BPO事業とは? アウトソーシングとの違いや導入メリットを簡単に解説

最終更新日: 2023.10.03 公開日: 2023.03.23

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近年、深刻な人手不足の影響により、さまざまな業界で「BPO」へのニーズが高まっています。多くの企業が導入しているBPOとは、一体どのようなものなのでしょうか。本記事では企業経営者の方向けに、BPO事業の概要やアウトソーシングとの違い、BPOを導入するメリット・デメリット、導入における注意点などについて解説します。

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BPO事業とは?

少子高齢化に伴い労働人口が減少し、多くの企業で人手・人材不足が深刻化しています。人手が足りずに各社員の負担が増えれば、業務の非効率化や生産性の低下につながりかねません。そこで、人手不足を解消する方法として注目されているのが「BPO事業」です。

そもそもBPO(Business Process Outsourcing:ビジネス・プロセス・アウトソーシング)とは、自社の業務プロセスを外部委託することを意味します。このBPOをサービスとして提供するビジネスをBPO事業と呼びます。

BPOでは、一部の業務だけでなく部門単位での委託もできます。自社の不得意な分野や重要度が低い分野について、専門性が高い外部企業に委託すれば、社員は重要な業務に集中できるようになります。

アウトソーシングとの違い

アウトソーシング(Outsourcing)とは、企業が一部の業務を外部に委託したり、業務遂行に必要な部品を外部から調達したりすることです。BPOはアウトソーシングの一形態であり、業務の外部委託という点は共通していますが、相違点もあります。

一般的にアウトソーシングでは、委託する業務に業務プロセスは含まれません。対して、BPOの業務範囲・対象は広く、業務プロセスの企画設計から実施、効果分析や業務効率化の実現まで委託できます。

また、アウトソーシングでは一時的な委託が多いのに対して、BPOでは継続的な委託も可能です。

BPOを導入するメリット

BPOを導入することで、以下のようなメリットを得られます。

メインの業務を強化できる

前述の通り、人員が不足している企業では各社員にかかる負担が大きくなり、重要な業務に注力できません。BPOを導入すれば、ノンコア業務を一括して外部委託できます。優先度が低い業務を外注することで余裕が生じ、業務負担の大幅な軽減が可能です。

これにより、利益に直結しやすい業務に人員や資金を投入しやすくなり、企業のメイン業務を強化できます。BPOによって人員不足が解消されれば、業務効率化生産性向上が見込め、企業の収益向上優位性の確保につなげられます。

スペシャリストのノウハウが活かせる

BPO導入によって、不得意な分野やノウハウがない業務にも対応可能です。

BPO事業者は得意分野や専門領域を掲げており、スペシャリストを登用しています。蓄積したノウハウや自社にないリソースを活用することで、業務品質の向上が見込めます。スペシャリストが業務を専任することで、ミスが軽減され、トラブル時の対応もスムーズかつ迅速に行えるようになるため、顧客満足度や企業への信頼性向上につながります。

さらに、BPOによって社員の不安や負担の解消も可能です。分野によっては、システムや制度が刻々と変化するため、常に情報収集して対応し続けなければならない場合もあります。BPOを導入すれば、各分野のスペシャリストが適切に対応してくれるので、自社の社員の心配や不安が解消され、業務に集中できるようになります。

人件費を調整できる

人件費やシステム費などの固定費は、企業の収益が減った場合も生じ続けます。経費の中でも人件費は大きな割合を占めるため、赤字の要因になりかねません。BPOを導入すれば、一部の人件費を変動費として扱えるため、コスト削減が可能です。人件費調整により経費に余裕が生じれば、より柔軟な経営戦略の策定や重要なプロジェクトへの資金投入につながります。

また、専門性が高くスキルを有した人材の採用や育成には、コストが必要です。BPOによって専門的な業務を外注すれば、自社における人材採用や育成が不要になるため、そうした負担が軽減されます。

BPOを導入するデメリット

BPOには、メリットだけでなくデメリットも存在します。導入によってどのようなデメリットが想定されるのか、把握しておきましょう。

業務に関するノウハウ蓄積が難しくなる

BPOでは外部に業務を委託するため、自社にノウハウを蓄積させにくくなります。

業務に関するノウハウやナレッジは、企業にとって重要な知的財産です。専門的な業務を外注し高度なパフォーマンスを実現しても、自社の社員に知識・経験が蓄積されなければ、長期的にはデメリットとなります。自社においてノウハウの共有ができなければ、競争の優位性確保も難しくなり、機会損失につながるでしょう。

さらに、BPOをやめた場合には、自社の社員ですべての業務を行わなければなりません。一定期間外注していた業務を再び自社で行うにあたり、以前の方法が通用しないおそれがあります。完全に外注していた業務の場合、自社にその業務を遂行できる人材がおらず、システム構築から行わなければなりません。そうなれば、膨大な手間やコストの発生が予想されます。

そのほか、人材やノウハウが不足していると不測の事態に対応できないため、業務停滞を招く可能性もあります。

業務の状況把握が困難になる

BPOによって、業務の引継ぎや状況把握が難しくなりやすいというリスクがあります。

自社で行っていた業務を外部委託する際は、引継ぎのための準備が必要です。また、自社と委託業者間の引継ぎに加え、委託した業務内容について、自社の社員間で適切な引継ぎをする必要もあります。

引継ぎ後には、委託業者の担当と業務内容・体制や進捗報告の頻度について綿密な打ち合わせを行い、双方の認識に齟齬がないようにしましょう。業務の実態や進捗状況を正確に把握できるような仕組みや、委託業者との信頼の構築が重要です。

自社が委託した業務の状況を把握していない場合、トラブル発生時に対応できないおそれがあります。トラブル発生後に、システム上の問題が明らかになることも珍しくありません。トラブル防止のために委託業者がとっている対策や作業履歴の有無について、事前に詳細を確認しておきましょう。

情報漏洩などのセキュリティリスクがある

BPOにおいて、委託業者に顧客情報や社員情報、財務情報などの重要な情報を提供する場合があります。そのため、情報漏洩などのセキュリティリスクがある点に注意しましょう。

委託業者から情報が流出した場合、自社に影響が及ぶおそれがあります。被害の範囲や程度によっては、社会的責任を問われかねません。そうなれば企業への信用は失墜し、経営にも多大な悪影響が及ぶでしょう。十分なセキュリティ対策が講じられた業者を選定することが大切です。

失敗しないBPO導入の流れとポイント

BPOを成功させるためには、適切な自社分析・業者分析が重要です。望ましいBPO導入の流れと、押さえるべきポイントを理解しましょう。

【1. 自社分析】委託する業務をしっかり選定する

BPOの導入にあたっては、委託すべき業務の見極めが重要です。単に委託すればよいわけではなく、業務に関わる現状の課題や委託の目的を明確にする必要があります。自社の業務内容を整理し、以下の基準をもとにして、委託する業務の分析・選定を進めましょう。

  • 企業収益につながるコア業務か
  • 自社独自の業務プロセスか

自社のコア業務を切り出し、外部委託することは考えられません。ノンコア業務の場合は、BPOによって効率化できます。しかし、現在はコア業務ではない場合でも、のちにコア業務になることも想定されます。ノウハウを蓄積して自社サービスとしたい業務は、BPOの対象から外しましょう。

自社特有の手法を用いるプロセスや強みがある業務の委託は難しく、外注による効果が望めないため対象外です。

BPOに向いている業務

BPOに向いている業務として、総務・人事・経理・マーケティングの4つが挙げられます。それぞれの業務内容とメリットを押さえましょう。

○総務:来客対応や電話受付、書類の作成・管理、備品の管理や郵便の集配、社内イベントの企画運営、社員の福利厚生など
総務部門においてBPO向きなのは、オフィスに常駐して行う業務です。書類作成や受付業務など定型化しやすい業務が多く含まれますが、各部署の連絡・調整といった多くの役割を担います。プロセスごと一括委託すれば、大幅な効率化が期待できます。

○人事:労務管理、社員の採用(募集・面接・決定)や評価、給与計算や人材育成など
人事部門にBPOを導入することで、自社にないノウハウやリソースを活用できます。人材募集・派遣に強みがある業者に委託すれば、目的の人材を獲得しやすくなり、自社にないメソッドによる人材育成も可能です。人材採用にかかるコスト削減にもつながります。

○経理:経理データ処理、取引先への請求書発行、支払い業務、予算管理、売掛金・買掛金管理など
経理部門では総務部門と同様に、定型化しやすい業務が多く含まれます。特に経理処理は煩雑になりがちであり、BPOによって外部委託すれば、繁忙期の人員増員などが不要になりコスト削減も可能です。経理のスペシャリストに業務を任せることで、制度やシステムの改正に対応しやすくなり、自社社員による不正も防ぎやすくなります。

○マーケティング:顧客管理や市場動向調査など
総務や経理などのオフィス業務だけでなく、マーケティングもBPO化が可能です。現状の課題を洗い出し、改善案の提示から運用サポートまで行います。マーケティングのスペシャリストのノウハウ活用により、自社で行うよりも有効な戦略を立てられるでしょう。

【2. 業者分析】委託する業者を見極める

BPO導入において、委託業者は自社の業務に大きな影響を与えます。業者選びを誤ると、不要な時間やコストが生じるリスクがあるため、注意が必要です。業者選びの際は、自社のニーズとの合致やレスポンスの速さ、セキュリティ対策のレベルといったポイントを見極めましょう。

自社のニーズに合っているか

まず、自社のニーズに合った委託業者なのかを確認する必要があります。さまざまな業者がBPOサービスを提供しており、専門・得意分野も業者ごとに異なります。

いかに優れた実績を掲げていても、自社の委託したい業務と関わりがなければ意味がありません。委託する業務に関わる実績が豊富であり、自社の業務内容と合致する業者を選びましょう。

ホームページなどに記載されている実績だけでなく、業務をこなす速度やパフォーマンスについても確認が必要です。見積もりを依頼する際に業務の詳細を伝え、業者の対応を判断材料にするのも有効です。また、コストパフォーマンスやサポート体制、信頼できる業者かという点も吟味しなければなりません。

さらに、委託業者の企業規模が適切かどうかを確認しましょう。企業規模が大きい業者では、対応可能な業務範囲が広い傾向にあります。将来的に、より広範囲の業務を委託する可能性を見越して、幅広い業務に対応している業者を選ぶのがおすすめです。

レスポンスが迅速か

営業時間の合致やレスポンスの速さについても確認が必須です。委託業者によって、対応可能な時間帯や業務は異なるため、自社の営業時間に対応可能な業者を選ぶ必要があります。特にコールセンター業務をBPO化する場合は、休日や夜間の対応について詳細を確認しましょう。

委託業者からのレスポンスの速さは、業務に大きな影響を与えます。レスポンスが遅い業者に依頼すると、BPO化が進まず状況把握も満足にできません。トラブル時には、平常時よりも迅速なレスポンスが求められます。

BPO導入前に、業者のレスポンスや対応スピードの速さについて調べることが重要です。見積もりや問い合わせ時の返答などから判断し、適切な速度でレスポンスしてくれる業者を選びましょう。

セキュリティ対策が万全か

前述の通り、BPOにはセキュリティリスクが存在します。情報漏洩などの被害を防ぐためにも、セキュリティ対策が万全な委託業者を選ぶことが必要です。委託先のセキュリティ対策やポリシー、データの保管・保存場所を確認しましょう。併せて、情報の取り扱いには厳格な規則を定め、状況に応じて機密情報の再委託禁止などの制限を設けることも大切です。

また、下記のマークや認証の取得状況も選定基準となります。

  • プライバシーマーク(個人情報の適切な取り扱いをしている事業者を評価)
  • ISMS認証(情報セキュリティマネジメントシステム)

重要な情報を預けられる委託業者なのか、綿密な調査を行ったうえで判断しましょう。

【3. 運用分析】導入後は定期的に効果測定を行う

BPO導入後は、すべて委託業者に任せるのではなく、定期的に効果測定を行う必要があります。業績の計測・管理に必要な指標であるKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)を事前に設定しましょう。

BPO化によりどのような成果を上げているか、自社で効果測定をして定量的に判断することが重要です。ただし、導入直後に成果を上げられるとは限りません。一定期間の経過後に結果を出せる場合もあります。

業務ごとに中長期的な目標を定め、達成状況を確認するとよいでしょう。目的に応じて分析や効果検証を行い、適宜修正や改善を行いましょう。

まとめ

BPOは、自社の業務を外部の業者に一括委託する経営手法です。一般に、アウトソーシングでは業務の一部を委託するのに対し、BPOでは業務プロセス自体を委託できます。これにより、メイン業務の強化や人件費の調整が可能です。一方で、業務の状況把握の難しさや情報漏洩リスクといったデメリットには注意しましょう。

BPO導入に失敗しないためには、自社分析と業者分析が必須です。委託する業務を見極め、自社のニーズに合った業者を選びましょう。業者のレスポンスの速さやセキュリティ対策も確認が必要です。

BPO導入によって、業務効率化やコスト削減などのメリットが得られます。重要なポイントを押さえて、適切な導入・効果測定を行いましょう。

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