製造業の生産性向上とは?具体的な推進ステップとメリットをご紹介

最終更新日: 2022.07.19 公開日: 2019.07.12

製造業の生産性向上とは?
少子高齢化による働き手不足や、製造拠点の海外移転、はたまた海外メーカーの日本への進出など、製造業をめぐる社会情勢はめまぐるしく変化しています。そんな中で製造業にとって「生産性の向上」は、会社の将来を左右する最重要項目と言っても過言ではありません。

実際に利益を増大して会社の存続を確実なものとするため、生産性の向上を図ってみてはいるものの「何から手を付けたらいいのかわからない」「具体的な取り組みのプロセスが分からない」という方もいるのではないでしょうか。

今回は、製造業における生産性の向上の定義やメリットに加え、生産性向上を進める具体的な方法もご紹介していきます。
生産性向上のために今すぐ取り組めるSOP改善のおすすめポイントや役立つツールもご紹介しますので、ぜひチェックしてみてください。

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なぜ製造業は生産性向上に取り組むべきなのか?

「生産性向上をしなければならない」という感覚は、製造業にかかわる多くの人が抱いていることでしょう。その理由として挙げられるのが、冒頭でも軽く触れたような労働人口の減少やビジネスのグローバル化といった社会的背景です。

日本は世界的に見ても労働生産性が低いと言われており、公益財団法人日本生産性本部の調べによれば、2020年時点で日本の製造業の労働生産性は主要31カ国中16位です。少子化によって今後さらに人手不足が加速化すると、企業として窮地に立たされてしまう可能性があります。
企業として国際的な競争優位性を保ち、限られた人材で最大限の利益を上げるためには、生産性向上が急務なのです。
(参考)公益財団法人日本生産性本部「労働生産性の国際比較サマリー

製造業における生産性向上とは?

まず生産性の意味とは、企業が投入した経営資源に対し、どれだけの成果を生み出せたかという効率の程度をいいます。
投入資源に対し、生み出された成果の割合が大きいほど生産性が高いといい、小さいほど低いといいます。
生産性
製造業の場合、「成果」の部分が従業員がどれだけ製造できたかを示す「製品の生産量」となります。そして「生産資源」は、製品を製造するために必要な原材料や従業員の人件費などを指します。
生産性向上という観点からすると、「生産資源」は「従業員の数」や「製造に掛かった時間」などの人的な資源のみと考えるのが良いでしょう。

つまり製造業の場合は「費やす人的資源に対して製品の生産量の比率を上げること」が生産性向上となります。

効果事例に見る製造業の生産性向上によるメリット

こちらをみてほほ笑む人の画像
生産性向上を行うと利益が増大するだけでなく、以下のような数多くのメリットを得られます。製造業において対策を行う価値を十分に理解しておきましょう。

品質を担保できるようになる

生産性向上によって作業スピードを速め従業員の持つ技術のバラつきを平準化すれば、製造した製品の品質を一定に保つことができます。

品質の担保によって顧客は安心して商品を購入できるようになるため、企業として信頼性と顧客満足度が向上します。ひいては、ブランド力アップにもつながるでしょう。

競争が激化する中でも利益を増大できる

生産性向上により製品や原材料の無駄・ロス、あるいは作業ミスなどがなくなれば、生産量が増大します。
これらによって従来よりも利益がアップすれば、企業として国内外で競争力を持つことにもつながるでしょう。

コストを削減できる

作業効率化によって従業員の労働時間に対する生産性が向上させれば、人件費を下げて大幅なコスト削減を図れます。作りすぎや在庫のロスの低下もコスト削減につながるでしょう。
コスト削減によるメリットはいくつかありますが、大きいのは人材不足への対応です。
また、残業時間が減ることで従業員のエンゲージメントやモチベーション向上を狙えますから、「やる気があり、生産性の高い人材」の育成にもつながります。もちろん、利益増も見込めます。

製造業の会社で生産性向上を進める具体的なステップ

製造業において生産性の向上を行うためには、さまざまなステップを踏んで着実に進んでいく必要があります。計画を立てずに、ただ闇雲に改善を行おうとしても上手くいきません。綿密な計画の上で実行に移していきましょう。

1.生産性を向上させる目的を明確にする

ホワイトボードに文字を書く人の画像
製造業において、「生産性を向上させる」ということは、前述のように企業の存続をかける意味でも非常に重要です。しかし、実際にどの部分の効率化を図って生産性を向上させるのか目的を明確にして行動に移さないと、生産性を効率良く上げることはできません。

製造業において生産性を上げるために必要なのは、例えば製品を製造するための従業員の数や、費やした時間などです。こういった要素を踏まえ、生産性を向上させる目的として「人件費を抑える」を掲げて、その明確な目的に向かって効率化を図るのも良いでしょう。

そのほか、以下のような目的が考えられます。

  • 利益を増加させる
  • 顧客満足度を高める
  • 品質を一定化する

明確な目的があれば、どういった対策を行えば良いのかがはっきりとし、会社としても行動に移しやすくなります。

2.業務の見える化でボトルネックを見つける

次に業務の見える化を行い、どこにボトルネックが存在するのかを把握しましょう。製造業の現場においては、作業ミスや手順の不明確さなど業務が滞る部分があるため、問題点をはっきりさせるのです。

ITツールを用いてピッチダイアグラムを作るなど、作業内容をデータ化することで一連の業務プロセスの「見える化」が可能となります。
見える化すべき内容は、例えば以下のような項目です。

  • 作業時間
  • 品質
  • 設備故障
  • 従業員ごとの歩留まり率

自社の製造工程に合わせて、何が、あるいは誰がどの場面でボトルネックになっているのかを明確にしましょう。このとき、見える化したデータは従業員が日常的にチェックできる状態にすることが大事です。また、生産性向上の妨げになっている従業員に対してヒアリングを行うのも有効です。

3.生産性向上の具体的な施策を決定する

業務プロセスを見える化したら、発見したボトルネックから具体的施策を検討しましょう。
例えば、業務プロセスの見える化によって「配置換えをした従業員の作業スピードが遅い」という問題点が見つかったとします。
ヒアリングをした結果、「現在受け持っている担当部署が、作業者の不得意分野である」ということが明らかになったとしたら、その問題を解決するために「社員の意見を尊重する」という方向で生産性向上に舵を取ることができます。
この場合は会社の都合で無理に配置替えを行うのではなく、1on1などを通して各従業員の適性に合った配置を検討するといった施策が考えられます。

4.施策に応じて適したITツールを選定する

ステップ3でご紹介したように、ボトルネックは人員配置によって解決できることがありますが、ほかにもさまざまな施策が考えられます。

  • 業務マニュアル(SOP)の改訂
  • 従業員のスキルアップ研修
  • 業務フローの一部自動化
  • ワークスタイルの変更(フレックスタイムや週休3日制度の導入等)

もし「マニュアルが文字ばかりでわかりにくく覚えづらい」ということがボトルネックの原因であれば、業務マニュアルを改訂に取り組む。技術にバラつきがあり品質が一定にならないのであれば、スキルアップ研修を行うといった具合です。
ただし、仮にマニュアル改訂を行うにしても、手作業ではそれだけで膨大な時間がかかってしまいます。施策実行のために多大なコストがかかってしまっては本末転倒ですから、施策を決定したらスピーディーに行う方法がないか、AIやRPA、IoTをはじめとしたITツールの活用を模索してみましょう。

5.目標数値の設定を行う

生産性向上の施策・利用ツールを決定したら、次に具体的な目標数値を設定しなければなりません。この際に気を付けることは、「実現可能な数値を設定すること」です。目標数値は、あくまでも無駄をなくして効率化を図った結果の数値です。ただ大幅な生産量増を期待して設定してしまうと、従業員を酷使するだけの結果となってしまいます。
さらに、例えばマニュアルを作成して全社で共有することで従業員の作業スピードの均等化やスピードアップにつなげるなら、マニュアル作成という方法で効率化を目指すことを従業員に説明、理解をしてもらってから、数値設定を行うことが重要です。説明もなしに突然目標数値だけが設定された場合、従業員の士気が下がり、それに連動して生産性も下がってしまう恐れがあります。

また、生産性向上は決して一朝一夕にできるものではありません。短期的目標も必要ではありますが、取り組み全体としては長期的な目線を持ち、成果が出るまで時間がかかることを踏まえて実施したいところです。

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製造業の生産性向上の鍵を握るのは「多能工化」

製造業で汎用的に使える、生産性向上のためのステップをご紹介してきました。ここからは、現在製造業の多くが抱えている課題を解決し、生産性向上を実現するための共通のキーワードとして挙げられる従業員の「多能工化」について解説します。

人材不足に見る「多能工化」の必要性

多くの製造業の企業にとって人材不足が課題であることは、前の項目でも説明した通りです。人材が限られた状況の中では、多能工化――すなわち、従業員の「マルチスキル化」が求められます。一人の人材がさまざまなスキルを習得し、複数の業務を担える状態だと考えるとわかりやすいでしょう。

人手不足の中では、作業の標準化によってベテラン・新人を問わず全ての従業員が一定のスキルを発揮できるようにする必要がある点でも、多能工化は注目されています。また、多能工化は従業員の欠勤などイレギュラーなシーンでも対応しやすくなるメリットがあります。

多能工化の成功にはSOP(標準作業手順書)の改善が効果的

従業員の多能工化を目指すのであれば、新人・ベテランを問わず誰でもスムーズに多様な業務にあたれるよう、SOP(標準作業手順書)の整備が効果的です。SOPはマニュアルのことも指します。

わかりやすいSOPのポイントは、以下の通りです。

  • 文章が簡潔でわかりやすく、初心者にもやさしい
  • 画像や動画が適切に使われており視覚的に理解できる
  • 図解やフローチャート、リストなどを駆使して整理されている
  • 作業内容がステップで記載されている

SOPを作り直したら実際に運用し、利用しながらわかりづらいところがあれば更新して……といったように、適宜PDCAを回してアップデートを繰り返すのがポイントです。

SOPの改善には生産性向上につながるメリットが多い

わかりやすいSOPで作業手順が従業員にスピーディーに伝わるようになると、そのほかにも数多くのメリットを実感できるでしょう。

例えば作業スピードがアップするのはもちろん、ミスやロスを低減できますし、結果として従業員の安全性も向上するでしょう。熟練工が新人を指導するために必要な時間が削減され、浮いた時間を生産のためにあてられます。

また、変化のスピードが速い現代において設備やシステムの高度化は必須になってきますが、そのために作業手順が変わったときも、社内浸透させやすくなります。

多能工化について解説した記事はこちら
製造業で多能工化に取り組むなら?鍵は「業務標準化」と「マニュアル化」

マニュアル・手順書作成には「Teachme Biz」が便利

SOPの改善が生産性向上にメリットがあるとしても、「画像を用意したり動画を撮影したりするのは面倒」「そもそもわかりやすいマニュアルづくりのノウハウがない」といった懸念があるかもしれません。
そんなときに活用を検討していただきたいのが、ビジュアルSOPプラットフォームの「Teachme Biz」です。ビジュアルSOPプラットフォームを用いることで、テキストだけでなく画像や動画を効果的に使った「誰でも簡単に内容を理解できる手順書」を簡単に作成することができます。
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