業務マニュアルのデジタル化で実現する多文化共生型の職場づくり

  • 製造業
  • #100名以上500名未満
  • #人材育成・研修
  • #外国人スタッフの教育
  • #デジタルシフト
ポイント
導入目的 多言語対応の標準化された教育体制の構築
課題 形骸化したマニュアルと属人的な教育体制
効果 多言語による確実な技能伝承と安全教育の実現

人手不足が深刻化する中小製造業において、外国籍社員の採用・育成は避けては通れない課題となっています。静岡県で四輪車用座席シートの製造を手がける平野ビニール工業株式会社は、従業員160名のうち104名を外国籍社員が占めるなかで、Teachme Bizを活用した教育体制を確立しました。言葉の壁を超えた確実な技能伝承と、事故防止の両立に成功している同社の取り組みについて、代表取締役社長の平野利直様にお話を伺いました。

ーーー御社の事業内容について教えてください。
自動車シート用資材の製造を手がけており、従業員は160名ほどです。特徴的なのは、そのうち104名が外国籍社員だということです。2019年からマニュアル作成・共有システム「Teachme Biz」を導入して、社内の情報共有や教育に活用しています。

ーーー外国籍社員が多い背景を教えていただけますか?
私が20年前に社長に就任した当時は外国籍社員は3人程度でした。その後、人手不足で日系ブラジル人の派遣社員を雇用し始めました。2008年のリーマンショックでブラジル人が帰国した後は、フィリピン人の派遣や技能実習生の受け入れを始めました。

2017年に技能実習制度が改正され、優良な企業は受入れ人数枠が倍増できるようになりました。我々も優良認定を受けて、段階的に受け入れを拡大してきました。2027年にはさらなる制度改正が予定されており(※)外国籍社員の重要性は一層高まると考えています。
※育成就労制度について
https://biz.teachme.jp/blog/ikusei-syurou/

「誰も見ていない」から「確実に伝わる」マニュアルへ

ーーーTeachme Bizの導入のきっかけを教えてください。
当時、作業手順書はExcelで1つ1つ日本語と図面、写真で作成していましたが、実際には誰も見ていない状況でした。お客様の要求事項として作るだけで、新入社員が来ても理解できないような内容だったんです。

特に安全教育や入社時の教育では、教える人によって内容が抜け落ちたりする課題がありました。入社時に大量の情報を言葉だけで説明しても、ほとんど覚えてもらえない。そこで静岡銀行さんからTeachme Bizを紹介していただき、これなら確実に伝えられると思い導入を決めました。

導入前は口頭での説明や日本語の文字だけの資料で「わかりましたか?」「はい、わかりました」という形でした。Teachme Bizを導入後は、共通の画像や動画を見ながら実践的に学べるようになり、理解度が格段に上がりました。

実際のマニュアル。部品交換の際には安全面の注意事項を多言語で強調している。

ーーー具体的にどのように活用されているのでしょうか?
2024年12月時点で、298件のマニュアルが登録されています。新入社員教育では、まず研修室でマニュアルを見てから現場に行くようにしています。現場にもタブレットを置いて、必要な時に確認できる環境を整えています。
特に効果を感じているのは、安全教育の分野です。事故やトラブルが起きた際は、その都度マニュアルを作成して共有しています。例えば、ミシンでの怪我の事例なども、具体的な状況や予防方法を写真や動画で示すことで、より実践的な安全教育ができるようになりました。

特に良いのは、外国籍社員が自分たちでマニュアルを作れることです。PCを持っていないことが多いですが、スマートフォンなら使い慣れているので、iPadを渡すとフィリピン人やブラジル人の社員でも作成できます。彼らの視点で作られたマニュアルは、また違った気づきがあって有意義です。

月1回の発表会で磨き上げる、多文化対応のマニュアル

ーーーマニュアルの品質はどのように担保されているのでしょうか?
毎月発表会を開催して、各部署で作成したマニュアルを共有しています。参加者全員で投票を行い、特に優れたものを表彰しています。評価のポイントは、初めての人でもわかる内容になっているか、見やすさ、外国籍社員にもわかりやすい表現になっているかなどです。

あるブラジル人のリーダーは特に沢山マニュアルを作ってくれているのですが、そうするとやはり修正も沢山入ることがあります。ただ、他の課長や係長が一生懸命アドバイスをして、そこから学んでいくというコミュニケーションの場にもなっているのが特徴的です。

ーーー具体的にどのような修正が入るのですか?
ルビを振る、翻訳を入れる、動画の撮影角度を変えるなど、より分かりやすくするための改善点を指摘し合っていて、「初めて見た人でもできる」というところを徹底的に追求しています。その他、日本語の表現の修正なども入ります。

ーーー導入効果についてお聞かせください。
最も大きいのは教育の効率化です。以前は口頭での説明が中心で、教え方や理解度にばらつきがありました。今は動画や写真を使って視覚的に理解できるので、確実な教育ができています。ひとつひとつの教育が効率化できることで、初期教育時に今まで教えられなかった内容まで教えられるようになりました。

また、マニュアル作成の習慣化も効果の一つです。以前は現場で作業手順書を作る時間を捻出するのが難しかったのですが、今は毎月コンスタントにマニュアルが増えています。情報がクラウド上で一元管理されているので、必要な時にすぐ確認できる点も便利です。

事故防止の面でも効果を感じています。年間20〜30名の新人の受け入れがある中で、安全教育を確実に行えることは非常に重要です。特に技能実習生は年3回程度の入国があり、その都度しっかりとした教育が必要です。Teachme Bizのおかげで、標準化された教育ができるようになりました。

グローバルな技能伝承を目指す

ーーー今後の展望についてお聞かせください。
まず、社内でもっと活用を広げていきたいと考えています。マニュアル作成者向けに詳しい機能勉強会を開催して、より良いマニュアルの運用ができるようにしていきたいですね。また、社員が自身のスマートフォンでも閲覧できるようにできると理想かなと思います。例えば安全に関する内容だけでも、いつでも確認できる環境があれば良いと思います。

さらに、技能実習生向けの試験対策用コンテンツも作りたいと考えています。技能評価試験の用語集や、実技のポイントなどをまとめられれば、自主学習にも活用できるはずです。

将来的には、海外拠点でも同じ品質・生産性・技術を身につけられるよう、このシステムを活用していきたいですね。理念も含めて、世界中で共有できる仕組みができれば理想的です。

ーーー最後に、導入を検討している企業へのアドバイスをお願いします。
まず重要なのは標準化です。人は必ずぶれます。多くの人が入ってくる中で、統一した教育ができる環境を整えることが大切です。特に製造業において、安全面の教育機会を与えないことで起こる損害は計り知れません。形式的な教育ではなく、本当に社員の命を守れる、怪我をしないで元気に仕事ができる環境を作るために、こうしたツールは必要不可欠だと考えています。確かに導入にはコストがかかりますが、1回の事故や不良を抑止できるというだけでも、すぐに元が取れる金額です。誰でも簡単に作れて、使える。特に、今後さらに多くの外国籍社員に頼らざるを得ない時代に、こういったデジタルツールの活用は、もはや必須だと私は考えています。

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会社概要
会社名 平野ビニール工業株式会社
URL https://www.hiravi.co.jp/
所在地 静岡県磐田市加茂725‐2
事業内容 四輪車用座席シートの裁断及び縫製加工

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