業務の平準化とは? 意味や重要性、平準化を実現する具体策

最終更新日: 2023.08.09 公開日: 2023.03.24

業務の平準化とは?

会社を見回したとき、必死で働いている従業員と、余裕がありそうな従業員が混在していることはないでしょうか。もし、そうした光景に見覚えがあるなら、その企業は業務の平準化に取り組まなければならない可能性があります。

本記事では、主に会社の経営層の方を対象に、業務の平準化とは何かや、なぜ重要なのかなどを解説します。


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「業務の平準化」の意味とは

業務の平準化とは、特定の従業員や時期に業務量が偏って集中してしまうのを防ぎ、なるべく均等な負担で業務を遂行できるようにすることです。

詳しくは後述しますが、業務の平準化ができていない状態は、いわゆる「ムリ・ムダ・ムラ」が生じている状態です。特定の従業員や時期だけ忙しいというムラは、特定の従業員(時期)だけムリをしており、他の従業員(時期)のリソースを活かしきれていないというムダを生みます。

特定の従業員だけが仕事を抱えてしまっている、あるいは逆に暇そうにしているという状態を見て、「あいつは熱心(怠惰)だから」というように問題を個人的なものに矮小化してしまっているケースも多いのではないでしょうか。しかし、従業員のそうした状態を許してしまっているのは会社の責任として捉えるべきであり、組織的に改善へと取り組む必要があります。

業務の標準化とは

「業務の標準化」というよく似た概念もあります。業務の標準化とは、業務のプロセスや方法を従業員間で統一し、誰もが同じような成果をあげられるように取り組むことです。例えば、業務内容をマニュアルに落とし込んで従業員に教育することは、業務の標準化を達成するための代表的な手法として挙げられます。

業務の平準化と標準化は密接に絡み合った関係です。つまり、業務の標準化ができていないということは、特定の従業員にしかできない仕事があることを意味します。そして、その従業員の責任や負担は必然的に大きくなり、業務の平準化ができていない状態へとつながっていきます。そのため、業務の平準化と標準化は基本的に並行して取り組んでいくことが必要です

業務の平準化も標準化も、まずは業務の可視化から取り組み、最終的には業務効率化や従業員の負担軽減などの成果を挙げていくことが期待されます。

属人化の解消とは

業務の平準化および標準化に取り組む際に課題になることのひとつとして、「属人化の解消」という問題があります。そもそも属人化とは、特定の担当者にしか対応できない業務がある状態のことです。「あの仕事は~さんがいないと分からない」「~さんがいないと仕事が回らない」といった状況があったとしたら、そこで属人化が生じている可能性は高いでしょう。属人化の解消とは、このような状態をなくすことを意味します。

特定の人物の能力や努力、人脈などに業務が依存した状態は、企業にとって軽視できない潜在的なリスクです。もしもその人が急に仕事を休んだり退職したりすれば、その仕事は回らなくなってしまいます。
また、他の従業員がその仕事の中身を知らないということは、その人がミスや不正をしても、誰も気づかないという事態にもなりかねません。もちろん、その人個人の負担も過大になりやすくなってしまうでしょう。

そのため、業務の平準化や標準化によって、たとえ担当者が急に不在になっても組織や業務に致命的な穴ができないように、属人化の解消に取り組むことが重要です


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業務平準化が重要な理由

業務平準化が重要な理由は、業務平準化ができていない場合に数々のデメリットが発生するためです。もしも、ここで紹介するような事例に心当たりがあるという場合は、業務の平準化を検討する必要があります。

業務に悪影響が及ぶ

業務が平準化されておらず、特定の担当者に過度な負担がかかっていると、その担当者の業務効率が低下してしまい、ミスの増加や納期の遅延など、仕事に悪影響が出やすくなります

また、もしもその仕事が属人化してしまっていた場合、状況はさらに深刻です。その担当者がいよいよ切羽詰まって誰かに頼ろうとしても、周囲の同僚は仕事の内容をほとんど知らないため力になれず、業務が停止してしまう場合もあります。

このような状況では、顧客や取引先の信頼を勝ち得るような仕事をするのは難しく、顧客離れなどの損失を出す恐れがあります

業務の進行に遅れが生じる

業務の平準化や属人化の解消がされていないと、業務の進行がさまざまな面で遅れがちになります。たとえば、属人化している業務においてその担当者が何らかのミスをしたとしても、周囲の人はそのミスに気づきにくくなります。結果、ミスが放置されてしまい、大きなトラブルが生じてからようやく問題に気づくということにもなりかねません

また、仕事の中身が分からないということは、その仕事の正しい評価もできないということになります。そのため、属人化した業務に関して、その担当者の評価が不明瞭になってしまうのもデメリットです。

業務の引継ぎに手間がかかる点も見逃せません。担当者が急に仕事を休んだり退職したりした場合、残された同僚は手探りでその仕事をこなさなければなりません。その結果、業務の質や速さに悪影響が出ます。

従業員が休みづらくなる

従業員が休みにくくなるのもデメリットのひとつです。多くの業務や属人化した業務を抱えている従業員は、自身が仕事を休んだ場合の穴を心配して、有給休暇の申請などを出しにくくなります。もちろん、有給休暇の申請は従業員に許された権利ですが、周囲の迷惑を考えて取りにくさを感じてしまう人は多いのではないでしょうか。

有給休暇以外にも、体調がすぐれない場合でも無理をしてしまったり、残業を続けたりすることも考えられます。このような状況が続けば、心身ともに非常に疲れてしまうでしょう。場合によっては、過労や精神疾患による長期休業や離職などの深刻な事態が生じる恐れもあります。

人件費がかさむ

人件費がかさむことも無視できない点です。先述のように、一部の担当者のみに負担が偏っていると、さまざまな要因で業務は停滞しやすくなります。企業内の多くの業務は、他の人との連携で成り立っているものです。そのため、ある人の仕事が遅れていると、他の人の仕事に無駄な待ち時間が発生してしまうというケースが起こりえます。

場合によっては、急ぎの仕事を就業時間中に終えられず、残業せざるを得なくなってしまうこともあるでしょう。その結果、会社は無駄に多くの残業代を支払うことになってしまいます。また、待ち時間によって貴重な人的リソースを無駄にしてしまっていることも見過ごせない点です。

特定の従業員に負荷が集中する

平準化できてないと、特定の従業員のみに業務量が過度に発生することになります。こうした業務量のばらつきが、その従業員に不公平感を与え、モチベーションの低下などを引き起こす恐れもあります。また、特定の従業員にのみ業務が集中している状況は、他の従業員にとって、自分の時間や能力を活かしきれていないとも感じられ、転職などを考える可能性も否定できません。

サービスの質が下がる

業務平準化がされていない状況は、顧客側にとってサービスの質が低下したように捉えられてしまいます。たとえば、無駄な待ち時間の発生によって納期を長引かせてしまったり、担当者が不在で対応してもらえなかったりといった事態が発生しかねません。また、属人化によるミスへの対処が遅れると、顧客にも何らかの不利益をもたらすリスクがあります。

業務平準化を実現する具体策

では、上記のようなデメリットを避けて業務平準化を実現するには、どのような取り組みをすればいいのでしょうか。以下では、業務平準化の実現に役立つ具体策を紹介します。

業務量を把握する

業務平準化に先んじて行う必要があるのが、各従業員の業務量を把握することです。現状がどうなっているのか客観的に把握できていなければ、いくら解決策を考えてもピントの外れた方法になってしまいます。

したがって、業務平準化を実現するには、最初に現状の業務を誰がいつどのようにこなしているのかを徹底的に洗い出し、現状把握に努めることが重要です。業務の偏りが可視化されたら、それを従業員間で同等になるように振り分けていきます。

簡単なことから手をつける

業務の可視化によって問題を特定できたとしても、一度に大掛かりな変更をしようとするのは避けるべきです。急激な変化に現場の従業員がついていけない恐れがあり、変化の規模が大きければ大きいほど失敗したときのリスクも高くなってしまいます。

そのため、まずは特定の部門や領域に絞って簡単なことや緊急度が高いことから手をつけ、そこで成功体験や課題の発見・改善のサイクルを積み上げながら、徐々に運用の範囲を広げていくことが重要です。小さなことでも着実に成果を積み上げていくことで、従業員の協力も得られやすくなります。

マニュアルを作成する

業務の平準化を推進するには、マニュアルを作成することも重要です。特定の従業員しかその業務をこなせないという状態は、業務量に偏りを生む一因になります。したがって、マニュアル化を通して業務内容を可視化し、誰もが理解しやすいようにすることは非常に重要です。

マニュアルが用意されていれば、たとえ担当者が急に休んだとしても他の従業員が何も分からず手を付けられないということにはなりません。マニュアルを読むことで要点が理解できるようになっていれば、業務の引継ぎや新人教育も効率的に行えるようになります。

できるものは自動化する

さまざまなITソリューションを活用して、できる範囲で仕事を自動化していくのも重要な取り組みです。詳しくは後述しますが、たとえばRPAというITツールを導入すれば、パソコンを使った比較的単純なルーティン業務をソフトウェアに代行させられます。

機械やソフトウェアで自動化した仕事は、人間が手作業で行うよりも作業時間を短縮できる上、ヒューマンエラーによるミスや作業品質のブレなども抑えることが可能です。自動化によって人間が行うべき業務量そのものを減らせれば、人員の補充などをしなくても従業員の負担を大きく減らせるでしょう。自動化できる業務を抽出する上でも、最初に業務の可視化に努めることは重要になります。

定期的に改善を実施する

施策が功を奏して業務の平準化を達成できたとしても、そこで油断してはいけません。業務の偏りがない状態を長期的に維持していくためには定期的な見直しを実施し、そこで見つけた課題を改善していく取り組みが必要です。このような見直しと改善のサイクル(PDCAサイクル)を継続的に素早く回していくことで、課題発見と解決のスピードが向上し、自社の成長を促進できます。

業務平準化に使える主なツール

業務平準化を実施する際は、ITツールの活用が鍵となります。ここからは、業務平準化に役立つ主なITツールを紹介します。

マニュアル作成ツール

先述のように、業務平準化においては業務内容の可視化ができるマニュアルの作成が重要になります。そして、その際に役立つのがマニュアル作成ツールです。これを使えば、システム上で簡単にマニュアルの作成・共有を行えます。

たとえば「Teachme Biz」というマニュアル作成ツールでは、テンプレートに沿って画像と文章を入れていくだけで、業務内容をステップごとに解説したマニュアルを誰もが作れます。作成したマニュアルはスマホやタブレットで共有できるので、どこからでも簡単に確認できるのも優れた点です。

タスク管理ツール

業務量を可視化する際には、タスク管理ツールを利用するのがおすすめです。タスク管理ツールでは、各従業員が抱えている仕事内容や進捗状況をシステム上で可視化できるため、業務量の偏りを評価しやすくなります。他の部署や担当者が何を行っているのかも確認でき、部署間や担当者間の情報共有を促進することが可能です。

代表的なタスク管理ツールとしては、「Backlog」というサービスが挙げられます。Backlogはウェブ制作などの開発現場のほか、大手広告代理店などでも使われているタスク管理ツールです。シンプルで直感的なデザインが特長であるため、誰でも使いこなせます。Backlogでは、ガントチャートをはじめ、さまざまな形式で作業計画や進捗状況を可視化できるため、各従業員が抱えている作業を把握するのに最適です。

RPA

業務の自動化を実現できれば、業務負担は大きく改善されます。その際に役立つのがRPAです。RPAを活用すれば、データ登録やシステム管理などの定型的なバックオフィス業務を自動化できます

RPAの代表的なサービスとしては「Blue Prism」が挙げられます。Blue Prismは金融業界や保険業界、医療業界など数多くの分野で活用されている信頼性の高いソリューションです。金融業などの機密性が高い業界でも使用されていることから分かるように、Blue Prismは高度なセキュリティ機能が特長のひとつで、安全に自動化の運用管理ができます。

まとめ

業務の平準化とは、業務量が特定の人や時期に偏らないように均一にする取り組みを指します。業務の平準化を実現するには、業務の標準化や属人化の解消も併せて行うことが重要です。まずは現状の業務状況を可視化することからはじめ、スモールスタートで徐々に改善を進めていきましょう。

業務の平準化を実現するには、マニュアル作成ツールやタスク管理ツール、RPAなどのITソリューションの活用が効果的です。本記事で紹介したサービスなどを利用しながら、ぜひ対策に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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