大鉄精工(埼玉県三郷市)は、切削加工を専門とした金属加工メーカー。 同社は、精密機械のなかでも特に精度が必要とされる部品、例えば医療機器や潜水艦の部品などを得意としており、 独自の治具を駆使し、単品から100個程度の中ロット品まで、”多くの会社がめんどくさがってやらない仕事”を積極的に手がけている。常に困難な仕事ばかりを受けているため、ほとんどの依頼にフレキシブルに対応できるのが同社の強みである。
2012年に設立されたばかりの同社。競争の厳しい製造業の世界で勝ち残っていくためには、「高品質、低価格、短納期」を実現するための”技術”を追求しながら、蓄積し共有することが重要と考えていた。 今回は、同社の木下道貴社長に、Teachmeの導入経緯と活用方法を聞いた。
日々蓄積されていくノウハウ。”ノート”に書き残すだけでよいのか…
大鉄精工は、木下社長が2012年に設立。徹底した品質管理はもちろんのこと、”困難な仕事”に対応できる高い技術力を強みとしている。一般的に、製造業における”困難な仕事”とは、ロット(生産数)が少なく、高い精度や特殊な加工技術が求められる「技術的に難易度の高い」仕事を意味する。そのような仕事に常に臨機応変に対応し、品質、価格、納期の3つを高度に両立し続ける上では、ノウハウこそが競争力の源泉となる。
「私が得たノウハウを社員と共有するために、日々の作業で学んだことや伝えたいことを一冊のノートに書き残していました。」(木下社長)
木下社長自らノートによるノウハウ共有を行っていた同社であるが、同時に課題も感じ始めていた。
「ノートは手軽に書けてよいのですが、手書きのラフなイラストではわかりにくい部分もあります。また、使っていくうちにどんどん汚れてボロボロになっていくし、紛失や盗難の面でも不安がありました。何より、必要なときに探すのが大変だなと感じ始めていました。」
作業と蓄積が同時にできる。手軽だが”伝わる”マニュアル。
ノートでの技術情報の共有に限界を感じていた木下社長が、Teachmeを知ったのはあるセミナーでのことだった。
「スマホで写真を撮るだけで簡単に作れる点が魅力でした。セミナー後、社員とトライアル的に使ってみたところ、すぐに使いこなせるようになったため、導入を決めました。」
製造業には「三現主義」という言葉がある。現場・現物・現実こそが本質である、という考え方である。これまでノートに残されていた多くの知見が、”現場で”、”現物や現実を”写真に、残せるようになり、わかりやすさが格段に増したと木下社長は語る。
「私だけでなく社員もマニュアルを作成しています。彼らがどのように考え、どう作業を進めているのかを客観的に知ることもできるため、技術的なディスカッションもやりやすくなりました。見て覚えろ、という昔ながらのやり方ではなく、マニュアルを見ながらの指導という使い方にも効果を感じています。」
また、企業規模と技術伝承のあり方についても、こう語る。
「当社のような小規模な組織でも、ひとつひとつの作業にはノウハウが詰まっています。人数が少ないと、お互いに分かり合っているように思えますが、実際には知らなかったり伝わっていないことも多い。企業の大小に関係なく、日々のノウハウを地道に残していくことが重要と考えます。」
技術の伝承こそが、競争力の源泉に
製造業に限らず、技術伝承・ノウハウ伝承は永遠の課題である。ひとりひとりが高い技術力を磨き続けていくことと、会社の中で共有し全体の力を底上げすること。このトレードオフを両立できた企業が厳しい競争に勝ち残っていく。
「当社のコアは、切削加工技術。個人が技術を磨くことは当然のことですが、その人しか知らない情報・ノウハウが増えていくことは、会社にとってはリスクです。
ノウハウを会社の資産とするにはどうしたらよいのか。いろいろな方法がありますが、スマホやクラウドサービスといった新しいものを積極的に取り入れてトライしてみることも、同じくらい重要ではないでしょうか。」
どんな巨大な製品も、どんな有名な商品も、それを作り上げているのはひとつひとつの小さな部品である。~日本の製造業を支えている自負がある~この自負を裏付けるノウハウを高め、共有する試みは、まだ始まったばかりである。