国内約60万社が利用している電子商取引プラットフォーム「BtoBプラットフォーム」を開発・提供している株式会社インフォマート様。その中でも飲食業界で運用されている受発注システム「BtoBプラットフォーム 受発注」は国内最大級規模の約4万2,000社が利用しています。
同社カスタマーサクセス部では、システムを購入したお客様の導入をサポートする「オンボーディング」と、さらなるシステム導入の提案を行う「クロスセル」の2つのミッションを担っています。
受発注システムでは一つのミスが流通全体に大きな影響を与えるため、常に正確な業務の遂行が求められます。一方、カスタマーサクセス部門におけるタスク量は非常に多く、以前はExcelで作成した手順書を使って業務内容の平準化を図っていたものの、ミスをなくしきれない状況にありました。そこで2020年2月より部内でも特に定型業務の多いオペレーションマネジメント課でTeachme Bizを導入して手順書を管理。以降、ミス0の事業運営を実現されています。
Teachme Bizを活用したその取り組みについて、カスタマーサクセス部 部長 松井 浩介様、同部オペレーションマネジメント課 林 佳穂様に、導入の経緯や手順書を浸透させた取り組みなどについてお話をうかがいました。
重要タスクには爆弾マークを付けて注意喚起
―――導入の経緯を教えてください。
松井様(以下、松井) オペレーションマネジメント課の業務では毎年およそ400のプロジェクトが進行しています。各プロジェクトは約80のタスクで構成され、これを10名ほどのメンバーでこなしていますが、プロジェクトごとにタスクの内容が異なるために非常に多くの業務手順を覚えなくてはいけません。タスクをミスなく効率的にこなすためには手順書を整備する必要がありました。
ただ、私の経験から、手順書を組織に浸透させるには2つの課題があると思いました。一つは「作成や更新が進まない」、もう一つは「そのうち誰も見なくなる」です。もし手順書ツールを導入するのであれば、そうした状況を作らないための対策が必要だと考えました。
―――どのような対策を取られたのでしょうか?
松井 手順書はどうしても「正しく作らないといけない」というイメージを持ってしまいます。これが作る側の負担になるし、更新されない結果になる。また完璧を目指した手順書は情報量が多くなり、読み解くのが難しくなる。読む側も法律書を読まされているような負担を感じます。なので、従来の手順書の考え方を一度壊して、わざと不完全な手順書を目指すようにしました。心理学の「割れ窓理論」ってありますよね。割れた窓に人が集まるのなら、良い意味で割れていることが、使う人の心理的負担をなくして手順書の浸透につながるだろうと。そのため手順書の作成担当には「わざと手を抜いて遊び感覚で作って」と指示しました。
―――具体的にどのように「遊んだ」のでしょう?
林様(以下、林) 「これって何?」と思われるような手順書らしくないサムネイルを設定したり、手順書のタイトルに「すぐ終わります」などのキャッチコピーを付け加えたりして、「気になるな」「ちょっと見てみようかな」と思ってもらえるような工夫をしました。また、自然と手順書を見たくなるように、業務タスクを管理しているツールに導線を作って、みんなを手順書に誘導するような工夫をしました。ミスが発生しやすいタスクに爆弾マークを付けて「ここは特に危ない!」と注意喚起する。そこにちょうど手順書へのリンクがあるので、作業が不安になった者は、自然と手順書のURLに入ってくるといった仕掛けを入れました。
動画は一発撮りを原則にして手間を削減
―――手順書の認知や浸透においてはどんな工夫をされましたか?
松井 まず浸透においてプラスに働いたのは、手順書の数が増えてきたタイミングで新型コロナウイルスの感染が拡大し、テレワークに入ったことです。
テレワークでは、わからないことを隣の人に聞くようなことがなかなかできません。しかし、そうした質問の多くは、かしこまった手順書が必要となるようなものではなく「ここだけわかればOK」といった軽い質問が多いと思います。情報量にこだわらない、むしろ手をかけなかったことで情報量が少なくなっている手順書は、そういったニーズにぴったりあう手順書としてPV数(閲覧数)が伸びました。
また、完璧な手順書ができてからアップするのではなく、「まずは最低限の情報をアップして段階的に情報を増やす」というように、手順書は進化や変化するものだということを前提にしました。手順書を見る人が満足していれば、そこで更新は終わり。これも手間を省くことにつながります。また、さらに手間を省くために、動画を撮るときは、原則一発撮り、操作を迷ってマウスが彷徨っていてもそのままアップさせました。スタッフたちで共有する手順書に「美しく正確な操作」は不要だからです。
こうしたことを繰り返したことで、作る側の手間を削減できたと同時に、手順書を見る側のハードルも下がり始め、PV数が増えていき、その中には、いわゆる「バズる」手順書まで生まれました。
林 作成する側もYouTuberのような感覚になってきていました(笑)。PVを増やすにはどうしたらいいか、よく見られている手順書の内容を意識しながら作成するようになりました。「手順書=完璧」という概念が取り払えなかったら、ここまで活用できていなかったかもしれません。
PV数を評価基準にして手順書管理を効率化
―――実際の効果をどのように感じていますか?
松井 ミスが本当になくなりました。当社の受発注システムは一つのプロジェクトに卸業者や運送会社など100にも200にも及ぶ法人が関係します。なので、たった一つのミスでもリカバリーが非常に難しくなります。したがって、とにかくミスをなくすことが最重要課題だったのですが、Teachme Bizの導入によってようやくその仕組みができあがりつつあります。
また、PV数を目標においたことで、スタッフたちがアイデアを出し合い、積極的に手順書づくりに関わるようになりました。作る側の都合で作りやすい手順書を作るのではなく、周りのスタッフたちが今欲しい手順書を作らないとPV数が稼げません。そのため、作る側は他のスタッフが何に困っているのか、自分たちの業務の中で手順書を活かせる場面はどこなのかと、積極的に工夫するようになります。その工夫の結果がPV数という指標で可視化されるので、スタッフの活動をPV 数という根拠を持って評価できるようになりました。
また、現在手順書を作っているスタッフたちは、そもそも手順書を作ることが本来の業務ではありません。日常の業務をこなしながら一部時間を割いて手順書を作っています。ただ、PV数を目標に作ってきた手順書は、周囲の「困った」を拾いながら作られているので、手順書としてだけでなく、業務効率化のためのノウハウ集のような役割も担うようになりました。こうした手順書がスタッフに共有されて、業務教育などでも利用されるので、さらに業務効率化が進むなど、好循環も生まれています。
―――Teachme Bizの導入をお考えの企業様にぜひアドバイスをお願いします!
松井 弊社は手順書ツールを利用する企業としてはエクストリームユーザーになってしまい、例えば手順書にルールブックとしての機能も持たせたいといった完璧が求められる場面では、あまり参考にならないかもしれません。ただ、専任担当を置けず、手順書の作成時間を捻出するのが難しい、などと悩んでいる企業様であれば参考にしてもらえると嬉しいです。完璧主義を一度スタッフ全員でやめて「いま困っていることの解決方法」から情報交換をスタートしても、きちんとミス削減や業務効率化、業務教育につながります。気軽に使おうという意識で始めてみることをおすすめします。