スポットワーカーとは? 採用するメリットやポイントなどを詳しく解説!
近年、人手不足や人件費増加などの課題解決のために、「スポットワーカー」を採用する企業が増加しています。スポットワーカーに任せられる仕事やメリットなどがわからず、採用をためらっている企業向けに、スポットワーカーの特徴や仕事内容、採用のメリット・デメリットなどについて解説します。
目次
そもそもスポットワーカーとは?
スポットワーカーとは、数時間だけ、1日だけ、1週間だけなど、短時間・短期間の雇用で働く人のことです。これだけ短い雇用で、何の仕事を任せられるのかと疑問に感じる方もいるかもしれません。
そこでまずは、スポットワーカーの仕事内容や現状、似た働き方をするギグワーカーとの違いについて解説します。
スポットワーカーの仕事内容
企業がスポットワーカーに任せる仕事は、Webサイトの開発やライティング、翻訳などさまざまです。
自社の従業員だけでは対応しきれない専門性の高い仕事であることが多いですが、イベントや飲食店のスタッフ、シェア型モバイルバッテリーを運ぶ仕事など、あまり専門スキルを求められない仕事も存在します。
スポットワーカーとギグワーカーとの違い
スポットワーカーと同じく、一時的に業務にあたる働き方として「ギグワーカー」というものがあり、この両者の違いは以下の通りです。
- スポットワーカー:企業と一時的に直接雇用契約を締結して短期間働く
- ギグワーカー:企業と雇用契約は締結せず、業務委託契約を締結して短期間の業務やプロジェクトに従事する
いずれにせよ、短い期間のみ何らかの契約を結んで働くという点では同じなので、明確に使い分けられていないこともあります。
日本のスポットワーカーの現状
2010年の後半ごろから広がり始めたスポットワーカーは、コロナ禍以降人材不足が深刻化している飲食店やサービス業を中心に需要が拡大しています。
ツナグ働き方研究所の調査データによると、2023年11月時点のスポットワークの求人倍率は3.4倍で、前年同月から0.91ポイントの増加です。2023年11月時点での主要職種はコンビニスタッフで、倉庫内スタッフや運送ドライバ―の需要も多い傾向にあります。
参照元:2023年11月度版スポットワークマーケットデータレポート
スポットワーカーを採用するメリット
企業にとって採用活動は手間がかかる業務です。そのため、ごく短い間だけ雇用契約を結ぶスポットワーカーを、わざわざ採用する意味はあるのかと思う方もいるでしょう。
しかし、スポットワーカーを採用することには、以下のようなメリットがあります。
アルバイトの人手不足を解消できる
スポットワーカーを採用することで得られる大きなメリットが、人手不足の解消です。近年さまざまな業界で、アルバイトを募集しても必要な人数が集まらないケースが増加しています。
とくに飲食店や宿泊業の人手不足は深刻で、アルバイトの募集をかけても応募が来ない状況が続いている企業も少なくありません。これほどアルバイトが集まらない原因として、以下のようなことが挙げられています。
- シフトの希望に柔軟に対応してくれる勤務先を求める人が増えている
- 女性の正規雇用が増え、パートやアルバイトとして働く人が減っている
- アルバイトの求人数が増加している
- 在宅ワークの普及で現場職に従事する人が減っている
- 本業と両立できる範囲で働きたいなど、短時間勤務を希望する人が増加している
これらに対し、「忙しい時間のみ」など必要な時間だけ雇用するスポットワーカーは、「短時間勤務」という働き手のニーズにマッチするため人が集まりやすく、人手不足解消に役立ちます。
働き手が自由に働ける
スポットワーカーとして働く場合、働き手は登録しているアプリなどから、自分の都合に合う仕事を探して応募するのが一般的です。
スキマ時間を活用したり労働時間や働く場所を自分で選んだりと、企業側から決められるのではなく自分の裁量で決められるため、働く時間や場所重視の人から応募してもらいやすくなります。
また、長時間勤務が難しく働くのをあきらめていた人でも、スケジュールを自分で管理できるスポットワーカーとしてなら働ける可能性が高いため、採用の裾野が広がります。
人件費を削減できる
スポットワーカーを採用することには、人件費を削減できるというメリットもあります。アルバイトを継続的に雇うと、繁盛期・閑散期かかわらず人件費が発生します。繁盛期のみ雇えば人件費は削減できますが、人手不足が叫ばれる昨今、希望どおりにアルバイトが集まるとは限りません。
閑散期はシフトカットする方法もあるものの、会社都合の場合は休業手当を支給する必要があります。無理なシフトカットが原因でアルバイトが退職してしまったり、法的手段を取ってきたりすることもあるかもしれません。
対して、スポットワーカーであれば必要な期間のみ仕事を依頼できるため、給与や社会保険料などの人件費を大幅に削減できます。継続した雇用契約ではなく、特定の期間のみの契約となるため、休業手当の支給といった負担もかかりません。
スポットワーカーを採用するデメリット
人手不足解消や人件費削減など、企業側にもさまざまなメリットをもたらすスポットワーカーですが、その採用は以下に示すデメリットも把握したうえで検討しましょう。
研修コストが割に合わない可能性がある
スポットワーカーを採用するのは短い間のみとはいえ、業務を任せるのであれば、仕事内容や職場でのルールなどを理解してもらわなくてはなりません。
しかし、スポットワーカーによる短時間の労働から得られる利益と、研修にかかる手間やコストが見合わないケースがあります。
また、スポットワーカーによってスキルや能力が大きく異なるため、研修をしたもののあまり理解してもらえず、期待どおりには成果が得られないこともあり得ます。
スポットワーカーは事前の面接なしで雇うことが多いので、継続的に雇用するアルバイトよりも、こうしたミスマッチが起こりやすい傾向にあります。
人材が定着しない
人材が定着しにくいことも、スポットワーカーを採用するデメリットです。企業とスポットワーカーは雇用契約を締結しますが、それは単発のものであって継続した雇用ではありません。企業側は「同じ人に長く働いてほしい」と考えていることもありますが、ワーカーの多くは「今だけ」という意識で働いています。
そもそもスポットワーカーは柔軟な働き方を求める人が多い傾向にあり、企業と強いつながりをもちたいと思っていないことも少なくありません。そのためワーカーがリピートしてくれなかったり、フルタイム勤務への誘いを断られたりと、なかなか人材が定着しない可能性があります。
人材が定着しないと、毎回新しい人を採用しては仕事を教えることになるため、採用担当者や教育担当者に負担がかかるうえにコストもかさみます。じっくりと仕事を覚えてもらう時間がないので、専門性が高い仕事も任せられません。働き手との信頼関係が築けないため、情報漏洩や金銭トラブルなどの問題が起こるリスクも高まります。
提供するサービスの品質にバラつきが出る
スポットワーカーは勤務時間が短いので、十分な研修ができないまま業務開始となることがあります。そこにワーカーによってスキルや能力に差があることも影響し、提供するサービスの品質にバラつきが出たりミスが発生したりしがちです。
企業側からみれば継続した雇用関係にないワーカーでも、顧客側は契約形態など関係なく、その企業の従業員とみなします。
研修が十分でないスポットワーカーに仕事を任せた結果、サービスの質が著しく低下したり、大きなクレームに発展するようなミスが起こったりすると、企業の評判に悪影響が出る可能性があります。
スポットワーカーを採用する際のポイント
以上のようなデメリットを考えると、スポットワーカーの採用をためらうかもしれません。
しかし、受け入れ側がしっかりと準備を整えておけば、トラブルを防止しつつスポットワーカーを十二分に活用可能です。スポットワーカーを採用するにあたってとくに意識したい3つのポイントを解説します。
業務マニュアルを整備する
スポットワーカーを採用する際にまずやっておきたいのが、業務マニュアルの整備です。先述の通り、スポットワーカーは短時間勤務であるため、ゆっくりと研修するヒマがありません。
あらかじめマニュアルを整えておけば、入念な研修ができなくても、スポットワーカーが業務に取りかかりやすくなります。実際にスタディストの調査でも、「業務マニュアルの整備」がスポットワーカーの受け入れに効果的であるとの結果が出ています。
初めて来たスポットワーカーでも理解できるレベルのマニュアルがあれば、アルバイトやパートを雇用したときにも便利です。
人材が定着しない職場の特徴のひとつに、「人によって言うことが違う」というものがあります。同じ作業なのに、Aさんに教えてもらった方法で対応しているとBさんにやり方が違うと怒られる、といったことがあると、教えてもらう側は不安や不信感を抱くものです。
その状態が長く続くと職場に対して不満やストレスが溜まるため、そのうち辞めてしまいます。従業員それぞれが効率のよいやり方を模索した結果だとしても、新人が次々と辞めてしまっては本末転倒です。
新人向けのわかりやすいマニュアルを用意しておけば、スポットワーカーでもアルバイトでもパートでも、マニュアルどおりに進めたらよいので混乱せずに済みます。その結果、安心できる職場だと感じてもらえれば、定着率も上がるかもしれません。
また、マニュアルどおりに進めてもらうことで、人によってサービスの品質に差が出る問題も防止できます。
製造・物流・卸・小売・飲食・サービス・医療/福祉業におけるスポットワーカーの活躍調査
受け入れ担当を決めておく
スポットワーカーを採用するときには、受け入れ担当を決めておくことも重要です。受け入れ担当が決まっておらず、そのとき手が空いている人が教えるような状態だと、誰も手が空いていなければワーカーが放置される可能性があります。
疑問があっても誰に確認したらよいのかわからなかったり、人によってやり方が違っていて困ったりすることもあるかもしれません。このような環境では、せっかく採用したワーカーがスムーズに業務を行えないうえに、印象が悪くなって次回から来てくれなくなる可能性があります。
誰が受け入れ担当になるのかを事前に決めておけば、こうした問題がなくなります。また、担当者側も慣れてくるので、効率的に指導できるようになるはずです。
スタディストの調査でも、スポットワーカー受け入れ前の準備として、受け入れ担当を決めている企業の割合は2番目に多いとの結果が出ています。スポットワーカーの能力を最大限活用し、よい関係を築くためにも、しっかりと受け入れ体制を整えておきましょう。
とはいえ、自社だけでスポットワーカーを活用する体制を整えようとすると多大な労力がかかるため、仲介サービスを導入するのもおすすめです。
製造・物流・卸・小売・飲食・サービス・医療/福祉業におけるスポットワーカーの活躍調査
依頼する仕事内容を決めておく
スポットワーカーを採用する前に、何の仕事を依頼するのかも具体的に決めておきましょう。何も決めずにワーカーを迎えると、当日に作業の割り振りから考えることになり、無駄に時間が消費されてしまいます。
「とりあえずこれをやっておいて」と適当に作業を割り振られたことで、雑に扱われているとワーカーが悪印象を抱くこともあるかもしれません。
スポットワーカーにはロゴのデザインをしてもらう、イベントスタッフをしてもらうなど決めておけば、すぐに作業を開始できるので効率的です。何をしてもらうのかが明確なので、業務マニュアルも作成しやすくなります。
もともとその業務を担当している従業員を受け入れ担当者にすれば、新たに何かを覚える必要がないので、従業員側にも大きな負担がかかりません。
スタディストの調査でも、スポットワーカー受け入れ前の準備として、依頼業務を決めている企業の割合は3番目に多いとの結果が出ています。
ワーカーを放置したり迷わせたりすることなく、スムーズに業務に入ってもらうことが、スポットワーカー採用の成功のコツです。
製造・物流・卸・小売・飲食・サービス・医療/福祉業におけるスポットワーカーの活躍調査
スポットワーカーの採用を効率的に進めるなら
スポットワーカーは短時間勤務であるため、ゆっくり研修することができません。効率的に動いてもらうには、わかりやすい業務マニュアルを用意するなどして準備を整えることが大切です。「Teachme Biz」などのツールを活用し、マニュアルを整備しておくこともおすすめです。