち合わせなどで席を外すと新任者の作業がその都度止まってしまうことが多々あり、「誰かが常に横についていないと仕事が進まない」という属人化した環境は、改善の余地があるのではと感じていました。

三井不動産

イノベーション推進本部 ベンチャー共創事業部 共創事業グループ 業務主任 牛島 恵美様

直感的なマニュアルで「情報の入り口」を一元化

―――数あるツールの中からTeachme Bizを選定した決め手をお聞かせください。

清野 画像と動画を組み合わせた「視覚的なマニュアル」が作成できる点を高く評価しました。実際の作業画面をステップごとに画像で貼り付けることで、誰が見ても直感的に手順を理解できると考えました。また、関連するマニュアル同士や、社内の規定ファイルなどへ簡単にリンクを紐づけられる点も、選定の大きな決め手になりました。

―――実際にマニュアルを作成・運用される上で、工夫されているポイントはありますか。

清野 当社のマニュアル作成のポイントとして、Teachme Biz内にすべての情報を記載しようとすると文字量やステップ数が多くなりすぎるため、本文は簡潔な手順のみとし、その根拠となるルールや情報はリンクで飛ばす構成にしています。これにより、マニュアルが冗長になるのを防ぎつつ、情報の入り口をTeachme Bizで一本化するというスタイルができました。

モバイルアプリを利用した経費申請手順やシステム操作

モバイルアプリを利用した経費申請手順やシステム操作など、視覚的に分かりやすいマニュアルを多数整備

―――Teachme Bizに情報を集約することはスムーズに進みましたか。

牛島 情報が乱立している中で、新任者に「まずはここ(Teachme Biz)を見れば答えがある」という明確な入り口を作れたことが、情報の分断を解消する第一歩になりました。導入にあたっては、「正しい手順」を「自己完結で学べる」ツールとして定義づけています。また、懸念していたセキュリティ面でも、IPアドレス制限などが備わっており厳しい社内基準をクリアしていたため、社内調整もスムーズでした。さらに、他部門では作成代行サービスも利用することで、短期間でマニュアルの型を構築できたことも、スピーディーな展開を後押しした要因だと感じています。

スモールスタートの成功体験が全社へ波及。各部門の推進を担う「マニュアリスト」という役割

―――導入初期はどの業務から着手され、どのように運用を軌道に乗せたのでしょうか。

清野 最初は自部門の中で、各種システムの操作や経費精算といった、誰もが必ず行う共通の事務作業から着手しました。マニュアルを整備し、新任者に「入社初日にまずこれを見てください」と案内する運用を確立しています。導入初期はマニュアルの精度に完璧さを求めすぎず、情報をTeachme Bizに集約していくことを優先しました。

牛島 ただ、マニュアルを用意しただけではなかなか見てもらえないため、運用を定着させるための地道な声掛けも欠かせませんでした。
私たち推進者から「分からないことがあれば、まずTeachme Bizを見てね」と、現場へ定期的に案内し続けることを心掛けました。そうして実際に利用してもらうと、「口頭で長時間説明されるより、画像とステップを見た方が早く理解できる」「先輩に何度も質問しなくても、自分一人で自己完結できる」といったTeachme Bizの利便性に現場が気づいてくれました。

Teachme Biz内のポータル機能

Teachme Biz内のポータル機能を使って、部門内のマニュアル群へスムーズにアクセスできる動線を構築

―――1部門での成功がどのように他部門へ横展開されていったのですか。

牛島 私たちの部門で明確な効果が出たため、社内ポータル等を通じて積極的に発信したところ、興味を持ってくれた部門が先行導入し、そこからは口コミによって自然と評判が広がっていきました。「あの部門のやり方を取り入れたい」と現場から自発的に声が上がったのは、推進側として本当に嬉しかったです。

三井不動産_社内ポータル記事

他部門へ活用が広がるきっかけとなった、社内ポータル上の記事

現在ではホテル部門やオフィスビル部門など多岐にわたる部門で導入が進んでいます。各部門で活用の旗振り役を担う有志メンバーを、当社では独自の愛称として「マニュアリスト」※と呼んでいます。イノベーション推進本部をハブとして、それぞれの部門に最適化したマニュアル整備を牽引する存在となっています。

※注:文中の「マニュアリスト」は、三井不動産株式会社様においてマニュアル推進を担うメンバーを指す独自の呼称です。弊社のサービス名や認定資格とは異なります。

三井不動産_マニュアリストたち

部門を超えてTeachme Bizの活用を推進する三井不動産の「マニュアリスト」の方々

 

―――マニュアル運用が定着したことで、現場にはどのような変化がありましたか。

牛島 教える側は同じ質問に何度も答える必要がなくなり、つきっきり指導の時間が圧倒的に減りました。席を外していても新任者には自己学習を進めてもらうことができ、つきっきり指導のストレスがなくなりました。教わる側にとっても、先輩に気兼ねなく自分のペースで手順を見返せるので、質問できずに悶々とする時間がなくなりました。こうした変化が現場の安心感と自律的な業務遂行に繋がり、社内アンケートでも「自分一人で解決できるので安心だ」といった声が多数寄せられています。
定型業務をマニュアルが支えてくれるからこそ、人は「どうすればもっとよくなるか」という知恵の出し合いや、部署の垣根を越えた助け合いに時間を使えるようになります。マニュアリストの活動が各部門のベストプラクティス追求へとつながっているのは、まさにその表れだと感じています。

教育全体工数30%削減と防災訓練への展開。「助け合いの文化」の醸成

―――Teachme Biz導入による費用対効果について、どのような成果が出ていますか。

清野 私たちの部門で導入当初、費用対効果の検証を実施したところ、新任者の業務習得にかかる時間と、既存社員がレクチャーする時間の双方の合算で「全体の教育工数が30%削減された」という成果が出ました。この削減された時間を人件費に換算すると、部門全体で導入費用を優に超える効果を生み出しています。
また、複数の部門が導入するにつれ、どの部門でも共通して発生する間接業務について、他部門が作成した優れたマニュアルを自部門に取り入れる動きが出てきました。単一の部門に閉じていたナレッジが共有され、組織全体で向上していく好循環が生まれつつあります。
削減された工数がどこへ向かうかを考えると、その意味はさらに大きくなります。30%の工数削減は、ゴールではありません。これは、私たちが本来向き合うべきイノベーションや、複雑な課題解決に投じるための『原資』です。この基盤があるからこそ、当社はさらなる変革を加速できると確信しています。

―――防災訓練にも活用されたと伺いました。具体的にどのように役立てているのでしょうか。

清野 当社の一部門が有事の際の手引きとしてTeachme Bizを取り入れました。当社には分厚い災害対策マニュアルが存在しますが、年に数回それを使った訓練だけでは具体的な手順が頭に入らないという課題がありました。そこで、災害発生時の行動フローや連絡先など、初動で必ずやらなければならないことをTeachme Bizに分かりやすく集約しました。詳細な情報はリンクから元の規定を参照できるようにしつつ、まずは何をすべきかを直感的に理解できる構成にしたのです。
また、アプリを通じてスマートフォンで確認できるようにしたほか、停電時などを想定して紙での出力・配布も行いました。利用者からも好評で、BCP対策の実効性を高めるツールとしてTeachme Bizが大きな役割を果たしています。

―――今後、全社的なナレッジ共有基盤として、どのように発展させていきたいですか。

清野 Teachme BizのAPI連携を活用し、社内AIチャットツールとつなぎ込むことで、検索性をさらに向上させる構想が上がっており、実現に向けて進行中です。社内のナレッジインフラからTeachme Bizへスムーズにアクセスできる動線を作り、間接業務の標準化を通して全社のイノベーションを支え続けていきたいです。

三井不動産_集合写真

※掲載している内容、所属や役職は取材を実施した2026年3月当時のものです。

会社概要
会社名 三井不動産株式会社
URL https://www.mitsuifudosan.co.jp/
所在地 東京都中央区日本橋室町二丁目1番1号
事業内容 オフィスビル、商業施設、ホテル・リゾート、ロジスティクス、住宅など、多岐にわたる総合不動産開発および関連事業の展開

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