新入社員受け入れのための4ステップを解説!効率的な新人教育の実例
新入社員を現場で受け入れる際、新入社員は期待と同時に右も左もわからず「これから先上手くやっていけるのか」という不安を抱えています。
新入社員を受け入れる態勢が整っていないと、新入社員はうまく環境に馴染むことができず、本来持っているポテンシャルを生かせません。それどころか不満を募らせて離職してしまう可能性さえあります。
今回は新入社員を現場で受け入れる時に、受け入れ態勢をどのように整えていけば新入社員を早く馴染ませ、自立を促すことができるのかをご紹介していきます。
目次
様々な新入社員受け入れ
新入社員の受け入れ態勢といっても、時期によって様々な位置づけのものがあります。
内定者研修
学生が就職活動を終了し、実際に入社するまでの期間を利用して行われる研修です。
この研修では、会社で業務を始めるにあたって最低限必要な知識やスキルを身に着けることや、内定者同士の横のつながりを作ることを目的に行われます。
その大きなメリットの1つは、会社への定着を促すことです。
優秀な学生ほど複数の企業から内定をもらうため、最終的に入社する企業以外の企業の「内定辞退」を行います。それを防ぐため、企業のポジティブな印象や雰囲気を体感してもらうのも研修の一つの意図になっています。
また企業側が学生の定着に不安を抱いているのと同時に、学生側も様々な不安を抱えています。社員との懇親会を開催したり業務内容を実際に見せたりすることで、この不安を低減させることができるのもメリットと言えるでしょう。
入社受け入れ
内定者だった学生が新年度に社員として働く準備全般のことを指します。
新入社員の入社手続きに必要な書類をそろえることから、入社してから社会人としての常識を身に着けてもらうために行う新人育成研修の体制を整備することまで、その範囲は幅広いです。
新しい環境を前にストレスのかかる生活の中で、煩雑な書類手続きをしなければならないことは内定者の学生にはかなり大きな負担です。また、ついこの前まで学生だった新入社員は「社会人である」という自覚が薄いことが多いです。
そうした中で企業側は入社手続きなどの煩雑な作業に関する懇切丁寧なアナウンスや、基本的なビジネスマナーやスキルの定着を後押しするトレーニングの機会を提供することが重要です。こうした後押しがあることで、新入社員の抱える不安が軽減されるだけでなく、社会人として良いスタートダッシュを切ることができます。
現場受け入れ
ビジネスマナーなどを学ぶ新人研修を経て、実際に現場に新入社員が配属される際の部署の受け入れ準備のことを指します。
新入社員が配属する部署を決め、その後のスムーズな現場への定着を図ることは、新入社員の定着を考えた時、キーになる要素でしょう。
やはり新入社員にとって初めての現場はわからないことばかり。部署内のコミュニケーションは不安ではあるものの、「業務内容を少しでも早く覚えて業務に慣れていきたい」というのは新入社員の共通認識としてあるはずです。
その際には、新入社員が努力を重ねるのと同様に、受け入れる現場側も新入社員の居場所を作るなど、しっかりとした教育体制を整えることは必須です。
今回は様々な新入社員受け入れ態勢のうち、現場への受け入れに焦点を当てて話をすすめていこうと思います。
現場受け入れで気を付けるべき4つのステップ
ここまでは、新入社員の現場受け入れがどういった位置づけかをまとめました。
では、具体的にどのようなステップを踏んで行っていくのがよいか。注意点を含めてそれぞれ紹介していきます。
初日の受け入れ態勢を整える
- 新入社員を歓迎していることを実感してもらう
- 新入社員を放置することがないように受け入れ側の周知を図る
新入社員にとって、現場配属1日目は大きな期待と共に緊張や不安を抱えているはずです。
その中で、配属される現場から歓迎されているということを実感し、安心できることは非常に重要です。職場全体が自分の存在を受け入れて歓迎してくれている、ということを示すためには、「どのような新入社員がいつ来るのか?」を把握し準備しておくべきでしょう。
また、こうした準備をしておくことで、「右も左もわからない新入社員が放置されてしまい、不安を募らせる」さらには「うまく馴染めず早々に離職をきりだす」という悲劇は減らすことができるはずです。
新入社員の不安を解消し、「これから」に生かす
- 初めは負荷の小さい業務から
- どのような不安も払拭し、スムーズな順応を促す
現場によっては、現場配属初日に「習うより慣れよ」と言わんばかりに、元々いる社員と同じ規模の業務量を任せることもあります。しかし、これは新入社員にとって不安を増大させる要因になりかねません。
最初は職場に慣れてもらうために時間を取り、徐々に業務自体にも慣れていくことに努めるのが賢明でしょう。この際に、目的や目標を明確にしておくことも有用です。
また現場で働いている人にとっては当たり前のことも、新入社員にとっては初めてのことばかりです。そのため新入社員が不安を抱えていても、現場で受け入れる側がその不安に気づけないことは多いです。
どんなことに不安を抱えているのかを直接聞いたうえで、不安をその都度で解消していくのは有効な手立てかもしれません。加えて、業務の全体像を把握しきれてないことも不安の原因になりやすいため、具体的な業務の説明や現場を見せていくことも効果的だと考えられます。
スモールスタートで成功体験を創り、自信をつける
- 小さな成功体験で自信をつけてもらう
- 成功体験をする機会創出の土壌を作る
新入社員が現場に配属されて働き始めの期間は、現場受け入れ側にとって勝負の期間です。この期間に何か少しでも成功体験があれば、少なからず自分に自信を持つことができます。
この自信は、今後働いていく上でのモチベーションにつながります。自分がわからないなりにも何かを成し遂げ、それを認めてもらえるということは、自分の存在意義を認めてもらえたようにも感じるのです。
こうした経験は困難に対峙したときにも心の支えとなり、少しのことでは動じないメンタルを育ててくれます。
ただ、小さな成功体験を提供する環境が元々あるとは限りません。どのようなタイミングで、どれくらいの大きさの業務を任せれば上手く軌道に乗るかどうかを、受け入れ側は把握しておく必要があります。
こうした経験・スキルを得た教育担当者を育て、土台作りをすることもまた大切なのです。
ノウハウを結集したマニュアル・手順書を整備する
- 現場で作ることで、マニュアルを機能停止状態にしない
- マニュアルを整備し、効率的にノウハウを共有する
業務内容は勿論、事務的な手続きを含めたマニュアルや手順書を提供することは、新入社員にとってプラスに働きます。現場がマニュアルを整備することで、現場の活きたノウハウを集め共有することができます。
このマニュアルを利用しながら業務を覚えていくことで、能率よく業務の全体像を把握しやすくなるでしょう。
マニュアルや作業手順書は、文字や画像ベースで形に残っているものなので、後から何度も見直すことができます。これは「周囲に話しかけづらいタイミングで、わからない業務が出てきたしまった」時に、自ら調べて解決できるためとても役に立ちます。
スケジュールごとに抱える課題・対応策
これまでは、どのようなステップを踏んで新入社員を迎えればよいかご紹介してきました。
ここからは、新入社員を現場で受け入れる際に留意しておきたい事項とその対応策について触れていきます。
心理的なサポート
何度も話に出たように、新入社員は新しい環境に身を置かれることの不安を多く抱えています。
実際、日本能率協会の実施した新入社員意識調査の中でも、仕事をしていく上での不安について、「上司・同僚との人間関係」(39.8%)、「仕事に対する自分の能力・スキル」(36.6%)が上位に挙がっています。
現場で新入社員を受け入れる側としては、「仕事に上手くついていけるのだろうか」「職場の同僚の中に馴染めるだろうか」といった不安を少しでも取り除くように努めることが不可欠になってきます。
こうした不安を取り除くこと自体が、新入社員のモチベーション・やる気につながるのです。
とはいえ、具体的にはどのように対応していくべきなのでしょうか?
一番わかりやすいのは、自分が新入社員だったら......と想像してみることです。それでも難しければ、自分が異動になったことを想像するとよいかもしれません。
思うことは人それぞれあるとは思います。しかし、新しい環境でどう進んでいけばよいのかわからないという不安は、誰もが抱えるものではないかと思います。
そのような状況において、自分の進むべき指針を示してくれる存在は心の拠り所になります。その役割は、現場で受け入れる社員側が担うことが望ましいです。
目標設定とメンタリング
では更に詳細に、どんな行動を起こすべきか。
1つは新入社員の目指すべきゴール(目標)を明確にすることです。
新しく配属された現場で、進む方向性が定まっていないことが、不安の大きな根源にあります。それを取り除くことで自分の行動指針が定まるので、心理的な安心感を得ることができます。
またそれと並行して、新入社員のメンタリングを行うことも効果的です。
目標は掲げるだけでは意味がありません。新入社員が正しい方向に向かって進めているのか、不安に思っていることはないかといったことを定期的にサポートしていく体制を整えることも心理的な不安を取り除くには重要です。
技術的なサポート
先ほど挙げた新入社員の意識調査の中で、人間関係における不安とともに挙げられていたのが業務に上手くついていけるかといったスキル面での不安です。
満を持して配属になった職場で、「指示を待っている時間が多く、中々業務を覚えられない」「話しかけられる雰囲気ではなく、疑問があっても伝えられない」といった不満を抱えてしまうのは非常に惜しいことです。
こうした状況を作り出さないようにするには、現場で受け入れる側の準備が不可欠になっています。
大前提として大事なのは、新入社員を現場全体で受け入れる姿勢です。教育担当など一部の人物のみならず、全体として快く迎えいれることでわからないことは気兼ねなく聞ける雰囲気を醸成しやすいです。
そのうえで、現場でマニュアルを整備することは大きな効果を生みます。
新入社員が独り立ちできるようにするためには、人にわからないことを聞いて仕事を覚えていくことは大事です。しかし、それと同じくらい自分でできるという感覚を持つことも大事になります。
現場の業務に即したマニュアルを参照することで、何とか自力で業務を遂行できたという感覚が身に付き、意欲的に仕事に取り組みやすくなります。
また、周囲で働く人がどうしても手が離せない状況は存在するため、そこで手持ち無沙汰にならずに済むという側面もあります。
マニュアル・手順書の整備は定期的に
具体的に「マニュアルを整備する」とはどのようなことか整理していきましょう。
マニュアルは作って終わりではありません。
マニュアルを作った後も業務のプロセスは適宜変わっていくので、最新の情報を常に更新し続けなければすぐに形骸化してしまいます。
この際マニュアル整備に関して、どれくらいの範囲の領域を誰が責任をもって管理していくか決めていくことで、内容の最新化や確認を漏らさずできるようになります。
関連:マニュアルは整備し続けなければ意味がない!?更新・運用のポイントと注意点
新入社員がマニュアルを作る
これまで受け入れ態勢を整える際に、受け入れる側がどうあるべきか、ということについてご紹介してきました。
その中で、マニュアルを整備することの有用性もお伝えしましたが、マニュアル作成・整備に時間をなかなか割けないこともあるかと思います。
その課題を、発想の転換で解決しようと試みた実際の事例があります。
LRM株式会社様では、マニュアル作成・整備を行いつつ新入社員の自立を促す取組みを行いました。
それは、通常【教わる】側の新入社員がマニュアルを作るというものです。
マニュアルを作成することで、順を追って業務のプロセスを覚えていけるだけでなく、新入社員ならではのフレッシュな視点・気づきに溢れたマニュアルが数多く作成されました。
具体的には
- 新人の業務のつまづきポイントを把握できるようになった
- 新人が作ったマニュアルを見ることで仕事の成熟度を確認できるようになった
- 新人とマニュアルを作った先輩とのコミュニケーションとりながらマニュアルを修正するので最新の業務の手順が一目でわかる状態となった
といったものです。新入社員にとって良い効果があったのはもちろんのこと、職場全体に還元できるものも多いため、試しにやってみるというのも一つの手ではないでしょうか。
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