文書の更新が1週間から5分に?“脱Word”でストレスから脱する方法

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導入目的 マニュアル作成、更新作業の効率化
課題 ファイルサイズが大きすぎる/承認フローが複雑
効果 マニュアルの修正時間が1週間から5分に短縮

便利な「Microsoft Word」や「Microsoft Excel」も、使い方次第では業務効率化を阻む。伊藤忠テクノソリューションズがその課題に切り込んだ。業種を問わず盗める極意とは?

ファイルが重い“Wordのマニュアル” 作成も公開も憂鬱

CTCは、2008年にリリースした「TechnoCUVIC」を皮切りに「CUVIC」のブランド名でIaaS事業を展開している。また、いわゆるWeb系、情報系システムだけでなく、2016年にはSAP S/4HANAといった基幹系アプリケーション向けクラウドサービス「CUVICmc2」をリリースしている。

近年、業務の効率化を追求する中でキーワードの1つとして浮上したのが、CUVICシリーズのマニュアル作成作業だった。同社では、CUVICシリーズにおけるポータル画面の操作やバックアップ手順を解説する顧客向けマニュアルをMicrosoft Wordで作成していた。作成においては幾つかの課題を抱えていたという。

まずは、ファイルサイズの重さによる弊害だ。マニュアルでは、OSやWebブラウザなど環境ごとに、1つ1つの操作手順を説明するため、ボリュームは150~200ページにも上る。手順ごとに貼り付けた画像ファイルの容量も無視できないサイズだ。

「大きなファイルサイズを扱うことから、PC操作が不安定になりました。途中でWordが落ちてしまい、再び開くと作業したはずの内容が消えていたこともあります。また、Microsoft Wordのデザインも崩れやすく、調整に時間がかかりました」と伊藤忠テクノソリューションズ クラウド・セキュリティサービス本部 クラウドサービス企画開発部 クラウドサービス企画開発課 主任を務める大塚謙輔氏は話す。

その上、承認作業や公開作業の負担が大きいという問題も重なった。マニュアル作成後は他部署のチェックを経て、承認を得てからPDF化し、公開してメールで通知する流れとなっていた。一連の作業に要する時間は1週間ほど。顧客満足度の向上においては、最新の情報に基づいて分かりやすく使用方法を示すマニュアルが重要だが、タイムリーな更新とは言い難い。
「マニュアル作業および承認、公開作業がストレスの源になり、更新作業をためこみがちだった」

伊藤忠テクノソリューションズ 大塚 謙輔 様

機能、業務改革への姿勢、日本で初めてISO 27017の認証を取得したことが決め手

マニュアル作成作業をもっと簡略化し、スピーディーに行えないか――CTCが注目したのが、スタディストのクラウド型マニュアル作成・共有プラットフォーム「Teachme Biz」だった。2017年4月にスタディストが開催した勉強会で「これならやりたいことが実現できる」と確信を得たことがきっかけだ。早速、同年6月にはスモールスタートで導入を開始した。

マニュアルを作成するだけならば、他のツールでも可能だった。だがTeachme Bizはコンテンツの作成機能もさることながら「どのように業務を変えていけるか、改革できるか」という視点を提供してくれたことがポイントだった。また、同じクラウドサービスを提供する事業者として、ISO/IEC 27017の認証を取得していたことも評価のポイントになったと大塚氏は話す。ISO/IEC 27017とは、クラウドサービスの提供および利用のための情報セキュリティ管理策を規定したガイドライン規格のこと。スタディストは、日本で最初にこの認証を獲得した企業のうちの1社だった。顧客の基幹システムも動くIaaSサービスに関わるマニュアルを託すだけに、セキュリティも重要な要素として加味したという。

伊藤忠テクノソリューションズ 原 かおり 様

マニュアル作成の負荷軽減、修正時間は1週間から5分に?

現在CTCでは、Teachme Bizで作成したマニュアルを、オンライン上で顧客に共有している。「外部公開オプション」を活用すれば、閲覧のためのパスワードも設置可能なため、セキュリティにも配慮できた。スタディストのアドバイスやサポートを得ながら、マニュアルの形式や更新にも改善を加えている。具体的には、数百ページに上っていた1つのファイルを136種類に分割し、小さな単位で更新するプロセスに変えた。また承認権限も現場に委譲し、データの作成後速やかに公開できる体制を整えた。

「Teachme Bizでは『見た目』のチェックもほぼ不要になっています。あらかじめ決まったデザインでマニュアルを作成でき、質の確保が可能なためです」

この結果、マニュアルの作成や更新に必要な手間も時間も大幅に削減できた。「以前は、文字の打ち間違いを直すといったささいな修正だけでも、他部署の公開作業が終わるまでに1週間かかっていました。一方、導入後はそれが5~10分程度で済むようになったのです。何より、このスピード感によってマニュアル更新作業のハードルが下がり、気軽に修正や更新ができるようになりました」とクラウド・セキュリティサービス本部 クラウドサービス企画開発部 クラウドサービス企画開発課の原 かおり氏は言う。

更新作業が迅速になったことは、CTC内部の生産性向上だけでなく、CUVICシリーズのマニュアルの品質向上にもつながった。「お客さまとの会議の最中に、マニュアルの誤りに気付いた社員が担当者にメールで修正を依頼したところ、会議が終わらないうちに依頼内容が反映されることもありました」

あるいは、「この部分についてもっと詳しく知りたい」といった顧客からの要望に応じて速やかに更新できる。マニュアルの作成や更新をモバイル端末で行えることも、ポイントだろう。アジャイルなスタイルでマニュアルを改善できるようになったことで、顧客満足度にも良い影響が出ている。

Teachme Bizで作成したCUVICmc2操作マニュアル

社内向けマニュアルや定期教育にも活用、タスク配信で確実に進捗を管理

CTCでは、社内向けマニュアルの作成やスタッフの研修にもTeachme Bizを活用しようと考えている。社内向けのマニュアルには、機能の1つである動画の活用も検討しており、作成や更新、共有の効率化を狙う。また、スタッフの研修では「タスク配信機能」を利用することで、教育や学習進捗(しんちょく)状況の確認の効率化を目指す。後者について詳しく説明しよう。

CUVICシリーズのクラウドサービスは、その品質とセキュリティに対する信頼により、金融や医療・製薬、小売りなど幅広い顧客に利用されている。従って、金融ならばFISC(金融情報システムセンター)安全対策基準、医療業界ならばHIPAA/HITEC、製薬業界ならばCSV(Computerized System Validation)という具合に、さまざまな業界標準への準拠が求められる。

中には運用者に対して、定期的に各種要件についての教育を実施するよう求めるケースもあるという。その場合、運用者であるCTCから顧客に対して「教育を実施した」という証跡の提出が必要だ。今まではe-ラーニングを使って定期的にスタッフの教育を行っていたが、この使い勝手が悪い。また、集合研修ではメンバーがスケジュールを合わせ、一カ所に集まる必要があり手間もかかっていた。

「Teachme Bizのタスク配信機能を活用して社員やスタッフにマニュアルを配信することで、皆が気軽に、そして確実に教育を受けられるようにしたいと考えています」。

Teachme Bizタスク配信機能では、管理者がマニュアルの閲覧をプッシュ通知で指示したり、誰がどのくらいタスクを進めているかを把握したりする機能が備わっている。管理者がスタッフの学習を確実に進めつつ、グリップを握ることができるため、CTCはこのポイントも高く評価するという。

このようにCTCでは、Teachme Bizによって誤りの少ない高品質なマニュアルをより楽に作成し、配信できるようになった。こうして生まれた余力をよりよいクラウドサービスの企画・開発という本業に注ぐことで、これからも日本企業のデジタル化を支援する。

基幹システム特化型 IaaS CUVICmc2
のユーザ企業向けマニュアルとして、
Teachme Biz を活用中。

制作:TechTargetジャパン編集部

会社名 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
URL http://www.ctc-g.co.jp/index.html
所在地 東京都千代田区霞が関3-2-5 霞が関ビル
事業内容 コンピュータ・ネットワークシステムの販売・保守、ソフトウェア受託開発、情報処理サービス、科学・工学系情報サービス、サポート、その他

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