札幌市の北隣に位置する北海道石狩市。石狩湾沿いに南北約70kmもの市域を持つ、人口6万人弱の都市です。石狩湾新港とその周辺に広がる工業団地を中心として発展する一方、豊かな自然や北海道を代表する郷土料理である石狩鍋などを求めて多くの人が訪れる観光の町でもあります。また札幌市のベッドタウンとしても人気が高く、住環境にも優れた町です。
石狩市では、全国の自治体の中でもかなり早い時期からパブリックコメントを市政に取り入れ、市民協働による街づくりに積極的に取り組んでいます。また、市の東京事務所を開設して企業誘致を図るなど、先進的な市政運営を展開されています。
そんな石狩市役所様がTeachme Bizを導入されたのは、2020年6月のこと。その背景には、市役所という組織ならではのお悩みがあったようです。石狩市役所総務課の森本栄樹課長、菅原太樹主査、小林睦主査の3名に、その背景や活用の状況、展望をお話しいただきました。
定型化された手順書が整備されていなかった
―――まず導入の背景からお聞かせください。
当市役所では年度ごとに多くの職員の人事異動があります。石狩市には現在、正職員や会計年度任用職員も含め、700名以上の職員が在籍していますが、そのうち、毎年100名以上の職員が部署異動しています。つまり、毎年4月には、ほぼすべての部署に新任の職員が在籍する状況になるわけですが、その際の引き継ぎや知識の共有がうまくできていないという課題を抱えていました。
そんな中、2018年に総務省が自治体におけるクラウド導入を推進する方針を打ち出したことをきっかけに、所内の業務システムをクラウド化することが決定しました。それによって業務システムの入れ替えが必要になり、職員に新システムの使い方を伝えるためにTeachme Bizを導入することにしました。
―――これまでは手順書が存在していなかったということですか?
業務ミス防止の観点から手順書づくりを進めておりますが、業務によっては手順書がないというケースもあり、あったとしても、職員によってはExcel、別の職員はWord、また別の職員はメモ程度など、それぞれが自分なりのフォーマットで作ったものばかりで、まったく標準化されていませんでした。
仕事の内容は定型的なものが多いですから、引き継ぎの手順書さえ整っていれば比較的スムーズに新しい課での仕事に取り組めるはずなのですが、それが整備されていないために、詳しい仕事の手順は前任者に聞くか、課内の別の職員に聞くか、自分で調べるかしかなく、業務が一定のレベルにたどり着くまでかなりの時間がかかることもありました。
―――導入の初期段階でのご苦労や、その中で工夫されたようなことはありましたか?
そもそも手順書文化がなかったところからのスタートでしたので、取り組みを理解してもらい文化としてどう定着させていけるかが最初のハードルになるだろうと思っていました。しかし、それぞれの課ではすでに問題意識は高まっていたようで、彼らにTeachme Biz導入の話をすると、おおむね前向きな反応を得ることができました。
総務課からスモールスタートし徐々に拡張
―――導入には3つのステップで取り組むご予定だそうですが、最初はどういったステップでしょうか。
まずは実際に便利になることを職員に実感して欲しかったので、最初のステップは職員の実務にまつわる手順書作成に取り組もうと考えました。
たとえば、郵便物の数量や金額を自動で集計して発送する計器が総務課にあって、いろいろな部署の職員が使用するのですが、使い方がわからないために散発的に同じ質問を受けたり、同じようなミスが起きたりするケースがよくありました。そうした計器の使い方や運用のルールを手順書として共有することで、職員の誰もが同じように使用できるようにし、総務課の負担も減らす、といったようなことです。その他、総務課の人事部門で新人教育に活用するなど、まずは総務課の中からスモールスタートして、だんだん所内全体に拡張していければと思っています。
―――第二のステップはどのようなものですか?
2021年3月までに順次切り替えを進めている新しい業務システムの操作方法についての手順書の作成です。俗にいうグループウェア的なシステムがすべて入れ替わる予定であり、中にはまったく新しいシステムも含まれるので、それらの操作手順をTeachme Bizで提供することを考えています。また、新型コロナウイルスの感染拡大以降テレビ会議や在宅ワークも導入されましたので、自宅のパソコンを業務で使うための初期設定の方法などもまとめていこうと考えています。
市民が安心できるデジタルサービスを提供するために
―――では、第三のステップとはどういうものでしょうか。
市民のみなさん向けの手順書です。2021年度から順次活用していきたいと思っています。
たとえば、市役所の窓口でいろいろな手続きや申請をしていただく際、現状は各窓口で申請書等の記入例を用意し、それを紙でお渡ししたり郵送したりしています。その記入例をTeachme Bizで手順書化し、ペーパーレスで提供するといったようなサービスが考えられると思います。
―――紙の大幅な削減につながりそうな活用法ですね。
はい。しかし、ただ紙をなくせばいいと思っているわけではありません。石狩市は2005年の市町村合併により、高齢化率が高い地区も有しています。そうした地域の方々のためにも、紙での手続きや伝達を手段として残しておくことは行政として当然の責任です。一方ではDXが叫ばれている世の中でもありますから、少し時間がかかるとしても今のうちからこういった取り組みを始めて将来に備えておくこと。これもまた、行政にとって必要なことではないかと考えています。
そのうえで、まずは職員自身がデジタル化を理解していなければ、市民のサービス向上にデジタルツールを使うことへの本当の理解は得られないと思っています。そのためにも、職員のデジタル技量を上げる第一のステップ、セキュリティの技量を上げる第二のステップが必要であり、それを果たしたうえで、市民のみなさんに安心してご活用いただけるデジタルサービスを提供する流れを考えています。
いずれは周辺自治体と連携し広域で活用したい
―――そのほか、Teachme Bizを活用して実現したいことはありますか?
周辺自治体の総務担当者と意見交換をしながら、いずれはより広域でこの取り組みを進めたいと思っています。役所の業務は、法律に基づいた業務が多く、自治体ごとに業務のフローが大きく違うということはありません。それならば、「これはわかりやすい」と評価の高い手順書を他の自治体に提供したり、テンプレートをダウンロードできるようにしておけば、業務効率が上がりサービスも標準化され、地域の皆様のメリットにつながるのではないかと思っています。
―――同じようなお悩みを抱えていらっしゃる自治体の担当者の方に、ぜひアドバイスをお願いします!
新しい取り組みを広げていこうという時には組織内にハレーションが起きることもあるかもしれませんが、みんなが困っていることは事実なので、便利で手軽に使える手順書をどんどん提供していくことが一番の解決策になるのではないかと思っています。良いものを提示し、一度便利だなと思ってもらえれば、他の職員にも「使ってみよう」「作ってみよう」という機運が生まれ、きっといずれはそれがスタンダードになっていくと思いますので、ぜひ新しい取り組みに積極的にチャレンジしていただきたいです。