日本のスーパーマーケットチェーン最大手であるイオングループが総合スーパーを皮切りとして、2020年以降マックスバリューをはじめとする小型スーパー16店舗をベトナムに出店させました。大型ショッピングセンターで知られる同社ですが、伝統的な市場であるウェットマーケットが主流であるベトナムにおいては小型の食品スーパーを多数開業しブランド認知を向上させる戦略で、2025年までに100店の出店をめざしておられます。
プロジェクトリーダーとして現地へ赴任し起ち上げから携わられてきたイオンベトナム スーパーマーケットプロジェクト ゼネラルマネージャー 奥 盛宏 様に、Teachme Bizを導入するに至った経緯や活用方法、またどのような効果を感じていらっしゃるか、今後の計画についてお話を伺いました。
チェーンストア方式を採用した多店舗経営のカギを握るマニュアル
―――導入の背景を教えてください。
スーパーマーケットがASEAN全体でまだまだ浸透しておらず、ウェットマーケットが主流の生活スタイルですから、まずはマックスバリュの存在を知っていただき、身近なところで多店舗展開することをめざしていきました。ベトナムでは物流センターや問屋を利用することができない中で、どう商品を調達し、受け渡しするかを標準化するのが課題でした。また、笑顔でのお出迎えや挨拶、サポートといった接客業におけるサービス精神や顧客満足という概念もほとんどありません。日本での働き方や当社が培ってきた文化に対する理解が得られない場所で、異なる価値観を持つメンバーが集まってスタートすることになったため、人材教育という面で最も苦労したと言えるのではないでしょうか。
―――マニュアルシステムを導入した背景を教えてください。
多店舗経営はチェーンストア方式を採用してはじめて利益が生まれるビジネスモデルなので、将来的に100店舗という規模でのチェーンストア化を見据えると、作業を標準化するためにマニュアルは欠かせないと考えました。そこで日本法人に生鮮部門のものを提供してもらったのですが、紙ベースにして300ページにもおよぶため、ベトナム語で作り直すとなると不可能なことのように感じました。例えば、マテリアルハンドリングで使用する道具は見たことのないようなものばかりで、とてもではないですが現地スタッフにはそのマニュアルを理解できず、他の方法がないかと模索し始めたわけです。
画像や動画を用いることで言語の壁を乗り越えて意思を疎通する
―――導入の決め手はどんなところでしたか?
一時帰国の際にグループ企業を訪問してヒアリングしたところ、マニュアルツールとして名前が挙がったのがTeachme Bizでした。テンプレートに沿って文字だけでなくイラストや画像、動画を入れるだけで手軽に作成・更新できます。手順を1つずつ表示する「ステップ構造」で細かい動きまでビジュアルでわかりやすく表現され、共有するのも簡単です。実際に見てみると、言語の壁を越えて思いが通じるツールで「これしかない」と直感しました。日本の企業が運営するサービスという面で多少の不安はありましたが、運営会社であるスタディスト様はタイにも子会社があり、英語とベトナム語でのサポートにも対応していただけるということで導入を決めました。
―――具体的な活用方法について教えてください。
ベトナムではサプライヤー様からの供給状況に応じて売場を変更しなければならない場面が多々あります。まずはオペレーションを標準化したいという大きな目標のもと、店舗での作業を洗い出すところから着手し、マニュアルとひもづけることを最優先に進めていきました。以前はパソコンで送った陳列指示書を見て変えていたのですが、閲覧できるQRコードを印刷して棚前に貼り付けるようにしました。そうすればスマホやタブレットなどのデジタル端末からQRコードを介して、直接アクセスすることができます。スタッフがいつでも確認できるようにするためには、店舗で使っているワークスケジュールとひもづけすることが、第1段階のゴールではないかと考えています。マニュアルの数が増えれば、必要なマニュアルにたどり着くことさえ負担に感じてしまうこともあるので、重要なものだけをQRコードで出力し、その場所に貼り出しておくことを徹底していきたいです。
言語が通じない環境下でも指示内容が伝わりやすいよう具体化
―――導入の効果はどのようにお感じでしょうか。
本プロジェクトチームにおけるTeachme Bizの役割は言語を越えて指示を伝える、理解するためのツールだと考えています。結局のところ、私たちのめざしたいところやスタッフの教育すべきところを言葉ではなくビジュアルで伝えるのが理解度も1番高いです。動画を通じて伝えたいことを視覚的に表現することができるという点で紙ベースのマニュアルとは大きく異なり、指示内容を具体的に示すというコミュニケーションの場面において最も苦労するポイントを解決してくれました。また、「プロフェッショナルサービス」(※)を利用したことで自分たちだけでは気がつかないような活用方法について、たくさんのヒントをいただけて非常に大きなメリットになったと思っています。
※プロフェッショナルサービス:Teachme Bizをより効果的にご利用いただけるようスタディストの担当者が伴走支援いたします。詳細はお問い合わせください。
―――今後はどのような活用の計画をお考えですか。
言語がうまく話せない、コミュニケーションできないといった問題を抱えながら、海外で働かなければならない人にとっては特に“神ツール”だと感じています。現在(2023年7月)、作成したマニュアル数は店舗の作業で約200、事務所の作業で約100です。マニュアルを「わかりやすい」と評価してもらえることが、作り手にとっては大きなモチベーションになっています。自分が作成したものを誰かが見て、影響を与えることに楽しさややりがいを感じてほしいですね。