対策するべき「AIセキュリティ」とは?リスクの種類と具体的な対応策を解説

公開日: 2025.12.02

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生成AIの利用が広がる一方で、サイバー攻撃の高度化により情報漏洩などのリスクも増えています。安全にAIを活用するには「AIセキュリティ」を正しく理解し、適切な対策を講じることが欠かせません。本記事では、AIセキュリティの必要性と企業が直面するリスクや押さえておくべき対策を解説します。

AIセキュリティに目を向ける重要性

ChatGPTをはじめとする生成AIは、業務効率化や生産性向上に大きく貢献し、企業でも利用が急速に広がっています。しかし、その便利さの裏側で、サイバー攻撃は世界的に激しさを増しており、AIの普及によって従来のセキュリティ対策では想定しきれない新たなリスクも生まれています。

AIが扱うデータには、機密情報や個人情報が含まれるケースも多く、一度漏洩すると企業に大きな影響を及ぼします。また、AIそのものが攻撃対象となったり、AIを悪用した高度なサイバー攻撃が行われたりする例も増加しています。そのため、AI導入を進める企業にとって、AIセキュリティへの理解と対策は欠かせない課題となっています。

AIの導入については以下の記事でも詳しく説明していますので、ぜひご覧ください。

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AIを導入するメリット・デメリットとは? 日本の導入状況や導入手順を解説

AIセキュリティで重要となる2つの視点

AIに関するセキュリティ対策は、大きく「AIに対するセキュリティ対策」と「AIを活用したセキュリティ対策」の2つに分けられます。どちらか一方だけでは不十分で、AIを安全に運用するためには両方の観点から対策を講じる必要があります。ここでは、それぞれの特徴とポイントを解説します。

Security for AI(AIに対するセキュリティ対策)

Security for AIとは、AIシステム自体が攻撃の対象になることを踏まえ、その安全性を確保する取り組みを指します。AIモデルに誤った情報を覚えさせる「データ改ざん」や、学習データへの不正アクセスなどAIモデルの脆弱性を突いた攻撃による「情報漏洩」などが代表的なリスクです。

AIは膨大なデータを扱うため、一度侵害が起きると業務への影響も大きくなります。そのため、データの保護、アクセス権限の管理、モデルの脆弱性検証など、多面的な対策が欠かせません。

AI for Security(AIを活用したセキュリティ対策)

AI for Securityは、AIの学習能力や自動化技術を活かして、サイバー攻撃の検知や対策を効率化する取り組みです。大量のログデータから異常を瞬時に検知したり、未知の脅威を予測したりすることが可能になります。

人手では対応しづらい高度で膨大なサイバー攻撃に対しても、AIを活用することで、より迅速で精度の高い防御体制を構築できます。サイバー攻撃が高度化する現代において、AIの力を取り入れたセキュリティ強化に注目が集まっています。

参照元:総務省(サイバーセキュリティタスクフォース事務局)|今後重点的に取り組むべき研究開発課題について(5ページ)

AI活用を進める企業が抱えるセキュリティリスク

AIを業務に取り入れることで、生産性向上や業務効率化といったメリットが得られる一方、従来とは異なる種類のセキュリティリスクも顕在化しています。とくに生成AIやクラウド型のAIサービスは、社内外の多様なデータと接続されるため、外部からの攻撃だけでなく、内部の利用方法によっても重大なインシデントにつながるおそれがあります。

ここでは、AI活用を進める企業が押さえておきたい代表的なAIセキュリティリスクを整理します。

外部からの攻撃による情報漏洩

AIツールやそれを支えるシステムそのものが、サイバー攻撃の標的となるケースが増えています。攻撃者は、AIの特性を理解したうえで、より巧妙な手口を用いるようになっています。

たとえば、AIを使って自然な文章を大量生成し、見分けがつきにくいフィッシングメールを送信する手法があります。また、ボットネットと組み合わせることで、DDoS攻撃を高度化・自動化することも可能です。さらに、以下のようなAI特有の攻撃手法も出てきています。

  • AIファジング:AIによって未知の脆弱性を探索する
  • ポイズニング:AIに意図的に誤った情報を学習させ、誤作動を起こさせる
  • プロンプトインジェクション:プロンプトを悪用してシステムの意図しない動作を引き出す

こうした攻撃によって、AIが扱う機密情報や個人情報が漏洩したり、AIの判断結果が不正に操作されたりするリスクが高まっています。

内部からの機密情報や個人情報の漏洩

AIセキュリティリスクは、内部からも生じます。従業員によるAIツールの使い方によって、意図せず情報漏洩が発生するリスクもあります。

たとえば、社外のクラウド型AIサービスに、機密性の高い設計図や契約書の内容、顧客情報などを入力してしまうケースです。サービスの設定や利用規約によっては、入力した情報が学習データとして二次利用されたり、モデルの改善に活用されたりすることがあります。その結果、他者がそのサービスを利用する際、回答の中に機密情報や顧客情報が含まれてしまうかもしれません。または、そのサービスにモデルインバージョン攻撃(AIの応答から学習した元データを復元する攻撃)が行われ、情報が漏洩することもありえます。

さらには、従業員が意図的にプロンプトインジェクションなどの手法を用いて、社内システムと連携したAI経由で機密情報にアクセスする可能性もあります。

誤った情報の拡散

生成AIは、もっともらしい文章を高速に生成できる一方で、事実と異なる内容を含むことがあります。AIの回答をそのまま信じてしまい、検証せずに社内外に共有すると、誤情報の拡散につながります。

たとえば、法令や規制に関する誤った説明を社内マニュアルに反映したり、誤った統計データをもとにしたレポートを顧客に提出したりするケースが考えられます。こうした誤情報は、企業の信用を落とすだけでなく、法的なトラブルに発展するおそれもあります。

AIを業務に取り入れる際には、前提として、AIが生成した情報が必ずしも正しいとは限らないという認識を持ち、「AIの出力は必ず人間が確認する」「重要な判断は一次情報で裏取りを行う」といった運用ルールづくりが不可欠です。

著作権の侵害

AIによるコンテンツ生成は意図せず第三者の著作物や類似したコンテンツが生成される可能性があります。その結果、生成物が著作権侵害とみなされ、企業が責任を問われるリスクがあります。

また、AIの学習データに含まれる著作物の扱いについても、国内外で議論が進んでいるものの、法制度やガイドラインは変化の途上です。企業としては、商用利用の可否やライセンス条件を確認したうえでAIサービスを選定するとともに、生成物の利用範囲や公開方法についても社内ルールを定めておく必要があります。

著作権リスクを軽視したままAI活用を進めると、思わぬタイミングで権利侵害を指摘される可能性があります。AIを用いたコンテンツ生成においても、法令順守とガバナンスの視点が大切です。

AI活用が進む中で企業が行うべき対策

AI活用を安全に進めるには、技術的な対策と制度的な対策を組み合わせ、組織として統一されたルールを整えることが重要です。AI特有のリスクを理解したうえで、自社の利用状況にあわせて多層的なセキュリティ対策を講じる必要があります。ここでは、企業が押さえておきたい代表的な対策を紹介します。

セキュリティ対策の施されたAIツールを導入する

まず押さえておきたいのは、信頼性の高いセキュリティ機能を備えたAIツールを選定することです。

具体的には、不正アクセスや改ざんを防ぐための強固な認証・アクセス制御、監査ログ、データ暗号化などの機能が備わっているかを確認する必要があります。

また、入力したデータが学習に利用されない設定や、企業データが外部に残らない利用形態を選べるサービスを選定することもポイントです。クラウド型生成AIを利用する場合には、提供会社のデータ管理ポリシーやセキュリティ基準を事前に確認しておくと安心です。

AIツールについては以下の記事で詳しく説明されています。

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【最新】AIツールおすすめ8選|生成AIができること・使い分け術も紹介

AI技術を活用したセキュリティツールを導入する

高度化するサイバー攻撃に対処するためには、AIを活用したセキュリティ製品を導入することも有効です。AIを用いることで、膨大なログデータをリアルタイムに分析し、疑わしい挙動を素早く検知できます。

たとえば、異常検知による不正アクセスの早期発見や、過去の攻撃パターンから未知の脅威を予測する機能などがあります。自動化を進めることで、担当者の負担軽減や、対応スピードの向上にもつながります。

人手だけでは追いつかなくなっているサイバー攻撃への備えとして、AIを取り入れたセキュリティ強化を検討しましょう。

従業員にAIリテラシーの教育を実施する

AIセキュリティ対策を効果的に機能させるためには、システムだけでなく「使う人」の理解が不可欠です。従業員がAIのリスクや正しい使い方を理解していない場合、意図しない情報漏洩や誤情報の拡散につながるおそれがあります。

そのため、AIに入力してはいけない情報、AIが生成する情報の取り扱い方、攻撃手法の事例などについて定期的に教育することが大切です。また、プロンプトインジェクションなど新たな攻撃の手口も共有し、リスクへの感度を高めることが求められます。

DX人材の育成については、以下の記事に詳しく説明されています。

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DX人材育成のためにどうすればいい? 事例やポイントを解説

AI活用のガイドラインを策定する

AIを安全に利用するためには、ツールの使い方を統一するためのガイドライン作成が欠かせません。利用目的、利用範囲、禁止事項、情報の取り扱い方などを明確に定めることで、組織全体でリスクを最小化できます。

たとえば、「機密情報は外部AIに入力しない」「生成された文章は必ず確認する」「公開物に利用する場合のチェック手順を定める」など、実務に合わせたルールを記載します。また、著作権やコンプライアンスに関わる注意点もあらかじめ明文化しておくと、トラブル回避に役立ちます。

ガイドライン作成については、以下の記事で詳しく説明されています。

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ビジネスで大切なガイドラインとは? マニュアルとの違いや作成例も紹介

AI活用のガイドライン作成なら「Teachme Biz」がおすすめ

AIを安全に活用するためには、社内での利用ルールを明確にし、全社員が同じ基準で運用できる状態をつくることが重要です。しかし、ガイドラインやマニュアルをゼロから作成し、最新の内容に更新し続けるのは手間がかかります。

Teachme Bizは、こうした課題を解消するマニュアル作成・共有ツールです。画像や動画を使いながら分かりやすい手順書を作成でき、テンプレートを活用することでガイドラインを短時間で整備できます。

まとめ

AIの活用が進む中で、外部攻撃の高度化や内部からの情報漏洩、誤情報の拡散など、AI特有のセキュリティリスクが顕在化しています。安全にAIを導入するためには、「AIそのものを守る対策」と「AIを活用して守りを強化する対策」の両面からアプローチすることが求められます。

また、適切なツールの選定に加えて、従業員教育やガイドラインの整備など、運用面での取り組みも必要です。とくに社内でAIを扱う際のルールを明確にすることで、情報漏洩や誤った利用を防ぎ、企業全体で安全なAI活用を推進できます。

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