KY活動とは? 進め方・活動表の記入例・ネタ切れを防ぐ方法

最終更新日: 2024.06.10 公開日: 2024.06.07

KY活動とは? 進め方・活動表の記入例・ネタ切れを防ぐ方法

KY活動は、業務上の事故やトラブルを未然に防ぎ、職場の安全性を高める重要な取り組みです。本記事では、KY活動の概要、KYTやヒヤリハット、リスクアセスメントとの違い、具体的な進め方、KY活動表の記入例、そしてネタ切れを防ぐ方法について詳しく解説します。職場の安全対策にご関心のある方は、ぜひご覧ください。

KY活動(危険予知活動)とは?

KY活動とは、職場や作業現場で発生する恐れがある労働災害やトラブルを未然に防ぐための取り組みです。KY活動という名称は、「K=危険」「Y=予知」の組み合わせに由来しています。

KY活動では、職場に潜む危険を従業員同士で話し合い、危険なポイントについて互いに確認します。次いで行うのが、その危険に向けた具体的な対策の決定と、注意すべきチェック項目やその日の行動目標の設定です。その上で、一人ひとりが指差し呼称を行って確認を徹底し、安全な業務遂行を目指します。こうしたKY活動は建設・製造・医療など、さまざまな業界で取り入れられています

KY活動とKYTの違い

KY活動と関連性の深い概念として「KYT(危険予知トレーニング)」も存在します。これは、従業員の安全意識を高め、KY活動を職場へ適切に浸透させるための訓練です。この訓練では、イラストを用いたり、実際に作業を行ったりしながら危険を予知する能力を養います。詳しくは後述しますが、KYTの方法は「KYT基礎4ラウンド法」として標準化されています。

参照元:KY活動|厚生労働省 ※P1

KY活動とヒヤリハットの違い

ヒヤリハットとは、「ヒヤリとする」「ハッとする」を組み合わせた造語で、「危うく重大な事故につながるところを寸前で気づけた(回避できた)」という実際の出来事を指します。これに対してKY活動は、事故を未然に防ぐための活動を指す点が違いです。ヒヤリハットが起こったという事実は、何らかの危険要因の存在を示します。そのときは無事で済んだとしても、次にどうなるかはわかりません。

そのため、KY活動の実施にあたっては、このヒヤリハットの予防も視野に入れることが重要です。どのような業務や状況でヒヤリハットが起きやすいのか把握できれば、事故や災害につながる恐れのある潜在的なリスクの特定に結びつき、より的確なKY活動の実施に役立ちます。

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KY活動とリスクアセスメントの違い

KY活動は、リスクアセスメントと並行して進めることが推奨されます。リスクアセスメントとは、職場に存在するさまざまなリスクを洗い出し、その影響度や頻度、対策の優先度などを評価するプロセスです。これに対してKY活動は、危険性を把握し、指差し呼称などの具体的な対策を通して事故を未然に防ぐことを目的にした取り組みである点が違いです。

つまり、リスクアセスメントは、KY活動における「危険性の把握」に焦点を絞って精緻化した取り組みと捉えられます。KY活動にリスクアセスメントの手法も取り入れることで、危険性をより正確に把握し、活動の効果を高められます。

KY活動の進め方

KY活動をスムーズに実施するためには、既存のフレームワークを活用するのがおすすめです。そこで以下では、KY活動の基本的な進め方として「基礎4ラウンド法」と「1人KY」の進め方を紹介します。

行動目標を分けて決める「基礎4ラウンド法」

基礎4ラウンド法は、KY活動を4つのステップ(ラウンド)に分けて順序よく進めていく方法です。各ラウンドで行う具体的な作業内容は以下の通りです。

1ラウンド. 現状の把握

最初に行うのは現状の把握です。この段階では、職場や現場に潜んでいる問題点について、リスクの種類や大小を問わず網羅的に明らかにすることが求められます。そのため、問題を見落とさないようにできるだけ多くの従業員で話し合い、過去に体験したトラブルやヒヤリハット、また今後懸念されるリスクを徹底的に洗い出し、リスト化しなければなりません。問題点をわかりやすく共有するにあたっては、危険な箇所や状況をイラストや写真などで示すことが役立ちます。

2ラウンド. 本質の追究

現状の把握を行ったら、次は洗い出した危険が「なぜ危険なのか」「どのように危険なのか」「どのくらいの頻度で発生するのか」など、問題の深堀りをしていきます。このプロセスを経ることで、対応すべき問題の優先度も自然と浮かび上がってくるはずです。最優先に対策すべき問題は◎、それに次ぐ問題には〇など、危険性や発生頻度に応じてわかりやすく印をつけましょう。この段階でも従業員同士で意見を出し合い、認識を十分に共有することが重要です。

3ラウンド. 対策の立案

リスクの分析が済んだら、今度は優先度順に具体的な対策を決めていきます。この段階では、対策をひとつに限定する必要はありません。従業員間で自由に話し合い、「あなたならどうする?」といった仕方でさまざまな意見を出し合うことが重要です。

ただし、自社で実現できない対策や「注意する」などの曖昧な対策ばかりが出てきても仕方ないので、話し合いにあたっては対策の実現可能性と具体性の2点を意識してもらうようにしましょう。

4ラウンド. 目標の設定

最後の段階では、立案された対策をもとに具体的な行動目標を設定します。目標は、「作業前には毎日、○○の安全装置をチェックする」などの具体的な内容として設定することが重要です。複数の対策が挙がっている場合は、効果の大きさや実行のしやすさなどに従って優先順位を明確にし、すぐに実施すべきものや必ず実施しなければならないものを絞り込みます。これにより、KY活動の効果を最大限に引き出し、より迅速に職場の安全性を高めることが可能です。

作業者が単独で行う「1人KY(一人危険予知)」

担当者が作業開始時に単独で行うKY活動を1人KYと呼びます。グループで行うKY活動も大切ですが、実際の作業は一人で行うことも多いため、1人KYは従業員が事故やトラブルから自分の身を守る上で非常に重要です。この活動を通じて従業員個々が危険への感度を高め、危険な行動を取らないようにできます。

始業前の点検

1人KYでは、まず始業前に作業環境に危険がないか確認します。声に出して危険箇所を指差し確認することで、視覚と聴覚の両方で自身の注意力を喚起することが可能です。例えば、「安全装置よし!」というように、チェック項目を具体的に声に出しながら確認しましょう。一人での確認作業は見落としなどが生じやすいので、チェックすべき項目を記した自問自答シートを作り、それに沿って確認するのがおすすめです。

指差し呼称

次に、作業で予測される危険を踏まえた行動目標を立て、指差し呼称を行います。指差し呼称は具体的でわかりやすい内容にすることがポイントです。例えば、以前に床に置かれていた道具や資材に足を引っかけたことがあるなら、「動線の安全確保」などを行動目標に設定しましょう。その上で、作業範囲に余計な障害物がないように整理・確認し、「動線確保よし!」などと指差し呼称する流れです。こうした取り組みを着実に行うことで、危険なポイントや守るべき安全行動を再確認できます

なお、こうした指差し呼称は習慣化することが重要ですが、惰性で形だけ何となくやっている状態に陥らないように注意しましょう。そのためには、リーダーや同僚が巡回し、ときには一緒に声を出して作業者の気を引き締めることが大切です。

KY活動表の記入例

KY活動の実施に際しては「KY活動表」を作成して活用するのがおすすめです。KY活動表とは、その日の作業内容や現場で注意すべきリスクと対策(行動目標)などを記入するチェック用紙です。KY活動の運用においては、このKY活動表の提出・確認・フィードバックを軸に行っていきます。

KY活動表の記入項目はニーズに合わせて自由に設定して構いませんが、抽象的なものや実態にそぐわないものだと効果がありません。無料のテンプレートがインターネットで公開されているので、そうしたものを活用したり参考にしたりすることをおすすめします。KY活動表に記入する主な内容は以下の通りです。

 

  • 作業日
  • 作業内容
  • 各作業工程における危険なポイント
  • 上記の危険に対する具体的な対策
  • 当日の安全目標
  • 会社名(グループ名)
  • 作業員数
  • 記入者の署名欄など

 

危険なポイントに関しては、注意すべきことが明確にわかるように「危険要因」と「その結果が生じる現象」の2つを記載することが重要です。例えば、「無理な姿勢での作業によりドリルが回転する」「電動工具の漏電で感電する」などが挙げられます。そうすることにより、「適正な姿勢の維持」「アースを確保する」といった形で危険防止対策を具体化できます。

KY活動でのネタ切れを防ぐ方法

KY活動を継続する中で、よく問題として挙げられるのが「ネタ切れ」です。導入当初は多くの危険項目が挙げられるのでネタ切れは起こりにくいですが、対策を講じていくうちに目立つ危険が減少し、ネタ切れに直面することがあります。本当に危険がなくなったのであればともかく、実際にはKY活動がマンネリ化し、潜在的な危険に対して従業員が再び鈍感になっているだけの場合も多々あるので注意が必要です。このような事態を防ぐためには、以下のような対策が役立ちます。

重要性を認識・共有する

KY活動のネタ切れやマンネリ化を防ぐには、まずその重要性を従業員全員が認識・共有することが欠かせません。特に従業員の入れ替わりが多い現場では、新人に対してなぜKY活動を行う必要があるのかという点に関する丁寧な説明を怠りがちなので注意が必要です。もちろん、ベテランでもKY活動がマンネリ化・形骸化してしまうリスクは否定できません。そこで、各従業員の気を引き締めるためにも、KY活動について定期的に重要性を共有したり、提出されたKY活動表へのフィードバックをしたりする機会を設けることをおすすめします。

こうした作業には手間がかかりますが、マニュアルにKY活動の意義を記載するほか、KY活動表の提出やフィードバックにITツールを活用することで負担を減らせます。また、危険やその対策などの報告をしやすい環境づくりは、KY活動のネタを増やすことにもつながります。

ヒヤリハットを分析して取り上げる

KY活動でネタ切れが発生している場合、先に紹介したヒヤリハットを取り上げるのも手です。経験したヒヤリハットを各従業員(あるいは各拠点)が報告する仕組みの構築によって、注意すべき事柄やその対策のストックを蓄えることができます。前触れもなく大きな事故が起こることはそう多くありません。往々にして大きな事故の背後には、複数の危険要因や、「今回は大丈夫だったから」とその場しのぎで見過ごされてきた無数のヒヤリハットがあるものです。「今回無事だったのはたまたまだ」と問題を直視し、ヒヤリハットの分析と対策を行うことは、KY活動を成功させるために欠かせない心構えです。

マニュアルから探してみる

現場で使用されている作業マニュアルや安全手順も、KY活動のネタを見つけるための有益な資料です。作業マニュアルには基本的な作業手順や安全対策が示されているのが通例ですが、実際の現場ではその通りに作業が行われていないことも多々あります。このギャップを埋めるために、マニュアルと現場の具体的な状況を照らし合わせ、なぜ想定されていない手法が採られているのか分析してみましょう。例えば、マニュアルに記載されている安全手順が実際には守られていないとしたら、その理由と対策を明らかにすることで、KY活動に取り上げるべき新たなネタを見つけられます。こうした見直し作業は、マニュアルのブラッシュアップを図るためにも重要です。

まとめ

KY活動は、職場の安全性を高めるために欠かせない取り組みです。KY活動の実施にあたっては基礎4ラウンド法を活用し、ヒヤリハットの分析やマニュアルの見直しなども行うことでネタ切れを防ぎやすくなります。

また、業務の安全性を高めるためには、マニュアルの整備によって作業手順や安全対策の共有・標準化を徹底することも効果的です。マニュアル作成ツール「Teachme Biz」を導入することで、マニュアルの作成から共有、運用までを簡単に行えるようになります。マニュアルを活用しながらKY活動を進める際は、ぜひ「Teachme Biz」の導入をご検討ください。

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