働き方改革関連法の改正ポイントや目的、企業が行うべき対応

最終更新日: 2022.12.02 公開日: 2019.11.15

働き方改革関連法

働き方改革関連法を含め、法律はその時代の考え方に合わなくなった場合に、適合するように変更されます。企業が働き方改革関連法を遵守するためには、その目的を知ったうえで、内容を理解しなければなりません。この記事では働き方改革関連法の改正ポイントをおさえたうえで、企業としていつからどのように対応すればよいかを解説します。

働き方改革関連法とは

働き方改革関連法とは、平成30年7月6日に公布され、段階的に施行されている「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」の略称です。この法律の大きな特徴は、労働基準法、労働契約法、じん肺法など人々の働き方に関係する多種多様な法律の改正をまとめて示しているところにあります。
この法律は主として、問題視されてきた長時間労働を改め、これまでの枠にとらわれない多種多様な働き方を実現し、雇用形態の違いで不当な待遇差が生まれないようにするために必要な措置を講じるものとしてつくられました。

働き方改革の目的

働き方改革の目的は、働きやすい社会を実現することによって、働く意欲のある人材とその労働力を将来にわたって幅広く確保し、日本国民が未来に対してより明るい見通しを持てるようにすることです。具体的には、働き方改革を実施することで、生産性の向上、就業機会の拡大、労働環境の整備が求められています。

生産性の向上

少子高齢化に歯止めがかからない日本では、15歳から64歳までの生産年齢人口の減少が急激に進んでおり、今後も労働人口が減少していくと想定されています。こうした人手不足に対応するためには、各仕事の生産性を向上させていくことが重要となります。
また公益財団法人日本生産性本部「労働生産性の国際比較 2021」によれば、日本の1人当たりの労働生産性はOECD加盟国38か国の中で28位と、1970年以降最も低い水準となっています。
(参考:https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/report_2021.pdf
こうした点からも、働き方を見直し、国際的に見ても低迷している日本の労働生産性の向上が求められているのです。

就業機会の拡大

現代のライフスタイルや働き方のニーズの変化に合わせて、就業の機会を拡大させることも改革の大きな目的のひとつです。
生産年齢人口に数えられる働き盛りの人々のなかには、育児や介護のために働くことを諦めざるを得ない人が数多く存在します。また、定年退職した高齢者のなかにも、まだまだ元気で働けるのにやりがいのある仕事が見つからないと悩む人たちもいるでしょう。働き方を改革することでそのような個々の事情も考慮した就業機会をつくることが重要となっています。
人口減少で将来に暗雲が垂れ込めている日本ですが、国民一人ひとりが自分の都合にあわせて働き方を自由に選べるように改革できれば、働きたいのに働けないというケースが減るに違いありません。そして、幅広い年代の日本人が活躍できるようになって働き手が増やせれば、不足する労働力を補うことができ、日本全体の生産力アップや経済発展につながるはずです。

労働環境の整備

過労により従業員が体調を崩したり、休職・退職したりすれば、労働力の大幅な低下につながります。労働時間関連の課題は、過労が引き起こす問題に直結する大きな課題として認識されており、働き方改革でも重点的に取り組むべきポイントです。企業は従業員が心身の健康を維持して元気に働けるように、労働環境を整備しなければなりません。
また、経営側は従業員たちが仕事だけでなくプライベートも充実させることによって、職場でより高いパフォーマンスを出せるように労働環境を整えることが求められます。

働き方改革関連法における変更点

働き方改革関連法で大きく変更された点は、労働時間・休暇、待遇、労働環境の3つです。ここでは、それぞれどのような点が変更されたのかについて解説します。具体的な変更点は後述の「働き方改革関連法の改正ポイントと対応」で説明しますので、そちらもあわせてご覧ください。

労働時間・休暇

個々の従業員に対する労働時間の把握・管理や休暇の取得に関して、従業員を雇う企業側の配慮がより厳しく求められるように各法律の内容が変更されました。
休日出勤や時間外労働の制限、有給休暇の取得、休息時間の確保など労働時間の管理に関して、法律で守るべき時間や日数などが定められ、企業はこれを遵守する義務があります。そのため、各項目に対して以前よりも厳密な管理を行うことが求められます。

待遇

ひとつの職場では正社員、契約社員、派遣社員、パート、アルバイトなどさまざまな立場の人が集まって働いています。これまでは各人が企業とどのような雇用契約を結んでいるかによって、同じ内容の仕事をこなしているにもかかわらず、給料や休暇などの待遇に大きな違いがみられることが多々ありました。
このような労働者間の格差を是正すべく、働き方改革関連法によって不合理な待遇差を禁止するよう法律が改変されました。正社員ではないから待遇が悪くなるのは当たり前といった考え方は改善していく必要があります。

労働環境

働き方改革関連法には、勤務方法や健康管理といった労働環境に関する変更が多数盛り込まれています。たとえば、フレックスタイム制をより柔軟に運用できるようにしたり、産業医を用い活動しやすい環境を整え産業保健機能を強化したりするような既存の制度や機能についての改正が行われました。このほか、働き方改革関連法には、高度プロフェッショナル制度のような新しい制度の創設なども含まれています。

働き方改革関連法の改正ポイントと対応

ここからは、働き方改革関連法のなかでも特に重要な改正ポイントと企業がとるべき対応について、ポイントごとにまとめて解説します。

時間外労働の上限規制

働き方改革関連法によって、特別条項入りの36協定(労働基準法36条に基づく労使協定)を結べば無制限に認められてきた時間外労働に上限が設定され、違反した場合の罰則も規定されました。
36協定による時間外労働は、臨時的な特別の事情がなければ月に45時間、1年間では360時間までに制限され、特別条項を加味して上限を引き上げた場合でも年720時間が限度です。この上限を超えて従業員を働かせた場合には、6か月以下の懲役か30万円以下の罰金が科されることになっています。

働き方改革関連法はすでに施行されているため、基本的には即刻対応が必要です。しかしながら、新技術や新商品等の研究開発業務のように上限規制の適用除外となるものや上限規制が猶予される事業・業種もあります。現在、規制が猶予されている建設事業、自動車運転の業務、医師、鹿児島と沖縄の砂糖製造を営む企業の方々は、2024年4月1日前までにしっかり対応できるように今から準備をしておきましょう。

法律違反が発覚すれば、企業側は知らなかったでは済みません。まずは自社の現状を把握し、労働時間を適切に管理して、時間外労働が法定内におさまるようにコントロールする仕組みを準備して対応しましょう。時間外労働の管理は、パソコンを用いて行うのが便利です。表計算ソフトでも構いませんが、勤怠管理システムなど専用のツールを活用すると、より効率よく管理が行えます。

有給休暇の取得義務化

忙しすぎて休みが取れない労働環境を改善するため、働き方改革関連法によって、有給休暇の取得が義務化されました。雇用形態にかかわらず、1年間に10日以上の年次有給休暇を取る権利を有する従業員には、有給が与えられる基準日から1年以内に、時季を指定して年5日の有給休暇を取得させなければなりません。また、雇用した側は有給休暇の取得については管理簿を作成し、3年間保存することが義務付けられています。

この規定は、すでに施行済みで特例の猶予などはないため、すぐに対応が必要です。企業としては法の定めにしたがって管理簿を作成し、各従業員が休暇を確実に取れるよう早急に対応しなければなりません。しかし、そのためには、休暇が取得しにくい状況に陥っている従業員をリストアップし、休暇の取得によって業務に支障が出ないように、各従業員が置かれた状況も含めた現状把握を行うことが重要です。

中小企業における時間外労働の割増賃金率変更

中小企業に対して猶予されてきた、月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率が、2023年4月1日をもって現在の25%から大企業と同水準の50%に引き上げられます。割増賃金の支払いは義務なので、中小企業は猶予期間が終了する前に、割増賃金に対応できるよう準備しなければなりません。

行うべき対応としては、月60時間を超える時間外労働が発生した場合には必ず割増賃金を支払うことになるので、あらかじめ時間外労働の現状を把握して割増賃金がいくらになるか計算しておきましょう。また、60時間を超える時間外労働を可能な限り抑えられるように、各従業員に割り振る仕事量をコントロールすることも大切です。

労働時間把握の義務化

働き方改革関連法によって労働時間の把握義務が明文化され、これまで勤怠管理の対象として除外されていた管理監督者などを含め、高度プロフェッショナル制度適用者を除く全従業員の労働時間を把握することが義務化されました。これについてはすでに施行済みなので、まだ対応ができていない場合は速やかに対応しなければなりません。

ここで重要なのが、どのように労働時間を把握するかであり、原則として客観的な方法を用いて把握することが求められています。そして、把握した労働時間の記録は3年間保管しなければなりません。客観的な把握方法としては、労働時間をタイムカードの打刻記録やパソコンの使用時間記録などがあります。未対応の場合はこれらの方法を導入することをおすすめします。

勤務間インターバル制度の導入促進

働きすぎを解消する一手として、終業してから次の始業まで一定の時間休息を入れる勤務間インターバル制度の導入が、努力義務化されました。どのくらいの時間休息を入れればよいかについての明確な定めはありませんが、目安としては11時間程度を想定しているようです。

勤務間インターバル制度を導入する場合には、一定時間の休息を確保するための勤務調整の方法をあらかじめ決めておかなければなりません。前日の終業時間が非常に遅くなった場合にはそのままでは休息時間が保てなくなるので、休息時間を確保するため次の始業時間と終業時間を丸ごと後ろにずらすか、始業時間は固定しておいて勤務時間と休息時間が重なる時間を働いたことにするなどして対応します。

フレックスタイム制の拡充

フレックスタイム制の清算期間が、従来の1か月以内から法改正によって3か月まで上限を延長できるようになりました。フレックスタイム制というのは、従業員が労使協定で定められたフレキシブルタイムやコアタイムの範囲内で、自由に始業時間と終業時間を設定して働ける制度です。清算期間中の週平均の労働時間を計算して、労働時間が不足していれば欠勤扱いとなり、超過していれば時間外労働として認められます。清算期間が3か月になることで、不足時間がある月に別の月の超過時間分を振り替えることが可能になるので、従業員は欠勤扱いにならずにすみ、使用者はある月の超過時間が減ることで割増賃金の支払いを抑えられるかもしれません。
フレックスタイム制を採用して清算期間が1か月を超えるような拡充を行う場合には、その仕組みを理解したうえで労働基準監督署へ労使協定を届け出るといった対応が必要です。

高度プロフェッショナル制度の創設

高い能力を有する労働者が高い収入を確保しつつ、自分の希望にそった自由な働き方が選べるようにと新しく創設されたのが高度プロフェッショナル制度です。この制度は、金融商品のディーリング業務やコンサルタント業務など対象となる特定の業務に従事し、支払い見込みの賃金額が1,075万円以上であるといった条件に当てはまる労働者が、労働時間の規制から外れる成果型労働制度ともいえます。

この制度を採用する場合に必要となる対応は、対象となる本人の合意得て決議を取ること、産業医と連携して対象となる労働者の健康確保をすること、労働基準監督署への届け出などを含む所定の手続きを取ることなど細かく内容が定められています。

産業医・産業保健機能の強化

労働者の健康を守るために、法改正により産業医の権限や産業保健機能が強化されました。これにより事業者には、産業医に情報提供を行ったり、産業医からの勧告に応じて衛生委員会等に報告したりすることのほか、労働者が産業医に相談できる体制を整えたり、長時間労働者に対して産業医などによる面接指導を行ったりすることが求められるようになりました。この規制については、すでに施行済みであるため即対応が必要で、事業者としての義務や努めについて理解したうえで上述の対応を取らなければなりません。

待遇に関する格差是正や説明義務強化

正社員のような正規雇用と短期アルバイト、有期の契約社員、派遣社員などの非正規雇用の間で、同一の労働内容なのに正当な理由なく賃金が異なるといった不合理な待遇差をつけることが法改正により禁止されました。これに伴って、待遇内容についての説明義務も強化され、行政による履行確保措置及び裁判外紛争解決手続の整備も行われています。

この規制もすでに施行済みのため即時対応が求められます。厚生労働省のガイドラインを参考にし、現状を把握して必要があれば賃金体系などを見直し、従業員に対してどうしてこの待遇なのかという説明を適時実施する必要があります。

まとめ

働き方改革関連法での改正点は、主に労働時間・休暇、待遇、労働環境に関わることであり、大部分がすでに施行済みのため、即時対応が求められます。法改正による対応をまとめてマニュアル化する際には、テンプレートを使用してマニュアルの作成が簡単にできるTeachme Bizという専用ツールの利用がおすすめです。

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