TQM (総合的品質管理)とは?言葉の定義、TQCとの違い、進め方を解説
本記事では、TQM(総合的品質管理)の定義から、歴史、TQCとの違い、ISO9001との関連性までを詳しく解説します。さらに、TQMを実践する目的や進め方を取り上げ、効果的な運用を支援するシステムの活用法も提案します。品質向上を組織全体で推進するために、ぜひ参考にしてください。
組織全体で品質向上を追求する、TQM(総合的品質管理)とは?
品質管理の手法として、TQM(総合的品質管理、以下TQM)は企業や組織が持続的な成長と顧客満足の向上を目指す上で、重要な役割を果たします。以下では、TQMの定義や背景、TQCとの違い、さらにISO9001との関連性を詳しく解説します。
言葉の定義
TQM(Total Quality Management、トータル・クオリティ・マネジメント)は、日本語で「総合的品質管理」や「全社的品質マネジメント」を意味し、品質を中核とし、企業・組織の全員が参加して改善を重視する経営管理の手法です。医療現場や製造業など、幅広い業種で適用されています。
一般社団法人日本品質管理学会の「TQMの指針」では、TQMを次のように定義しています。
「品質/質を中核に,顧客及び社会のニーズを満たす製品・サービスの提供と,働く人々の満足 を通した組織の長期的な成功を目的とし,プロセス及びシステムの維持向上,改善及び革新を全 部門・全階層の参加を得て様々な手法を駆使して行うことで,経営環境の変化に適した効果的か つ効率的な組織運営を実現する活動」
引用元:日本品質管理学会「TQMの指針」
この定義からもわかるように、TQMは顧客満足度の向上と組織の長期的な成功を目指し、全社的な取り組みを通じて品質改善を行うことを重視しています。
TQMの歴史
TQMの起源は、米国の製造業で取り入れられていたQC(Quality Control、クオリティ・コントロール)にあります。QCは日本語で「品質管理」を意味し、完成した製品の品質を評価する手法として始まりました。しかし、さらなる品質向上を目指す中で、製造現場だけでなく、関連業務全体を評価・改善の対象とする必要性が認識されるようになりました。
この認識から発展したのが、TQC(Total Quality Control、トータル・クオリティ・コントロール)です。TQCは日本語で「全社的品質管理」を意味し、製造現場に限らず、設計・販売・アフターサービスといった各部門が連携し、統一された目標のもとで品質管理活動を行う手法を指します。この取り組みにより、組織全体として一貫した品質向上を目指すことが可能になりました。
TQCの導入は多くの企業で成果を挙げました。しかし、1990年代以降、グローバル化の進展や顧客ニーズの多様化により、企業に求められる品質水準がさらに高まります。同時に、品質を競争力の源泉と位置づけ、企業全体の経営戦略の中核として品質管理を捉える必要性が生じました。これにより、品質管理は単なる業務手法にとどまらず、経営層が積極的に関与し、企業文化や経営理念に基づいた取り組みとしてTQMが浸透していきました。
TQMとTQCの違い
TQMとTQCは、歴史的な遷移によって名称が変化したものです。ただし、その適用範囲や重点の置き方に違いがあります。
まず、TQCは製造現場を中心に、他の部門も巻き込んだ品質管理手法です。複数の部門が連携し、統一的な目標の下で品質管理を徹底することで、製品やサービスの品質向上を目指します。統一的な目標の下に部門間で協力し、科学的アプローチを活用して改善を行う点が特徴です。
一方で、TQMは企業全体、特に経営層を含めた組織全員が参加し、品質を経営の中心に据えるアプローチです。製造現場や部門単位にとどまらず、経営戦略として品質管理を位置づけ、顧客満足度の向上や組織の長期的成功を目指します。TQCが現場主導の改善活動であるのに対し、TQMは経営層の主導により全社的な取り組みを推進する点で、より広範な視点を持っています。
TQMとISO9001の関連性
ISO9001は、品質マネジメントシステム(QMS)に関する国際規格であり、品質の高い製品やサービスを安定して提供するための仕組みの構築と運用を目的としています。この規格を取得することで、企業が顧客に対して品質管理の適切性を示すことが可能です。
ISO9001とTQMは、目的や適用範囲に多くの共通点があります。ISO9001は、品質マネジメントシステムを構築・運用するための具体的な要求事項を規定しており、その実践により品質改善が促進されます。この取り組みは、TQMの基盤を強化し、全社的な品質意識を高めるとともに、顧客満足度のさらなる向上が実現可能です。
さらに、ISO9001の運用を通じて、品質管理を企業文化の一部として根付かせることが可能になり、TQMの理念と調和する形で長期的な成功への道を切り開くことができます。
TQMに取り組む2つの目的
TQMの目的は顧客ニーズを的確に把握し、それに応える品質改善を重ねることで、顧客の信頼を確立することです。また、TQMは単なる業務改善の枠を超え、組織全体を統合し、従業員一人ひとりが品質向上に責任を持って取り組む体制を構築します。以下では、それぞれの目的について解説します。
品質改善によって顧客満足度を向上させるため
ひとつは、製品やサービスの品質を改善し、顧客満足度を向上させることです。顧客満足は、企業の成長を支える重要な要素であり、品質改善がその基盤となります。
顧客満足度を向上させるには、まず顧客のニーズや期待を正確に把握することが必要です。市場調査やフィードバックの収集を通じて、顧客が求める価値を明確にし、それを製品やサービスに反映します。そして、期待を超える品質を提供するために、継続的な改善を行います。
これにより、顧客満足度が向上し、企業への信頼とロイヤルティを高めることが可能です。
全社的な取り組みで企業・組織の価値を高めるため
TQMは単なる業務改善にとどまらず、組織全体を統合し、共通の目標に向けた行動を促す枠組みです。
TQMの実施により、組織全体の連携が強化され、従業員の責任感が向上します。全員が品質改善に取り組むことで、部門間の壁を越えた協力体制が生まれ、組織全体のパフォーマンスの向上が可能です。また、従業員が自らの役割の重要性を理解し、やりがいや達成感を感じることで、モチベーションが高まり、離職率の低下や人材の確保にもつながります。
最終的に、TQMは企業の競争力を高め、持続可能な成長を支える重要な手法となります。
TQMの進め方
TQMを成功させるには、計画的で段階的なアプローチが欠かせません。各段階を正確に進めることで効果を最大化できます。以下では、テーマの選定から効果測定と標準化まで、TQMの基本的な進め方を7ステップで具体的に解説します。
1. テーマの選定
TQMの最初のステップは、解決すべき課題のテーマを明確に設定することです。この段階では、品質改善が組織の目標達成にどう結びつくかを具体的に定めることが重要です。例えば、顧客満足度向上、不良品削減、生産効率向上など、達成したい目標を具体化し、全員が共有できる形にします。
テーマの選定は、トップダウンの指示ではなく、組織全体での議論を通じて行うことが効果的です。現場の意見を反映し、全員が納得できるテーマを設定することで、従業員のモチベーションを高め、より実行可能で効果的な品質改善を目指します。
2. 現状の把握
テーマの選定後は、現状の把握を正確に行います。具体的なデータを収集・分析することで、課題の本質を明確にする基盤を整えます。
現状を把握する際に、現場でのヒアリングやアンケートは欠かせません。現場の従業員から直接意見を聞くことで、現状の問題点や課題を具体的に把握できます。ただし、ヒアリング結果は主観的な意見も含まれるため、裏付けとなる客観的なデータも確保することが重要です。客観的なデータの例として、製品不良率や顧客からのクレーム件数などが挙げられます。これらの収集したデータを同時に分析し、主観的な意見を裏付ける証拠とします。これにより、品質改善の方向性を見極めることが可能です。
3. 原因の解析・究明
現状の把握が完了したら、次に問題の原因を徹底的に解析・究明するステップに進みます。このステップでは、なぜその問題が発生しているのかを探り、根本原因を突き止めることが目的です。
まず、問題の原因を特定するために、データ分析や現場の観察を行います。例えば、製品の不良率が高い場合、その原因が製造プロセスのどこにあるのかを特定します。データ分析を通じて、問題の発生頻度やパターンを把握することで、根本原因を見つけることが可能です。
次に、原因を究明するために、現場の従業員や関係者とのディスカッションを行います。現場の意見を取り入れることで、問題の背景や詳細を理解しやすくなります。また、原因を究明する際には、仮説を立てて検証することも重要です。現場でテストを行い、原因をひとつずつ明確にすることで、改善策の効果を高められます。
4. 改善目標の設定・対策の立案
原因の解析・究明が完了したら、次に改善目標を設定し、具体的な対策を立案するステップに進みます。この際、目標は数値化し、実現可能な範囲に設定することが重要です。
また、改善目標を達成するための手段を具体的に分けて示します。例えば、「不良品発生率を10%から5%に削減する」という目標を掲げる場合、「検品工程の自動化」や「作業員の技能研修」といった具体策を同時に立案します。
さらに、立案する対策は実現可能であることが大切です。無理な対策を立案しても、実行に移せなければ意味がありません。現場の状況やリソースを考慮し、実現可能な対策を立てます。対策を立てる際に、メンバー全員でコミュニケーションを取りながら進めることが有効です。全員が改善目標と対策を共有し、協力して取り組むことで、効果的な品質改善が実現します。
5. 対策の実行
設定した改善目標と立案した対策を実行に移します。ここでは、現場の従業員や関係者の協力が欠かせません。
対策実行後は、定期的に進捗を確認し、効果測定(データ収集)を行います。例えば、不良品発生率や顧客満足度の変化を数値で測定し、対策の有効性を検証します。これにより、必要に応じて対策の修正や追加が可能となり、改善の精度を高めることが可能です。
6. 修正・反復の継続
対策を実行した結果をもとに、修正と反復を継続することが重要です。期待した成果が得られなかった場合は、その原因を分析し、適切な修正を行います。 例えば、実行方法や内容に課題があった場合、それを見直して改善を図ります。
一方、修正によって改善が見込まれる対策は、対策の内容や実行方法を見直し、より効果的な方法を取り入れます。例えば、トレーニングの内容を変更したり、製造プロセスを再設計したりすることで、対策の効果を高めます。
このように、修正と実行を繰り返すことで、品質改善の成果を最大化します。
7. 効果測定と標準化
対策の実行後は、効果測定を行い、成功した対策を標準化します。
効果測定では、実施前後のデータを比較し、不良品発生率や顧客満足度の変化などを評価します。測定結果に基づき、改善の成果を明確にすることで、対策の有効性を確認できます。
効果が認められた対策は、組織全体での実践を目指し、標準化します。標準化の方法としては、マニュアルの策定が有効です。マニュアルを作成し、従業員に対策の内容や実施方法を周知して、対策の定着を図ります。
TQMを支えるマニュアル作りは「Teachme Biz」がおすすめ
TQMを成功に導くには、効果的な対策を現場に浸透させ、それを組織全体で標準化することが重要です。その実現には、マニュアルが欠かせません。マニュアルを活用することで、従業員全員に対策の内容や実施手順を周知し、業務の一貫性を保ちながら品質改善の効果を長期的に維持できます。
「Teachme Biz」は、マニュアル作成を効率化し、運用を簡素化するための最適なツールです。以下では、「Teachme Biz」の特長や利点を詳しく解説します。
マルチデバイス対応
「Teachme Biz」の大きな利点は、マルチデバイス対応により、従業員がいつでもどこでも必要な情報にアクセスできる点です。クラウドに保存されたマニュアルは、デスクトップPC、ノートパソコン、タブレット、スマートフォンなど、あらゆるデバイスで閲覧が可能です。さらに、PDF出力や二次元コードでの共有機能も備わっており、タスクとしての配信も簡単に行えます。これにより、現場での迅速な対応が可能となり、従業員はどのような状況でも適切な情報を即座に取得可能です。
例えば、製造現場でのトラブルシューティングや、新しい手順の導入時にも、「Teachme Biz」を使えば情報を手早く確認でき、業務の効率化と品質向上に直結します。
修正・配信も簡単
TQMでは、状況に応じた柔軟な対応が求められます。「Teachme Biz」では、マニュアルの修正や配信が手軽に行えるため、常に最新の情報を提供することが可能です。クラウドで管理されているため、修正内容は即座に反映され、関係者には通知が自動的に送信されます。
さらに、アクセスログを活用してマニュアルの利用状況を確認し、従業員がよく検索する内容を分析することで、業務に必要な情報を的確に補完できます。これにより、TQMの取り組みが深く浸透し、継続的な業務効率化や品質向上を実現します。
誰でも簡単に作成可能
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また、「Teachme Biz」は20言語に対応しているため、多国籍の従業員にも利用可能です。これにより、言語や文化の壁を越えた情報共有が可能となり、グローバルな現場でもスムーズな運用をサポートします。
まとめ
TQMは、組織全体で品質向上を目指す全員参加型の手法です。その起源はQCにあり、製造現場を超えて組織全体で連携を図るTQCを経て発展しました。ISO9001との関連性も強く、TQMの目的は顧客満足度や企業価値の向上にあります。実施する際は、課題の選定から標準化に至るまでの7つのステップを踏むことが重要です。
また、マニュアル作りには「Teachme Biz」の活用がおすすめです。直感的で使いやすいインターフェースを持つ「Teachme Biz」は、TQMの運用を効率化し、現場の負担を軽減します。品質管理の最大化を狙うために、ぜひ「Teachme Biz」の導入を検討してみてください。
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