製造業で重要な不良率とは?目安や改善に向けた対策方法

公開日: 2025.01.29

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製造業においては、いかに効率よく品質のよい製品を製造するかが重要なポイントです。そのためには、まず生産工程の現状を把握しなければなりません。そこで理解しておくべきなのが、不良率です。この記事では、不良率の概要や活用法、不良率改善のための対策法などについて詳しく解説します。

不良率とは製品の総生産数に対する不良品の割合

製造業における不良品とは、製造品質が設計品質を満たしていない製品のことです。例えば、以下のようなものを指します。

  • 商品本来の目的と機能を果たさないもの
  • 外観上に著しい汚れや傷、破損があるもの
  • 良品と比較して明らかに性能が異なるもの

これらは、設計、製造、輸送、いずれかの段階で発生する可能性があります。メーカーは品質を保証するため、こうした不良品の割合を減らさなければなりません。

そこで重要となる指標が、製品の総生産数に対する不良品の割合を意味する「不良率(Defect Rate)」です。不良率が高ければ高いほど、メーカーは生産コストの増加や顧客満足度・ブランドイメージの低下といった事態を招くことになります。

不良率を表現する「PPM」

不良率を求める際、重要な単位が「PPM(Parts Per Million)」です。高品質な製品を追求する際に役立つ単位で、100万分の1を意味します。

このPPMの数値によって、工程全体における大まかな品質管理の状態を把握できます。大量生産をする際は、特に有効な指標です。

歩留まりとの違い

歩留まりは、製造された製品のうちで品質基準を満たした割合のことです。つまり、歩留まりは良品を意味します。歩留まりの数値(歩留まり率)が高ければ高いほど、製造プロセスが良質だということです。歩留まり率は以下の計算式で求められます。

    【歩留まり率=(実際の生産量/投入した原料量)× 100%】

PPMとの主な違いとしてまず挙げられるのは、測定対象です。PPMが品質(不良品の割合)を測定するのに対し、歩留まりは生産効率(原料の利用効率)を測定します。また、PPMは製品の品質向上を目的とする一方、歩留まりは生産プロセスの効率化を目的とします。

両者は、どちらかだけが重要なわけではありません。どちらも意識しながらバランスよく管理することが大切です。

製造業における不良率の目安

本来であれば、不良率は0%を目指すことが理想的ですが、それは現実的な目標ではありません。むしろ、0%を追求することで作業者に過度な緊張を与えてしまい、逆効果になってしまうリスクもあります。そのため、実際には現実的な許容範囲を目標値とすることが多いです。

この許容範囲の設定において用いられる単位がσ(シグマ)です。σは、データのばらつきを数値化して表す統計指標である、標準偏差を意味します。

一般的に、製造業では3σや6σを目標としていることが多いです。3σは、1,000個の製品において発生する不良品が3個未満であることを意味します。つまり、99.7%の製品が良品だということです。6σは、100万個の製品において発生する不良品が3個程度であることを意味します。具体的には、およそ99.9997%の製品が良品だということです。

それほど安全性が重要視されない製品では、3σ程度を目標とするのが一般的です。しかし、自動車部品のように安全性が重要になる場合は、6σレベルが目標とされています。

不良率・PPMを求める方法

不良率の計算方法

不良率は、以下の計算式で算出できます。

    【不良率=(不良品の数/総生産数)×100】

例えば、1,000個の製品を製造し、20個の不良品が出たとします。その場合、不良率は以下のようになります。

    【(20/1,000)×100=2%】

また、1,500個の製品を生産し、そのうち25個が不良品だった場合の不良率は、次の通りです。

    【(25/1,500)×100=約1.7% 】

PPMの計算方法

PPMは、以下の計算式で算出できます。

    【PPM=(不良品の数/検査された製品の総数)×1,000,000】

例えば、3,000個の製品を製造し、15個の不良品が出た場合は、以下のようになります。

    【(15/3,000)×1,000,000=5,000PPM】

また、3,000個の製品を製造し、そのうち60個の不良品が出た場合のPPMは、次の通りです。

    【(60/3,000)×1,000,000=20,000PPM】

なお、不良率(%)からPPMへの変換も可能です。その際の計算式は以下の通りです。

    【PPM=不良率(%)×10,000】

例えば、不良率が3.5%の場合、PPMに変換すると次のようになります。

    【3.5%×10,000=35,000PPM】

これはすなわち、100万個の製品あたり35,000個の不良品が発生するということです。

不良率が高くなってしまう原因

ヒューマンエラーが起きている

不良率が高くなる原因のひとつは、ヒューマンエラーです。ヒューマンエラーの主な要因には、以下のようなものがあります。

  • 不注意:作業中の集中力低下や見落としなど
  • 疲労:長時間労働や過度のストレスによる、判断力や作業精度の低下
  • コミュニケーション不足:作業指示の誤解や情報共有の不足による誤った作業
  • 教育・訓練不足:適切な知識やスキルの不足
  • 思い込みや慣れ:作業に慣れすぎることによる重要な確認作業の省略など
  • 作業環境の問題:整理整頓されていない職場や不適切な照明といった作業環境の悪さ

これらの要因により、作業員や検査員が誤った判断や操作を行い、結果として不良品が増加してしまいます。例えば、機械の設定ミスや部品の取り付け間違い、検査項目の見落としなどです。

作業手順や材料の確認が足りていない

作業手順書が誤っていたり不明確だったりすると、作業員は正しい手順で作業を行えません。工程におけるルールの不備も、品質管理が適切に行われない要因になります。手順書の見落としや検査ミスによって、不良品が見逃されるリスクについても注意が必要です。

また、材料に傷や汚れがある場合、最終製品の品質に影響を与えることはいうまでもありません。材料の成分が不適切であったり、強度が不足していたりすると、製品の性能や耐久性に問題が生じてしまいます。さらに、適切な材料の調達と検査が徹底されていないと、不良品の発生リスクも高まります。

設備環境が適切に整備されていない

設備環境が適切に整備されていないと、製造ラインや機器の不良による不良品の増加を引き起こすリスクが高まります。また、古くなった設備やしっかり保守されていない機器では、正確な加工や組立てを行えません。

保守計画も重要なポイントです。適切な保守計画の欠如は、設備の整備不良を引き起こす主な要因となるからです。以下のような状態にある場合、設備が整備不良になる危険性があるので注意しましょう。

  • 定期的な点検や保守作業不足
  • 整備担当者への適切な訓練の不足
  • 保守や修理作業に関する予算の制約
  • 適切なデータ管理と監視の不足

不良率を改善するための対策

教育体制を整える

作業ミスや検査漏れを防ぐには、作業員や検査員への適切な教育が不可欠です。まず、製造工程の標準化に向けて、フローチャートなどを用いながら作業の流れを整理します。また、具体的な手順や注意点を記載したマニュアルを作成し、定期的な研修を通じて最新の技術や情報を共有します。

さらに、作業員の評価とフィードバックを行い、改善点を指導することでスキル向上を促します。特定の作業を一定のスキルを持つ人だけが担当できる認定制度を導入するのも効果的です。これらの教育体制は継続的に見直し、マニュアルの更新を含め、常に最新の状態を維持することが重要です。この取り組みによって、不良品の発生を抑えることが可能になります。

作業環境を整える

作業員の集中力を高めてミスを減らすためには、適切な作業環境が必要です。定期的な機械や設備のメンテナンスはもちろんのこと、環境の改善にも取り組みましょう。

作業環境を考える際には、物理化学的側面と人間工学的側面から考えるのがおすすめです。物理化学的側面は照明や騒音、温度などです。以下のような対策を検討しましょう。

  • 作業エリア全体の照度均一化や、調光機能を備えた照明の導入
  • 遮音壁のような防音設備の導入
  • 適切な冷暖房設備の設置とメンテナンス

一方、人間工学的側面は作業スペースや作業姿勢などです。以下のような改善策があります。

  • 5S活動の導入
  • 作業環境で不安を感じる要素などについて、アンケートを実施する
  • 操作部分の色分けやラベリング

集中して作業できる環境の整備は、作業効率の向上につながります。その結果、不良率の改善も期待できます。

管理体制を整える

適切な管理体制は、製造プロセスの問題を特定し、迅速に解決するための基盤です。まず、各工程の責任者や担当者を明確にし、自覚と責任を持たせることが重要です。特に品質管理部門に専任の責任者を設けることで、品質管理の一貫性を確保できます。

次に、製造工程を可視化するためにシステムを活用し、進捗状況や工程の情報を一目で把握できるようにします。経営層だけでなく、現場の作業員も状況を共有することで、全体の課題を認識し、改善に取り組むことが可能になります。また、工程管理システムを導入することで、不良率の管理やデータ処理を効率化し、人為的なミスを減らすことができます。

さらに、定期的なミーティングを通じて、進捗や問題点を共有し、チーム内のコミュニケーションを強化することも重要です。これにより、問題の早期発見と迅速な解決が可能となり、製造プロセス全体の効率と品質を向上させることができます。

原材料や仕入れ先を見直してみる

不良品の原因が材料不良である場合は、原材料や仕入れ先を見直すことが必要です。まず、現在使用している材料の品質を詳細に評価し、不良の原因となる欠陥や問題点を特定することから始めます。また、仕入れ先を多様化し、単一の供給元に依存しない体制を整えることで、より高品質な材料を確保できる可能性があります。

さらに、仕入れ先を選定する際は、品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)のバランスを慎重に検討することが重要です。このQCDバランスを考慮することで、品質向上に加え、コスト削減や納期短縮も同時に達成できる仕入れ先を選ぶことが可能になります。

加えて、市場動向や技術革新を踏まえ、材料や仕入れ先を定期的に見直すことも欠かせません。これにより、不良率の改善だけでなく、製造原価の削減も期待できます。ただし、コスト削減を優先するあまり品質を犠牲にしないよう、常にQCDのバランスを意識しながら、最適な選択を行うことが大切です。

4Mの変化・変更の管理を徹底する

4Mとは、品質不良の原因となる以下の要素を指します。

  • Man(人)
  • Machine(機械・設備)
  • Material(材料)
  • Method(方法)

これら4Mの変化や変更は品質不良の発生につながりやすい一方で、発生を事前に把握することが難しい場合があります。

そのため、4Mの管理には注意が必要です。例えば、4Mに関連する意図的な変更や予期せぬ変化を把握する「変化点管理」が有効です。この管理手法では、変更前後の状況を比較し、品質にどのような影響があるかを評価します。また、材料の変更が作業手順や機械設定に与える影響を事前に分析し、リスクを特定して対策を講じることも欠かせません。

さらに、4Mに関連する変更情報を関係部署間で共有し、新しい作業手順や注意点を作業員に周知徹底することで、コミュニケーションの強化を図ります。定期的に4Mの状態を評価し、潜在的な問題を事前に特定する仕組みを整えることで、品質不良のリスクを抑えることができます。

4Mについては、以下の記事でも詳しく解説しています。併せて参考にしてください。

関連記事:品質管理の4Mとは?6Mとの違いや変更管理の目的・方法など

品質管理やAI・IoTなどのシステムを活用する

ヒューマンエラーを完全に防ぐことは困難であるため、AIやIoTを活用したシステムの導入を検討することが有効です。例えば、IoTセンサーやカメラを活用してリアルタイムでデータを収集し、それをAIが解析することで、製品やプロセスの異常を即座に検出する仕組みを構築できます。このようなシステムは、問題が発生する前に予防的な対応を可能にし、品質向上と生産効率の向上を実現します。

さらに、AIを活用した不良品検知システムは、従来の方法では見逃されがちな微細な異常も捉えることができます。これにより、不良品の発生率を大幅に低減できます。また、収集したデータを基に分析を行うことで、科学的根拠に基づいた意思決定が可能になり、不良率の低下だけでなく、生産プロセス全体の最適化も期待できます。

不良率の低減にはマニュアルの整備が不可欠!作成には専用ツールがおすすめ

マニュアルを作成すれば、指導内容や業務内容の標準化が可能です。そのため、製品の品質を一定レベルに維持できます。しかも、注意点や具体的な基準をマニュアルに明記すれば、不良品の発生を未然に防げます。不良率低減に取り組むのであれば、まずはマニュアル作成に取り掛かりましょう。

手作業でのマニュアル作成は時間と手間がかかる

メリットの多いマニュアル作りですが、通常業務と並行して進める必要があるため、時間が不足して作業が進まないことがあります。その結果、計画段階で挫折したり、途中で作成が止まってしまったりするケースも珍しくありません。

また、マニュアルのクオリティ担保も課題として挙げられます。せっかくマニュアルを作成しても、そのクオリティが低ければ現場で活用されません。問い合わせが増えることで、逆に効率が下がってしまう可能性もあります。マニュアルの内容を常に最新の状態に維持することも大変です。

ツールを使えば効率よく質の高いマニュアルが作れる

そこでおすすめなのが、マニュアル制作ツールの導入です。これらのツールを活用すれば、テンプレートや自動フォーマット機能を使って簡単かつ迅速にマニュアルを作成することができます。また、画像や動画を手軽に挿入できるため、視覚的にわかりやすい高品質なマニュアルを作るのも容易です。
さらに、クラウドベースのツールを使えば、複数のメンバーがリアルタイムでマニュアルを編集・閲覧できるため、チーム全体での効率的な共有が可能になります。また、バージョン管理機能により変更履歴を追跡できるため、情報の更新や修正も簡単で、常に最新の内容を維持できます。

このように、マニュアル制作ツールを活用することで、時間やコストを削減しながら、質の高いマニュアルを効率的に作成・管理・共有できるようになります。

まとめ

不良率は、生産効率を図る指標のひとつです。不良率はヒューマンエラーや作業工程の確認不足など、さまざまな要因で上昇します。低減のためには、作業環境や管理体制の整備、生産効率を上げるためのツール導入などが有効です。工程の標準化やマニュアル作成に取り掛かるのであれば、簡単に高クオリティなマニュアルを作成できるツールの導入を検討しましょう。

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