創業寛永7年(1630年)。2020年に390周年の節目を迎えた箱根の温泉宿、一の湯様。明治時代初頭に建てられた「塔ノ澤一の湯本館」は登録有形文化財に指定されており、老舗の風情を存分に味わうことができます。
長い歴史の一方、「宿泊の常識を変え、宿泊によって日常の豊かさを提案する」の経営理念の通り、その経営は革新にあふれています。宿泊業としては珍しいチェーン経営に30年以上前から乗り出し、現在10施設を展開。サービス面でも、お客様に対するホスピタリティーを重視しつつ生産性の向上に積極的に取り組み、低価格で高品質な宿泊プランの提供を実現しています。
そんな一の湯様がさらなる経営の改革に向けて取り入れたのがTeachme Bizです。2018年10月のご利用開始以来積極的にご活用いただいており、その利用率は約2,000社あるTeachme Biz導入企業の中で常にトップクラス。活用方法もユニークで独創性に満ちています。
今回は、Teachme Bizご導入の背景や活用例、運用における効果を、株式会社一の湯 営業部 大野正樹様(写真左)、業務システム部 今泉正行様(写真右)にうかがいました。
全社員がミスなく同じ質で業務を行うために
―――まずはご導入の経緯からお聞かせください。
大野様(以下、大野) 「箱根で1泊2食付き露天風呂付きの客室」というと、みなさんのイメージではおそらく一人2~3万円はかかるのではないかという感覚をお持ちではないかと思います。我々はそういった常識を変え、よりリーズナブルな価格で身近に旅行を楽しんでいただけるよう、経営面において日々様々な挑戦をしています。
しかし、ただ価格を安くするだけなら誰にでもできることです。価格以上の価値をお客様に提供するにはどうすべきか。その点を深く突き詰め、1時間あたり1人どれだけの粗利益を出せるかという「人時生産性」の指標を追及して経営に取り組んできました。
その一環で、毎日の作業においてすべての社員がミスなく同じクオリティで業務を行うための手順書づくりを目指し、Teachme Bizを導入しました。
―――導入以前はどのような手順書を作られていたのでしょうか。
今泉様(以下、今泉) プロジェクトチームを立ち上げて2年がかりで制作した冊子の手順書がありました。全社員に配る基本の「オリエンテーションマニュアル」や部門ごとの手順書など、かなりしっかりとしたものを作り、完成した手順書は1年に一度ずつ改訂するスケジュールを立てていました。
紙の手順書にはない即時性とリソースの削減が魅力
―――導入の決め手となったのはどんなところでしょうか?
今泉 手順書は日々変化するお客様のニーズに応じて常にアップデートされ続けるべきものだと思いますが、紙の手順書ではニーズにスピード感がマッチしないという問題がありました。また、印刷以外の制作作業をすべて社内で行っていたため、1年ごとにアップデートをするとなると非常に多くのリソースが必要となることも問題でした。
その点、Teachme Bizなら即時性の高いアップデートが可能ですし、改訂の手間も紙に比べて格段に省けるため、生産性向上の観点から当社に大きく貢献してくれるツールだと感じ、導入へと至りました。
また、導入の検討と同時期に当社のウェブサイトで使用していたFAQのシステムが更新の時期を迎えており、FAQについてもTeachme Bizに移行できるのではないかと考えたことも、導入に向けて背中を押した要因の一つでした。
お客様サービスの向上にも積極的に活用
―――実際の活用シーンについて教えてください。
今泉 業務手順書として活用させていただいているのはもちろんですが、お客様向けのサービスにも活用させていただいています。
たとえば、旅館へ行くとお部屋にサービス案内のバインダーが置かれているのを見たことがあるかと思いますが、これまでは内容が古くなってしまったりバインダーが壊れてしまったりするなどしてお客様にご迷惑をおかけしてしまうことがありました。また、内容を差し替えたりバインダーを新しくしたりするためのリソースの問題もありました。
そこで今は、下敷きのタイプの印刷物を1枚お部屋に置き、そこに印刷されたQRコードから外部公開機能でTeachme Bizへアクセスしていただいて、館内等の案内をご覧いただくようにしています。そうすることでページの差し替えも必要なくなり、お客様に常に最新の情報を伝えることができるようになりました。
―――お客様から「これではわからない」というようなお声をいただくことはありませんか?
大野 どの店舗も様々な世代の方にまんべんなくご利用いただいていますが、今のところそういった声はうかがっておりません。ただ、デバイスをお持ちでないお客様も当然いらっしゃいますし、そうした方に不利益が出てはいけませんので、印刷したものをフロントに置いてある旨を印刷物に書き添えています。
―――FAQのシステムを移行されたことについてはいかがでしょうか。
大野 一番多い場合で月間約1万のアクセスをいただき、スムーズに活用させていただいています。もしかしたら、我々が気づかないうちに問い合わせの電話が減っているのかもしれません。
―――Go To トラベルキャンペーンの運用について活用例はありますか?
今泉 はい。Go To トラベル用の手順書も作成していますが、キャンペーンについては、割引の適用方法などに関して日々お客様から多くのお問い合わせをいただいておりましたので、お問い合わせに対する回答を社内で共有するために活用しています。
大野 お客様にとってはもちろんなのですが、このような大々的なキャンペーンは私たちも初めての経験でしたので制度の詳細まで理解するのには時間を要しました。
しかし、お客様には正しい情報をスピーディーにお伝えしなくてはなりません。宿で実際に接客する現場のクルーが自信をもって対応できるように、また人によってバラツキがでないよう、マニュアルを作成する本部部門がGo To トラベル事務局からの情報を精査し、タイムリーに現場に情報を届けるのにTeachme Bizは非常に役立ちました。
Go To トラベルキャンペーンの対応については、短期間でオペレーションの準備を整えるために大変ではなかったといえばウソになりますが、今まで大きな混乱もなく対応できているのは、紙ではできないスピード感で手順書を更新できていいることと、それを現場のクルーがしっかりと閲覧してくれているからだと思います。新型コロナウイルスに関する対応の手順にも言えることですが、情勢が日々変わるような課題における手順書は、必然的に閲覧数が高くなる傾向にありますね。
部署をまたいだ情報共有に有効な「コメント機能」
―――社員様向けには業務手順書以外にどんな使い方をされていますか?
大野 設備の劣化状況の視察レポートとして使っています。たとえば「○○号室の壁紙のここが劣化している」といったようなことを写真を撮って記録し、該当する担当者がコメント機能を使ってその対処を報告するような使い方です。
コメント機能は、質問をした従業員とそれに回答する側の間だけでやりとりが終わってしまうのではなく、他の社員もそのやりとりを閲覧でき、部門を超えて意見や意識を共有できるので、非常にありがたい機能だと思っています。
たとえば、営業部門で新しい宿泊プランを作った時に店舗に向けて「こういうオペレーションが発生します」と発信したり、それについて他の部門から補足があればコメントをもらったりして一緒に手順を作り上げるといった流れが生まれつつあります。
トップの強い意欲が導入の効果をさらに高める
―――今後のご活用のビジョンについて教えてください。
大野 「2045年までに200店舗」という大きな目標を立てて経営に取り組んでいますが、店舗を拡大し社員が増えれば増えるほど、手順書の効率化による効果がたくさん出てくると思っています。
たとえば当社では今、海外出身の社員が直接雇用で10名ほど、派遣で16名ほど勤務しています。基本的には日本語での意思疎通にまったく不自由のない社員ばかりですが、話すことはできても漢字の文章を読むのが難しい場合は少なくないですし、今後さらに海外人材が必要となっていくであろうことを考えると、Teachme Bizの活用のシーンはさらに広がっていくのではないかと思います。
―――最後に、Teachme Bizの導入を検討されている企業の方へ向けて、アドバイスやメッセージをお願いします!
今泉 Teachme Bizを使うことによる手順の浸透のスピードは圧倒的に速いと思います。ただ、当社の場合は幸いにもトップがマニュアルを整備すること、その完成度を高めることが重要であるという意識を強く持っていたことで、みんなが同じ方向を向いて行動に移すことができましたし、我々担当部署も自信をもってTeachme Bizに移行できました。
ですので、トップの方や責任を持つ立場の方が強い決意や意欲をお持ちになればなるほど、導入の効果は大きくなるのではないかと思います。今ではまさにフル活用させてもらっていますし、もうTeachme Bizなしでの仕事は考えられません。