倉庫管理の基礎知識!在庫管理との違いや効率化のコツとは?
自社の物流拠点や倉庫には、商品や原材料、部材、設備、消耗品など、さまざまな物品が保管されています。商品の出荷や資材の取り出しを正確かつ迅速に行うためには、倉庫管理の最適化が欠かせません。本記事では、倉庫管理の基礎知識や効率化のポイントを解説するとともに、倉庫管理システムを導入するメリットについても紹介します。
目次
倉庫管理の主な業務内容
倉庫管理の基本的な業務は、「入荷」「入庫」「出庫」「出荷」の4つに大別されます。
- 入荷:発注した物品が倉庫に届く工程
- 入庫:物品を倉庫に収納する工程
- 出庫:倉庫に保管されている物品を取り出す工程
- 出荷:出荷指示を受けた物品を発送する工程
まず、発注した商品や荷物が倉庫に届くと、荷卸し(トラックからの荷下ろし)、伝票確認(納品書と発注書の照合)、入荷検品(品目・数量・品質のチェック)などを行います。問題がなければ、倉庫内の最適なロケーション(保管場所)へ収納し、在庫として計上します。これが「入荷」と「入庫」の基本的な流れです。
保管されている物品に出荷指示が入ると、「出庫」と「出荷」の工程に移行します。まず、必要な物品をピッキングし、破損や汚れをチェックする「出荷検品」を行います。その後、内装・外装を整えたうえで梱包し、配送先ごとに仕分けを行うのが一連の流れです。「出庫」は倉庫から物品を取り出す工程であり、「出荷」はその物品を発送し、売上として計上する工程を指します。
在庫管理との違い
在庫管理と倉庫管理は、管理の対象と目的が異なります。
在庫管理は、企業活動に関わるすべての在庫を管理する業務です。対象となるのは、倉庫だけでなく、工場、営業拠点、店舗、客先など、保管場所を問いません。また、発注済みでまだ自社に納品されていない在庫も管理対象に含まれます。主な目的は、在庫の流れを分析・最適化し、効率化を図ることで売上向上につなげることです。
一方、倉庫管理の対象は倉庫内の業務に限られます。目的は、倉庫内の資材や人の動きを把握し、業務の効率化を図ることです。
このように「管理対象」と「目的」が異なるため、システムの導入においても在庫管理システムと倉庫管理システムという2つの異なるシステムが存在します。
倉庫管理を効率化させる方法
倉庫管理の効率化を図る具体的な方法として、以下の5つが挙げられます。
ロケーション管理を徹底する
倉庫管理において重要な課題のひとつは、商品や資材、備品などの保管場所を適切に管理することです。ロケーション管理を徹底することで、倉庫内の「どこに何があるのか」を明確にし、作業の効率化を実現できます。
具体的には、次のような管理方法が挙げられます。
- 同じカテゴリーの商品をまとめて配置する
- 入出庫頻度の高い資材を入り口付近に配置する
- 備品に番号を割り振って保管する
また、ロケーション管理には、大きく分けて固定ロケーションとフリーロケーションの2種類があります。
固定ロケーションは、特定の商品を決められた場所に常に保管する方法で、管理がしやすいのが特徴です。
一方、フリーロケーションは、倉庫の状況に応じて保管場所を変更する方法で、スペースを効率的に活用できます。ロケーション管理を固定化しすぎず、これらの方法を適切に使い分ける柔軟性が重要です。
ピッキングリストを改善する
ピッキングリストとは、ピッキング(倉庫から必要な材料や部品を取り出す作業)を行う際の作業指示書です。
出庫作業では、出荷指示に従ってピッキングリストを確認し、必要な物品を倉庫から取り出します。そのため、ピッキングリストの内容次第で出庫・出荷作業の効率が大きく変わります。
例えば、ピッキングリストの品目を、「A-01」→「A-02」→「B-01」とロケーション順に並べることで、移動距離を最小限に抑えることが可能です。また、より効率的な方法を模索し、継続的にピッキングリストを改善することも大切です。
マニュアルを作成する
倉庫管理の業務は多岐にわたり、属人化しやすい傾向があります。そのため、作業の標準化をどのように進めるかが肝心です。
具体的には、以下のような業務の手順を言語化・数値化し、マニュアルとして整備することが求められます。
- 荷卸しや入荷検品の手順
- ロケーション管理の基本ルール
- ピッキング作業の流れ
- 出荷検品や梱包のプロセス
文章のみのマニュアルは理解しにくいため、図解やイラストを活用し、視覚的・直感的に理解しやすい構造を意識することで、誰でも分かりやすいマニュアルを作成できます。
適切な在庫数にする
在庫は棚卸資産に分類されるため、販売または廃棄するまで仕入れ原価を経費として計上できません。そのため、期末に多くの在庫を抱えると、税負担が増加する可能性があります。
一方で、在庫が少なすぎると販売機会の損失につながり、本来得られるはずの利益を逃してしまうリスクがあります。
そのため、倉庫管理では受注状況や販売実績を分析し、季節要因などの需要変動も考慮しながら、安全在庫と適正在庫を算出・維持することが重要です。
倉庫管理システムを導入する
倉庫管理の効率化を図るううえで有効なのが、倉庫管理システムの導入です。
入荷・入庫・出庫・出荷の各業務を合理的に進めるためには、ピッキングリストの最適化や、需要と供給のバランスを考慮した適正在庫の維持が必要です。しかし、これらの業務はデータ管理やファイル処理に多くの工数を要するだけでなく、属人化しやすく、ヒューマンエラーが発生しやすい領域でもあります。
倉庫管理システムを導入すれば、各種データをデジタル上のプラットフォームで一元管理でき、倉庫管理のさまざまな業務を効率化・自動化できます。
倉庫管理システム(WMS)でできること
倉庫管理を最適化するシステムは「WMS(Warehouse Management System)」とも呼ばれ、物流業・製造業・卸売業・小売業など幅広い分野で導入が進んでいます。
一方、近年では、中小企業においてもERP(Enterprise Resource Planning)の導入が進み、倉庫管理に加え、財務会計・購買管理・販売管理・生産管理・在庫管理などを一元化するケースが増えています。しかし、ERPは基幹業務の統合管理が目的で、倉庫内の詳細な運用管理や物流プロセスの最適化には対応しきれない場合があります。
倉庫管理システムの導入により、ピッキングやロケーション管理、リアルタイムの入出庫追跡など、ERPではカバーしきれない倉庫業務を効率化できます。
倉庫管理システムの代表的な機能は以下のとおりです。
- 在庫照会:在庫の数量や状態を確認する機能
- 入出庫管理:物品の入庫・出庫を記録・管理する機能
- ロケーション管理:物品の保管場所を管理する機能
- 受注管理:注文内容や配送先などの受注情報を確認する機能
- 出荷指示:ピッキングリストや梱包指示書を作成する機能
- 梱包・ラベル発行:バーコードや出荷ラベルを作成する機能
- 棚卸リスト作成:棚卸対象の物品リストを作成する機能
- 棚卸レポート作成:棚卸結果をレポート化する機能
倉庫管理システムを導入するメリット
倉庫管理システムの導入によって得られる主なメリットは、以下の3つです。
ヒューマンエラーが削減できる
倉庫管理システムを導入することで、手作業によるミスを大幅に削減できます。
例えば、バーコードリーダーやRFID(Radio Frequency Identification)と連携させることで、読み取ったデータを即座にシステムへ登録できるため、データ入力ミスや誤出荷を防止できます。
全体的な業務効率化が図れる
倉庫管理システムは、入庫・出庫・ピッキング・梱包・ラベル作成・出荷手配といった倉庫業務全般をサポートし、一連のプロセスを自動化できます。
その結果、倉庫全体の業務効率が向上し、手作業によるデータ入力や在庫情報の管理が不要になるため、人件費の削減にもつながります。また、人的リソースをコア業務に集中できる点もメリットです。
リアルタイムで在庫状況を把握できる
倉庫管理システムを活用すれば、在庫の増減をリアルタイムで可視化できます。入出庫の履歴を簡単に確認できるほか、適正在庫や安全在庫を下回るとアラートを通知する機能もあり、適切な在庫管理や棚卸し時の差異の解消に役立ちます。
また、物流拠点や倉庫の稼働状況を俯瞰的に管理可能です。そのため、現場の作業進捗が分かりやすくなり、人員配置の最適化にもつながります。さらに、在庫の回転率を可視化することで、需要予測の精度向上にも貢献します。
倉庫管理システムを導入するデメリット
倉庫管理システムの導入を検討する場合、以下に挙げる2つのポイントに注意が必要です。
導入コストがかかる
システムの種類や事業規模によって費用は異なります。オンプレミス型の倉庫管理システムを導入する場合、初期費用として自社サーバやソフトウェアの購入費用が発生します。また、運用や保守にかかる継続的なコストも考慮する必要があります。
一方、クラウド型のSaaSを利用すれば、初期費用は比較的低く抑えられるものの、月額数万円程度のサブスクリプション費用が発生します。このように、倉庫管理システムの導入には一定のコストがかかるため、中長期的な費用対効果を慎重に検討してください。
ITリテラシーが求められる
倉庫管理システムを運用・管理する際は、使用者に一定以上のITリテラシーが求められます。特にオンプレミス型のシステムを導入する場合、ソフトウェアのアップデートやパッチの適用、サーバのトラブル対応、システム障害時の対応など、専門的な知識を持つ技術者が不可欠です。
外部の運用・保守サービスを利用することも可能ですが、長期的な運用を考えると、社内で管理できる体制を整えることが理想的です。そのためには、IT人材の確保や教育、システム運用マニュアルの整備などの取り組みが求められます。
まとめ
倉庫管理の基本業務は、入荷・入庫・出庫・出荷の4つに分類されます。効率化を図るには、ロケーション管理の徹底、ピッキングリストの改善、マニュアルの作成、適切な在庫管理、倉庫管理システムの導入などが重要です。特に倉庫管理システムを導入することで、ヒューマンエラーの削減や倉庫全体の業務効率化、リアルタイムな在庫状況の把握が可能になり、さまざまなメリットを得られます。
倉庫管理システムの運用にはマニュアルの整備が不可欠です。マニュアル作成システム「Teachme Biz」を活用すれば、テンプレートに沿って画像や動画、テキストを組み合わせるだけで、誰でも分かりやすいマニュアルを作成できます。ぜひ、導入を検討してみてください。