トヨタ式カイゼンの進め方とは? 目的・事例・失敗しないためにすべきこと

公開日: 2023.01.15

トヨタ式カイゼンの進め方とは? 目的・事例・失敗しないためにすべきこと

品質や生産性を向上させるための手法として、国内だけでなく海外からも注目を集めているのが、「カイゼン」という活動です。この記事では、そのなかでも有名な「トヨタ式カイゼン」を取り上げ、その目的や進め方、失敗しないために企業が取り組むべき活動などを解説します。また、さまざまな業界で行われているカイゼンの事例もご紹介します。

トヨタ式カイゼンとは

この記事のテーマは「トヨタ式カイゼンの進め方」ですが、なぜ漢字を使って「トヨタ式改善の進め方」と書かないのかと疑問に思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「改善」と「カイゼン」は本来同じ意味をもつ言葉ですが、カタカナ書きにすることで特別なニュアンスが込められ、カイゼンと書いた場合には、主に製造業の生産現場で行われている改善活動という意味で使われます

このカイゼンは、従業員が経営側からの指示を受けて行う改善活動ではありません。カイゼンは、現場の従業員たちが意見を出し合いながら、自分たちの力で作業のやり方などをよりよくなるように変えていく、ボトムアップ型の活動です。

具体的には、作業をよりスムーズに行えるような道具や装置を考案したり、作業中に危険な箇所を発見した場合に、その要因を取り除いて安全を確保したりするなどが挙げられます。

モノづくりが得意な日本の多くの企業が長年取り組んできたカイゼン(KAIZEN)という概念は、アジアや東欧、中南米、アフリカなど海外にも普及しています。数あるカイゼンのなかでも最も有名なのが、トヨタ自動車株式会社のカイゼンです。このトヨタ式カイゼンの原点は「そこで働いている人をよりラクにしたい」ということにあり、トヨタ生産方式を実現するための主要な考え方のひとつと位置づけられています。

トヨタ式カイゼンの目的

トヨタ式カイゼンには、主に以下のような3つの目的があります。

業務効率化で生産性向上

業務効率化により生産性を向上させることが、カイゼンの大きな目的です。この目的を達成するためには、人間でも機械でも設備でも、生産現場で何かムダな動きをしているものがあれば、その無駄を徹底的になくしていかなければなりません。そして、現場で働いている人間も機械も設備も、付加価値を生まないと考えられる動きを省いて、確実に付加価値を高めるように働くことで、生産性を上げていきます。

品質向上

製品やサービスの品質を向上させることも、カイゼンを行う目的のひとつです。安全面に配慮しながら、ムダな作業があればとことん取り除いて、可能な限りシンプルな作業に変えていくことで、作業にかかる時間が短縮され、効率的なモノづくりができます。作業がシンプルになれば、作業員のケアレスミスや事故を低減でき、それが品質の向上へとつながるはずです。

従業員のモチベーション向上

カイゼンの目的は、従業員のモチベーションを向上させることにもあります。ITを導入するだけの業務効率化とは異なり、従業員が一丸となって活発にカイゼンを行うことで、従業員の意識を変える効果が期待できます。

従業員のアイデアを積極的に取り入れるような風通しのよい職場環境を整備できれば、アイデアを認められた従業員のエンゲージメントが上がり、組織全体の生産性も上がっていくはずです。

トヨタでは、何か効果のある提案をすると、ちょっとした報酬がもらえる創意工夫提案制度を設けており、従業員一人ひとりのモチベーションを高めることで、組織全体の大きな生産性向上につなげています。

トヨタ式カイゼンの進め方

製造業に限らず、どのような業種の企業でも、以下の4ステップを繰り返す方法を用いて、トヨタ式カイゼンを実践できます。

現状を把握する

ステップ1は、現状把握です。

トヨタ式カイゼンは、従業員がチームをつくり、自社の現状を把握するところから始めます。社内で問題となっているカイゼンすべき課題を洗い出して、それをチーム全員で明確にしていきましょう

自社の課題がどこにあるかわからないという場合には、普段から不便さを感じたり、これは無駄だと思ったりしていることについて書き出していくと、課題の発見に役立ちます。また、作業を行ううえで危険な箇所がないか現場を点検したり、チーム外の従業員も巻き込んで、業務上やりにくさや負担を感じることなどについて、アンケート調査をしたりしてみるのもよいでしょう。

アイデアを出し合う

ステップ2は、アイデア出しです。

現状を把握してカイゼンすべき課題がはっきりしたら、どの課題を解決するか決定し、アイデアを出し合います。課題に潜むムダをすべて洗い出して、何をどのように省くかを検討しましょう。

アイデア出しのポイントは、チーム全員で行うことと、簡単ですぐに効果が出そうな解決策を考えることです。アイデアを出し終えたら、解決策をカイゼン案としてまとめ上げましょう。

カイゼン案を実践する

ステップ3は、カイゼン案の実践です。

チーム全員の議論を経てカイゼン案がまとまったら、それを実行してみましょう。カイゼンを実施した結果、どのくらい改善されたのかを把握するために、実施前後の状態を数値化して記録します。

わざわざ数値で記録するのは、変化をわかりやすくするためです。たとえば、カイゼン前後で特定の業務にかかった時間を計測し、カイゼン前が15分、カイゼン後が12分かかったとなれば、時間を3分短縮できたことになります。こうして目に見える形で記録しておけば、カイゼンによる効果をより実感しやすいでしょう。

評価・修正をする

ステップ4は、カイゼン案の実施結果に基づく、カイゼン案の評価・修正です。

まず、カイゼン案の実践で、予想通りの効果が得られたかを評価しましょう。残念ながら効果が出なかった場合には、何が悪かったのか原因を究明して、カイゼン案を修正します。期待通りの効果が得られた場合でも、さらにカイゼンできる可能性があるので、ほかに何かできることはないか徹底的に探して、カイゼン案をバージョンアップさせることが大切です。

カイゼン案を修正したら、ステップ1の現状把握に戻って、カイゼンのPDCAサイクルを回します。PDCAサイクルとは、「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(カイゼン)」からなる継続的カイゼンを行う一連のサイクルのことです。

カイゼンを失敗しないためにすべきこと

ここでは、カイゼンを失敗しないために、カイゼンに取り組むうえで意識すべきことを3つご紹介します。

5S活動

まず、職場に5S活動を取り入れることが、カイゼンを成功させるポイントとして挙げられます。5S活動とは、職場環境を整えるために有効な5つの要素として知られる「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」を実践することです。これら5要素はどれも、ローマ字表記したときの頭文字がSなので、まとめて「5S」と呼ばれます。

整理はモノの要不要を見極めて不要品を処分すること、整頓はモノを必要時に即座に取り出せるよう配置すること、清掃はゴミや汚れを取り除いてきれいな状態にすること、清潔は整理・整頓・清掃によって整えられた良好な状態を維持すること、しつけは整理・整頓・清掃・清潔を守るべきルールとして定め習慣づけることです。

多くの作業員が働く製造現場では、5S活動で業務を大幅に効率化できるとともに、事故のリスクを低減でき、安全な職場環境の実現にもつながるので、5Sの徹底が必要とされています。しかし、製造業以外の業種でも5S活動を取り入れれば、業務に必要なモノを探す時間を減らして、業務効率を向上させる効果が期待できます

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3M削減

3M削減も、カイゼンを失敗しないために意識すべきポイントのひとつです。「3M」とは、現場で起こりうる「ムリ」「ムダ」「ムラ」のことで、これらは3つともローマ字で書くと頭文字がMになるので、3Mの略称で呼ばれます。

ムリは担当者や設備が有する能力よりも高い負荷がかかっている状態であり、ムダは担当者や設備の能力よりもかかる負荷のほうが低いために、効率が悪くなっている状態です。ムラは仕事の品質にバラツキが生じることで、特定の業務にかかる時間や製品の品質が安定しない状態を指します。負荷と能力のバランスが悪くなったときに生じるのが3Mなので、これらのバランスを上手にとらなければなりません

ムリは、設備の故障やヒューマンエラーの多発を招くことに加え、思わぬ事故をも誘発します。ムダは生産性の低下に直結し、ムラは企業が顧客に提供する製品やサービスの品質をバラつかせる原因になります。したがって、いかなる業種の企業であっても、生産性を向上させ、製品やサービスの品質を安定させるために、3Mの削減は重要です。

従業員の意識改革

カイゼンを成功させる鍵となるのは、従業員の意識改革です。

経営層がいくら従業員に業務効率化を促したとしても、それを実施するのは従業員なので、そのやる気を引き出さなければなりません。そのためには、会社全体でカイゼンを行う流れをつくり、従業員一人ひとりが会社を支えて成長させる重要な一員であるという意識をもつ必要があります。

また、従業員一人ひとりが問題意識をもって、自発的に業務改善に取り組めるような職場環境を整えることも大切です。

【業界別】カイゼンの事例

カイゼンは製造業だけでなく、ほかの業界でも応用できます。以下では、さまざまな業界で行われているカイゼンの事例をご紹介します。

製造業

製造業では、生産管理システムを導入して、複雑でわかりにくい製造現場の作業プロセスを見える化するというカイゼンが行われています。作業プロセスの見える化によって、トラブル発生時に現場の状況をリアルタイムで把握することが可能になり、トラブル対応がスムーズにできるようになります。プロセスごとの作業内容や進捗も同時に把握できるため、連携が取りやすくなり、職場の環境も改善されます。

製造業では、ひとりの人が長年同じ作業を担当し続け、担当者が急に辞めた場合などに大きな影響が出てしまう、いわゆる属人化の問題が起こりがちです。そこで、担当者が変わっても同じ作業ができるように、作業手順を記したマニュアルを作成して、作業の属人化を解消するというカイゼンも行われています。

農業

農業では、長野県上伊那郡箕輪町のY農園が、倉庫と作業場の4Sを実践して、モノを探す時間を年間で180時間削減することに成功しました。

同農園では、ほかにもさまざまなカイゼンに挑戦しています。たとえば、作業進捗管理ボードの作成により進捗状況を見える化したことで、従業員への説明時間を8割カットできました。また、選果場のレイアウトを変更することで工数を減らし、1時間あたりの出荷箱数の倍増にも成功しています。

参照:https://www.pref.nagano.lg.jp/kamichi/nosei-aec/r4/kaizen_jirei.html

サービス業

サービス業では、どこに必要な資料があるのかが瞬時にわかるように整理整頓しておくことで、資料探しにかかる時間のムダを抑えるというカイゼン事例があります。この整理整頓は紙ベースの資料だけでなく、パソコン上のファイルも対象です。

また、カイゼン活動を習慣化するために、少数精鋭で業務に取り組み、個人の努力が成果に結びつく様子をチーム全員が見て共有することで、カイゼンを自分ごとにする習慣をつける取り組みも行われています。

金融

金融業では、ITを活用したカイゼン活動が行われています。お客様コールセンターにAIを導入することで顧客満足度の向上につなげたり、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を定型業務に導入して手入力によるリスクを減らしたり、といったカイゼン事例があります。

【Teachme Biz】製造業の業務効率はマニュアル化で解決!

製造業の業務効率をカイゼンする手段として、マニュアル化という方法があります。しっかりとしたマニュアルを作成し、それを読みこんで業務をこなせるようにしておけば、新人が入っていたときの指導などにかかる時間を短縮できます。

ここでは、誰でもマニュアルを簡単に作成できる便利なITツール「Teachme Biz」についてご紹介します。

テンプレートに沿って文字を入れるだけ

Teachme Bizは、テンプレートに沿って文字を入れるだけでマニュアルが作成できるツールです。作業手順を各ステップに分けて入力・表示するため、作成も更新も容易にでき、画像や動画の編集も簡単です。

クラウドで管理・共有もスムーズ

クラウドツールであるTeachme Bizは、クラウド上でフォルダごとにマニュアルを管理でき、検索機能ですぐに読みたいマニュアルを発見できます。マニュアルのQRコードを印刷して、現場に貼っておくことも可能です。

進捗状況の可視化・検索ログの分析

Teachme Bizの閲覧・検索ログ分析機能を利用すれば、いつ・誰が・どのマニュアルを何回見たのかが把握でき、従業員に求められているのがどのようなマニュアルなのかがわかります。また、マニュアルを用いた従業員教育の進捗状況を可視化することも可能です。

まとめ

カイゼンとは、個々の従業員が積極的に意見を出し合って、業務のやり方などをよりよくなる方向に変えていくボトムアップ型の活動です。

なかでもトヨタ式カイゼンは、業務効率化による生産性・品質の向上や従業員のモチベーションアップなどを目的とした、さまざまな業界に通じる概念です。具体的な手法としては、現状把握→アイデア出し→カイゼン案の実践→カイゼン案の評価・修正という4ステップをPDCAサイクルに沿って進めます。

カイゼンを成功させるためには、5S活動や3M削減、従業員の意識改革といった取り組みが重要です。また、カイゼンのためにマニュアルを作成する場合には、「Teachme Biz」というクラウドツールの活用がおすすめです。

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