SDGs(エスディージーズ)とは?企業の取り組み事例と共に詳しく解説

最終更新日: 2022.05.31 公開日: 2021.05.14

sdgs

昨今、ビジネスの世界やテレビ、新聞などのニュースで「SDGs(エスディージーズ)」という言葉を耳にする機会は多いでしょう。日本でもさまざまな企業がSDGsの17目標からマテリアリティ(課題)を特定し、各々の目標に向けて取り組みをスタートしていますが、実際にはどのような活動を行っているのでしょうか。本記事ではSDGsの概要と企業の取り組み事例についてご紹介します。


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目次

SDGsとは?

「SDGs(エスディージーズ)」は、Sustainable Development Goalsの頭文字を1字ずつとった単語で、持続可能な開発目標を意味します。

SDGsは国際目標であり、例えば貧困や飢餓、気候変動、格差是正など国際社会の共通課題を解決し、持続可能でより良い世界を目指すものです。SDGsは2015年9月に開催された国連サミットにおいて、「誰一人取り残さない」を基本理念とし、2030年までの達成を目標に採択されました。

とはいえSDGsは急に登場したわけではなく、「ミレニアム開発目標(MDGs)」というものを前身にしています。MDGsは1990年代の主要な国際会議で採択された国際開発目標と、2000年に国連で採択された「国連ミレニアム宣言」を統合したもの。2015年に達成期限を迎えたため、MDGsの残った課題を継承する形として、SDGsが設定されました。

持続可能性(サステナビリティ)とは?

「国連によって採択された重要な目標」であることはわかっても、範囲が広すぎてSDGsの全容はなかなかイメージしづらいかもしれません。SDGsを理解するためのキーワードとなるのが、「持続可能(Sustainable/サステナブル)」です。サステナビリティとも言われます。

「持続可能である」というのは、私たちの健全な社会生活はもちろん、生物やエネルギー、環境といった地球上のあらゆる要素が、その多様性や生産性を保ったまま活動し続けられる状態である、ということです。

例えば人間が石油資源をこのまま使い続けた結果いつか枯渇してしまうとしたら、それは「持続可能な世界」ではありません。人間の経済が発展し続けても、環境破壊によって生態系が壊れ食糧難に陥るような世界も、やはり「持続可能」とは言えないでしょう。

このようにあらゆる視点から見たときに「持続可能性」を追求すべきだというのがSDGsの考え方であり、だからこそさまざまな課題にバランスよく取り組もうとしているのです。

SDGsの掲げる「17の目標」と「169のターゲット」とは?

SDGsは17の目標と169のターゲット、232の指標から構成されています。大きな軸は社会、経済、環境などですが、これらが抱える課題をより具体的かつ細かに分類し、先進国が取り組むべき課題を明確化しているのです。

「17の目標」の概要

SDGsの17の目標にはそれぞれにアイコンとカラーが決められています。この17のアイコンは文字を使わない情報伝達を目的とした絵文字「ピクトグラム」で作られています。字の読めない人にも伝わるようにという思いから、このアイコンが作られました。
SDGs17のアイコン
参照: SDGsポスター(17のアイコン 日本語版)| 国連広報センター(UNIC)

実際にどのような目標が掲げられているのか、一つずつ見ていきましょう。

貧困をなくそう

世界中、あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせるための目標です。特に子どもの貧困は日本国内においても深刻で、実に7人に1人が貧困状態にあると言われます。
参考:「日本財団 子どもサポートチーム:子どもの貧困対策

飢餓をゼロに

貧困とも密接に絡んでいるのが飢餓の問題です。主に持続可能な農業を促進することで、誰もが食糧を安全に確保し、栄養状況の改善を目指す目標です。

すべての人に健康と福祉を

妊産婦や新生児の死亡率、さまざまな感染症、薬物、交通事故……こうした健康にまつわる問題を解決し、福祉の促進を目指す目標です。

質の高い教育をみんなに

日本では当たり前に受けられる義務教育ですが、世界に目を向けると地域やジェンダーによって、教育には格差が存在します。こうした隔たりをなくし、誰もが公正で質の高い教育を受けられるようにするための目標です。

ジェンダー平等を実現しよう

主に女性を対象として、ジェンダーの平等の達成を目指すものです。人身売買や未成年の結婚、家事・育児にまつわるあらゆる問題において、差別の撤廃を図ろうとしています。
日本は世界経済フォーラムが発表している男女平等度ランキングで順位が低く、まだ男女平等と言い切れません。
参考:「Global Gender Gap Report 2021

安全な水とトイレを世界中に

これもインフラの整った日本では意識しづらい問題ですが、誰もが安価で安全な水を利用できるようにするのも、重要な目標です。

エネルギーをみんなに そしてクリーンに

こちらもいわゆるインフラの問題、そして環境問題の解決を図るための目標です。電気やガスといったエネルギーを誰もが使えるようにするためには、再生可能エネルギーの利用が重視されています。

働きがいも経済成長も

世界経済が成長を続けるには、働き手が働く環境の整備が重要です。労働災害を防ぎ、適正な賃金のもと一人ひとりの経済成長率を維持するといったことのほか、強制労働などへの対策も目標に含まれます。

産業と技術革新の基盤をつくろう

強靭かつ持続可能なインフラを構築した上で、金融サービスの拡充や新技術の導入など、産業そのものの持続可能性向上やイノベーションの促進を目指す目標です。

人や国の不平等をなくそう

現在は国によって経済や社会環境に大きな隔たりがありますが、これらの中で生じる不平等を是正するための目標です。

住み続けられるまちづくりを

こちらはまちづくり――住居や交通、災害などにまつわる目標です。誰もが安全で安価な住居で、快適に暮らせることを目指します。

つくる責任つかう責任

世の中に存在するさまざまな商品・サービスに対し、その消費と生産を持続可能にするための目標です。例えば食料の廃棄や廃棄物による環境汚染の防止、資源の再利用などがテーマとなります。

気候変動に具体的な対策を

近年取りざたされる、異常気象や気候変動による災害などへの対策を目的とした目標です。

海の豊かさを守ろう

こちらは海洋資源――魚や海そのものを保全し、持続可能な形で利用するための目標です。海の生態系に影響を与えないような漁業、海洋汚染の改善などがテーマとなります。

陸の豊かさも守ろう

こちらは陸上の生態系や環境保護を目的とした目標です。特に森林伐採や砂漠化への対策、生態系の保護がテーマとなります。

平和と公正をすべての人に

法制度にまつわる目標です。公正な制度のもと、誰もが司法にアクセスし平等に利用できるようにすることを目指します。

パートナーシップで目標を達成しよう

最後の目標はここまでにご紹介した16の目標を包括的に達成するためのものです。持続可能な開発に向けた実施手段の強化と、パートナーシップの活性化を目指します。
国としてSDGsのための予算の確保、先進国による開発途上国への支援、公平な貿易体制の構築などが必要です。

17の目標に紐付いた169のターゲットと232の指標

先に挙げた「SDGs 17の目標」には、それぞれに細かくターゲットが設定されています。これらを全部合わせると169のターゲットになり、加えてさらに細かく232の指標が設定されています。

「4.質の高い教育をみんなに」を例にご紹介すると、ターゲットは10個あります。その中の一つをご紹介しましょう。

4.質の高い教育をみんなに
ターゲット 4.1 2030年までに、すべての子供が男女の区別なく、
適切かつ効果的な学習成果をもたらす、無償かつ公正で
質の高い初等教育及び中等教育を修了できるようにする。
指標 4.1.1(i)読解力、(ii)算数について、最低限の習熟度に達している
次の子供や若者の割合(性別ごと)
(a)2~3学年時
(b)小学校修了時
(c)中学校修了時

参照:JAPAN SDGs Action Platform | 外務省

こうしたターゲットや指標は、目標の進捗のモニタリング・評価も目的としています。

企業がSDGsに取り組むメリット

日本国内では文部科学省が 「SDGsアクションプラン2019」を発表し、官民問わずSDGsが注目されるようになりました。さらに帝国データバンクの「SDGsに関する企業の意識調査(2021年)」によれば、SDGsに積極的な大企業は55.1%にのぼります。
SDGsは世界各国の政府や自治体が取り組むべきですが、企業が取り組むとどのようなメリットがもたらされるのでしょうか。

ブランドイメージの向上

SDGsへの取り組みは、そのまま「社会に貢献している企業である」という社会的認識につながります。特に自社事業の一環としてSDGsに取り組めば、企業ブランディングに大いに役立つでしょう。

ブランドイメージの向上によりステークホルダーとの関係性が良化すれば、競合他社に対して優位性が生まれ、売上や株価上昇などの好影響も見込めます。

新規事業創出などのビジネスチャンスにつながる

SDGsは単なる寄付やボランティアといった社会貢献活動とは異なります。企業の事業活動そのものが中長期的に見て「持続可能」でなければ意味がないので、ビジネスとSDGsを両立させる必要があるのです。

一企業が全ての目標に取り組むのは難しいため、企業は17の目標から自社にとってのマテリアリティ(重要課題)を特定し、その上で既存事業を変革する、あるいは新規事業を創出するなど新たな取り組みを行うことになるでしょう。
つまり、自社がこれまで取り組んでこなかった領域に、既存アセットやパートナーシップを用いて新たに進出するわけです。これは自社にイノベーションを起こす、大きなビジネスチャンスです。

ESG投資によって資金調達を有利に進められる

SDGsへの取り組みは、ESG投資とも密接に結び付いています。
ESGとは、「E」がEnvironment=環境、「S」がSocial=社会、「G」がGovernance=ガバナンス(統治)を指す言葉です。2006年の「責任投資原則(PRI)」の提唱をきっかけに、投資家は企業を評価する際にESGを重視するようになりました。企業側も原則、ESG情報の開示が求められています。

つまり今後、多くの投資家は売上や利益といった実績だけでなく、環境、社会、企業統治といった観点から投資先を選定するということです。SDGsの目標達成に向けた取り組みが、そのまま投資家からの資金調達につながると考えて良いでしょう。

採用面で有利に働く

現在大学生のSDGsへの認知度は非常に高く、就職活動においても企業のSDGsへの取り組みを重視する傾向があります。ただ単に売上が高い、優れたサービスを提供しているというだけではなく、「社会貢献も追求している」ということが企業としての大きな魅力となり、採用で有利に働くのです。

ブランド的側面以外にも、例えば「8.働きがいも経済成長も」の目標に企業活動を通じて取り組むことができれば、社員のモチベーションアップやエンゲージメントの向上に寄与します。その結果、「働きやすい企業」として求職者の志望度アップにつながるでしょう。

自社のSDGsは何から手を付けるべき?

帝国データバンクの調査では多くの企業がSDGsに意識を向けていることがわかりましたが、逆に言えば大企業ですらまだ50%ほどはSDGsに積極的に取り組めていません。中小企業では当然この割合は大きくなります。
「SDGsについては認知しているが、実際に何から取り組めばいいのかわからない」……これが、多くの企業の本音ではないでしょうか。

そこで以下では、すぐにでも取り組めるSDGsの一例をご紹介します。ただし、本格的なSDGsの取り組みについては自社の企業理念や事業内容を振り返りながら、全社的に検討しましょう。

ペーパーレス化

SDGsの取り組みの一環として、これまで紙で取り扱っていた書類を電子化し、ペーパーレスな働き方を実現する方法があります。紙の書類が不要になることで森林伐採など環境問題に寄与できますし、業務の効率化にもつながります。
確実に効果が出る上、手法としてはITツールを導入し社内制度を整備するなどステップも明確なので、比較的始めやすいのがメリットです。

    <該当する目標>

  • 8(働ききがいも経済成長も)
  • 12(つくる責任つかう責任)
  • 13(気候変動に具体的な対策を)

ペーパーレス化の推進方法については、以下の記事で詳しくご紹介しています。
ペーパーレス化が必要な理由と推進方法をご紹介

働き方改革

ワーク・ライフ・バランスの取れた働き方の実現やテレワークの推進、女性が結婚・出産しても働きやすい環境の整備など、働き方改革への取り組みはそのままSDGsに直結します。
社会貢献という視点を度外視しても、働き方改革は生産性の向上や採用力の強化など企業として取り組むメリットが非常に大きいため、ぜひ積極的に推進しましょう。

    <該当する目標>

  • 8(働ききがいも経済成長も)
  • 5(ジェンダー平等を実現しよう)

働き方改革への取り組み方については、以下の記事で詳しくご紹介しています。
働き方改革とは?基本知識や取り組み方を徹底解説

電気使用量の削減

いわゆるオフィスの節電も、取り組みやすいテーマの一つです。自家発電設備の設置やLED照明の採用、冷暖房設備の温度を適切に運用するなど、取り組み方もさまざまです。
オフィスの設備や使い方を工夫するだけなのですぐに取り組めますし、継続的に行えるのもポイントです。

    <該当する目標>

  • 7(エネルギーをみんなにそしてクリーンに)

SDGsにおける企業の取り組み事例

SDGsの概要を把握できたところで、SDGsの実例について紹介しましょう。国内の企業は、実際にどのような取り組みを行っているのでしょうか。

野村グループ:約300万口座の書面を電子化しペーパーレスに

野村証券をはじめとしたサービスを提供する野村グループは「13.気候変動に具体的な対策を」への取り組みとして、紙の使用量削減に向けて目論見書や報告書、帳票類などの電子化を継続的に推進しています。2020年3月期には2,945,000口座のお客様に送る書面の電子化を達成しました。また、社内では各種申請書や報告書などの紙書類の電子化を推進。全営業担当者にタブレット端末を配布するなど、紙の使用量削減に取り組んでいます。

参照:ペーパーレス&リサイクルの取り組み | NOMURA
参考:ペーパーレスの本当のメリットと目的とは?おすすめツールや事例も紹介

イケア・ジャパン:女性管理職の比率50%を実現

スウェーデン発祥で、世界最大の家具量販店であるイケアでは、「5.ジェンダー平等を実現しよう」に積極的に取り組んでいます。フラットな組織基盤づくりを目指して、男女平等に配慮した制度や社内風土づくりに注力した結果、女性管理職が約50%を占めています。日本の女性管理職比率は12%ですので、非常に高い数値です。

参照:イケアに学ぶ「SDGs」へのコミットメントと、持続可能な企業づくり

セブン-イレブン・ジャパン:食品ロスを削減する「エシカルプロジェクト」を推進

「12.つくる責任つかう責任」の達成に向けて、セブン-イレブン・ジャパンは2005年5月から食品ロス削減に対して「エシカルプロジェクト」を全国展開しています。
その内容は、販売期限が近づいたおにぎりやパンなどの対象商品を電子マネーnanacoで購入したお客様に、販売価格の5%分のボーナスポイントを付与するというもの。「すぐに食べるのであれば商品棚の手前から商品を取る」という意識付けを推進しています。

参照:エシカルプロジェクト|セブン‐イレブン~近くて便利~

パーソルホールディングス:笑顔に応じて寄付を実施

総合人材サービスを提供しているパーソルホールディングスでは、「8.働きがいも経済成長も」の観点で、2020年からグループビジョンである「はたらいて、笑おう。」に紐付けたSDGs関連団体への寄付を実施しました。
具体的な内容は、オフィスに「笑顔測定器」を設置し、従業員がカメラに対して笑顔を向ける回数ごとに10円を寄付するというもの。自社のビジョンと結び付けたユニークな取り組みで、社員のエンゲージメント向上やメンタルヘルスケアなどの効果を見込むとともに、アンケート調査などを通して「笑顔」と「はたらく」の相関関係の調査を行っているそうです。

参照:パーソルグループ、はたらく笑顔が寄付につながる新しい取り組み「Work, and Smile for Donation」開始~

アスクル:サプライチェーン全体のCO2排出量削減のため100%再エネ化を宣言

中小企業を対象にオフィス用品の通信販売事業を提供しているアスクル。同社は「2030年CO2ゼロチャレンジ」の実現に向け、サプライチェーン全体でCO2排出量削減に取り組んでいます。
事業運営の100%再エネ化を目指すイニシアチブ「RE100」にも加盟しており、2022年4月時点で、グループが運用する施設での再エネ利用率は63%を突破。2030年までにグループ全体での100%再エネ化を宣言しています。

参照:“2030年CO2ゼロチャレンジ”の実現に向けて再生可能エネルギ―と電気自動車の導入を進めています!
参照:アスクル、グループ全体の再エネ利用率が63%に

まとめ

今回は、SDGsの基本情報や具体的な取り組みについて詳しく紹介してきました。記事の内容を要約すると、以下の通りになります。

まとめ

  • 「SDGs(エスディージーズ)」は、Sustainable Development Goalsの頭文字を1字ずつとったもの。日本語では「持続可能な開発目標」
  • 持続可能な開発目標とは、地球や国際社会が抱える問題を解決するための万国共通の国際目標
  • SDGs の目標は17項目からさらに細分化し、169のターゲット(目標)と232の指標がある。
  • 企業のブランディング戦略やイノベーションの創出、ESG投資による資金調達、採用力強化の観点から企業がSDGsに取り組むメリットは大きい

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