農業生産法人「ホトト」の代表水上篤さんは、若い頃からNYを主戦場に建築業界の最前線を走り続けてきた。ドバイの建築ラッシュも経験した後、「心の羅針盤が動くもの」として、実家に戻り家業でもある農業を始めたと言う。
「Teachmeの魅力は“カッチリ”と“なんとなく”の中間にある“いいかげんさ”」、そう水上さんが語る「いいかげんさ」とは何なのか。Teachmeを利用するきっかけから、利用方法についてお話を伺った。
「何でもやる」だからこそ時間を上手く使う
山脈に囲まれた山梨は、山が雲を遮るため、全国で最も日照時間が長い特徴を持っている。日照時間が長いため、農業が盛んで、特にフルーツの栽培は全国でも有数の産地である。中でも葡萄や桃の生産量は全国でトップだ。
水上さんが立ち上げたホトトは、葡萄園「ツチと実」を中心に就農支援スクールの開講、子ども向け体験学習会から、ホテル運営、農業コンサルタントまで幅広い“農”にかかわる事業を展開している。
「 “百姓”は百の仕事ができるという意味。専門業者に頼めば数百万かかるハウスの組み立ても、自分たちでやれば数十万円で済む。予算は限られていても、時間と人手をかければできる。だからこそ、上手く時間を使っていくことを常に意識しています」(水上さん)
「ITは作業の効率化に最適」と語る水上さんは、スタッフ間の写真共有にDropbox、情報共有にFacebookのグループ、イベントや飲食店の企画にマインドマップなど、ITを積極的に活用していたそうだ。“百姓”であるため、一人に課せられる仕事の量が多い。だからこそ、農作業の効率向上のため、いろいろなwebサービスを駆使していたと言う。
常に“未来”を意識して動いていく
以前から水上さんは、「作業をしながらとにかく写真を撮影してほしい」とスタッフに伝えていた。スマートフォンで撮影した写真には、時間や場所などExif情報が保存される。写真を撮影日順に一覧表示を行えば生育状況を流れで見ることができるのだ。もし、生育状況が芳しくない場合は、過去の生育状況を見ることで色づきや大きさのほか、温度や湿度、天気から“原因”がわかると言う。
そんな水上さんがTeachmeを知ったのは、新鮮な農作物が味わえる飲食店の運営を考えているときだったと言う。同店では、操作が難しいPOSレジではなく、手軽に使えるスマートフォンでメニューの表示、オーダー管理を使おうと考えていたそうだ。店舗運営に役立つスマートフォンツールを探しているときにTeachmeを見つけたと言う。
「農業は誰でもすぐに即戦力になれる仕事。だからこそ、一人が気付いた、見たことを保存し、未来のスタッフにもつなげていかないといけないんです。Teachmeならば、いままで撮り貯めた写真を使って、マニュアルを作ることもできます。何より、じっくり座ってマニュアルを作る必要がなくなりそうだったのですぐに導入を決めました」(水上さん)
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「片手でできる、が大きなアドバンテージ」
Teachmeを導入したことで、農作業中にスマートフォンを片手で取り出し写真撮影を行い、必要であればコメントを書き込むことなど、その場ですぐに情報をまとめられるようになったと言う。この“片手”で対応できる点を「大きなアドバンテージ」と水上さんは強調した。
「Teachmeは、パソコンの前に座らずとも農作業をしながらマニュアルが作れるんです。農作業で気付きがあったスタッフ、つまづきを感じたスタッフがその場ですぐにマニュアル化ができる。作成も編集もスマートフォンからできるので、“片手間”でノウハウ継承の下地が作れるんです」(水上さん)
撮影した順番そのままに並んだ写真を必要がなければ削除、補足が必要ならコメントを書く、これだけですぐにマニュアルが完成する。水上さんは空いた時間を使って、スマートフォンからスタッフが作成したマニュアルを確認、編集していると言う。
ホトトでは就農支援サービス、体験農業を実施しているほか、繁忙期にはお手伝いさんなど、農作業に慣れていないスタッフが参加することも多い。以前は、口頭で都度都度説明をしていたが、いまは作業に入ってもらう前にTeachmeのURLをメールで送って対応していると言う。これにより、細かな説明をせずとも、作業のイメージがわき、すぐにスタッフが農作業にとりかかれるようになったそうだ。
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「いいかげん」でも伝わる、が魅力
Teachmeの大きな利点は「いいかげんさ」と水上さんは言う。最初から「マニュアルを作るぞ!」と挑まず、農作業をしながら撮影した“なんとなく”の写真からマニュアル作成ができる。「このいいかげんさが良いんです」と強調した。
「マニュアルで最も大事にすべきは、誰かに伝えることですよね。Teachmeは、文書でもないし、ただの写真でもありません。カッチリとなんとなくの間、“いいかげん”にマニュアル作成ができるんです。Teachmeの魅力は、いいかげんだけど、十分相手に伝わる点なんだと感じています」(水上さん)
また、「いいかげんなところは他にもメリットがあります」と水上さんは続けた。一人が最初から最後までマニュアルを作り上げるのではなく、できる人ができるところまで作り上げ、続きをまた別の誰かが作って行く。このようにマニュアル作りも人から人へと移り変わることで、多様な視点が入り内容が洗練されていくと水上さんは強調した。
「作業は覚えなくていいんです。一人一人の発想力を引き出すことが農業には重要なんです」と水上さんは語る。先に水上さんが語ったように農業は作業内容、マナーを覚えてしまえば、誰でもできる仕事だ。しかし、一人一人が持つ“発想力”は、受け渡すことができない個人の財産。
Teachmeを使うことで、基本の部分を継承する。“即戦力”を増やし、スタッフ個人が持つ「発想力」を引き出すことで、ホトトはもちろん“農”の世界を盛り上げて行きたい、と水上さんは最後に力強く語った。
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(山川譲)