生産年齢人口とは? 定義や減少による影響、世界と比べた日本の推移

最終更新日: 2023.03.07 公開日: 2023.01.28

生産年齢人口とは

国内外における社会情勢の変化は、事業活動の進展や市場の需要動向に多大な影響を与えます。近年、多くの分野で無視できない問題となりつつあるのが、少子高齢化の影響に伴う「生産年齢人口の減少」です。本記事では、生産年齢人口の定義や推移の傾向、現代企業に求められる対策などについて解説します。

生産年齢人口とは?

企業が持続的に発展していくためには、参入市場の動向だけではなく、国内外の社会情勢を俯瞰的な視点から把握しなくてはなりません。人的資源を事業活動に活用する企業にとって、総人口の減少や高齢化率の上昇は無視できない問題であり、このような環境の変化に対して柔軟に対応できる経営体制の構築が求められます。そして、現代の国内企業にとって非常に重要な問題となっているのが、生産年齢人口の推移傾向です。

生産年齢人口の定義

生産年齢人口とは、労働に従事できる年齢別人口を意味する概念であり、日本では15歳以上65歳未満の層を指す経済学用語です。年齢別人口には3つの区分があり、0~14歳の年齢層は「年少人口」、15~64歳は「生産年齢人口」、そして65歳以上の層は「高齢人口」と定義されています。生産年齢人口は国内における労働力の総体といえる概念であり、その増減率によって社会や経済の情勢が大きく左右されます。

たとえば、1980年代後半の日本はバブル経済と呼ばれる時期であり、戦後以降の生産年齢人口は増加傾向にありました。しかし、総務省の調査(※1)によると、生産年齢人口は1995年の8,716万人を頂点に減少し続けており、1991年頃のバブル崩壊に伴って、今なお続く経済の長期低迷期へと突入します。

もちろん、デフレ経済に陥った原因のすべてが生産年齢人口の減少にあるとは限りません。しかし、労働力不足や国内需要の減少、それに伴う経済規模の縮小など、国内の社会情勢に大きな影響を及ぼす要因であると考えられます。

(※1)参照:平成28年版情報通信白書(p.2)|総務省

生産年齢人口と労働力人口の違い

生産年齢人口は就業者と失業者を含む15~64歳の人口層を指し、生産能力の優劣や労働意欲の有無などは考慮されていません。労働への意欲や意思、能力をもつ人口層は「労働力人口」と定義されます。

労働力人口は「就業者」と「完全失業者」の総数であり、15歳以上であれば年齢の上限はありません。したがって、65歳以上で労働に従事している人の場合、生産年齢人口には該当しませんが、労働力人口には含まれます。

まとめると、生産年齢人口は15歳以上65歳未満のすべての人を意味するのに対し、労働力人口は15歳以上で実際に働いている人と働く意思のある人を指す点が大きな違いです。

世界と比べた日本の生産年齢人口の推移

国内の総人口は2008年の1億2,808万人をピークに減少し続けており、それに伴って生産年齢人口も減少傾向にあります。ここでは、世界と比べた国内の生産年齢人口の推移について解説します。

日本の生産年齢人口の推移

先述したように国内の生産年齢人口は、1995年の8,716万人を頂点として減少傾向にあるのが実情です。総務省の「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(※2)」によると、2022年1月時点における国内の生産年齢人口は7,496万人で、1995年のピーク時と比較して約1,200万人の減少となっています。

また、国内の総人口は2008年の1億2,808万人(※3)をピークに減少の一途を辿っており、厚生労働省は「平成28年版労働経済の分析」のなかで、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少によって、国内の人手不足が深刻化していくと予測(※4)しています。

(※2)参照:住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(p.48)|総務省
(※3)参照:平成27年版厚生労働白書(p.4)|厚生労働省
(※4)参照:平成28年版労働経済の分析(p.69)|厚生労働省

世界の生産年齢人口の推移

内閣府が公表した「令和4年版高齢社会白書(※5)」によると、2020年の世界の総人口は77億9,480万人で、総人口に占める高齢化率は年々増加していく傾向にあります。たとえば、1950年には5.1%だった世界の高齢化率が、2020年になると9.3%にまで上昇しており、さらに2060年には17.8%にまで増加すると見込まれています。

世界的な流れとして高齢化が進展していく傾向にありますが、なかでも最も高齢化が進展しているのが日本です。日本の総人口に占める高齢者の割合は29.1%(※6)と世界で最も高く、生産年齢人口ランキングは11位(※6)となっており、米国や中国、インドなどと比較して大きな差が開いています。

(※5)参照:令和4年版高齢社会白書-高齢化の国際的動向(p.6)|内閣府
(※6)参照:世界の生産年齢人口(15歳-64歳) 国別ランキング・推移|GLOBAL NOTE

生産年齢人口が減少している原因

生産年齢人口の減少が加速する背景にあるのは、人口の減少と高齢化率の進展です。少子高齢化の要因はいくつか挙げられますが、なかでも女性の社会進出が大きな影響を及ぼしていると考えられます。女性の社会進出によって、経済的に自立できる人が増加し、結婚の必要性が薄れていく傾向にあるため、未婚化・晩婚化が加速しているのが現代日本の実情です。たとえば、1970年の50歳時の未婚割合(※7)は「男性1.7%」「女性3.3%」であるのに対し、2020年には「男性28.3%」「女性17.8%」と大きく上昇しています。

また、経済的な不安から結婚や出産を躊躇してしまう人が増加しているのも、未婚化・晩婚化を招いている要因のひとつです。日本経済の長期低迷を背景として将来への不安を感じており、近年では結婚という選択を避ける人が増加傾向にあります。たとえば、経済的な事情から結婚したくてもできないというケースが多く、また育児への経済的余裕がないことから結婚を避ける人も少なくありません。能動的に人生の選択として結婚をしないのは良いとしても、結婚が選択肢にあるにも関わらず、できない人がいるのが問題だと言えるでしょう。このような社会的背景が少子高齢化を加速させる要因となっており、それに伴って生産年齢人口の減少が進んでいると考えられます。

(※7)参照元:令和4年版少子化社会対策白書-婚姻・出産の状況(p.12)|内閣府

生産年齢人口減少の影響

生産年齢人口の減少は、国内需要の減少や経済規模の縮小、国際競争力の低下、社会保障制度の給付と負担のバランス崩壊など、社会情勢に多大な影響を及ぼしかねません。このような企業を取り巻く環境の変化は事業活動にも波及し、以下のような影響をもたらす可能性が危惧されます。

労働環境の悪化

企業にとって重要な経営課題のひとつが、労働生産性の最大化です。労働生産性は「労働生産性=産出量÷労働投入量(従業員数×労働時間)」という数式で算出される指標で、従業員1人あたりの生産量や付加価値額を意味します。

人手不足に陥った企業が従来と同等以上の労働生産性を確保するためには、業務の効率化による省人化を図るか、従業員の労働時間を増加させなくてはなりません。後者を選択した場合、時間外労働の増加や休暇取得数の減少といった労働環境の悪化を招き、離職率の上昇によってさらなる人手不足に陥る可能性が懸念されます。

社員モチベーションの低下

生産年齢人口の減少によって人手不足に陥った場合、労働環境の悪化を招く要因となり、組織に属する従業員の労働意欲や貢献意識が失われます。従業員のモチベーション減少は製品やサービスの品質低下につながり、企業価値そのものを下落させる要因となりかねません。

また、人手不足によって書類管理や資料作成といったノンコア業務の負荷が高まると、業績向上に直結するコア業務に投入するリソースが減少します。すると、優れた人材が付加価値を創出する業務に専念できず、組織全体における生産性の低下を招いてしまう可能性が高まります。

他社との競争力の低下

労働環境の悪化によって従業員のモチベーションが減少し、組織全体の生産性が低下した場合、市場における競争力そのものを失いかねません。現代は技術革新の高度化に伴って市場の成熟化が加速しており、物資的な価値に基づく訴求では競合他社との差別化が困難となりつつあります。このような時代に競争優位性を確立するためには、競合他社にはない独自の顧客体験価値を創出しなくてはなりません。しかし、生産年齢人口の減少によって人手不足に陥ると、組織の競争力が低下し、新規事業の開拓や新たな付加価値の創出が困難となります。

生産年齢人口が減少する中で企業がとれる対策

人口の減少と高齢化率の上昇が進む現代日本では、生産年齢人口の減少も加速していくと予測されます。同時に、さまざまな分野で人手不足の深刻化が懸念されるため、いかにして人的資源というリソースを確保するかを考えなくてはなりません。このような社会的背景のなかで、企業が実施すべき対策として挙げられるのが、以下の6つです。

  • 再雇用制度を充実させる
  • 多様な人材を採用する
  • ワークライフバランスの支援を行う
  • 業務量を見直す
  • 業務効率化に取り組む
  • IT技術を利活用する

再雇用制度を充実させる

生産年齢人口の減少によって人手不足が懸念される場合、優れた人材を確保する仕組みや構造を設計しなくてはなりません。その施策のひとつとして挙げられるのが、再雇用制度の充実です。

たとえば、定年退職や出産・育児を機に離職した人材の再雇用制度を充実させることで、多様なワークスタイルに対応でき、さまざまな層の人材を確保できる可能性が高まります。また、業務に精通した経験者や高度な専門性を備えるエンジニア、エンゲージメントが高い人材などを雇用できるため、経営基盤そのものの総合的な強化につながる点が大きなメリットです。

多様な人材を採用する

人手不足という経営課題を補うためには、多様性や変化を肯定的に受け入れる組織体制を構築しなくてはなりません。現代は従業員一人ひとりが備える個性や多様性を受け入れ、戦略的に活用していく「ダイバーシティマネジメント」の重要性が高まっています。性別や国籍、言語などの壁を取り払い、女性や障害者、外国人労働者などの多様な人材を採用することで、新しい時代に即した経営体制の構築が可能です。

また、組織に属する人材の多様性を融合できれば、企業風土の活性化を図るとともにイノベーションの創出にもつながります。

ワークライフバランスの支援を行う

2019年4月に「働き方改革関連法」が施行され、国内のあらゆる企業で労働環境の抜本的な変革が求められています。そして、働き方改革の推進において重要なキーワードとなっているのが「ワークライフバランス」です。

ワークライフバランスは「仕事と生活の調和」を意味する概念で、企業では長時間労働の是正や公平な待遇の整備、時短勤務やテレワークなどの多様な働き方の確立などが求められています。ワークライフバランスの支援は求職者へのアピールにつながるとともに、離職率や定着率の改善に寄与する重要度の高い施策です。

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業務量を見直す

人手不足による労働生産性の低下を補うために、従業員1人あたりの業務時間を増加する企業は少なくありません。しかし、長時間にわたる拘束は疲労回復時間の減少や精神的な負担の増大につながり、かえって労働生産性の低下を招きます。そのため、ワークライフバランスの充実を図るためにも不要な業務を洗い出し、作業の能率化と合理化を図ることで、労働時間の短縮を推進しなくてはなりません。新しい時代に即した経営体制を構築するためにも、テレワークやフレックス制を導入するといった労働環境を見直すプロセスが求められます。

業務効率化に取り組む

生産性は経営資源の投入量に対する産出量の比率であり、労働生産性を向上するためには、従来と同等の労働投入量でより高い成果を創出する、あるいは労働投入量を削減しながら今まで以上の成果を生み出す必要があります。それには、作業・時間・コストという3つの観点からムダを洗い出して能率化し、既存の業務を効率化するプロセスが不可欠です。業務プロセスの効率的を図ることで、労働投入量を削減しつつ従来と同等以上の労働生産性を生み出せるとともに、業務負荷の軽減によってワークライフバランスの充実にもつながります。

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IT技術を利活用する

生産年齢人口の減少に伴う人手不足を補うためには、優れたデジタルソリューションの活用が不可欠です。AIやIoTといった技術革新の活用は、育成コストや作業ミスの削減に寄与し、経営基盤の抜本的な強化につながります。

国内の少子高齢化は今後も加速していくと予測されるため、労働投入量の減少を見据えて戦略的なIT投資を実行し、組織全体における生産性の向上を図ることが大切です。そのためには、DXの実現を目的とする中長期的なロードマップを設計し、デジタル技術の戦略的な活用による組織変革を推進していく必要があります。

まとめ

生産年齢人口とは、15歳以上65歳未満の労働に従事できる年齢別人口を指す概念です。少子高齢化に伴って生産年齢人口も減少していくと予測されるため、企業には人手不足を補うための対策が求められます。業務プロセスの効率化を推進する企業様は、マニュアル作成・共有システム「Teachme Biz」の導入をぜひご検討ください。

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