業務プロセスとは? 業務フローとの違いや改善の流れ、おすすめツール
「業務プロセスを改善して生産性を向上したい」と悩みを抱えていませんか?
近年では、年々深刻化する人手不足や働き方の多様化に伴い、業務効率化や生産性向上を通して組織力を強化するための取り組みに注目が集まっています。
本記事では、業務プロセスについて詳しく知りたい方に向けて、業務プロセスの概要と改善の流れを解説します。
目次
業務プロセスとは日常で遂行される業務の流れ
業務プロセスとは何かを一言で表すと、「業務の連なりと、業務による営利獲得までの流れ」です。
企業が営利獲得のために行う活動は、いくつもの業務のつながりで成り立っています。直接営利を生み出す製造や営業といった業務から、企業全体をサポートする人事・総務・経理といった業務まで、企業にはさまざまな部署や担当者が必要です。
業務プロセスは、利益を生み出す製造・営業部門だけでなく、それを支える総務や経理などの働きを含めたすべてが関連してひとつの連なりとなることで、企業活動が成り立っていることを表しています。
業務フローとの違い
業務プロセスと業務フローは、基本的には同じ概念です。ただし、それぞれ「フロー」「プロセス」と異なる言葉が使われていることを踏まえると、次のような違いがあります。
フローは英語の「flow」がもとになった言葉であり、「流れ」を表します。一方、英語の「process」に由来するプロセスは、「物事の過程・手順」を表す言葉です。そこから、業務プロセスは「目標達成に至るまでの業務の連なり」を指し、業務フローは「業務プロセスにおけるひとつひとつの作業が、どのような順番で流れているか」を指す言葉と言い換えられます。
業務プロセスの例
「作る」「売る」という行為を例に、業務プロセスについてさらに具体的にみていきましょう。
企業が売上と利益を出すためには、まず「売る商品」が必要です。そして、売る前には、必ず「売るための商品を作る工程」が必要となります。ただし、実際の企業活動においては、単純に商品を作って売るだけでは経営が成り立たないのが事実です。
飲食店における業務プロセスの例
ここでは、飲食店を例にとって考えてみましょう。一般に、飲食店では「購買→下ごしらえ→調理→提供→皿洗い」というプロセスを行うことで店舗が成り立っています。
店舗で提供する料理を作るには、まず材料をそろえなければいけません。そのため、材料の調達や購買管理といった業務が発生します。材料がそろったら、皮むきやカットなどの下ごしらえをします。食材の下ごしらえが済んだら、シェフが調理を行い、出来上がった料理をウェイターが顧客に提供します。そして、顧客の食事が終わればウェイターが食器を下げ、アルバイトが皿洗いをするというのが、飲食店でのプロセスです。
このように、企業活動は、「作る」「売る」だけではなく、さまざまな業務プロセスが関連し合うことで成り立ちます。
企業が抱える業務プロセスの課題
近年、業務プロセスに課題を抱える企業が増えています。主な課題としては、次の3つが挙げられます。
IT人材不足でアナログなやり方に頼る
IT人材の不足によってアナログなやり方に頼り、効率化が進まないことが課題のひとつです。
業務プロセス改善の主な目的には、IT化の促進があります。しかし、IT人材の不足から、IT化やDX推進が実現できず、従来のアナログなやり方から移行できない企業も多いのが実情です。
また、経営側や管理者の改善意識および理解が乏しく、具体的な改善策を立案できないことから、改善の担当者を決めて業務を一任してしまうケースも見受けられます。しかし、業務プロセスの改善には、各部門の協力が不可欠なため、経営者がトップに立って行う必要があります。
属人的なやり方が多い
属人的なやり方が多いことも、業務プロセスにおける課題のひとつです。
とくに、専門知識が必要な業務ほど、知識を持っている担当者に属人化しやすくなります。
特定の担当者に仕事が偏っていても、業務がうまく回っているときには問題ないでしょう。しかし、属人化には「担当者が休んだときに、代わりに業務を行える人がいない」というリスクが存在します。担当者の不在時には、業務全体の流れが滞ってしまう可能性があります。
多様な働き方に対応できない
業務プロセスが問題で、社員に求められている多様な働き方に対応できないケースも考えられます。
コロナ禍をきっかけにテレワークが普及しはじめ、在宅ワークをする人が増加しました。しかし企業によっては、テレワークを導入すると既存の業務の進め方では運用が困難になる場合があります。
テレワークの導入には、Excelファイルを中心に行っていた作業をシステムへ移行する、ペーパーレス化を実現するなど、既存の業務プロセスを大きく変える必要があります。
業務プロセス改善の流れ
業務プロセスの改善に取り組む際は、正しい手順で行うことがポイントです。ここでは、業務プロセス改善の流れを4段階に分けて解説します。
Step1:プロセスの見える化
まず、「プロセスの見える化」を行います。業務プロセスを改善するには、現在行っている業務をすべて把握する必要があるためです。
プロセスの見える化をするときは、フローチャートや業務フローと呼ばれる図を使用してまとめるとわかりやすくなります。業務フローは、長方形や楕円などの記号を矢印でつなげ、フローを視覚的にわかりやすくしたものです。業務フローを作成することで、全体の流れをひと目で理解できるようになります。
Step2:改善点の洗い出し
次に改善点の洗い出しを行います。
たとえば、「総務部門と他部署の連携が不十分」「形式的に行っている不要な業務がある」など、業務において課題となっていることを挙げていきましょう。
改善点の洗い出しは、具体的であるほど後の作業がスムーズになるため、どのような作業でどのような点に問題があるのか、細かく洗い出しましょう。
Step3:改善すべき優先度の決定
改善点をすべて洗い出したら、優先度を決めていきます。
それぞれの業務プロセスの改善で得られる効果や、予算などを考慮して、改善できそうなところから優先度を判断します。
また、期日を決めることも重要です。改善をいつまでに行う必要があるかを含めて考慮し、優先順位を決めていきましょう。
Step4:改善策の実行
続いて、決定した優先順位に沿って改善策を練り、実行に移します。
改善案は、はじめから完璧なものを目指して作る必要はありません。後からブラッシュアップすることを前提に検討しましょう。スモールステップではじめて、運用後に現場の関係者から得たフィードバックを踏まえて修正するほうが、改善を進めやすくなります。
改善案が決まったら、まずはテスト運用を開始し、施策が改善につながっているかを定期的に確認します。とくに変化がない場合や、新たな問題点が見つかった場合には、修正しながらテストを繰り返し、数週間から1か月ほど様子をみるとよいでしょう。
業務プロセス改善を成功させるコツ
業務プロセス改善に取り組むときのコツを紹介します。コツを押さえて改善を成功させましょう。
改善後も継続して運用する
業務プロセスの改善は、施策を実行して効果が上がったと感じても、継続して運用を続けることが大切です。
業務プロセスの改善は、一度の改善で終わりではありません。状況は常に変化するため、定期的にプロセスの見直しを行い、継続して運用が可能かを確認する必要があります。
改善策を実行したら効果測定を行い、そこから問題点や課題を洗い出し、再び改善策を検討するという流れで、PDCAを回しながら改善を図りましょう。
現場のフォローを欠かさない
業務プロセス改善案の運用時には、現場のフォローを欠かさずに行うことも重要です。
業務プロセスの変更は、現場の担当者に直接関係します。管理者が何の説明もせずプロセスを変更しようとすれば、現場の混乱は避けられません。フォローを怠ることによって担当者から理解を得られないだけでなく、協力も得られなくなる可能性があります。
そのような事態を防ぐには、あらかじめ担当者に改善の目的を理解してもらうことが大切です。また、運用を開始してからも、担当者からのフィードバックをもらいながら改善につなげていきましょう。
QCDを意識する
業務プロセスの改善には、QCDのバランスを意識することもポイントです。
QCDとは、「Quality」「Cost」「Delivery」の頭文字をとってできた言葉です。
- Quality:品質の向上
- Cost:コストの維持・削減
- Delivery:納期の短縮
上記3要素のバランスが取れた状態になるように取り組みを進めることで、業務プロセスを最適化できます。
業務プロセス改善に用いられるフレームワーク3選
業務プロセスの改善には、フレームワークを取り入れるのが有効です。ここでは、業務改善に用いられるフレームワークを3つ紹介します。
業務改善のフレームワークについては、次の記事で詳しく紹介しています。あわせて参考にしてください。
あわせて読みたい!
業務改善のアイデアと役立つフレームワーク! ツールや事例もご紹介
PDCAサイクル
PDCAサイクルは、「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」の順に行動のサイクルを回すことで、継続的な業務改善を図る手法です。それぞれの頭文字をとって、PDCAと呼ばれています。
「目標設定・計画立案→計画の実行→検証・評価→改善案の検討」というプロセスをループ型で回していくことで、改善を繰り返し、業務プロセス改善を成功につなげていきます。
ECRS(イクルス)
ECRSは、「Eliminate(排除)」「Combine(結合)」「Rearrange(交換)」「Simplify(簡素化)」の頭文字でできた言葉で、四つの視点から業務改善を行うフレームワークです。
次の要素を検討することで、現状の業務における課題の発見につなげる手法です。
- Eliminate(排除):排除できる不要な業務がないか
- Combine(結合):複数の業務をひとつにまとめられないか
- Rearrange(交換):工程の順序や場所を入れ替えて効率化できないか
- Simplify(簡素化):複雑な業務をシンプルにできないか
課題が見つけやすくなるため、どこから優先的に改善を行ったらよいか迷ったときに効果的です。
BPMN(ビジネス・プロセス・モデリング表記)
BPMN(ビジネス・プロセス・モデリング表記)は、計画した業務プロセスの手順を開始から終了までモデル化するフレームワークです。
具体的には、事業活動の情報やフローを詳しく表した図のことです。フローチャートを使って、業務一連の内容や情報を視覚的にわかりやすく表すため、業務の工程を可視化して把握できます。また、図に詳細な情報を入れることによって、業務を行う目的と実状との間にあるギャップに気づけるようになります。
業務プロセスを改善するなら! おすすめツール4選
業務プロセス改善には、ツールの導入が効果的です。企業が業務改善に活用したい、おすすめのツールを4選紹介します。
Teachme Biz
「Teachme Biz」は、かんたんにマニュアル作成ができるマニュアル作成・共有ツールです。
マルチデバイス対応で手軽にマニュアルの作成・更新が可能で、画像や動画を入れながら、わかりやすいマニュアルが作れます。
作成したマニュアルはQRコード化して共有できるため、現場の社員に見てもらえる伝わりやすい環境を作れます。ダッシュボードから閲覧ログを確認し、進捗管理もスムーズに行えるので、浸透度を把握して改善につなげるなど、PDCAを回すのに効果的です。
出典:Teachme Biz
Qasee(カシー)
「Qasee」は、業務データを分析し、改善方法を導き出せるクラウド型のシステムです。
業務PCにソフトウェアをインストールして自動取得したデータから、業務工数を正確に把握できます。そのため、作業やプロジェクト単位で、業務コストを正しく可視化・把握できるようになります。
業務工数を正しく把握することで社員の業務状況や生産性を分析できるほか、社員の効率的な働き方をサポートする機能もあるため、無駄を省き生産性の向上が可能です。
出典:Qasee
AppRemo
「AppRemo」は、Excelの申請書が使えるワークフローシステムです。
Excelファイルをアップロードして、既存のExcel申請書のフォーマットを活用できます。従来の運用方法を変更せずに済むため、スムーズに導入が可能です。
また、管理者・申請者ともにExcel機能の活用が可能で、ツールの操作方法を習得する必要がありません。チャット機能で質問も手軽に行えるようになり、テレワークの運用にも対応できます。
出典:AppRemo
MeeCap
「MeeCap」は、収集したワークログのデータをもとに可視化や自動分析を行う、プロセスマイニング業務可視化ツールです。
幅広い業種の企業で、業務分析やテレワーク中の勤怠管理などに活用されています。業務や労働状態を可視化・把握できるため、テレワーク中の長時間労働の防止や、人事評価に活用できます。
テレワーク中の勤怠状況を把握したい企業や、生産性向上を図りたい企業で役立つツールです。
出典:MeeCap
【Teachme Biz】業務プロセス改善の事例
Teachme Bizは製造業をはじめ、サービス業、小売業など、さまざまな業種の企業で導入されています。そのなかから、2社の業務プロセス改善事例を紹介します。
1日かかっていた作業を1時間で完結
研磨フィルムの製造販売を手がけるMipox株式会社様では、ISO取得に必要となる手順書を整備するため、Teachme Bizを導入しました。Teachme Bizの導入により、これまでパソコンで1日かかることもあった作業が、スマートフォンを使って1時間で完了するようになったとのことです。さらに、「探す・管理する」といった作業も手軽にできるようになり、大幅な時間短縮につながりました。手順書の閲覧のしやすさから、業務中のミスが減少する効果にもつながっています。
1日仕事だった手順書作りが1時間に減りミスも減少。ISOにおける文書管理にも効果を実感(Mipox株式会社様)
遠隔で新システムの構築に成功
航空運送事業を展開する日本航空株式会社様は、新システム導入のためにフローをマニュアル化する必要があり、Teachme Bizを導入しました。プロジェクト推進に関わる拠点は、販売元のフランス、導入支援のインド、日本の3か所と遠く離れていました。しかし、Teachme Bizを使って画像や動画を共有することで、距離や言語の壁を越え相互理解を進められたとのことです。新システムの導入プロジェクトも滞りなく完遂し、情報共有のプラットフォーム構築にも至っています。
コロナ禍でも遠隔で新システムの構築をスムーズに。障がいのある社員の活躍にも貢献。(日本航空株式会社様)
まとめ
近年、人材不足や働き方の変化により、企業は業務プロセス改善の必要性が高まっています。業務プロセスの改善には、まず現状の業務を可視化・把握し、優先順位を決めて改善策を実行する必要があります。
改善までの流れは難しく感じるかもしれません。しかし、現場の業務プロセスを細分化して課題を明確化し、フレームワークやツールを活用することで、効果的・効率的に施策の運用を進められるでしょう。
「テレワークを導入したい」「属人化を解消したい」など、業務プロセスに課題を抱えている場合は、早期に取り組みを始めてみてください。