AIを導入するメリット・デメリットとは? 日本の導入状況や導入手順を解説

最終更新日: 2024.03.15 公開日: 2024.03.07

AIを導入するメリット・デメリットとは? 日本の導入状況や導入手順を解説

AIの導入を検討しているのであれば、メリットやデメリット、実際の導入プロセスを把握しておくことは不可欠です。本記事では、具体的なメリット・デメリットやAI導入の手順を解説するだけでなく、日本企業のAI導入状況や費用相場についても詳述します。

日本企業におけるAIの導入状況

ビジネスへのAI(人工知能)の導入は、業務の効率化やコストの削減などをもたらし、企業の競争力を高めるものと期待されています。しかし、日本企業におけるAIの導入状況は、全体的にまだ低い水準に留まっています。

総務省情報流通行政局が2022年8月末時点での状況を調査して取りまとめた「令和4年通信利用動向調査報告書(企業編)」によれば、100人以上の常用雇用者がいる企業で、IoTやAIなどのシステム・サービスを「導入している」と回答したのは全体の13.5%に過ぎません(回答企業2,427社)。これは2020年の12.4%(同2,220社)からわずかに増加はしていますが、2021年の14.9%(同2,390社)からは逆に減少しています。「導入していないが導入予定がある」と回答した企業もこの3年間では9.7%から11.5%の間で推移しており、同じく低調です。

さらに産業分類別で見ると、導入率が最も高かったのが金融・保険業の30.8%、次いで情報通信業の21.8%、不動産業の20.2%となっています。最も低かったのがサービス業、その他の8.4%でした。従業員規模別では、従業員数2,000人以上の企業が40.9%と最も高く、300~1,999人までの企業では20%台、100〜299人の企業では9.1%と10%を割っています。

さらにAI研究においても、日本は進んでいるとは言えません。AIやロボットなどのディープテック企業を投資先としている米国のベンチャーキャピタル・Thundermark Capitalが毎年発表している国別AIランキングの2022年版(AI Research Ranking 2022)では、AI研究において日本は10位と、かろうじてトップ10に留まっているものの、2020年は8位、2021年は9位と、この3年間で毎年順位を落としています。
同調査では、先進組織の順位付けもされていますが、トップ50以内に日本の企業や研究機関は入っていません。理研の51位が最高で、69位に東京大学、97位にNTTのわずか3組織がトップ100にランクインしているだけです。いずれのデータも、日本におけるAI研究が他国に比べて相対的に遅れていることを示しています。

(参照元:
令和4年通信利用動向調査報告書(企業編)(34ページ)
情報通信白書令和5年版 データ集(第4章 第9節)
AI Research Rankings 2022: Sputnik Moment for China? | by Thundermark Capital | Medium

AIを業務に導入するメリット

AIを導入することによって、企業には、業務における課題解決、生産性の向上、職場の安全性の向上、売上や顧客満足度の向上といったメリットが期待できます。

業務における課題解決につながる

AIの導入は、業務の自動化・省人化を可能にし、業務効率の大幅な改善を実現します。例えば、データ入力や顧客対応、注文処理などの定型的なタスクをAIが担うことで、従業員はより創造的な業務に専念できるようになります。
さらにAIの導入によって、労働力不足を解消できるだけでなく、人件費・燃料費・保守費など、さまざまなコストを削減することも可能で、業務上の課題解決につながります。

人的ミスを防いで生産性を向上できる

AIの導入は、業務上の人的なミスや事故の発生リスクを低減させるためにも有効です。
AIで自動化すれば、個人のスキルや経験の差は関係なくなり、均一かつ高い品質で業務が遂行されるようになります。例えば、製造業の品質管理や金融業界の取引処理など、属人性が強いと考えられがちな業務や厳密さが求められる業務であっても、すばやく正確に作業が行われるため、生産性の向上を期待できます。

職場の安全性を高められる

AIを活用すれば、職場の安全性を向上させることも可能です。例えば、高所や有害な化学物質を扱う場所など、人間にとって危険な環境での作業をAI搭載のロボットなどが担うことで、労働者の安全を確保できます。製造業では、IoTとAIとを連携させ、生産設備の異常を検知し、大きな事故やトラブルへと発展する前に対処する取り組みも進んでいます。
さらに、ITシステムの監視や施設の入退室管理などにも活用でき、サイバーセキュリティや防犯の面でもAIの導入は効果的です。

売上や顧客満足度の向上につながる

AIを導入して業務の自動化・省人化が進めば、売上の向上に直結するコア業務に人的リソースを集中投下できるようになります。
さらに、ビッグデータを活用したマーケティングにおいても、精度の高い顧客データ分析や需要予測などで、AIは力を発揮します。最近ではチャットボットにAIを組み込んで、カスタマーサポートを強化する動きも顕著です。AIチャットボットで顧客対応を自動化し、24時間365日の対応を可能にすることで、顧客満足度の向上が期待できます。

AIを業務に導入するデメリット

一方、責任の所在が不明確になる、コストがかかる、リスク管理対策の必要性が高まるといった点は、業務にAIを導入するデメリットとして挙げられます。

責任の所在がはっきりしにくい

万が一、AI搭載のシステムやロボットがエラーや事故を起こした場合、製造者に責任があるのか、所有者に責任があるのかの特定は難しいと言わざるを得ません。
例えば、AI搭載の自動運転車が交通事故を起こした場合、事故を起こした責任を問われるのは自動車のオーナーなのか、自動車やAIの製造元企業なのかは、現時点では法的にも線引きは曖昧です。業務にAIを導入する場合、業務上の事故やトラブルに対して、誰がどのような責任を負う可能性があるのかを十分に理解したうえで、しっかりとした対策を取る必要があります。

導入・ランニングコストがかかる

高度なAIを搭載したシステム・サービスを導入するには相応の初期費用が発生します。導入に際しては、まず費用対効果を慎重に検討する必要があります。導入したAIを運用するには、AIに関する深い知識やスキルをもつ人材が必要であり、人件費や外注費なども高額になります。
加えて、例えばビッグデータの収集やシステムの継続的な改善・更新などにもコストは発生します。最新技術が搭載されたシステム・サービスは導入時にも運用(ランニング)時にもコストがかかります。

リスク管理対策の必要性が高まる

AIシステムを有効活用するためには、膨大なデータを用意して、処理・分析させる必要があり、企業は従来以上に多くのデータをネットワーク上で扱うことになります。当然のことながら、サイバー攻撃や情報漏洩のリスクも高まります。万が一、サイバー攻撃に遭い、顧客の個人情報などが漏洩してしまえば、企業としての信用は低下し、多額の補償を迫られるかもしれません。企業としてリスク管理対策を強化することは望ましいことですが、システムや設備の強化、従業員の教育などにはコストがかかります。
さらにAIシステムのトラブルによって、顧客に十分なサービスを提供できなくなるかもしれません。障害発生時の対応計画は事前に策定し、システムのバックアップや代替手段を準備しておくことも重要です。

AIを導入する手順

AIを導入するのであれば、

  1. 何に活用するのかの目的の決定
  2. 業務上の活用範囲の決定
  3. 導入するシステム・サービスの検討
  4. 試験運用
  5. 本格的な運用開始

の順番にそって進めていきます。

1. AIを活用する目的を決める

AI導入の第一歩は、自社が抱える事業・業務上の課題を明確にし、どのような解決方法があるのかを検討することからはじまります。
次に、明確化された問題を解決するのに、AIはどの程度有効なのかを検証し、有効だと判断できれば、具体的に活用する目的を決定します。AI導入の目的が明確でなければ、適切なシステム・サービスを選定することもできません。

2.業務におけるAIの活用範囲を決める

課題が明確になり、活用目的が定まったら、次に業務においてAIをどの範囲で活用するのかを決定します。すべての業務をAIで自動化することは現実的ではありません。従業員が人手で行う業務と、人間よりAIに適している業務とを切り分け、優先順位を付けるとともに、費用対効果も考慮して、AIの活用範囲を決めます。
この過程においては既存の業務フローを可視化する必要があり、AI以外の手段で業務改善を進めるためにも役に立ちます。

3.導入するAIシステム・サービスを検討する

目的と活用範囲が定まり、AIが担当する業務が明確になれば、次は、どのAIシステム・サービスが最適なのかを検討します。
導入候補を大きく分ければ、システムとして提供されているAIソリューションを導入するのか、独自のAIシステムを開発するのかの二つがあります。AIソリューションには手軽さやコスト面・運用面などでのメリットがありますが、フルカスタマイズできるわけではないので、どこまで自社のビジネスニーズに合致しているのかをよく検討する必要があります。
独自のAIシステムを開発して導入する場合には、社内の開発能力や開発にかかるリソースなどを総合的に勘案したうえで、自社開発だけでなく、社外に開発を委託する方法もあります。

4.学習データを収集して試験運用を行う

AIの性能は、学習させるデータの質と量に大きく依存します。課題を解決するために最適なデータを収集し、前処理を行うことによって、AIは必要な要素を自ら分析・学習し、能力を高めていきます。
この過程でAIの運用担当者には、収集したデータをAIに学習させ、試験運用を通じてシステムのパフォーマンスを実用レベルにまで向上させることが求められます。試験運用をする際には、事前にAIシステムと既存のシステムとを連携させておくことも大切です。

5.本格的にAIシステム・サービスを運用する

AIのパフォーマンスが実用レベルに達したら、本格的な運用を開始します。試験運用の段階ではスモールスタートで進め、本格運用に向けて徐々に活用範囲を拡大していくのが一般的です。
本格運用の開始後も、システムのパフォーマンス検証や学習データの追加などの調整を継続して行い、システムを改善していくことが重要です。

AI導入にかかる費用相場

AIを導入する際の費用は、選定したシステムの種類や開発プロセス、導入規模、性能などによって大きく変わってきます。AIチャットボットなどの数十万円から数百万円程度で導入できるものもあれば、製造業で製品の異常検知に使われるAIシステムなどでは、1,000万円を超えるものもあります。さらにコンサルティングや検証など、工程ごとに費用が発生する点にも注意が必要です。

AIの導入にともなう費用負担を抑えるには、補助金の活用やアジャイル開発の採用などが有効です。例えば、経済産業省中小企業庁が管轄している「IT導入補助金」の通常枠では、中小企業や小規模事業者がITツールを導入するにあたって、必要経費の1/2、最大450万円までを援助してくれます。アジャイル開発で段階的に必要な機能の開発・実装を進めていけば、開発プロセスを柔軟に管理し、開発にかかる時間や費用を効果的に抑えることが可能です。

(参照元:補助対象について | IT導入補助金2024

AIの導入に向けて事前準備を徹底しよう

AIの導入効果を高めるためには、事前準備を徹底することが大切です。準備のひとつに、AI運用マニュアルの作成・共有が挙げられます。「Teachme Biz」は、マニュアルの作成や管理共有を簡単に行えるソリューションです。Teachme Bizを提供している株式会社スタディストもAIアシストサポートの開発を進めており、AIによってマニュアルの作成業務を効率化しています。

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